太助と魔王

温水康弘

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第一幕 二人の出会い・そしてすべての始まり

その五 開拓

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 それから義勇兵パレードが一週間後に決まり義勇兵ギルドの事務所は大賑わいだ。
 ギルドマスターであるルルとララは半ば悲鳴を上げながらパレードの準備と当面の警備体制や給与等を決めるのに大忙しだ。
 これを見兼ねた私はそんな義勇兵ギルドへ文官を数十名程応援に派遣。
 派遣に関しては太助もイエスと言って了承してくれた。

「とりあえず義勇兵ギルドは大丈夫かしら」
「文官を応援に出した辺りはヒカルちゃんにしては上出来だよ。軍備拡張はわが国の最優先事項だからね」

 さて、私と太助は現在馬車で未開拓の土地へ向かっている。
 目的は未開拓の土地の視察と農地への開拓テストだ。

「とりあえず馬車の荷台に農具や種に魔材肥料を積んであるけど本当に大丈夫?」
「だから今から土地の調査とテストを行うんだよヒカルちゃん」
「あっ、そろそろ見えてきたよ」

 こうして、やって来ました魔王国帖地にも関わらず未開拓の土地へ。
 馬車から降りた私達は早速土地の調査を開始。

「う~ん、結構空気が美味しい」
「手が加えられていない天然の土地みたいだね。雑草が生えてる辺り案外土地は肥えてるかな?」

 それから私達は試しに土地を耕して為を植える事にした。

「じゃあ、とりあえずスケルトンを百体出してよ」
「わかったわ!では私の可愛いスケルトン達~っ」

 はい地面に出現した魔法陣!
 その中央から次々とスケルトンが行進してご登場でござ~い!

「じゃあ、あのスケルトンにクワとかの農具持たせて」
「なら早速作業開始ね!太助」

 それからスケルトン達は農作業開始!
 いやはや私の可愛いスケルトン達は私の魔力が尽きない限り疲れる事を知らないから良く働くなぁ。

「太助、作業終わるまでまだ時間がかかるから……お茶でもしない?」
「そうだね」

 私は馬車の中から即席のティーセットを出して紅茶とチーズケーキを用意する。
 暫くは自然に囲まれての楽しいティータイムだ。

「これは美味しそうな紅茶だね。だけど……これ媚薬とか入ってない?」
「安心して太助。流石にお天道様が高い時に発情しないわよ」

 安心してよ太助。
 魔族が浴場したり発情するのは夜の間だけ。
 だから昼間は魔族も真面目に働く慣習があるからね。

「!?これは美味しいね」
「でしょ。チーズケーキはパンジーが用意したものだけど紅茶は私が趣味で育てたものよ」
「……意外」
「えっ?」
「ヒカルちゃんにも女の子らしい趣味があったんだ」
「私は女の子よ。なんなら今度料理も作ろうかしら?」
「えっ、料理も?」
「簡単なものしか作れないけどね。今度作ってあげるね」
「うん!」

 うふふ、太助って普通の男の子らしい顔も見せるんだ。
 なら……どんな料理作ろうかな?

 それから楽しいティータイムを終えて私達はスケルトン達の作業状況を確認。

「わぁ!結構畑らしくなってるじゃないか」
「流石は私の可愛いスケルトン達ね」

 では今度は種まきね。
 スケルトンの皆!頼むわよ。

「それにしても本当に疲れ知らずだね、あのスケルトン」
「私の魔力が尽きない限り休まないわよ」
「ふ~んってヒカルちゃん!あれだけのスケルトンを動かして疲れたりしないの?」
「ぜ~んぜん!私ってその気になればスケルトン三千体出せるんだから」
「うわぁ」

 はっはっはっ!
 私は最強の魔王なのよ。
 これぐらいは朝飯前よ。

「ちなみに……スケルトン三千体呼び出して何時間ぐらい動かせる?」
「う~ん、今までの最高記録は三日ぐらいかな。それでも私の魔力は余裕があるかな」

 あれ?
 太助ったら目が点になってるよ。
 そんなに私の力に驚いたのかしら?

「なら質問を変えるよ。ヒカルちゃん以外にもスケルトンを召喚できる人いる?」
「いるわよ。確かルルから聞いた限り義勇兵の魔導士三百人ぐらいいるよ。呼び出せる数は私よりも少ないと思うけど」
「三百人か。なr言語その三百人から交代でこの土地を管理してもらおうよ」
「えっ?」
「ヒカルちゃんの他にもスケルトン召喚できる人いるなら今後手が空いている人を交代で開拓をやらせようよ」
「まぁ、確かに私もここばかりに構ってられないしね」
「そうそう、それと戦士の義勇兵の中で職のない人も読んで開拓をさせようかな」
「太助、本気でここを農地にするつもりね」
「勿論義勇兵全員ここに回すつもりはないけどね。他にも義勇兵には普段やって欲しい事が多いし」

 まぁ、ルルとナナから提案があったけど義勇兵は普段、国の警備や治安に雑用をさせたほうがいいな。
 それに太助が提案している国の城塞都市への再開発計画の人員にしたい事もある。
 本当に今後やるべき事はいっぱいだ。
 あっ、そここうしている内にスケルトン達が種まきを終えたみたい。

「後は虫とかの被害を防ぐ必要があるね。ヒカルちゃん農薬やかかし、それに罠はある?」
「えっ?農薬って何なの。それに罠だなんて古典的な事考えるのね太助」

 太助ったら何を言ってるのか理解できないわ。
 特に農薬って太助のいた世界にあったものかな?

「太助、虫とか動物から作物を守る方法は……この世界ではこうよ!」

 私は畑の周囲に魔石を地面に数か所埋め込む。
 そして……高らかに詠唱!
 すると畑の周囲に決壊が張り廻られる。

「成程、結界か」
「そう!流石に天変地異は防げないけど虫や動物それに台風ぐらいなら防ぐ事ができるわよ」

 そう、この作物への防御策は魔王国ならず人間国やエルフ国にドワーフ国では常識よ。
 昔から私達の世界ではこうやって外注や動物から作物を守ってきたのよ。

「じゃあ今日はここまでね。後は時々官僚でも派遣して経過を確認してもらいましょう」
「そうだね。じゃあ帰ろうか」

 それから私と太助は馬車に乗ってそのまま魔王城へ帰る事に。
 もう日も沈むぐらい。
 私は沈む夕日を見ながらしばしの間色々と考えていた。
 私は最初、魔王は桁違いの能力があれば勤まると思っていた。
 だけど……それは違うと最近思うようになった。
 魔王って結構色々とやるべき事があるんだな。
 私は……それに気付かなかったから大人の男達は私の元から離れていったのだろうか。
 そして、魔王は力だけでは務まらない事に気付かせてくれたのが友達として召喚した太助。
 太助は私が欠けているものを持っていた。
 ふと、私はそんな太助の顔を見ようとした時。

「すぅ……すぅ……」

 寝ている。
 私が召喚してから国の宰相として忙しく働いていたせいかぐっすりと太助は眠っている。

「可愛い寝顔」

 私は魔族としての本能的に寝ている太助に迫ろうとした。
 だけど……今までの事を考えるとまた拒絶するのは自明の理だろう。
 揺れる馬車の中で寝ている太助の顔を見て私は思いとどまった。

「やっぱ……フェアじゃないよね」

 私は眠る太助の頬に口づけをしてから太助の横に座り手を握りなgら一緒に眠った。

「今はおやすみ。一緒にいるからね」




 揺れる馬車の中で私と太助はしばしの間二人だけの時間を。
 今は夢の中だけでもひとつにさせて💛 





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