72 / 110
容姿端麗性格最低な転校生と無口な転校生
容姿端麗性格最低な転校生と無口な転校生Ⅳ
しおりを挟む
二人の姿を眺めながら、溜息を吐く金髪の少女は自分の影を広げる。
『全く……世話が焼ける人間たちですわね……先が思いやられますわ。貴方達ももっと強くなりなさい? 私が助けていなかったら、今頃はあの世に逝っていたんですからね?』
「どういうことだよ……状況についていけないわ」
地面から現れた麗夜の目の前には腕を組みながら亮人たちを見上げるマリーが立っていた。ただ、この前のマリーとは違い、殺気は一切ない。
『全部、あの子のお願いだからやってあげてるのよ。礼火があんたたちを助けたいって、私に懇願したから、助けてあげてる事……理解しなさい』
亮人たちを見上げる紅い瞳はどこか儚げに麗夜には見えた。
『なんで、ここで礼火の名前が出るのよ……あんた、何かしたんじゃないわよねっ!!』
『本当に何もしてないわよ……ほら、二人を見てみなさい。あの二人を見て、私が何かしたように見えるのかしら?』
氷華が見つめる先にいる礼火は屈み込みながら、亮人をギュッと抱きしめる。それはまるで姉弟のように、家族のように、そして大切な恋人を包み込むように優しく見えた。
亮人の瞳から消えていた光は戻り、礼火の胸の中で嗚咽が静寂の森に響き渡る。
『あれを見ても、私が何かしたって思うのかしら?』
冷やかなマリーの視線は氷華を突き刺すように向けられる。
『…………………………そうね、ありがとう』
『どういたしまして』
満面の笑みを浮かべるマリーにそっぽを向ける氷華だが、氷木の上の二人へと再び視線を向ける。
そこにいる二人の姿は月に照らされ、氷華の視界には幻想的に映り、目を逸らす。
本当は……私もあそこに居たいのにな。
目尻に溜まる雫を隠すように誰も居ない方向へと顔を向け、手でそれを拭う。
心から込み上げてくる悲しげで暗い気持ちは氷華の胸を締め付ける。
『本当に世話がやけるんですから……まったく、ここだけでどれだけの感情があるんですの』
両手を振りながら、呆れた素振りを見せるマリーは一瞬にして消える。
あとはゆっくり話しなさい……礼火。
礼火の影から囁かれた言葉はその場から消える。
「ありがと……マリー」
目の前で泣き噦じゃくる亮人の頭を撫でながら、胸を撫で下ろす礼火は小さく言葉にした。
「いつだって、どこでだって、私が側にいるから。ずっと、側にいるから安心してね」
「ごめん……ごめん……弱くてごめん……みんなのこと、守りたいのに弱くてごめん」
「いいんだよ。弱くたっていいんだよ、亮人。弱いって思ってるなら、それはこれから強くなれるって事だから。大丈夫……それに、亮人は弱くなんかないから。だから大丈夫なんだよ」
礼火の言葉が亮人の心を解して行く。暗く、黒い紐に絡まれていた小さな光は徐々に元の輝きを取り戻して行く。
亮人が冷静になっていくに連れて、氷木はその存在感を縮めていく。天高く聳そびえ立とうとしていたそれは亮人の中へと消えていった。
再び静寂を取り戻した森は元の姿を取り戻す。
「まったく……末恐ろしいよ、亮人の奴は」
『亮人さんの潜在能力が高過ぎるわね……麗夜以上なんじゃないかしら』
「そうかもな…悔しいけど」
『珍しく認めるのね』
「事実は受け止めるしかないだろうが……くそっ」
麗夜ももっと強くなれるわよ、ちゃんと前を向いてれば、ね。
体に生傷をつけながらも二人は地上へと降りてくる二人へと視線を向けながら口にする。
『ねぇ、お姉ちゃん……』
『何よ、シャーリー……』
『私たち、もっと強くならなくちゃ……』
『そんな事っ……言われなくてもわかってるわよ』
強く握り込まれた氷華の手へとそっと触れるシャーリーの掌は優しく氷華の手を包み込む。
震えるその手を守るように……。
『全く……世話が焼ける人間たちですわね……先が思いやられますわ。貴方達ももっと強くなりなさい? 私が助けていなかったら、今頃はあの世に逝っていたんですからね?』
「どういうことだよ……状況についていけないわ」
地面から現れた麗夜の目の前には腕を組みながら亮人たちを見上げるマリーが立っていた。ただ、この前のマリーとは違い、殺気は一切ない。
『全部、あの子のお願いだからやってあげてるのよ。礼火があんたたちを助けたいって、私に懇願したから、助けてあげてる事……理解しなさい』
亮人たちを見上げる紅い瞳はどこか儚げに麗夜には見えた。
『なんで、ここで礼火の名前が出るのよ……あんた、何かしたんじゃないわよねっ!!』
『本当に何もしてないわよ……ほら、二人を見てみなさい。あの二人を見て、私が何かしたように見えるのかしら?』
氷華が見つめる先にいる礼火は屈み込みながら、亮人をギュッと抱きしめる。それはまるで姉弟のように、家族のように、そして大切な恋人を包み込むように優しく見えた。
亮人の瞳から消えていた光は戻り、礼火の胸の中で嗚咽が静寂の森に響き渡る。
『あれを見ても、私が何かしたって思うのかしら?』
冷やかなマリーの視線は氷華を突き刺すように向けられる。
『…………………………そうね、ありがとう』
『どういたしまして』
満面の笑みを浮かべるマリーにそっぽを向ける氷華だが、氷木の上の二人へと再び視線を向ける。
そこにいる二人の姿は月に照らされ、氷華の視界には幻想的に映り、目を逸らす。
本当は……私もあそこに居たいのにな。
目尻に溜まる雫を隠すように誰も居ない方向へと顔を向け、手でそれを拭う。
心から込み上げてくる悲しげで暗い気持ちは氷華の胸を締め付ける。
『本当に世話がやけるんですから……まったく、ここだけでどれだけの感情があるんですの』
両手を振りながら、呆れた素振りを見せるマリーは一瞬にして消える。
あとはゆっくり話しなさい……礼火。
礼火の影から囁かれた言葉はその場から消える。
「ありがと……マリー」
目の前で泣き噦じゃくる亮人の頭を撫でながら、胸を撫で下ろす礼火は小さく言葉にした。
「いつだって、どこでだって、私が側にいるから。ずっと、側にいるから安心してね」
「ごめん……ごめん……弱くてごめん……みんなのこと、守りたいのに弱くてごめん」
「いいんだよ。弱くたっていいんだよ、亮人。弱いって思ってるなら、それはこれから強くなれるって事だから。大丈夫……それに、亮人は弱くなんかないから。だから大丈夫なんだよ」
礼火の言葉が亮人の心を解して行く。暗く、黒い紐に絡まれていた小さな光は徐々に元の輝きを取り戻して行く。
亮人が冷静になっていくに連れて、氷木はその存在感を縮めていく。天高く聳そびえ立とうとしていたそれは亮人の中へと消えていった。
再び静寂を取り戻した森は元の姿を取り戻す。
「まったく……末恐ろしいよ、亮人の奴は」
『亮人さんの潜在能力が高過ぎるわね……麗夜以上なんじゃないかしら』
「そうかもな…悔しいけど」
『珍しく認めるのね』
「事実は受け止めるしかないだろうが……くそっ」
麗夜ももっと強くなれるわよ、ちゃんと前を向いてれば、ね。
体に生傷をつけながらも二人は地上へと降りてくる二人へと視線を向けながら口にする。
『ねぇ、お姉ちゃん……』
『何よ、シャーリー……』
『私たち、もっと強くならなくちゃ……』
『そんな事っ……言われなくてもわかってるわよ』
強く握り込まれた氷華の手へとそっと触れるシャーリーの掌は優しく氷華の手を包み込む。
震えるその手を守るように……。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる