太助と魔王

温水康弘

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第一幕 二人の出会い・そしてすべての始まり

その一 再建への第一歩

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「あっ、魔王様だ!」
「こんにちは魔王様」

 私は太助と一緒に魔王城の城下町へ来ていた。
 何だかんだでこの国の民は私に対して愛想がいい。
 そんな中で太助は周囲を見回している。

「結構僕のいた世界と比べると文明レベルは低いね」
「文明レベルって太助のいた世界はどんな世界だったの?」
「建物は高い建物が並んでいて車とかトラックも走ってるよ。それに道路も綺麗に補装されてるし」
「車?トラックって?」
「はは……多分この世界では馬車みたいなものだよ」

 本当に太助ってどうゆう世界にいたのかしら。
 車とかって私達にとっては馬車みたいなものかしら?

「だけど……ここの人達って結構明るくて幸せそうだね」
「そうね。案外それだけがこの魔王国の取り柄なのかもね」
「そこはいいね。僕のいた世界は……あのような笑顔がないから」

 笑顔が無い?
 太助のいた世界って文明は高いけど民の心は暗いのかしら。

「そうだ!足助、リンゴ食べない?」
「う、うん」

 私は近くに出ていた出店からリンゴを二個購入した。

「はい二個だから四ゴールドですよ」
「うん、はい四ゴールド」
「毎度あり魔王様!処で……そちらの彼、魔王様の彼氏?」
「ち!違うわよ。太助は私の友達だよ。今この城下町を案内してるの」
「そうですか~っ、では魔王様頑張ってね」

 えっ?何を頑張れって。
 とにかく私は太助の元へ戻りリンゴを手渡した。
 そして私と太助は一緒にリンゴを食べた。

「どう?」
「……美味しい」
「そうでしょう。わが国の特産品のひとつだからね」
「特産品?」
「うん、この国の魔力は大地に満ちてるからいい作物が育つの」
「そうなんだ」
「もっとも……私が魔王になってから男手がいなくなって現状女性と子供がなんとか国を回している状態なの」
「えっ?」
「私、人望がないのかな?どうゆう訳か優秀な人材が離れていったのよね」
「ヒカルちゃん」
「やはり子供に仕えるのが嫌なのかな」

 本当、私って人望とかカリスマというものに縁がないのかな。
 なんだか辛くなってきたな。

「大丈夫だよ」
「太助」

 太助がそんな渡井の手を握る。
 
「この国についての第一印象だけど……この国結構悪くない気がするよ」
「まずこの町の住民の感じがいいよ。何処か温かいし」
「確かにな」
「それにリンゴ食べた限り食べ物も美味しそうだから……食料関係はヒカルちゃんそれなりによくやってると思う」

 はは、そう言われると正直嬉しいな。

「となると第一印象で僕が感じたkの国の問題は……人材不足と経済問題だよ」
「うん、確かに人材はね」
「それに僕が見た限り農業しか誇れる産業がないのが僕としては不安だよ。それに近隣の人間族の国が事あるごとに攻めてくるって?」
「そう!あの人間達、時々攻めてくるのよ。正直ウザいわよ」
「えっ?なら現状どうやって人間国の軍隊追い返してるの?」
「そこは……私がぶっ飛ばしてるのよ!」
「はぁ?」

 流石に太助も唖然としているか。
 太助はこの魔王ヒカル・グレーズの能力を知らないのね。
 そこへ子供の女の子が私と太助の元へ。

「魔王様は本当に強いんだよ。この間も人間族の連中をたった一人でぶっ飛ばしたんだからね」
「うふふ!そりゃ私は無敵だからね」
「だから私達は平和に過ごせるんだよ!本当に魔王様って凄いんだね」

 本当にそれ言われるといい気分ね。
 だけど……太助は何処か不安そう。

「ヒカルちゃんって……本当に強いの?」
「当然よ!私は魔王よ。史上最強なんだから」
「それ……本当なら危険だよ」
「えっ?」
「もしヒカルちゃんが病気とか調子が悪い時にその人間軍が攻めてきたらこの国即終了だよ」

 うっ、それは……!

「悪い事言わないよ。この国はすぐにでも徴兵するなり武将を募集するなりして軍事を増強すべきだよ」
「そうは言っても……この国って大人の男は殆どいないんだよ!だから徴兵なんか到底できないよ」
「なら大人の女性はいるんでしょ?パンジーさんから聞いたけどこの国の住人って魔法の使い手が多いと聞くよ」
「まさか……女の人徴兵して魔導士部隊を編制するつもり?」
「とりあえずは試しにそうしてみようよ!騙されたと思ってまずはそれを実行しようよ」

 確かにわが国の女性って個人差あるけど大抵高位魔法使えるけど。
 まさか……彼女達を徴兵して魔導士による軍隊を作ろうだなんて。
 正直こうゆうの私は思いもつかなかったわ。

「ヒカルちゃんはこの国の魔王様なんだから余程の事がない限り後方でどっしり構えていればいいんだよ」
「だけど……本来汪様って最前線で軍を指揮するものじゃないの?」
「それは今後募集する部隊長や武将にやらせたらいいんだよ」

 はは……太助って私が思いつかない事を次々と。
 そうか、私は余程の事がない限り動かないほうがいいのか?
 
「じゃあ……ヒカルちゃん、城下町の皆にこう伝えて!私と人間軍と戦ってくれっる人は集まって!球菌は弾むからとね」
「えっ?今から」
「これに関しては急務だからね!さぁ、騙されたと思って……僕を信じて」

 先程から太助って早いペースで話を進めるなぁ。
 よ~し!
 私が対等の友達として召喚した太助の考え……騙されたと思ってやってみるか!

「み~んな!手の空いてる人はとりあえず集まって!!」

 私は魔力を込めて城下町銃の住人へテレパシーと大声で呼びかけた。
 すると……私と太助の周りには城下町の三分の二近くの人達が集まった。
 
「すごい……結構この城下町には人がいるんだね。女性と子供しかいないけど」
「皆、集まってくれてありがとう!実は……今わが国は人間国の侵略に脅かされてるるの」

 ありがとう、こんな私の演説を城下町の国民の殆どは聞いてくれている。
 太助もこれには驚いてるみたい。

「今は私の絶大な力で防いでるけど正直このまま守り切れるとは限らない。だから……国民の力を貸してほしいの」

 私の演説に国民たちは静かに聞いてくれている。
 そして私の演説は更に続く!

「この中で戦える人だけでいい!私と一緒に人間国と戦って欲しいの。勿論ただとは言わないわ。報酬も与えるし必要なら武装も貸し合与えるわ」
「「「……」」」
「だから……この国の未来の為に私と一緒に戦って!」

 それから少しの間沈黙。
 やっぱり駄目かな?
 そう思った時であった。
 この場に集まった民衆が大喝采!

「魔王様、私が力になります」
「私は元冒険者です。私の魔法を役立ててください」
「俺は女だてらにパワーには自信があるんだ!」

 これは意外だった。
 まさか私の為に戦ってくれるの?

「これは驚いたね」
「太助」
「流石に想定外だったよ。ヒカルちゃん凄く人望あるじゃないか!」

 私もこれには驚きと感激に心が溢れた。
 太助もこれは予想外の反応だ。
 それから太助は少し考えた後に私へ提案。

「予想外に志願兵集まったみたいだから……いっそ義勇兵ギルド作っちゃおう」
「えっ?義勇兵ギルド?」
「そう、ギルド作って一緒に戦ってくれる国民を登録して、その戦いによる働きによって報酬を支払う国営ギルドを作るんだ」

 そうか、義勇兵ギルドか。
 それから私と太助は大まかな義勇兵ギルドの運営手段を離し合った。
 私は数名の官僚をギルド職員にして城下町にある少し大きめの空き家をギルド本部にする事にした。
 ただ……その義勇兵ギルドの準備には約三日かかると太助に言った。

「判ったよ。これで暫定的だけど軍備は整いそうだね」
「太助……よくそうゆう事思いつくね」
「僕はヒカルちゃんの友達!だから僕は僕にできる事をやってるだけだよ」

 はは……召喚して次の日から早速国の不安要素を立て直してきたなぁ。
 太助って本当は私なんか足元に及ばないぐらいに頭がいいんじゃないの?

「ねぇヒカルちゃん」
「何?」
「今日はこの後、パンジーさんと白の官僚達から色々と国の詳しい事情を聴いてみたい」
「えっ?」
「魔王国の詳しい財政事情とか法律、それに現状この国が抱えている問題を知っておきたいんだ」
「そう……」

 それから私と太助は城に戻った。
 太助はこの後パンジーや官僚達から色々と聞いて回っていた。
 私はというと暫く一人で暇を持て余していた。

「太助……まだお城を回ってるんだろうなぁ」

 それから夜も更けて私は寝ようとした時であった。

「……ただいま」
「足助!どうしたの?」

 太助はフラフラになっていた。
 今までお城の中を回ってたんだな。

「ヒカルちゃん、この国って意外といい国じゃないか。問題も結構あるみたいだけど」
「太助!」

 私は太助を抱きかかえ、お姫様抱っこで私のベットの上へ寝かせた。
 すると太助は相当疲れていたのかぐっすりと眠った。

「寝てる時は本当に可愛いんだけどね」

 全身傷だらけの状態で召喚した太助。
 それから次の日で早速手始めに軍備対策を提案して実行した太助。
 やっぱり……太助は私に欠けているものを持っているのは間違いない。
 多分明日はもっと私が仰天する改革案を出してくるに違いない。

「眠いなぁ……」

 なんだか私も眠たくなってきた。
 私は自分のベットの中に入り眠りについた。
 そうえいべ……私、太助とまた添い寝してるな。
 でもいいか。
 これから魔王国は変わっていくような予感がする。
 今日はその始まりにすぎないと思う。



 じゃ、おやすみ……太助。






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