妖魔のCHILDREN〜孤独な少年は人外少女たちの子作りの為に言い寄られながら彼女らを守る〜

将星出流

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容姿端麗性格最低な転校生と無口な転校生

容姿端麗性格最低な転校生と無口な転校生Ⅳ

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 二人の姿を眺めながら、溜息を吐く金髪の少女は自分の影を広げる。

『全く……世話が焼ける人間たちですわね……先が思いやられますわ。貴方達ももっと強くなりなさい? 私が助けていなかったら、今頃はあの世に逝っていたんですからね?』

「どういうことだよ……状況についていけないわ」

 地面から現れた麗夜の目の前には腕を組みながら亮人たちを見上げるマリーが立っていた。ただ、この前のマリーとは違い、殺気は一切ない。

『全部、あの子のお願いだからやってあげてるのよ。礼火があんたたちを助けたいって、私に懇願したから、助けてあげてる事……理解しなさい』

 亮人たちを見上げる紅い瞳はどこか儚げに麗夜には見えた。

『なんで、ここで礼火の名前が出るのよ……あんた、何かしたんじゃないわよねっ!!』

『本当に何もしてないわよ……ほら、二人を見てみなさい。あの二人を見て、私が何かしたように見えるのかしら?』

 氷華が見つめる先にいる礼火は屈み込みながら、亮人をギュッと抱きしめる。それはまるで姉弟のように、家族のように、そして大切な恋人を包み込むように優しく見えた。
 亮人の瞳から消えていた光は戻り、礼火の胸の中で嗚咽が静寂の森に響き渡る。

『あれを見ても、私が何かしたって思うのかしら?』

 冷やかなマリーの視線は氷華を突き刺すように向けられる。

『…………………………そうね、ありがとう』

『どういたしまして』

 満面の笑みを浮かべるマリーにそっぽを向ける氷華だが、氷木の上の二人へと再び視線を向ける。
 そこにいる二人の姿は月に照らされ、氷華の視界には幻想的に映り、目を逸らす。

 本当は……私もあそこに居たいのにな。

 目尻に溜まる雫を隠すように誰も居ない方向へと顔を向け、手でそれを拭う。
 心から込み上げてくる悲しげで暗い気持ちは氷華の胸を締め付ける。

『本当に世話がやけるんですから……まったく、ここだけでどれだけの感情があるんですの』

 両手を振りながら、呆れた素振りを見せるマリーは一瞬にして消える。

 あとはゆっくり話しなさい……礼火。

 礼火の影から囁かれた言葉はその場から消える。

「ありがと……マリー」

 目の前で泣き噦じゃくる亮人の頭を撫でながら、胸を撫で下ろす礼火は小さく言葉にした。

「いつだって、どこでだって、私が側にいるから。ずっと、側にいるから安心してね」

「ごめん……ごめん……弱くてごめん……みんなのこと、守りたいのに弱くてごめん」

「いいんだよ。弱くたっていいんだよ、亮人。弱いって思ってるなら、それはこれから強くなれるって事だから。大丈夫……それに、亮人は弱くなんかないから。だから大丈夫なんだよ」

 礼火の言葉が亮人の心を解して行く。暗く、黒い紐に絡まれていた小さな光は徐々に元の輝きを取り戻して行く。
 亮人が冷静になっていくに連れて、氷木はその存在感を縮めていく。天高く聳そびえ立とうとしていたそれは亮人の中へと消えていった。
 再び静寂を取り戻した森は元の姿を取り戻す。

「まったく……末恐ろしいよ、亮人の奴は」

『亮人さんの潜在能力が高過ぎるわね……麗夜以上なんじゃないかしら』

「そうかもな…悔しいけど」

『珍しく認めるのね』

「事実は受け止めるしかないだろうが……くそっ」

 麗夜ももっと強くなれるわよ、ちゃんと前を向いてれば、ね。
 体に生傷をつけながらも二人は地上へと降りてくる二人へと視線を向けながら口にする。

『ねぇ、お姉ちゃん……』

『何よ、シャーリー……』

『私たち、もっと強くならなくちゃ……』

『そんな事っ……言われなくてもわかってるわよ』

 強く握り込まれた氷華の手へとそっと触れるシャーリーの掌は優しく氷華の手を包み込む。

 震えるその手を守るように……。
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