妖魔のCHILDREN〜孤独な少年は人外少女たちの子作りの為に言い寄られながら彼女らを守る〜

将星出流

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選ぶ者・選ばれる者

選ぶ者・選ばれる者Ⅶ

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 翌日の昼、亮人達は原宿駅で待ち合わせをしていた。
 亮人たち三人は事前に亮人宅に集まり、駅へと出発する。
 訓練の顧問とも言えるマリーが訓練を休みにし、各々が好きな時間を過ごす。
 麗夜と燈は二人で何処かへ出かけて行った。

「どこにいくの?」

「野暮用だよ」

『今日は少し遠出をさせて貰います』

 玄関でお辞儀をする燈はそそくさと歩いていく麗夜を追いかけていった。
 そして、氷華とシャーリーは二人は

『疲れたから寝る……』

『お兄ちゃんたちは楽しんで来てね……ふぁぁああ』

 大きな欠伸をするシャーリーを撫でながら二階の部屋へと上がっていく二人。
 亮人達は学校があるが、自宅にいる四人は連日の訓練で休む暇などなかった。その英気を養うために時間を使う。

「それじゃぁ、俺らも行こうか」

「久しぶりのデートだねっ!!」

『お邪魔しますわ』

「いいよっ!! みんなで行ったら、もっと楽しいからっ!!」

『本当に、この子は…………もう』

 夜の姿とは違う、グラビアモデルの様な高身長のマリーは礼火の頭を撫でる。
 それに礼火は無邪気に笑みを浮かべていた。

 楽しいな。

 以前ではあまりそう考えなかった気持ちが素直に感じられる。
 一人暮らしで、家は物静かで、クロが唯一、亮人と一緒に居てくれる存在だった。
 だが、今は違う。
 賑やかに暖かく、家の中には常に笑顔が絶えない。
 そんな空間が亮人を優しく包み込んでいる。

「そろそろ行かないと遅れるよ」

 玄関を出て、後ろを振り向けば二人が楽しそうにじゃれ合う姿。
 礼火は彼女になり、マリーは友達となった。
 学校の友達とは違った、秘密を知り合う信頼できる友達。
 親密な関係がそこにはあった。

「置いてかないでっ!!」

『私を置いていくなんて、いい度胸ですわっ!!』

 亮人へと駆け寄ってくれば、ゆっくりと駅へとみんなで歩いていく。
 道中、マリーへ向けられる視線が多い。
 黒いニットで編まれたタートルネックに大きく胸元は空いている姿、モデルの様に歩く様は高校生の容姿とは似つかない彼女は堂々と道を歩く。ストレッチ素材の黒のチノパンで強調される殿部。それら諸々がマリーが注目になる理由だ。
 駅へと向かう途中でマリーはスカウトに声をかけられていたが無視し、最後には

『私の邪魔をするなら殺しますわ…………』

 と、殺気を向けることでスカウトに尻餅をつかせていた。

「ちょっとやり過ぎだろ」

『しつこいのが悪いですわ。折角のお出掛けですのよ? 邪魔なんかさせて堪りませんわ』

「そっか」

 足早になるマリーに礼火と視線を合わせれば、同時に二人は微笑んでいた。
 最初に出会ったマリーとは全然違う。

「普通の女の子だね」

「俺たちと殺し合った相手には見えないよな」

 見えて来た原宿駅へと早足からステップに変わっていたマリー。

『遅いですわよーっ!! 何してますのー!!』

 家を出た時とは反対に、亮人と礼火がマリーへと駆け寄っていた。

「今行くから待ってて」

「マリーが早過ぎなんだって~」

 二人の視線の先にいたマリーは近寄ってくる二人に天真爛漫に手をふり、笑顔を振りまいていた。
 そこにいたのは、単なる十七歳の金髪の美少女だった。

  ♂     ×     ?

 三人が駅へと到着すれば、守護はすでに駅で携帯を片手に待っていた。
 徐々に守護へと近づく三人に気づくと自然と携帯をズボンへと入れ、近寄ってくる。

「……………………おはよう」

「おはよう…………なんか私服だと雰囲気が変わるな」

「なんか…………不審者っぽい」

『全身黒くしていいのは、私だけですわよ?』

「…………ごめん」

『謝る必要はないですわよ。冗談ですわ』

「……そうか」

 前髪は学校と同じ様に顔を隠す様に垂れている。しかし、私服はマリーと同じように黒いチノパンに黒のジャケットを羽織っている。
 返事をする守護の声は何処と無く残念そうなもの。

「それじゃぁ、早速美容室に行くか」

「今日のメインイベントが早速来ちゃうねっ!! みんなどんな髪型になるんだろう~」

『後で、くじ引きしますわよっ!! 絶対に面白くしてやるんですわっ!!』

「…………行こう」

 歩き始める四人の歩調は合わさらない。

「……………………どこにあるんだ」

 さっきのマリー以上に早足に歩く守護。その姿に一同は声を出して笑った。

「なんで…………笑うんだ?」

 理解できないという感じに首を傾げる守護に

「いつもと雰囲気が違うから、少し面白いんだよ」

「雰囲気…………そんなに違うか?」

「全然違うよ!! いつもはもっと感情が出てないよっ!!」

『でも、今のあなたはさっきの私よりも楽しそうですわ』

 守護の肩に手を乗せて笑う亮人、口を押さえながら笑う礼火に胸の前で腕組みをするマリーは微笑んでいた。
 そんな光景に更に首を傾げる守護。

「僕が…………楽しそう?」

 三人に伝えられる客観的な自分に戸惑う。

 楽しい…………のか。

 感じもしなかった感覚。
 何が楽しいのか、何を楽しいと思ったのか。
 守護は自分の考えと行動が解離しているに気づかずにいる。
 目の前にいる三人に指摘され、初めて守護は自分の感情が理解できた。

「僕…………今、楽しいんだ」

 初めて声に感情が宿る。
 抑揚がなかった言葉に初めて抑揚が付き、発する言葉にも人間らしさが込められる。

「もっと、楽しみたい」

 前髪に隠された表情は三人には見えない。だが、三人は彼の口元を見ればわかった。

 笑ってる。

 初めて見せた守護の感情は三人を微笑ませ、歩みを進ませる。

「それじゃっ、美容室に行くよ」

「『おおーっ!!』」

「…………ぉぉー」

 小声で参加する守護は少し恥ずかしそうに口にする。
 ただ、そんな彼の一挙手一投足が三人にとっては楽しい時間を過ごさせる材料であった。
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