妖魔のCHILDREN〜孤独な少年は人外少女たちの子作りの為に言い寄られながら彼女らを守る〜

将星出流

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選ぶ者・選ばれる者

選ぶ者・選ばれる者ⅩⅣ

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「結局のところ、マリーを殺しに来るってことだよな? そのカーティスって野郎は」

 静まり返るリビングで苛立ちを隠さず、守護を睨みつける麗夜は指先を守護へと向け、指先に白い炎を灯す。優しい色の炎は小さいが、近づくだけで体が消し炭になるのではないかと錯覚させる程の熱量。

「麗夜くん、ダメだ」

「分かってるよ、やらねぇって」

 亮人に制止された麗夜は白い炎を銃口の煙を吹くかのように消す。

『血走りすぎよ、麗夜。でも、情報通りの男だっていうことは分かったじゃない』

「そうだな」

『二人が集めた情報はどんなのなの? 私たちは今日一日寝てたから何も知らないのよ』

 胸の前で腕組みをする氷華は横目に二人へと視線を向ける。
 表情は穏やかだが、麗夜と同様に心は穏やかではなかった。彼女から漏れだす冷気は暖房がついている部屋の温度を奪い、立っている床は氷華を中心に綺麗な氷模様を広げていく。

『お姉ちゃんも少し落ち着こうよ』

 そう口にするシャーリーの短い金髪は一部緑色に変色し、靡く。

『シャーリーこそ、落ち着きなさいよ』

『お互い様だね』

 一呼吸つくように二人は亮人の方へと視線を向ける。

『私達は亮人についていくわ。あんたがこの先の事を決めなさい』

 力強い言葉と二人のまっすぐに向けられる視線に嘘偽りはなかった。
 二人から溢れ出る力は穏やかに落ち着く。新しい力を手に入れたシャーリーは自然と風を制御し、亮人へと優しく風を送る。
 亮人の頬を掠めるように流れる風は亮人に触れるように、その場に滞留し続ける。

『シャーリーも強くなったから、みんなを守れるよ』

 にんまりと笑みを浮かべるシャーリーの雰囲気は変わっていた。あどけなさが少し抜け、余裕を感じさせる風格がそこにはあった。それと同様に氷華は憑依化した姿となり、

『今度こそ私が守るから』

 と、口にする。
 頼もしい二人の姿は最初に出会った時とは大きく変わってきている。
 時折見せる迷っているかのような表情。亮人を不安にさせないように取り繕っていた表情とは違う、本当の気持ちと自信がそこにはあった。

「まぁ、俺たちもあんたの為なら戦う。ただ、今回は事情も戦闘の規模も違う。相手は組織だ、一人じゃない。生半可な覚悟じゃ勝てる相手じゃないぞ」

 再び守護を睨みつけ、亮人へと視線を向ける麗夜。その横で優しく麗夜へと微笑む燈は九本の尾を揺らす。尾の先端に灯す小さな赤い炎は徐々に大きく燃え上がる。

『私も年長者として、ここのみんなの命を守ります』

「お前のことは俺が守ってやる」

『えぇ、信じてるわ』

 二人は見つめ合えば、亮人へと視線は向く。

「亮人……私はマリーを助けてあげたい」

 小さく亮人の袖を引っ張る礼火は見上げるように視線をあげる。
 そこに映る綺麗な瞳には亮人が映り込む。
 昔のような無感情な顔はそこにはなかった。
 周りへ微笑みかける表情はいつになく優しく、周りを暖かくする雰囲気を醸し出していた。
 そんな亮人に対して、マリーは守護へと視線を一度向け、口にした。

『私は家族と…………守護を救ってあげたいですわ。お父様たちは生きてると思いたいですし、守護も自分の人生を探して見てほしいですの。私でも出来た事を、守護にもさせてあげたい、ですわ』

「な、なんで……?」

 驚くような表情を浮かべる守護に、頭を撫でるようにマリーは続けた。

『人を信じられなかった私が変われたのですわ。あなただって変わりたいっていう希望があれば、変われるって思っただけですわよ』

 優しく微笑みながら口にする言葉は守護の脳裏に名前を思い出せない黒髪の少女が浮かび上がる。
 優しく微笑みかける彼女の姿とマリーの姿は何処と無く似ていた。
 性格は全然違う、けれど微笑みかける表情は何度も脳裏から彼女の事を思い出させる。
 割れるのではないかという痛みが何度も襲うが、それをも気にしないほどに心が満たされる感覚が守護を包み込んでいく。

『どうかしましたの?』

 首を傾げ、覗き込むマリーの瞳は赤く守護に吸い込まれるのではないかという錯覚を思わせる。後ろへと距離を取る守護に不思議そうにするマリー。

「な、なんでもないよ…………でも、ありがとう」

『そうそう、素直になっていくのがいいですわ。私を見習いなさい?』

 顔の横で指を立てる彼女の表情を見る度に、守護の顔は赤く染まる。
 この光景に二人以外の全員が微笑んでいた。

「それで、お前は結局どうするんだ。地獄の栄光インフェルノ・グローリーを抜けて、こっちに鞍替えするのか?」

 麗夜は睨みつけていたとは思えない程に守護へとニヤニヤと笑みを浮かべる。
 それはさっきまで浮かべていた怒りを一切感じさせず、年相応の笑みと面白いものを見つけた無邪気な子供のような笑みだ。

「僕は……選んでもいいのかな?」

 マリーへと視線を上げる。それは子供のように、助けを求めるかのように。

『そんなの自分の人生なんだから、自分で決めなさい。もう……決めてるんでしょう?』

 守護の頭へ乗せられたマリーの手は優しく動く。撫でられる頭は心地よく、守護は自然と口にすることが出来た。

「僕は地獄の栄光インフェルノ・グローリーを抜けるよ。それで……マリーの側にいたい」

 一直線に向けられた守護の視線の先、マリーは頬を緩ませ、

『私の横に立つなんて、百年早いですわよ?』

 と笑みを浮かべていた。
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