アーリマン

暴走トラック

「ソフィアさんも気を付けてね」
休み時間などによく話すクラスメイトの噂話
最近、この辺りで猛スピードで走るトラックが目撃されている。
ソフィアの目的とは関係無さそうな情報だが注意するに越した事はない。

世界を救わなくてはならない。
ビックバンで宇宙が生まれた時、複数の宇宙が同時に誕生する。肉体は宇宙の境界を越えられないが俺の精神は別の宇宙、別の世界からの助けを受信している。
肉体が滅んでも魂は永遠だ。肉体は世界の境界を越えられないが魂は越えられる。
俺の使命は救世主の魂を転生させる事
そして世界を救う勇者の魂はトラックに轢かれて転生するのが様式美と言える。
運転中は使命に集中したいが偽装の為に配達業務もこなす。

夕方、街が茜色に染まる中、金色のオーラを纏った救世主がいた。

ソフィアは銀杏並木の大通り家路を歩いていた。
ソフィア自身が望んで入った訳では無い部活だが友人もでき、それなりに楽しくなってきていて心地良い疲れで気が緩んでいた。
だから気が付くのが遅れた。
早く気が付いたところで明確な意志を持って
迫ってくる大型トラックに対してソフィアが出来る事は少ないが
突然の衝撃にソフィアは吹き飛ばされた。
当然、トラックにではなく清十郎に、
清十郎が下になり受け身をとったのでソフィアはかすり傷ひとつ追ってない。
何故普通に歩いていたのに、自分がうつ伏せになっているのか状況が速すぎてソフィアの頭が追い付かない。
既に清十郎の姿は無く歩道に取り残されたソフィアは自分の姿を想像し羞恥に身を震わせた。

ガッシャン！
タイヤの唸りやディーゼルエンジンの咆哮より一際大きい音がした。
反射的にソフィアが音がした方を見るとトラックの窓に木刀を突き立てて中に乗り込もうとする清十郎の姿があった。