妖魔のCHILDREN〜孤独な少年は人外少女たちの子作りの為に言い寄られながら彼女らを守る〜

将星出流

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選ぶ者・選ばれる者

選ぶ者・選ばれる者Ⅹ

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「あぁぁぁ、びっくりしたっ!!」

 守護の額へ絆創膏を貼る礼火は大きく安堵の溜息をついた。

「……………………ありがとう」

「いいよ、いいよ。気にしなくて。悪いのはマリーなんだから」

 ギロッと非難の視線をマリーへと向ける礼火は再び大きなため息をつく。

『悪かったっていってるじゃないですのっ!!』

「力加減を考えて上げないとダメでしょ?」

『それくらい、わかってますわよ…………』

 分かっていても加減ができなかった理由があった。
 ただ、それを亮人達に伝える訳にはいかない。

「そんなに怒らないで…………マリーも理由があるから」

 守護はマリーへと顔を向け、頭を下げる。

「ごめん…………」

 そう口にした彼の表情は悲しげなものだった。

『なんで貴方が謝るんですの』

 腕を組みながら、見下すように視線を向けるマリーの声は冷ややかなものになっていた。

「なんで…………かな」

『理由がないのに謝るのは一番嫌いですわ。貴方が悪いことをしたなら謝りなさい。貴方が直接関わっていないなら、無駄に謝らない方がいいですわよ。相手にストレスしか与えませんわよ』

「分かった…………ありがとう」

『それでいいですわ。誰だって、謝られるよりも感謝される方が嬉しいですわよ』

 流し目で見ているマリーは素直な守護へと微笑みかけ、一人歩みを進めていく。

「ま、待って…………」

『待ちませんわよ? 私について来なさい』

 処置が終わった守護は急いで追いかけていく。
 彼の慌てる様子に後ろでは亮人たちが微笑み、ゆっくりと追いかける。
 行き先はデパート。
 人がごった返すスクランブル交差点を越えていくマリーと守護。
 目の前を歩いていくマリーは次々に人混みを越えて、守護を置いていく。
 消えていく彼女の後ろ姿が完全に消えてしまった。

 マリー…………。

 視界から消えてしまうだけで心がか細くなる。
 周りを行き交う人たちに隠れてしまったマリーの姿を能力を使い、探し出す。
 千里眼を使って、マリーを見つけ出す。
 行き交う人は透明になり、マリーの姿だけが街から浮き上がる。
 一人で歩く彼女の姿は孤高の少女のような印象を守護へと与え、彼女へと駆け寄る。
 能力を切り、マリーがいた方角へと一気に駆け寄る。
 息を切らしながら、全力でマリーを見つけ出す。

「一人にしない…………」

『誰も一人じゃないですわ…………追いかけてくるって分かってましたから』

「っ!!」

 真後ろから掛けられた声に驚き振り返れば、彼女の指は守護の頬をつつく。

『私を誰だと思ってるんですの?』

 楽しそうに頬を突くマリーはビルの前で立ち止まり、空を見上げる。

『私はもう、一人じゃないんですの。亮人に礼火、他にも一杯…………それに貴方もそのうちの一人なんですのよ』

 大人びていた彼女は手を差し伸べ、語りかけてくる。

『貴方も今は一人じゃないですわ…………私が…………亮人も礼火もそばに居てくれますわ。私の家族はまだ生きてるって信じてますの。もう、寂しくないですわ…………それこそ、私は今、貴方を助けたいと思ってる位なんですから』

「助け…………たい?」

 その言葉を聞いた途端、守護の心は鍵が開けられるような音と共に瞳から涙が流れた。

 あぁ、なんで目の前の彼女は優しいんだろう。

 敵であり、殺したいと思っているであろう相手に微笑み、優しい言葉をかける彼女の姿に涙が流れていく。

『泣くんじゃないですわよ。貴方も好きこのんで組織にいるわけじゃないんでしょ?』

 組織にいる理由も、人を殺さないといけない理由も、何も知らずに生きてきた。疑問を抱くだけで心が苦しくなるのが分かっていたから。だから、ずっと避けて来た。
 目の前の彼女の言葉は僕の心を暖かくしてくれる。

 守護は差し伸べられたマリーの手へと手を伸ばす。
 目の前にある暖かく、優しい彼女の手を握る。それはまるで希望を手にしたかのような充実した気持ちを守護に感じさせた。

「マリー…………ありがとう」

 目を赤く張らせながら、今日一番の笑顔を見せる。
 そこには此れまでの暗い表情ではなく、少年のような笑みを浮かべ、一筋の涙を流す守護が立っていた。
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