6 / 13
麦角
しおりを挟む
毎日では無いが夜の街に出掛けてる。
夜、出歩く時は何時も一人だ。
普通の家なら高校生が夜出歩くのは問題になりそうだが我が不知火家では問題にならない。
それに誰かを付きあわせていいような用事でも無いし
「いらっしゃい、良くん」
駅近く路地裏の小さなスナックに入る。
高校生が入るのに相応しい店では無いがママが母親の友人なので俺の親からみれば安心の店になる。
「こんばんは」
カウンターの端に座る。
ママさんが黙って冷たい麦茶を出してくれた。
夜の9時、この店では早い時間なので客は疎らだ、カウンターが7席にテーブル2つの小さな店なので全員の顔が見渡せてしまう。
テーブル席に男女、カウンターにもう一人、俺を入れて客は4人しかいない。
テーブル席の男女は何度か見ている。カウンターに座っている男は初めて見る顔だ。
「いい加減、煙草やめたら」
後ろから男女の話が聞こえる。
「いやぁ、俺体調も良いし、これと言って止める理由が無いんだよね」
周りに迷惑を掛けるからっていうのは理由にならないのか、糞オヤジが
ただ問題なのは後ろの男女ではなく、カウンターで飲んでる奴の方だ。
一人でブツブツ呟きながら飲んでいる。どう見ても美味しい酒じゃない。
美味しい臭いを醸し出している。
俺の身体には鬼が住んでいる。
俺キレたらヤバいよマジ鬼だかんなぁ。みたいな性格的やつでは無く、アストラル的なものが
600年くらい前から一族の誰かの身体に宿り、現在は俺の中にいる。先祖が契約を交わしたらしくが完全口伝の為かなり曖昧な内容しか伝わっていない。鬼憑きだなんて下手に口伝書を残して誰かに見られたら完全に危ない一族だから仕方無い。
そんな訳で俺とは別に、俺の中の鬼も腹を空かす。
アストラル体である鬼は俺が食すマテリアルな食事では完全に満足はしない。
ドンッ!
カウンターの客がいきなりテーブルを叩いて立ち上がり奇声を上げた。
俺は客に近寄り肩に左手を置いた。
周りには俺が客を宥めて、客を鎮めたように見えているだろう。
俺の感覚だと鬼が瘴気を喰らった。
「良くん、ありがとう」
自分の席に戻って来た俺にママが小さな声で、
「いや、当たり前の事しただけだし」
「最近ね、ああいう人多いのよ。不景気だからかしらね」
「かもね、また似た様な事があったら俺を呼んでよ。ママも詰まらない事で警察呼びたく無いでしょ」
鬼の腹も膨れるしね。
「本当に?じゃあ甘えちゃおうかしら」
「ママに甘えられるなんて男冥利に尽きるよ」
「可愛い事言ってくれるわ、明子さんの息子さんでなければ、ほっておかないのに」
笑えない冗談だけど、ここは笑うとこだよな。よし笑え。上手く笑えたか俺、どうなんだ俺。自分の顔は確認出来無いから凄く不安だ。
さてと、休憩を終え再び街へ出る。
もう少し瘴気を喰らってから帰ろう。
麦角とバッカスって語呂が似てるよな。
夜、出歩く時は何時も一人だ。
普通の家なら高校生が夜出歩くのは問題になりそうだが我が不知火家では問題にならない。
それに誰かを付きあわせていいような用事でも無いし
「いらっしゃい、良くん」
駅近く路地裏の小さなスナックに入る。
高校生が入るのに相応しい店では無いがママが母親の友人なので俺の親からみれば安心の店になる。
「こんばんは」
カウンターの端に座る。
ママさんが黙って冷たい麦茶を出してくれた。
夜の9時、この店では早い時間なので客は疎らだ、カウンターが7席にテーブル2つの小さな店なので全員の顔が見渡せてしまう。
テーブル席に男女、カウンターにもう一人、俺を入れて客は4人しかいない。
テーブル席の男女は何度か見ている。カウンターに座っている男は初めて見る顔だ。
「いい加減、煙草やめたら」
後ろから男女の話が聞こえる。
「いやぁ、俺体調も良いし、これと言って止める理由が無いんだよね」
周りに迷惑を掛けるからっていうのは理由にならないのか、糞オヤジが
ただ問題なのは後ろの男女ではなく、カウンターで飲んでる奴の方だ。
一人でブツブツ呟きながら飲んでいる。どう見ても美味しい酒じゃない。
美味しい臭いを醸し出している。
俺の身体には鬼が住んでいる。
俺キレたらヤバいよマジ鬼だかんなぁ。みたいな性格的やつでは無く、アストラル的なものが
600年くらい前から一族の誰かの身体に宿り、現在は俺の中にいる。先祖が契約を交わしたらしくが完全口伝の為かなり曖昧な内容しか伝わっていない。鬼憑きだなんて下手に口伝書を残して誰かに見られたら完全に危ない一族だから仕方無い。
そんな訳で俺とは別に、俺の中の鬼も腹を空かす。
アストラル体である鬼は俺が食すマテリアルな食事では完全に満足はしない。
ドンッ!
カウンターの客がいきなりテーブルを叩いて立ち上がり奇声を上げた。
俺は客に近寄り肩に左手を置いた。
周りには俺が客を宥めて、客を鎮めたように見えているだろう。
俺の感覚だと鬼が瘴気を喰らった。
「良くん、ありがとう」
自分の席に戻って来た俺にママが小さな声で、
「いや、当たり前の事しただけだし」
「最近ね、ああいう人多いのよ。不景気だからかしらね」
「かもね、また似た様な事があったら俺を呼んでよ。ママも詰まらない事で警察呼びたく無いでしょ」
鬼の腹も膨れるしね。
「本当に?じゃあ甘えちゃおうかしら」
「ママに甘えられるなんて男冥利に尽きるよ」
「可愛い事言ってくれるわ、明子さんの息子さんでなければ、ほっておかないのに」
笑えない冗談だけど、ここは笑うとこだよな。よし笑え。上手く笑えたか俺、どうなんだ俺。自分の顔は確認出来無いから凄く不安だ。
さてと、休憩を終え再び街へ出る。
もう少し瘴気を喰らってから帰ろう。
麦角とバッカスって語呂が似てるよな。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる