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第一幕 二人の出会い・そしてすべての始まり
プロローグ
しおりを挟む私はヒカル・グレーズ……十一歳の女の子。
私は魔王国の魔王だ。
今から一年ほど前に魔王を選ぶ試験にぶっちぎりの成績で一番になり魔王になった。
だけど……それから私に人望がないのか前の魔王に仕えていた大人たちは次々と私の元から去っていった。
だから私は孤独な魔王である。
だから私は願う。
友達が欲しい。
一緒にこの魔王国を運営してくれる友達を。
「本気ですか魔王様」
「うん、今この魔王国に残ってくれてるのは数十名の文官と官僚だけだし」
私は数少ない先代魔王から仕えてくれている執事にして宰相のパンジーに胸の内を明かした。
私が魔王になった途端に殆どの大人は私の元さら去っていった。
現在魔王国に残ってるのは数十名の若輩の文官と官僚、唯一私kら去らずに残ってくれたパンジーに人口十万ぐらいの女子供ばかりの国民だけである。
正直私の元へ残ってくれた若輩の文官や官僚のおかげで辛うじて内政に関しては成り立っている。
だが、わが国の近くには人間族の国があり事あるごとにわが国に攻めてくる。
今は私が圧倒的な力で蹴散らしているが攻められる度にわが国の国力が低下する。
このままではじり貧だ。
だから私は自分と対等の友達が欲しい。
自分を支えてくれる友達が欲しい。
私は古より伝わる異世界の存在を召喚する魔法陣を用意した。
執事のパンジーが見守る中で私は魔法陣に自分が持つ魔力をほぼ全てを注いで召喚を試みる。
「敵うなら……私よりも知略に長けて、何よりも私に優しく接してくれる人」
魔法陣は眩い光を放出しながら更に私へ魔法陣に魔力を注ぐ。
「できれば……男の子がいいな。そして可愛いのがいいな」
私が魔法陣に魔力を注いて三十分が経過した。
すると……魔法陣の中央に何か人の姿が浮かんできた。
「あと少し……お願い!私の願いに答えて」
その瞬間、魔法陣の閃光が最高潮に!
やったか!
そう感じた時、魔法陣の閃光は消え……その魔法陣の中央には一人の男の子らしき姿があった。
「やった!成功よ」
私は魔法陣中央にいる男の子の元へ。
だが……その男の子の様子は明らかに異常であった!
全身傷だらけ……まるで何者かに虐待されたかのような印象。
これは明らかに重症だ。
「パンジー!すぐにベットとエリクサーの用意を!」
「かしこまりました魔王様!」
これは大変だ。
まさか瀕死の重傷者を召喚してしまったなんて。
だけど……この瀕死の男の子を助けたい。
私は本能的にそう動いていた。
それから数時間が勝負であった。
何しろ一刻を争う緊急事態なのだから。
とりあえず男の子をベットに寝かせた後に私は無我夢中に治癒魔法を行使。
だけど、その傷は著しく思ったよりも傷は塞がらない。
せいぜい延命させるのが精一杯だ。
いつもの私ならこんな傷なんかすぐに完治できるのに!
やはり先程の召喚で私は殆どの魔力を消耗したせいだ。
「う、ううっ」
「治れ!治れ!元気になってくれ」
あぁ、なんか目まいがしてきた。
魔力が切れる警告だ。
このままではこの男の子は死んでしまう!
パンジー、エリクサーはまだなの?
「魔王様!」
「パンジー」
そこへパンジーがエリクサーを持ってきてくれた。
これでこの子を救う事ができる!
私はエリクサーの蓋を開けて瀕死の彼になんとか飲ませようとする。
「さぁ飲んで」
だけど、彼は飲む気力も無いのか口も動かせないみたい。
困ったな。
これでは折角のエリクサーも飲ませる事ができないよ。
だけどこのままでは彼は死んでしまう。
「よし!」
私は手にしたエリクサーを口に含み……そのまま彼の口へ。
そう、私はエリクサーを口移しで飲ませた。
すると、どうにかエリクサーを彼に飲ませる事に成功した。
やがて……エリクサーの効力が出てきたのか彼の呼吸は落ち着いてきて徐々に体中の傷が癒えていく。
これならもう大丈夫だろう。
ん?
もしかして……私、男の子とキスしちゃったの?
私は思わず顔を真っ赤にしていた。
そして、その直後。
「あ……あれ?」
「魔王様!」
ここで私は魔力切れ。
私はそのまま意識を失いこの場に倒れてしまった。
それから私は暫く目を覚ますことはなかった。
それから次の日の朝。
「……んんっ」
ようやく魔力が回復して私は目を覚ました。
気が付けば私はベットの中にいた。
そうか、パンジーがベットへ運んでくれたのか。
「ん?なんか違和感が」
そうである。
今、私はベットの中にいる。
だけど……天井を見た限り、ここは私の寝室ではない!
ここは何処だ?
私はベットの上から周囲を見渡した。
すると……私の隣に何かがあるのを感じた。
もしや?
私はベットの掛布団を取り去った!
「すぅ、すぅ」
「えっ……ええええええええええええええっ!」
なんと!
私の傍には私が召喚した男の子が寝ていた。
どうやらここは昨夜この男の子を治療した部屋だ。
さてはパンジーがの奴、私が魔力切れした時にこのベットに寝かせたな。
あの執事にも困ったものだな。
ちなみに昨夜飲ませたエリクサーが効いているのか傷は完全に完治している。
それにしても……昨夜は全身傷だらけで気付かなかったけど彼って可愛い!
「見るからに私と同じぐらいの年頃ね。どうも人間族のようだけど」
私はこの人間族らしき男の子を見て少しうっとりしていた。
これは会見に関しては理想通りのが召喚できて成功といえるだろう。
「それにしても……可愛い寝顔」
私は男の子の顔をよく見てみようと近づく。
うんうん、本当に可愛い。
私はもっとこの男の子を観察しようと更に近づいた時であった。
「……」
「あっ、目が開いた」
男の子の目がゆっくりと開いていく。
そして男の子は口を開く。
「……えっ」
「おはよう」
「?誰だい……それにここは」
男の子は周囲を見渡してからベットから出て私に尋ねてくる。
「ここは何処?君は誰?」
そりゃそうよね。
いきなり私達の世界へ呼び出されたのだからね。
私もベットから飛び出して男の子へ名乗りを上げる!
「私は魔王国の魔王ヒカル・グレーズである!よくぞ私の召喚に応じてこの世界に来てくれた」
「魔王国?」
「そう、私はこの魔王国の魔王よ。それで……貴方の名前を教えてくれないかしら」
「太助……百合太助」
「百合?これは女の子らしい名前ね」
「誓うよ!百合は苗字で太助が名前だよ」
「そうか……太助なのね」
そうか、百合太助というのか。
しかも最初に苗字とは随分と変わった世界の人間族みたいね。
「魔王様おはようございます」
「おはよう……ってパンジー!どうして私を寝室に運ばなかったの?」
「魔王様はその方と親しくなりたいと申してましたので……」
はぁ、変な処でおせっかいな事しないでよね。
「とにかく朝食の準備をお願い!それと彼……太助の分もお願いね」
「かしこまりました」
パンジーがこの場からいなくなり改めて私は太助と話をする事に。
「太助」
「なんですか魔王様」
「魔王様はやめて!私は貴方に対等の友達になって欲しくてここに読んだんだから」
「友達?」
「そうだよ、だから私の事は魔王じゃなくてヒカルと呼んで欲しいの」
「ヒカル?」
「そう!私はヒカル。だから私も貴方の事は太助と呼ぶわ」
「うん、判ったよヒカルちゃん」
「うんうん!それでいいよ太助」
そう、これが友達への第一歩!
他の皆は魔王様、魔王様って言うもんだから正直うんざりしてたのよね。
それから私は太助と一緒に楽しい朝食だ。
「へぇ、この世界にもパンとかあるんだ」
「異世界の方の口に合うかはわからないけど食べてみてよ」
太助はとりあえずパンを手にして食べる。
「!?美味しい」
「パンジーが作ったんだよ。彼は料理も上手いの」
「えっ?普通こうゆう場所ってシェフとかコックが作るんじゃないの?」
「……」
「ヒカルちゃん?」
私は……太助に今の魔王国の現状を正直に話した。
現在国の人材は私に人望が無い故に優秀な人材は離れていき残るは若輩の文官と官僚が数十名残ってるのみ。
残ってる大人の家臣は執事のパンジーのみ。
それでも残ってる文官と官僚の頑張りで辛うじて国の財政が回っている状況。
おまけに近頃は近隣にある人間国がここを滅ぼそうと事あるごとに攻めてくるのだ。
今は私がその強大な魔王都市tの能力で返り討ちにしているがいつまで持ちこたえられるかわからない。
「もしかして……僕をこの世界に召喚した理由って」
「対等の友達が欲しかった事は嘘ではない。だが同時に私を助けてくれる者がどうしても欲しかったのよ」
「……」
それから太助は暫く黙っていた。
無理もないな。
私個人の都合で自分のいた世界とは別世界へ召喚されたのだからな。
「なんなら太助のいた世界へ戻してもいいのよ」
「……それは嫌だ」
「えっ?」
「僕は……もうあそこに戻りたくないよ。あそこは地獄だ」
「太助」
「それに……ヒカルちゃんはこんな僕を必要だと言ってくれた。僕に何ができるか解らないけどできる限りの事はやってみるよ」
「太助!」
私は思わず足助に抱き着いた。
確かに太助は私達の世界では無力かも知れない。
だけど……私としては一人でいるよりも一緒にいてくれるだけでも心から嬉しい。
「パンジーさん」
「はい何でしょうか太助様」
「朝食が終わったらここ最近の財政状況を教えて」
「えっ、宜しいのですか?」
えっ?
太助、一体何をする気なの?
「それからヒカルちゃん」
「な、何?」
「できれば魔王国の城下町を見たい。この世界の住人がどんな生活をしてるのか見たいんだ」
「う……うん」
気のせいかな?
急に太助の雰囲気が変わった感じがする。
私が魔王になって一年。
人望が無い故に有能な人材が去ってしまい色々とボロボロの魔王国。
それを私が召喚した対等の友達が改革して立て直していく。
これは魔王と異世界人との友情が繰り広げる魔王国再建物語。
そして……二人の男女が恋に落ちて結ばれる物語。
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