73 / 110
容姿端麗性格最低な転校生と無口な転校生
容姿端麗性格最低な転校生と無口な転校生Ⅴ
しおりを挟む
あれから亮人の自宅へと全員で帰宅した。
道中は全員が無言で、空気は肌を刺すように冷たい。
ただ、そんな中で暖かなものもあった。
先頭で歩く二人の男女は手を繋ぎながら歩みを進める。迷子にならないように姉が弟の手を引くように、彼女が先頭に立って先へと進む。
やっと……私も対等になれたよ。
手を繋ぐもう片方の手は彼女の胸の前で呼吸を整えるように添えられる。
もう、私も無力じゃない。それだけで嬉しかった。
亮人の手から伝わる温もり、すぐ側にある幸せを手放したくない。その一心で私は決めたんだから。
歩き進める礼火の足元から一匹のコウモリが羽ばたき、亮人達の前を横切り、闇夜へと帰って行く。しかし、コウモリは本体の元へと帰ることは無い。
「………………あれは脅威だ」
抑揚のない声が亮人達を見つめていた。
その声の主はコウモリが飛んでくるのを認識すれば、みえていないように振る舞う。しかし、認識をした時点でコウモリは彼、最城守護さいじょうまもるを通り過ぎたと同時に、彼の影へと入り込んだのだ。
あなたが私を見張っていたのは前々から知っていたのですよ……。
影となったコウモリは最城を睨みつけるように視線を飛ばす。
お父様達の仇……確実に取らせてもらいますわよ……。
憎悪が含有するどす黒い気持ちは最城の影を静かに揺らめかせる。
影に入り込んだマリーには気付かず、最城は亮人達とは真逆に歩を進める。
ポケットに入っている携帯を取り出し、一つだけ登録されている番号へと掛ける。
数秒の間が空き、通話に出た相手へと状況報告をするだけ。
「ヴァンパイアと同格の妖魔の主人がいます」
「ならば、それは抹殺対象だ。危険な因子は速やかに根絶やしにしろ……必ずだ。我らの悲願の邪魔をするものは全て排除せよ」
ブツッという音ともに通話は切れる。
「僕の願いって……なんだったんだろう」
彼の目尻からは一粒の涙が頬を伝う。
なんの感情なのかは本人ですら理解はしていない。ただ、彼が感じる心の何かが彼の瞳から感情を溢れ出させる。
…………こいつも訳ありなのかしら。
さっきまでの殺意は消え、マリーは真上に立っている最城へと訝しげに視線を向けるも、ただ利用するだけの存在だと再認識したのだった。
道中は全員が無言で、空気は肌を刺すように冷たい。
ただ、そんな中で暖かなものもあった。
先頭で歩く二人の男女は手を繋ぎながら歩みを進める。迷子にならないように姉が弟の手を引くように、彼女が先頭に立って先へと進む。
やっと……私も対等になれたよ。
手を繋ぐもう片方の手は彼女の胸の前で呼吸を整えるように添えられる。
もう、私も無力じゃない。それだけで嬉しかった。
亮人の手から伝わる温もり、すぐ側にある幸せを手放したくない。その一心で私は決めたんだから。
歩き進める礼火の足元から一匹のコウモリが羽ばたき、亮人達の前を横切り、闇夜へと帰って行く。しかし、コウモリは本体の元へと帰ることは無い。
「………………あれは脅威だ」
抑揚のない声が亮人達を見つめていた。
その声の主はコウモリが飛んでくるのを認識すれば、みえていないように振る舞う。しかし、認識をした時点でコウモリは彼、最城守護さいじょうまもるを通り過ぎたと同時に、彼の影へと入り込んだのだ。
あなたが私を見張っていたのは前々から知っていたのですよ……。
影となったコウモリは最城を睨みつけるように視線を飛ばす。
お父様達の仇……確実に取らせてもらいますわよ……。
憎悪が含有するどす黒い気持ちは最城の影を静かに揺らめかせる。
影に入り込んだマリーには気付かず、最城は亮人達とは真逆に歩を進める。
ポケットに入っている携帯を取り出し、一つだけ登録されている番号へと掛ける。
数秒の間が空き、通話に出た相手へと状況報告をするだけ。
「ヴァンパイアと同格の妖魔の主人がいます」
「ならば、それは抹殺対象だ。危険な因子は速やかに根絶やしにしろ……必ずだ。我らの悲願の邪魔をするものは全て排除せよ」
ブツッという音ともに通話は切れる。
「僕の願いって……なんだったんだろう」
彼の目尻からは一粒の涙が頬を伝う。
なんの感情なのかは本人ですら理解はしていない。ただ、彼が感じる心の何かが彼の瞳から感情を溢れ出させる。
…………こいつも訳ありなのかしら。
さっきまでの殺意は消え、マリーは真上に立っている最城へと訝しげに視線を向けるも、ただ利用するだけの存在だと再認識したのだった。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる