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容姿端麗性格最低な転校生と無口な転校生
容姿端麗性格最低な転校生と無口な転校生ⅩⅢ
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夜の成田空港。
そこに一人の男が降り立った。
全身を漆黒のトレンチコートに包み、硬い足音が静寂の空港内を響き渡る。左目に十字架が書かれた眼帯が特徴的な彼は後ろへと振り向く。
そこには長髪の中年男性がいる。執事のようなタキシードを着用し、身のこなしも一切の無駄がない動き。足音を立てず、トレンチコートの彼の後ろを付いていく。
『この国にヴァンパイアがいるんだな』
格好とは打って変わり、口調に紳士らしさはない。荒々しい口調と睨みつけるように周囲へと向ける視線には殺気が籠る。
彼らが歩く度に周囲には重苦しい空気が漂い、すれ違う人間は息苦しさに足を止める。時には吐き気や悪寒を催し、その場で倒れこむ者もいた。
「そう殺気を出すな」
『たかが人間が、我に指図をするか』
「指図じゃない、頼んでいるだけだ」
視線がぶつかり合うも、無言で執事は殺気を収める。
「ありがとう」
一言呟き、二人は歩みを進める。
懐から取り出す携帯電話。
その画面に映し出される笑顔の女性と子供。
二人の横に映っている彼も満面の笑みを浮かべていた。
「必ず、取り返すからな……」
彼の右目に移る光は朧げに揺らぐ。
『……………………』
後ろから見える彼の姿に悲壮が一瞬だけ見えるが、執事は何も口にしない。
『我々の悲願の為に働け』
「わかっている」
画面を切り替え、部下へと電話を繋げる。
一瞬のコールで通話は繋がる。
「我らが主人、お迎えに上がります」
「いや、迎えはいい。街を少しだけ見てみたい」
「かしこまりました。我らに地獄の栄光あれ」
その後、彼と執事は夜の東京を闊歩する。
「一人で来る予定じゃなかったのだがな」
強く握り締められる拳からは赤黒い血が地面へと滴っていく。
前へと確実に一歩一歩踏まれる歩みは、周囲の人間を自然と退けていく。
そして、そんな彼の後ろに付いていた執事の口元は不適に上がっていたことを彼は知らない。
そこに一人の男が降り立った。
全身を漆黒のトレンチコートに包み、硬い足音が静寂の空港内を響き渡る。左目に十字架が書かれた眼帯が特徴的な彼は後ろへと振り向く。
そこには長髪の中年男性がいる。執事のようなタキシードを着用し、身のこなしも一切の無駄がない動き。足音を立てず、トレンチコートの彼の後ろを付いていく。
『この国にヴァンパイアがいるんだな』
格好とは打って変わり、口調に紳士らしさはない。荒々しい口調と睨みつけるように周囲へと向ける視線には殺気が籠る。
彼らが歩く度に周囲には重苦しい空気が漂い、すれ違う人間は息苦しさに足を止める。時には吐き気や悪寒を催し、その場で倒れこむ者もいた。
「そう殺気を出すな」
『たかが人間が、我に指図をするか』
「指図じゃない、頼んでいるだけだ」
視線がぶつかり合うも、無言で執事は殺気を収める。
「ありがとう」
一言呟き、二人は歩みを進める。
懐から取り出す携帯電話。
その画面に映し出される笑顔の女性と子供。
二人の横に映っている彼も満面の笑みを浮かべていた。
「必ず、取り返すからな……」
彼の右目に移る光は朧げに揺らぐ。
『……………………』
後ろから見える彼の姿に悲壮が一瞬だけ見えるが、執事は何も口にしない。
『我々の悲願の為に働け』
「わかっている」
画面を切り替え、部下へと電話を繋げる。
一瞬のコールで通話は繋がる。
「我らが主人、お迎えに上がります」
「いや、迎えはいい。街を少しだけ見てみたい」
「かしこまりました。我らに地獄の栄光あれ」
その後、彼と執事は夜の東京を闊歩する。
「一人で来る予定じゃなかったのだがな」
強く握り締められる拳からは赤黒い血が地面へと滴っていく。
前へと確実に一歩一歩踏まれる歩みは、周囲の人間を自然と退けていく。
そして、そんな彼の後ろに付いていた執事の口元は不適に上がっていたことを彼は知らない。
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