67 / 110
Blood X`mas
Blood X`mas ⅩⅡ
しおりを挟む
少女の前に立ち塞がる二人。
『どちら様ですか?』
「俺たちはあいつらの助っ人だ」
『『今回は一石二鳥と言うべきでしょうか……想像以上の誤算で私は凄く嬉しいです』』
首を傾げながら平坦な声と作り笑いを浮かべる二人のヴァンパイア。小柄な姿に煌びやかな金髪とキメの細かい肌。可愛らしい容姿とは相反し、悍おぞましさに包まれた少女に亮人とシャーリーの体は震える。ただ、彼女の姿を目の前に麗夜たちは動じない。力強く仁王立ちしている麗夜は目の前の少女へ笑みを浮かべると一気に接敵する。
「あいつと同じだと思うなよ?」
握られる拳は少女を顔面から吹き飛ばす。地面を滑空するように飛ぶ様は弾丸のようだ。粉砕してく暮石の次には木々を薙ぎ倒すほどに。そして、もう一体は頭を掴まれると一瞬にして消し炭となる。一瞬の攻防に亮人達は呆気に取られた。さっきまで苦戦を強いられていた敵を圧倒的に捩じ伏せる麗夜の姿はこの前戦った時よりも遥かに強く、猛々しくなっていた。だが、吹き飛ばされた少女は顔の一部が焦がした状態で嘲笑を浮かべていた。不気味な程に少女は声を上げずに笑みを浮かべ続ける。
一歩一歩と歩みを進める少女は徐々に速度をあげ、目の前に闇の壁を作り上げると中へと駆け込んでいく。そして、そこから出てきたのは二人になった少女だった。焦げた顔も元どおりの人形のようなキメの細かなものへと戻り、一体は麗夜目掛けて走り抜け、もう一体は闇の中へと潜り込めば二人に増え、一気に麗夜へと三人の少女が肉弾戦が始まる。
麗夜が放つ拳を受ける少女の手は漆黒に染め上げられ、消し炭になることはない。三人同時に攻める少女はまるで思考が繋がっているかのように連撃を繰り出していく。
『麗夜だけに戦わせるわけないでしょ?』
燈は九本の尾に小さな火を灯すと小声で呪詛を口ずさむ。
『天高く昇る太陽よ、神のごとき力を持つ貴君の魂、私の魂に焼きつけなさい……』
次の瞬間には尾に灯された炎は色を変えていく。赤から青に、そして白と色を変化させる。彼女を中心に熱風が吹き荒れ、それは遠くにいる亮人まで伝わるほどの熱量。そして、以前とは違う点が一つ。
そこには一人の女性が立っていた。
長い黒髪を熱風で靡かせながら佇む彼女は尾を一つに束ね、先端には白い炎をゴウッと勢いよく吹かせる。更に彼女の背後には仏の光背を彷彿させるように赤々とした炎が揺らめく。さっきまでの狐の容姿から変化した彼女の姿は大人びた雰囲気と余裕を感じさせる。麗夜や亮人と話している時の姿とはまた違った雰囲気がそこにはあった。
『私と同じことしてる……』
『厳密には同じことじゃないわ……似てはいるけどね』
氷華へと笑みを浮かべる彼女は前へと振り向く。
『人型になって戦うなんて聞いたことがありませんね』
「余裕かましてるんじゃねぇよ!!」
くすんでいた少女の瞳は新しいおもちゃをもらった子供のように輝かせながら、燈へと向けられる。ガラ空きの顔面へと放たれる拳は他の少女に止められ、木々の方へと投げ飛ばされるがうまく木へと着地する麗夜は跳ね返るように再び少女達へと飛び掛る。
「ったく、どれだけ強いんだよ!!」
『さっきは不意を突かれたとは言え、驚きましたよ? 私が消されるなんて初めてでしたから』
「それはどうもっ!!」
連撃の速度を上げながら一人の少女を肉薄するも、麗夜を掴んだもう一人の少女の手から悍おぞましい闇が拡がっていく。闇に浸かった腕は地面に広がっている闇へと引力があるかのように吸い込まれかける。
「ガハッ!!」
『『『私の能力を把握しきれていないのに、よく肉弾戦に持ち込もうとしましたね』』』
横っ腹を蹴り飛ばされると木々を薙ぎ倒し、墓地のフェンスへと打ち付けられる。その衝撃でフェンスは倒され、甲高い金属音が鳴り響く。それは街はずれの墓地からでも街へと響くほどの豪音。
『『『流石にやり過ぎましたね……次はもう少し優しくしますね』』』
横一列に並ぶ彼女達はお互いに顔を見合わせながら笑う。
『まだまだでしたね』
『確かに強いですが、私たちにはまだ及びませんね』
『まだ余力を残しておいても良さそうですね』
クスクスと嘲笑いながら談笑する彼女達は一斉に視線を一点へと向ける。
『『『あの方とも戦ってみたいですね』』』
ギロリと向けられる殺意が込められた視線を一点に浴びる燈はゆっくりと歩き始める。
カツカツと歩くたびに足音だけが墓地へと響き渡る。
『『『あなたの相方は伸びきっているようですけど……貴方は私のことを楽しませくれるのですか?』』』
『それはやってみてからのお楽しみだと思うけど?』
『『『ならっ!!』』』
白炎に全身を包ませ、地面や木々を溶かしながら三人へと近づくと一人の少女は翼を生やし、我先にと燈の元へと滑空する。闇を纏わせた腕で燈の肩へと触れた瞬間、少女の腕は消滅した。ちりぢりに霧散する少女の腕は闇の中へと吸収され、新たに欠けた腕が生えてくるように再生する。そして、少女に変化が生まれた。
『私にとって天敵みたいですね、あなたは……』
腕を抱えながら嘲笑から真顔となった少女の声音は一瞬だけ低く、二人の元へと翔び去る。
『っ!!』
「何を怖気付いてるんだ!? 炎が怖いんだろ!!」
すかさず轟々と爆炎を滾たぎらせながら飛び掛かる麗夜から三人は距離を取る。
「やっぱりな、お前の弱点は逸話通りに炎か」
ニヤリと口角を吊り上げ笑みを浮かべる麗夜は伸びをするようにストレッチをする。
「これでも俺たちは世界を回ってたんだ、ある程度の妖魔のことは知ってる。それもお前みたいな上位の妖魔のことは特に耳に入るぜ? ただ、逸話だからな……どれが本当のことなのかは確証はなかったが……これで決まったな」
さっきまで不敵な笑みを浮かべ、余裕綽綽よゆうしゃくしゃくとしていた姿はそこにはない。そこにあるのは一線を引くように睨みつける少女だけだった。
「他にもあるよな? 心臓を突いて棺ひつぎに閉じ込めたり、聖水だったり、にんにくだったり。まぁ、最後のは嘘だろうけどな」
首の骨を鳴らしながらストレッチをする麗夜の横に燈は寄り添うと、より一層強力な炎を麗夜に纏わせる。燃え盛っている炎は勢いを殺し、揺らぐことなく麗夜の全身に燈る。風に吹かれても揺らがず、二人を覆うほどの炎は遠くにいる亮人たちに火傷を負わせかねない程の熱風を浴びせる。
「悪いな、ちょっとだけ火力不足だ」
『そうみたいね……これで互角でしょ?』
「あぁ、これでいける」
顔を合わせる二人は再び、目の前の少女たちへと視線を向ける。
「もう準備はできたぞ……そっちの準備はいいか?」
『ここで倒すつもりでいくわよ……』
『『『ここまで追いつめられるとは思わなかったです……こっちもお遊びはここまでにさせてもらいますね……』』』
そこからは嵐が吹き荒れる。
空中を駆ける少女は麗夜と殴り合う。それもさっきのように消されないよう眼以外を分厚い闇で覆い、殴り合うたびに衝撃波が遠くにいる亮人たちを襲う。
『あの二人……前より強くなってるね……』
シャーリーは体亮人を守るように包み込み、彼らの戦況を見つめた。
「俺が……強くならないと……」
麗夜が少女たちを追い込む戦況に心が躍る。そして同時に亮人は唇を血が出る程に噛み締める。
目の前で戦っている彼の姿。
亮人がすべきことを彼はやってのけている。
守りたいものを守る……。
亮人が心に抱いている気持ちを体現する様に麗夜は全力で戦う。それも、さっきの一方的に追い詰められた亮人とは違う、実力を持って優勢に持ち込むだけの力がある。今の自分との差を見せつけられる様な気持ちと助かったという相反する気持ちが亮人の心の底で煮え滾る。それはまるで溶岩の様にドロドロと、触れる物を焼き尽くす様な凄まじいものだった。そして、その熱は亮人の心を、体から力を奪っていき、視界は薄暗く、色を失っていく。
なら……オレが助けてやろうか……。
そんな声が亮人の耳に響いていく。
低い声音の声は何処からか聞こえ、亮人の心に安堵感を感じさせる。ただ、心は重いままに。
助けてほしい……。
自然と虚空へと手が伸びる。見えない誰かの手に縋るように、弱々しく亮人の手は空中を彷徨う。
『亮人…っ! 大丈夫!?』
その手を優しく包む氷華の手から伝わる冷気が遠のいていた意識を呼び戻す。
「……大丈夫だよ、もう少ししたら体も動くようになるから……麗夜くんたちの加勢にいくよ……」
『わかったわ……でも、無理はしないで』
『シャーリーは何時でもいけるからっ!! カバーするよっ!!』
ギュッと包み込むシャーリーから伝わる感触、氷華の異常なまでに冷たい手が亮人の視界に光を取り戻す。
三人の視線の先には麗夜に加勢するように燈が二人の少女を相手にする。少女らの手には漆黒のレイピアが握られ、それは燈の熱量でも搔き消すことはできない。
『それが本気?』
『『『本気ではやっていますよ? ただ、全力ではないですがっ!!』』』
蹴りを入れられる燈は砂埃をたてながら後方へと押し込まれる。ただ、少女の足も消し炭にしながら。
「弱点突かれてしんどいだろうっ!!」
『『『本当に厄介ですね……あなた方は』』』
苦虫を噛んだような少女らの顔からは汗が滴れる。それとは真逆に好戦的に笑みを浮かべながら、足が消えた相手の懐へと殴りこむ麗夜は数発、一人の少女の腹部へ拳を叩き込む。更に畳みかけるように空中へと投げ飛ばし、弾丸のような白炎が少女を穿うがつ。無数に穴が開けられ、体を守る闇は砕け散るようにパラパラと地面へと落ち、少女の体は追撃する麗夜に蹴り落とされる。地面に広がる闇の中へと勢いを殺さずに逃げ込もうとする少女だが、視界は赤く、青く、白く染められた。
『燃えなさい……』
絶えず繰り出される燈の白炎が、闇へと逃げようとする少女から断末魔を上げさせ消し炭にする。少女らは無数の傷から滴る血を舐める翼を羽ばたかせ、無表情に見下すように麗夜たちを見つめる。
『『さっきの彼らとは連携の質が違いますね』』
「そりゃ、何年も一緒にいるからな。あいつらと一緒にされても困る」
『この子に私が合わせて守らないといけないから大変なの』
「まだ子供扱いかよ」
『ふふっ、まだまだ子供よ』
麗夜の頭を撫でる燈の様子を見つめる少女らの瞳は揺らぐ。
『『懐かしいですね……』』
その瞬間の少女は殺し合いをするような危険な存在ではなくなっていた。
少女の表情の変化を亮人は見逃さなかった。
この前の麗夜君みたいだ……。
あの時のように何処か心の隅に引っかかる。
少女らが向ける眼差しの傍らに小さな雫が浮かびあがる。
『『なんで……こんな物が流れるんでしょうか……もう、とっくの昔に枯れたと思っていましたのに……』』
少女らは目尻を拭うと麗夜たちへと殺意を込めた視線を向けた。
ただ、亮人にはその姿が幼気な迷子の少女にしか見えないでいた。
『『こんな気持ちはとっくに捨てたのですが……どうも、貴方方を見ていると昔を思い出してしまいますね……』』
ドッと彼女らから垂れ流されるドロッとした闇は燃え盛る炎を包む。
『『久方ぶりに心の底から苛立ちを感じます……もう、取り返せないものを思い出すのは心に悪いですね……』』
闇の範囲は墓地一帯を包み込むように広がりを見せ、生えていた木々に墓石を飲み込んでゆく。沼に嵌はまっていくように消えていくそれらが消えると、残ったのは亮人たち五人のみだった。まるで地平線のように何一つない場所にあるのは闇の一点のみ。今にも亮人たちを飲み込むのではないかと思わせる闇は自ら波紋を広げていく。
空を浮遊する少女らは翼を収納すると闇の上へと波紋を立てずに静かに降り立ち、亮人らの前に立ち塞がる少女らの瞳には五人の姿が滲んで見えていた。
「ここからが本番みたいだな……」
『やるわよ、麗夜……』
麗夜たちは更に火力を上げ、構える。
「二人とも……俺たちも行くよ」
『えぇ、倒して家に帰るわよ』
『頑張るよ、お兄ちゃん』
亮人は軋む体をさっきよりスムーズに動かし、全身から冷気を漂わせる。全身に流れる血液の脈打つ音は周りに聞こえるのではないかと思うほどに強く、筋肉を膨張させ、視野が広まる。
白装束を身に纏う氷華は周囲に無数の結晶を浮遊させると氷翼を力強く広げ、氷刀を二本作り出し亮人へ差し出す。触れるだけで切れてしまいそうな氷刀を片手に彼女は歩みを進める。氷華に合わせるようにシャーリーは四肢に力を込めると闇を抉り、唸り声を切っ掛けに戦闘が再び始まった。
地面の中へと消えた少女は再び浮かび上がり、その人数は三人に増え、傷もすべて消えている。
彼女らは笑みを浮かべ、闇の上を走り抜ける。
氷華と燈が放つ結晶と白炎を寸でのところで避け、接敵する少女らはレイピアを握り、一気に間合いを詰めてくる。二人との距離が近づくにつれ、攻防はより一層に激しくなる。飛び交う攻撃の中、亮人らも距離を縮めていくが、突如として炎を纏う麗夜の足元を漆黒の腕が掴み取り、麗夜の体は宙を舞う。地面から伸びる腕は棘へと形を変え、麗夜を串刺しにする。
「させないよ……」
氷刀を一振りし、闇を一閃する亮人の視線は目の前の少女らに向けられる。
ほんの一瞬見せた少女の顔は亮人の脳裏に強く焼き付く。
麗夜君の時みたいに……何かあるんじゃないのかな……。
そんな一抹の不安と、家族を守りたいという気持ちが亮人の傷ついた体を突き動かす。
「みんな……その子は殺したらダメだからね」
『もう……またお人好しになったの?』
『頑張るだけ頑張ってみるっ!!』
「またアンタは……出来るかわからないが、やってやるよ」
『私たちみたいに助けてあげるのかしら?』
各人は死に物狂いの戦闘をしているというのに亮人の一言に笑みを浮かべる。
亮人らしい決断。
この死ぬかもしれない戦闘の中でも相手のことを考えている亮人の姿は、四人には輝いて見える。亮人の考えを知っているからこそ、四人は笑みを浮かべた。
『『『『何を笑っているんですかっ!!』』』』
地面の闇はドーム状に形を変え、棘を生やしながら五人を包み込む。徐々に縮まるドームは亮人たちを串刺しにするはずが、それは氷華と亮人によって一閃され、燃え盛る炎が中心に周囲を照らしだす。
ドームの中心に位置する場所に五人は背中合わせに佇む。初めての共闘とは思えないほどに信頼しきっている彼らの動きと表情は楽しげだ。
「こんな気持ちで戦うことがあるとは思わなかったな」
『貴方たちがいると安心するわね』
『あんたたち、油断したらダメよ?』
『シャーリーたちは手一杯なんだからね?』
「俺たちも麗夜君たちと戦えて安心だよ」
五人は再び少女たちを迎え撃つ。
空へ飛ぶ一人の少女は闇の槍を降らせる。燈の炎でも掻き消すことができない槍は地面へと突き刺されば、バラを咲かせる。無数に咲くバラはツタを闇の上へと這わせ、鬱蒼うっそうとした壁を作り出した。氷刀で切り裂くもすぐに再生するツタは炎でも消すことができない。
「ちょっと厄介だな」
『さっきのお返しです……』
「っ!!」
ツタから生える花弁からレイピアが飛び出し、麗夜の腕を突き刺す。
間一髪のところで避けるも、レイピアは次々に麗夜を追い詰める。徐々に傷が増えていく麗夜の四肢からは血が地面へと滴る。
『貴方の血は不味いですね……』
「不味くて結構だっ!!」
『こっちに来なさいっ!!』
差し出される氷華の手を引けば、麗夜の全身は氷の球体に包まれ、レイピアの鋭い突きは防がれる。麗夜を追いかけるように向けられていたツタは、獲物を探すように地面を這っていく。それは大量の蛇が地面を這い群がっているかのように。
「今度はこっちに来るよ!!」
『分かってるよ、お兄ちゃんっ!!』
凄まじい速度で近寄ってくるツタは、バラを咲かせると同時に細長い針を無数に放つ。
『これくらいなら消せるわっ!!』
束ねた尾から飛ばされる巨大な白炎は、幾重にも放たれる針を霧散させる。
『『『針だけだと思わないことです……』』』
巨大な白炎へ向かう針は徐々に形を変え、少女になると白炎の手前で闇を広げ、まるで闇が生きているかのように白炎を飲み込む。そして、更に飛ばされる針は少女を追い越し、燈へと襲いかかる。
避けようとする燈の体はあらぬ方向へと吹き飛ばされる。地面から突如として現れた少女の蹴りをまともに受け、闇の上を水を切るかのように飛んでいく。
『……厄介な能力ね』
『『『まったく、それは私も同感しますよ』』』
『っ!!』
地面へ突っ伏している燈の首へ伸ばされる少女の手に力が込められる。
「させるかっ!!」
『させないよっ!!』
シャーリーの速度を上乗せさせた氷刀の一振りは少女の手首は見事に切断される。
闇の上を肉眼で捉えられない程の速度で駆け抜けるシャーリーと亮人は次の瞬間、少女の首を跳ね飛ばし、少女の体は闇の中へと吸収される。
『『私のことは殺さないと言っていませんでしたか?』』
「君の本体が何となく分かって来たからね……大丈夫かなって」
『『……そうですか』』
殺し合いの中で朗らかに笑う亮人の姿に、不思議そうに見つめる少女は一気に亮人へと距離を縮める。レイピアを片手に亮人としのぎを削る。ギリギリと甲高い金属音が二人の鼓膜を震わせる。
「ねぇ……さっきの涙は何の涙だったのかな?」
『『そんなこと……あなたに関係ないことです……』』
「気になっちゃったんだよ……意味もなく泣かないでしょ?」
『『うるさいっ!! あなたには関係ありませんっ!!』』
『させないってばっ!!』
新たに亮人の後ろに現れた少女はレイピアを突き立てるも、シャーリーに吹き飛ばされていく。シャーリーがつき立てる爪は少女の体を抉り、血を噴き出させる。だが、闇へと体が触れれば溶け込むように闇の中へと消えていく。
『また逃げられたっ!!』
『シャーリーっ、まだ来るわよっ!!』
地面へと消えていた少女は床から再び現れれば、ツタと共にシャーリーを追い込む。全力で引くシャーリーの行く先々に地面からツタが生え、逃げ惑う。
『『『逃げられると思わないでください……』』』
『あんたこそ、私たちに勝てると思わないでよねっ!!』
氷華の背後に浮遊する無数の結晶は氷刀へと変化し、シャーリーを囲う無数のツタを切り裂き凍らせた。さっきまでの勢いを殺し、動かないツタはその場で留まる。
『あんたの闇は燃やせなくても、凍らせて動きを止めることはできるのよ?』
空気中の水分が結晶化し、それらは二人の少女へと矛先を向ける。銃弾のように放たれる結晶は羽ばたく少女に避けられるも氷華の視線と共に向きを変え、翼を撃ち抜く。穴が空いた翼から徐々に少女の体は凍っていき、シャーリーの強靭な蹴りによって粉々に砕かれる。
『よくも燈をやりやがったな……お前ぇぇぇえええ!!』
砕け散った少女を消し炭にし、麗夜はもうもう一人へと殴り込む。血眼の麗夜は、自分の皮膚も焦がす勢いで駆け抜け、氷華たちを退けさせる。我を忘れているかのようなその姿に少女は後ろへと飛び下がり、壁を大きく作り出すが闇を掻き消すほどの熱量で麗夜の腕は少女の首を絞め、消し炭にする。そして、視線は氷華とシャーリーへと向けられ、麗夜は二人へと爆炎を滾らせながら襲い掛かった。
『どうなってるのよっ!!』
『シャーリー達は敵じゃないよっ!!』
だが、血眼の麗夜はまるで獣のように四つ這いを取り、腰付近からは九尾のように尾を生やし、唸りをあげる。体勢を低くする麗夜は次の瞬間、氷華達に白炎を放ちながら襲い掛かる。
『あっちの子……暴走している様ですが、放っておいていいんですか?』
鍔つば迫り合いから剣戟を互いに繰り出す二人は横目に麗夜たちを視界に入れる。
戸惑いを隠せない二人は麗夜と一線を引きながら攻防を繰り広げ続ける。爆炎を轟かせながら接敵する麗夜をシャーリーは四肢で蹴り飛ばし、更に周囲を囲うように氷壁が作り出される。幾重にも重なる氷壁の中からは唸り声と地響きが広がる。
『九尾っ、あんたの主人が変なんだけどっ!!』
『わかってるわよっ!! 亮人さん、麗夜を正気に戻すので時間稼ぎをお願いします!!』
腹部を抑えながら氷壁へと駆け付け、両手を触れさせると一瞬にして氷は溶かされる。そして、中で暴れまわる麗夜が燈目掛けて激突する。血眼の麗夜は唸り声と共に犬歯を燈の首筋へと立てる。首筋から流れる血は地面へと滴る。一滴、一滴と流れる血は闇へと吸収される。
『っ!! 麗夜……私は大丈夫だから、落ち着きなさい?』
一瞬、苦悶の表情を浮かべ、唸りをあげる麗夜を燈は優しく抱きかかえながらあやす。まるで泣く我が子をあやす母親のように。次第に唸り声は収まり、血眼だった瞳も光を灯していく。
燃え盛っていた炎も収まり、落ち着く麗夜の瞼は徐々に瞼を閉じられ、寝息を立てる。
『無理させたわね……ごめんなさい』
「麗夜君を安全なところに連れて行っていいよっ!!」
『それまでは私たちで何とか食い止めておくから』
『シャーリーたちにお任せっ!!』
『ありがとうございます……』
抱きかかえられた麗夜は燈の姿は遠ざかっていく。二人を追うようにツタは這って行くが、それを阻むようにツタは凍り付き、一閃される。
「そんなことはさせないよ?」
絶えず笑みを浮かべる亮人に後ろに佇む氷華とシャーリーは一気に距離を詰めにいく。浮遊する氷刀は氷華の視線に合わせながら少女を追撃し、行く先々で亮人とシャーリーが追い詰める。
『さっきより連携が取れているんじゃないですか?』
「君のおかげだよっ!!」
握った拳を少女へと叩き込むと続けざまにシャーリーが亜音速で少女を空中へと突き飛ばす。そこには無数に散りばめられた細かな結晶が鋭利に刃を携え、少女の体に傷をつけていく。
だが、そこにいる少女は翼を広げ、笑みを浮かべ始める。
「余裕そうだね」
『えぇ、あなた方三人なら対処できますから』
「なら、これはどうっ!!」
亮人は地面へと氷刀を突き刺すと一気に冷気を流し込む。凍り付かない闇は徐々に内側からパキパキと音を立てる。そして、同時に飛んでいた少女は胸を抱えながら地面へと落下する。墓地全体へと広がっていた闇は徐々に狭まり、少女の足元だけになった。
「どうもおかしいと思ったんだ、何回も君は死んでるはずなのに何度も蘇るのが……ただ、君が一つヒントをくれたから……ありがとう」
『よくわかりましたね……ヒントを渡した覚えはないですけど』
「いや、あるんだよ……あくまで推測だったから自信はなかったけどね……君の本体が闇の中にいるって」
『そうだったのっ!?』
『シャーリーは全然わからなかったよ!!』
「君は舐めてもないのに、麗夜君の血を不味いって言ったんだ。血が落ちたのは地面だったのに……だから、もしかしてって思ったんだ」
露出した地面から氷刀を引き抜き、剣先についている砂を一振りし振り払うと綺麗な風切り音が響き渡る。
『その観察力は褒めてあげます……』
口から血を流す少女に亮人は氷刀を地面へと突き刺し、能力を消してゆっくりと近づく。
『亮人、何かあったら助けるから……』
『まったくお兄ちゃんは……気を付けてよ?』
「大丈夫、あの子は悪い子じゃないと思うからさ」
状況がつかめない少女は瞳を丸くする。
何で丸腰で近寄ってくるんですか……
「どうしても気になっちゃったんだ……君が何を考えてるのか。何であの時に涙を流したのかも、すごく気になるんだ……懐かしいって、どういうことなのかな?」
優しく微笑む亮人の歩調は変わらず、ゆっくりと少女へと近づく。地面を蹴る足音も小さく、砂埃を立てずに、少女を威嚇しない様に歩き進める。
「俺は君と戦いたいわけじゃないんだ……そこにいる氷華とシャーリー、家族を守りたい。だから、戦う。もし、もう戦わないなら、一緒に話さない?」
『何を急に言っているんですか? 訳が分からないですよ』
「訳がわからなくていいよ。ただ、俺は君と話がしたいだけなんだから」
少女は怯える様に初めて後ずさりをした。
さっきまでの余裕な表情は今の少女にはない。ただ、そこにいるのは小柄なか弱い少女が一人いるだけ。
『亮人はちょっと変わってるから……理屈とかじゃ話が通じないわよ?』
『けど、凄く優しいっていうことは伝わるんだよねっ!!』
離れたところでため息を吐く氷華に口角を上げながら笑みを浮かべるシャーリーも自然と力が抜けている。
『戦う気がないのですか? あなた方はっ!!』
「うん、正直なところないよ? だって、君が一方的に襲ってきただけなんだからさ」
殺し合いをしていた相手に対して笑みを浮かべながら、亮人は目の前の少女へと手を差し伸べる。まるで救いの手を差し伸べるかの様に。
『その通りですが……でもっ!! 襲われたら、相手を殺すまで戦うのが妖魔と人間だとお父様たちに教わりましたっ!! 実際、私は妖魔狩り達に…………お父様たちは殺されたんですから……』
徐々に現れる少女の本音に弱気な表情、目尻に溜められる涙が彼女の気持ちを代弁する。俯く少女はその小さな肩を震わせながら地面を濡らしていく。初めに襲ってきた時の少女はそこにはもういなかった。
「凄い大変だったんだね……」
『同情なんていりませんっ!! 私はお父様達の仇を取るために貴方を眷属にするんですっ!! 二人も正統な妖魔の能力を持っている貴方を眷属にして、アイツらを全員皆殺しにしてやるんですっ!!』
大粒の涙を流しながら顔を上げる少女の顔はクシャクシャになっていた。少しでも触れてしまえば壊れてしまいそう少女は翼を生やし、空中へと羽ばたいていく。
『絶対に貴方を眷属にして、アイツらへ復讐を果たすんですからっ!!』
「眷属にはならないけど、友達にならいつでもなるからね。いつでもうちにおいで?」
空を飛ぶ少女に亮人は満面の笑みを浮かべ、手を振る。
『また、大変なことになりそうね』
『お兄ちゃんらしいけど……ライバル候補が増えるのは困るんだよね……』
二人はため息を吐きながら亮人の元へと歩み寄る。
『自分で厄介ごと増やしてる自覚あるの?』
「まぁ……あるけど、放っておけないでしょ?」
『これだからお人好しは……まぁ、そんな所に惚れてるんだけどね』
『シャーリーもっ!!』
亮人は照れ臭そうに頬を掻き、二人と共に帰路についた。
『どちら様ですか?』
「俺たちはあいつらの助っ人だ」
『『今回は一石二鳥と言うべきでしょうか……想像以上の誤算で私は凄く嬉しいです』』
首を傾げながら平坦な声と作り笑いを浮かべる二人のヴァンパイア。小柄な姿に煌びやかな金髪とキメの細かい肌。可愛らしい容姿とは相反し、悍おぞましさに包まれた少女に亮人とシャーリーの体は震える。ただ、彼女の姿を目の前に麗夜たちは動じない。力強く仁王立ちしている麗夜は目の前の少女へ笑みを浮かべると一気に接敵する。
「あいつと同じだと思うなよ?」
握られる拳は少女を顔面から吹き飛ばす。地面を滑空するように飛ぶ様は弾丸のようだ。粉砕してく暮石の次には木々を薙ぎ倒すほどに。そして、もう一体は頭を掴まれると一瞬にして消し炭となる。一瞬の攻防に亮人達は呆気に取られた。さっきまで苦戦を強いられていた敵を圧倒的に捩じ伏せる麗夜の姿はこの前戦った時よりも遥かに強く、猛々しくなっていた。だが、吹き飛ばされた少女は顔の一部が焦がした状態で嘲笑を浮かべていた。不気味な程に少女は声を上げずに笑みを浮かべ続ける。
一歩一歩と歩みを進める少女は徐々に速度をあげ、目の前に闇の壁を作り上げると中へと駆け込んでいく。そして、そこから出てきたのは二人になった少女だった。焦げた顔も元どおりの人形のようなキメの細かなものへと戻り、一体は麗夜目掛けて走り抜け、もう一体は闇の中へと潜り込めば二人に増え、一気に麗夜へと三人の少女が肉弾戦が始まる。
麗夜が放つ拳を受ける少女の手は漆黒に染め上げられ、消し炭になることはない。三人同時に攻める少女はまるで思考が繋がっているかのように連撃を繰り出していく。
『麗夜だけに戦わせるわけないでしょ?』
燈は九本の尾に小さな火を灯すと小声で呪詛を口ずさむ。
『天高く昇る太陽よ、神のごとき力を持つ貴君の魂、私の魂に焼きつけなさい……』
次の瞬間には尾に灯された炎は色を変えていく。赤から青に、そして白と色を変化させる。彼女を中心に熱風が吹き荒れ、それは遠くにいる亮人まで伝わるほどの熱量。そして、以前とは違う点が一つ。
そこには一人の女性が立っていた。
長い黒髪を熱風で靡かせながら佇む彼女は尾を一つに束ね、先端には白い炎をゴウッと勢いよく吹かせる。更に彼女の背後には仏の光背を彷彿させるように赤々とした炎が揺らめく。さっきまでの狐の容姿から変化した彼女の姿は大人びた雰囲気と余裕を感じさせる。麗夜や亮人と話している時の姿とはまた違った雰囲気がそこにはあった。
『私と同じことしてる……』
『厳密には同じことじゃないわ……似てはいるけどね』
氷華へと笑みを浮かべる彼女は前へと振り向く。
『人型になって戦うなんて聞いたことがありませんね』
「余裕かましてるんじゃねぇよ!!」
くすんでいた少女の瞳は新しいおもちゃをもらった子供のように輝かせながら、燈へと向けられる。ガラ空きの顔面へと放たれる拳は他の少女に止められ、木々の方へと投げ飛ばされるがうまく木へと着地する麗夜は跳ね返るように再び少女達へと飛び掛る。
「ったく、どれだけ強いんだよ!!」
『さっきは不意を突かれたとは言え、驚きましたよ? 私が消されるなんて初めてでしたから』
「それはどうもっ!!」
連撃の速度を上げながら一人の少女を肉薄するも、麗夜を掴んだもう一人の少女の手から悍おぞましい闇が拡がっていく。闇に浸かった腕は地面に広がっている闇へと引力があるかのように吸い込まれかける。
「ガハッ!!」
『『『私の能力を把握しきれていないのに、よく肉弾戦に持ち込もうとしましたね』』』
横っ腹を蹴り飛ばされると木々を薙ぎ倒し、墓地のフェンスへと打ち付けられる。その衝撃でフェンスは倒され、甲高い金属音が鳴り響く。それは街はずれの墓地からでも街へと響くほどの豪音。
『『『流石にやり過ぎましたね……次はもう少し優しくしますね』』』
横一列に並ぶ彼女達はお互いに顔を見合わせながら笑う。
『まだまだでしたね』
『確かに強いですが、私たちにはまだ及びませんね』
『まだ余力を残しておいても良さそうですね』
クスクスと嘲笑いながら談笑する彼女達は一斉に視線を一点へと向ける。
『『『あの方とも戦ってみたいですね』』』
ギロリと向けられる殺意が込められた視線を一点に浴びる燈はゆっくりと歩き始める。
カツカツと歩くたびに足音だけが墓地へと響き渡る。
『『『あなたの相方は伸びきっているようですけど……貴方は私のことを楽しませくれるのですか?』』』
『それはやってみてからのお楽しみだと思うけど?』
『『『ならっ!!』』』
白炎に全身を包ませ、地面や木々を溶かしながら三人へと近づくと一人の少女は翼を生やし、我先にと燈の元へと滑空する。闇を纏わせた腕で燈の肩へと触れた瞬間、少女の腕は消滅した。ちりぢりに霧散する少女の腕は闇の中へと吸収され、新たに欠けた腕が生えてくるように再生する。そして、少女に変化が生まれた。
『私にとって天敵みたいですね、あなたは……』
腕を抱えながら嘲笑から真顔となった少女の声音は一瞬だけ低く、二人の元へと翔び去る。
『っ!!』
「何を怖気付いてるんだ!? 炎が怖いんだろ!!」
すかさず轟々と爆炎を滾たぎらせながら飛び掛かる麗夜から三人は距離を取る。
「やっぱりな、お前の弱点は逸話通りに炎か」
ニヤリと口角を吊り上げ笑みを浮かべる麗夜は伸びをするようにストレッチをする。
「これでも俺たちは世界を回ってたんだ、ある程度の妖魔のことは知ってる。それもお前みたいな上位の妖魔のことは特に耳に入るぜ? ただ、逸話だからな……どれが本当のことなのかは確証はなかったが……これで決まったな」
さっきまで不敵な笑みを浮かべ、余裕綽綽よゆうしゃくしゃくとしていた姿はそこにはない。そこにあるのは一線を引くように睨みつける少女だけだった。
「他にもあるよな? 心臓を突いて棺ひつぎに閉じ込めたり、聖水だったり、にんにくだったり。まぁ、最後のは嘘だろうけどな」
首の骨を鳴らしながらストレッチをする麗夜の横に燈は寄り添うと、より一層強力な炎を麗夜に纏わせる。燃え盛っている炎は勢いを殺し、揺らぐことなく麗夜の全身に燈る。風に吹かれても揺らがず、二人を覆うほどの炎は遠くにいる亮人たちに火傷を負わせかねない程の熱風を浴びせる。
「悪いな、ちょっとだけ火力不足だ」
『そうみたいね……これで互角でしょ?』
「あぁ、これでいける」
顔を合わせる二人は再び、目の前の少女たちへと視線を向ける。
「もう準備はできたぞ……そっちの準備はいいか?」
『ここで倒すつもりでいくわよ……』
『『『ここまで追いつめられるとは思わなかったです……こっちもお遊びはここまでにさせてもらいますね……』』』
そこからは嵐が吹き荒れる。
空中を駆ける少女は麗夜と殴り合う。それもさっきのように消されないよう眼以外を分厚い闇で覆い、殴り合うたびに衝撃波が遠くにいる亮人たちを襲う。
『あの二人……前より強くなってるね……』
シャーリーは体亮人を守るように包み込み、彼らの戦況を見つめた。
「俺が……強くならないと……」
麗夜が少女たちを追い込む戦況に心が躍る。そして同時に亮人は唇を血が出る程に噛み締める。
目の前で戦っている彼の姿。
亮人がすべきことを彼はやってのけている。
守りたいものを守る……。
亮人が心に抱いている気持ちを体現する様に麗夜は全力で戦う。それも、さっきの一方的に追い詰められた亮人とは違う、実力を持って優勢に持ち込むだけの力がある。今の自分との差を見せつけられる様な気持ちと助かったという相反する気持ちが亮人の心の底で煮え滾る。それはまるで溶岩の様にドロドロと、触れる物を焼き尽くす様な凄まじいものだった。そして、その熱は亮人の心を、体から力を奪っていき、視界は薄暗く、色を失っていく。
なら……オレが助けてやろうか……。
そんな声が亮人の耳に響いていく。
低い声音の声は何処からか聞こえ、亮人の心に安堵感を感じさせる。ただ、心は重いままに。
助けてほしい……。
自然と虚空へと手が伸びる。見えない誰かの手に縋るように、弱々しく亮人の手は空中を彷徨う。
『亮人…っ! 大丈夫!?』
その手を優しく包む氷華の手から伝わる冷気が遠のいていた意識を呼び戻す。
「……大丈夫だよ、もう少ししたら体も動くようになるから……麗夜くんたちの加勢にいくよ……」
『わかったわ……でも、無理はしないで』
『シャーリーは何時でもいけるからっ!! カバーするよっ!!』
ギュッと包み込むシャーリーから伝わる感触、氷華の異常なまでに冷たい手が亮人の視界に光を取り戻す。
三人の視線の先には麗夜に加勢するように燈が二人の少女を相手にする。少女らの手には漆黒のレイピアが握られ、それは燈の熱量でも搔き消すことはできない。
『それが本気?』
『『『本気ではやっていますよ? ただ、全力ではないですがっ!!』』』
蹴りを入れられる燈は砂埃をたてながら後方へと押し込まれる。ただ、少女の足も消し炭にしながら。
「弱点突かれてしんどいだろうっ!!」
『『『本当に厄介ですね……あなた方は』』』
苦虫を噛んだような少女らの顔からは汗が滴れる。それとは真逆に好戦的に笑みを浮かべながら、足が消えた相手の懐へと殴りこむ麗夜は数発、一人の少女の腹部へ拳を叩き込む。更に畳みかけるように空中へと投げ飛ばし、弾丸のような白炎が少女を穿うがつ。無数に穴が開けられ、体を守る闇は砕け散るようにパラパラと地面へと落ち、少女の体は追撃する麗夜に蹴り落とされる。地面に広がる闇の中へと勢いを殺さずに逃げ込もうとする少女だが、視界は赤く、青く、白く染められた。
『燃えなさい……』
絶えず繰り出される燈の白炎が、闇へと逃げようとする少女から断末魔を上げさせ消し炭にする。少女らは無数の傷から滴る血を舐める翼を羽ばたかせ、無表情に見下すように麗夜たちを見つめる。
『『さっきの彼らとは連携の質が違いますね』』
「そりゃ、何年も一緒にいるからな。あいつらと一緒にされても困る」
『この子に私が合わせて守らないといけないから大変なの』
「まだ子供扱いかよ」
『ふふっ、まだまだ子供よ』
麗夜の頭を撫でる燈の様子を見つめる少女らの瞳は揺らぐ。
『『懐かしいですね……』』
その瞬間の少女は殺し合いをするような危険な存在ではなくなっていた。
少女の表情の変化を亮人は見逃さなかった。
この前の麗夜君みたいだ……。
あの時のように何処か心の隅に引っかかる。
少女らが向ける眼差しの傍らに小さな雫が浮かびあがる。
『『なんで……こんな物が流れるんでしょうか……もう、とっくの昔に枯れたと思っていましたのに……』』
少女らは目尻を拭うと麗夜たちへと殺意を込めた視線を向けた。
ただ、亮人にはその姿が幼気な迷子の少女にしか見えないでいた。
『『こんな気持ちはとっくに捨てたのですが……どうも、貴方方を見ていると昔を思い出してしまいますね……』』
ドッと彼女らから垂れ流されるドロッとした闇は燃え盛る炎を包む。
『『久方ぶりに心の底から苛立ちを感じます……もう、取り返せないものを思い出すのは心に悪いですね……』』
闇の範囲は墓地一帯を包み込むように広がりを見せ、生えていた木々に墓石を飲み込んでゆく。沼に嵌はまっていくように消えていくそれらが消えると、残ったのは亮人たち五人のみだった。まるで地平線のように何一つない場所にあるのは闇の一点のみ。今にも亮人たちを飲み込むのではないかと思わせる闇は自ら波紋を広げていく。
空を浮遊する少女らは翼を収納すると闇の上へと波紋を立てずに静かに降り立ち、亮人らの前に立ち塞がる少女らの瞳には五人の姿が滲んで見えていた。
「ここからが本番みたいだな……」
『やるわよ、麗夜……』
麗夜たちは更に火力を上げ、構える。
「二人とも……俺たちも行くよ」
『えぇ、倒して家に帰るわよ』
『頑張るよ、お兄ちゃん』
亮人は軋む体をさっきよりスムーズに動かし、全身から冷気を漂わせる。全身に流れる血液の脈打つ音は周りに聞こえるのではないかと思うほどに強く、筋肉を膨張させ、視野が広まる。
白装束を身に纏う氷華は周囲に無数の結晶を浮遊させると氷翼を力強く広げ、氷刀を二本作り出し亮人へ差し出す。触れるだけで切れてしまいそうな氷刀を片手に彼女は歩みを進める。氷華に合わせるようにシャーリーは四肢に力を込めると闇を抉り、唸り声を切っ掛けに戦闘が再び始まった。
地面の中へと消えた少女は再び浮かび上がり、その人数は三人に増え、傷もすべて消えている。
彼女らは笑みを浮かべ、闇の上を走り抜ける。
氷華と燈が放つ結晶と白炎を寸でのところで避け、接敵する少女らはレイピアを握り、一気に間合いを詰めてくる。二人との距離が近づくにつれ、攻防はより一層に激しくなる。飛び交う攻撃の中、亮人らも距離を縮めていくが、突如として炎を纏う麗夜の足元を漆黒の腕が掴み取り、麗夜の体は宙を舞う。地面から伸びる腕は棘へと形を変え、麗夜を串刺しにする。
「させないよ……」
氷刀を一振りし、闇を一閃する亮人の視線は目の前の少女らに向けられる。
ほんの一瞬見せた少女の顔は亮人の脳裏に強く焼き付く。
麗夜君の時みたいに……何かあるんじゃないのかな……。
そんな一抹の不安と、家族を守りたいという気持ちが亮人の傷ついた体を突き動かす。
「みんな……その子は殺したらダメだからね」
『もう……またお人好しになったの?』
『頑張るだけ頑張ってみるっ!!』
「またアンタは……出来るかわからないが、やってやるよ」
『私たちみたいに助けてあげるのかしら?』
各人は死に物狂いの戦闘をしているというのに亮人の一言に笑みを浮かべる。
亮人らしい決断。
この死ぬかもしれない戦闘の中でも相手のことを考えている亮人の姿は、四人には輝いて見える。亮人の考えを知っているからこそ、四人は笑みを浮かべた。
『『『『何を笑っているんですかっ!!』』』』
地面の闇はドーム状に形を変え、棘を生やしながら五人を包み込む。徐々に縮まるドームは亮人たちを串刺しにするはずが、それは氷華と亮人によって一閃され、燃え盛る炎が中心に周囲を照らしだす。
ドームの中心に位置する場所に五人は背中合わせに佇む。初めての共闘とは思えないほどに信頼しきっている彼らの動きと表情は楽しげだ。
「こんな気持ちで戦うことがあるとは思わなかったな」
『貴方たちがいると安心するわね』
『あんたたち、油断したらダメよ?』
『シャーリーたちは手一杯なんだからね?』
「俺たちも麗夜君たちと戦えて安心だよ」
五人は再び少女たちを迎え撃つ。
空へ飛ぶ一人の少女は闇の槍を降らせる。燈の炎でも掻き消すことができない槍は地面へと突き刺されば、バラを咲かせる。無数に咲くバラはツタを闇の上へと這わせ、鬱蒼うっそうとした壁を作り出した。氷刀で切り裂くもすぐに再生するツタは炎でも消すことができない。
「ちょっと厄介だな」
『さっきのお返しです……』
「っ!!」
ツタから生える花弁からレイピアが飛び出し、麗夜の腕を突き刺す。
間一髪のところで避けるも、レイピアは次々に麗夜を追い詰める。徐々に傷が増えていく麗夜の四肢からは血が地面へと滴る。
『貴方の血は不味いですね……』
「不味くて結構だっ!!」
『こっちに来なさいっ!!』
差し出される氷華の手を引けば、麗夜の全身は氷の球体に包まれ、レイピアの鋭い突きは防がれる。麗夜を追いかけるように向けられていたツタは、獲物を探すように地面を這っていく。それは大量の蛇が地面を這い群がっているかのように。
「今度はこっちに来るよ!!」
『分かってるよ、お兄ちゃんっ!!』
凄まじい速度で近寄ってくるツタは、バラを咲かせると同時に細長い針を無数に放つ。
『これくらいなら消せるわっ!!』
束ねた尾から飛ばされる巨大な白炎は、幾重にも放たれる針を霧散させる。
『『『針だけだと思わないことです……』』』
巨大な白炎へ向かう針は徐々に形を変え、少女になると白炎の手前で闇を広げ、まるで闇が生きているかのように白炎を飲み込む。そして、更に飛ばされる針は少女を追い越し、燈へと襲いかかる。
避けようとする燈の体はあらぬ方向へと吹き飛ばされる。地面から突如として現れた少女の蹴りをまともに受け、闇の上を水を切るかのように飛んでいく。
『……厄介な能力ね』
『『『まったく、それは私も同感しますよ』』』
『っ!!』
地面へ突っ伏している燈の首へ伸ばされる少女の手に力が込められる。
「させるかっ!!」
『させないよっ!!』
シャーリーの速度を上乗せさせた氷刀の一振りは少女の手首は見事に切断される。
闇の上を肉眼で捉えられない程の速度で駆け抜けるシャーリーと亮人は次の瞬間、少女の首を跳ね飛ばし、少女の体は闇の中へと吸収される。
『『私のことは殺さないと言っていませんでしたか?』』
「君の本体が何となく分かって来たからね……大丈夫かなって」
『『……そうですか』』
殺し合いの中で朗らかに笑う亮人の姿に、不思議そうに見つめる少女は一気に亮人へと距離を縮める。レイピアを片手に亮人としのぎを削る。ギリギリと甲高い金属音が二人の鼓膜を震わせる。
「ねぇ……さっきの涙は何の涙だったのかな?」
『『そんなこと……あなたに関係ないことです……』』
「気になっちゃったんだよ……意味もなく泣かないでしょ?」
『『うるさいっ!! あなたには関係ありませんっ!!』』
『させないってばっ!!』
新たに亮人の後ろに現れた少女はレイピアを突き立てるも、シャーリーに吹き飛ばされていく。シャーリーがつき立てる爪は少女の体を抉り、血を噴き出させる。だが、闇へと体が触れれば溶け込むように闇の中へと消えていく。
『また逃げられたっ!!』
『シャーリーっ、まだ来るわよっ!!』
地面へと消えていた少女は床から再び現れれば、ツタと共にシャーリーを追い込む。全力で引くシャーリーの行く先々に地面からツタが生え、逃げ惑う。
『『『逃げられると思わないでください……』』』
『あんたこそ、私たちに勝てると思わないでよねっ!!』
氷華の背後に浮遊する無数の結晶は氷刀へと変化し、シャーリーを囲う無数のツタを切り裂き凍らせた。さっきまでの勢いを殺し、動かないツタはその場で留まる。
『あんたの闇は燃やせなくても、凍らせて動きを止めることはできるのよ?』
空気中の水分が結晶化し、それらは二人の少女へと矛先を向ける。銃弾のように放たれる結晶は羽ばたく少女に避けられるも氷華の視線と共に向きを変え、翼を撃ち抜く。穴が空いた翼から徐々に少女の体は凍っていき、シャーリーの強靭な蹴りによって粉々に砕かれる。
『よくも燈をやりやがったな……お前ぇぇぇえええ!!』
砕け散った少女を消し炭にし、麗夜はもうもう一人へと殴り込む。血眼の麗夜は、自分の皮膚も焦がす勢いで駆け抜け、氷華たちを退けさせる。我を忘れているかのようなその姿に少女は後ろへと飛び下がり、壁を大きく作り出すが闇を掻き消すほどの熱量で麗夜の腕は少女の首を絞め、消し炭にする。そして、視線は氷華とシャーリーへと向けられ、麗夜は二人へと爆炎を滾らせながら襲い掛かった。
『どうなってるのよっ!!』
『シャーリー達は敵じゃないよっ!!』
だが、血眼の麗夜はまるで獣のように四つ這いを取り、腰付近からは九尾のように尾を生やし、唸りをあげる。体勢を低くする麗夜は次の瞬間、氷華達に白炎を放ちながら襲い掛かる。
『あっちの子……暴走している様ですが、放っておいていいんですか?』
鍔つば迫り合いから剣戟を互いに繰り出す二人は横目に麗夜たちを視界に入れる。
戸惑いを隠せない二人は麗夜と一線を引きながら攻防を繰り広げ続ける。爆炎を轟かせながら接敵する麗夜をシャーリーは四肢で蹴り飛ばし、更に周囲を囲うように氷壁が作り出される。幾重にも重なる氷壁の中からは唸り声と地響きが広がる。
『九尾っ、あんたの主人が変なんだけどっ!!』
『わかってるわよっ!! 亮人さん、麗夜を正気に戻すので時間稼ぎをお願いします!!』
腹部を抑えながら氷壁へと駆け付け、両手を触れさせると一瞬にして氷は溶かされる。そして、中で暴れまわる麗夜が燈目掛けて激突する。血眼の麗夜は唸り声と共に犬歯を燈の首筋へと立てる。首筋から流れる血は地面へと滴る。一滴、一滴と流れる血は闇へと吸収される。
『っ!! 麗夜……私は大丈夫だから、落ち着きなさい?』
一瞬、苦悶の表情を浮かべ、唸りをあげる麗夜を燈は優しく抱きかかえながらあやす。まるで泣く我が子をあやす母親のように。次第に唸り声は収まり、血眼だった瞳も光を灯していく。
燃え盛っていた炎も収まり、落ち着く麗夜の瞼は徐々に瞼を閉じられ、寝息を立てる。
『無理させたわね……ごめんなさい』
「麗夜君を安全なところに連れて行っていいよっ!!」
『それまでは私たちで何とか食い止めておくから』
『シャーリーたちにお任せっ!!』
『ありがとうございます……』
抱きかかえられた麗夜は燈の姿は遠ざかっていく。二人を追うようにツタは這って行くが、それを阻むようにツタは凍り付き、一閃される。
「そんなことはさせないよ?」
絶えず笑みを浮かべる亮人に後ろに佇む氷華とシャーリーは一気に距離を詰めにいく。浮遊する氷刀は氷華の視線に合わせながら少女を追撃し、行く先々で亮人とシャーリーが追い詰める。
『さっきより連携が取れているんじゃないですか?』
「君のおかげだよっ!!」
握った拳を少女へと叩き込むと続けざまにシャーリーが亜音速で少女を空中へと突き飛ばす。そこには無数に散りばめられた細かな結晶が鋭利に刃を携え、少女の体に傷をつけていく。
だが、そこにいる少女は翼を広げ、笑みを浮かべ始める。
「余裕そうだね」
『えぇ、あなた方三人なら対処できますから』
「なら、これはどうっ!!」
亮人は地面へと氷刀を突き刺すと一気に冷気を流し込む。凍り付かない闇は徐々に内側からパキパキと音を立てる。そして、同時に飛んでいた少女は胸を抱えながら地面へと落下する。墓地全体へと広がっていた闇は徐々に狭まり、少女の足元だけになった。
「どうもおかしいと思ったんだ、何回も君は死んでるはずなのに何度も蘇るのが……ただ、君が一つヒントをくれたから……ありがとう」
『よくわかりましたね……ヒントを渡した覚えはないですけど』
「いや、あるんだよ……あくまで推測だったから自信はなかったけどね……君の本体が闇の中にいるって」
『そうだったのっ!?』
『シャーリーは全然わからなかったよ!!』
「君は舐めてもないのに、麗夜君の血を不味いって言ったんだ。血が落ちたのは地面だったのに……だから、もしかしてって思ったんだ」
露出した地面から氷刀を引き抜き、剣先についている砂を一振りし振り払うと綺麗な風切り音が響き渡る。
『その観察力は褒めてあげます……』
口から血を流す少女に亮人は氷刀を地面へと突き刺し、能力を消してゆっくりと近づく。
『亮人、何かあったら助けるから……』
『まったくお兄ちゃんは……気を付けてよ?』
「大丈夫、あの子は悪い子じゃないと思うからさ」
状況がつかめない少女は瞳を丸くする。
何で丸腰で近寄ってくるんですか……
「どうしても気になっちゃったんだ……君が何を考えてるのか。何であの時に涙を流したのかも、すごく気になるんだ……懐かしいって、どういうことなのかな?」
優しく微笑む亮人の歩調は変わらず、ゆっくりと少女へと近づく。地面を蹴る足音も小さく、砂埃を立てずに、少女を威嚇しない様に歩き進める。
「俺は君と戦いたいわけじゃないんだ……そこにいる氷華とシャーリー、家族を守りたい。だから、戦う。もし、もう戦わないなら、一緒に話さない?」
『何を急に言っているんですか? 訳が分からないですよ』
「訳がわからなくていいよ。ただ、俺は君と話がしたいだけなんだから」
少女は怯える様に初めて後ずさりをした。
さっきまでの余裕な表情は今の少女にはない。ただ、そこにいるのは小柄なか弱い少女が一人いるだけ。
『亮人はちょっと変わってるから……理屈とかじゃ話が通じないわよ?』
『けど、凄く優しいっていうことは伝わるんだよねっ!!』
離れたところでため息を吐く氷華に口角を上げながら笑みを浮かべるシャーリーも自然と力が抜けている。
『戦う気がないのですか? あなた方はっ!!』
「うん、正直なところないよ? だって、君が一方的に襲ってきただけなんだからさ」
殺し合いをしていた相手に対して笑みを浮かべながら、亮人は目の前の少女へと手を差し伸べる。まるで救いの手を差し伸べるかの様に。
『その通りですが……でもっ!! 襲われたら、相手を殺すまで戦うのが妖魔と人間だとお父様たちに教わりましたっ!! 実際、私は妖魔狩り達に…………お父様たちは殺されたんですから……』
徐々に現れる少女の本音に弱気な表情、目尻に溜められる涙が彼女の気持ちを代弁する。俯く少女はその小さな肩を震わせながら地面を濡らしていく。初めに襲ってきた時の少女はそこにはもういなかった。
「凄い大変だったんだね……」
『同情なんていりませんっ!! 私はお父様達の仇を取るために貴方を眷属にするんですっ!! 二人も正統な妖魔の能力を持っている貴方を眷属にして、アイツらを全員皆殺しにしてやるんですっ!!』
大粒の涙を流しながら顔を上げる少女の顔はクシャクシャになっていた。少しでも触れてしまえば壊れてしまいそう少女は翼を生やし、空中へと羽ばたいていく。
『絶対に貴方を眷属にして、アイツらへ復讐を果たすんですからっ!!』
「眷属にはならないけど、友達にならいつでもなるからね。いつでもうちにおいで?」
空を飛ぶ少女に亮人は満面の笑みを浮かべ、手を振る。
『また、大変なことになりそうね』
『お兄ちゃんらしいけど……ライバル候補が増えるのは困るんだよね……』
二人はため息を吐きながら亮人の元へと歩み寄る。
『自分で厄介ごと増やしてる自覚あるの?』
「まぁ……あるけど、放っておけないでしょ?」
『これだからお人好しは……まぁ、そんな所に惚れてるんだけどね』
『シャーリーもっ!!』
亮人は照れ臭そうに頬を掻き、二人と共に帰路についた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる