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Blood X`mas
Blood X`mas Ⅲ
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そこからは怒涛の嵐だった。
氷華は普段の我慢や目新しいものに夢中になり、いろんなものを強請る。それはシャーリーも同じだった。礼火は欲しいものを厳選するような鋭い視線を周りへと向けていた。
女の子との買い物って大変なんだなぁ……。
普段は一人で買い物へ出かけていることが幸いして、時間がかからずに家へと帰っていた。しかし、今回は三人の買い物。女子の買い物に時間が掛かるとは世間的にも言われていることだが、身を以て体験している亮人は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
「ねぇ、亮人は欲しいものとかないの?」
「俺は今のところ欲しいのはないかなぁ……家にはもう十分なくらいものもあるし、アクセサリーとかも付けないから」
「そっかぁ……」
手に持っている商品を見つめながら礼火は亮人へと質問をした。
『亮人にも何かプレゼントしたいから、申し訳ないんだけどお金少しもらってもいい?』
『あっ、私も何かプレゼントしたいっ!!』
その質問に便乗するように二人は亮人に密着するように駆け寄ってくる。
「そんなのいいのに」
『いいから、お金少しだけ貸しなさいよ』
『お願い、お兄ちゃん……』
二人の顔が目の前に近づく。潤ませている二人の瞳に亮人は吸い込まれそうになる。
彼女たちの魅惑な雰囲気に心の中にある欲求が表に出てくる感覚が亮人を襲う。心拍数が急激に高まり、息苦しくなりそうになる。
「わ、わかったから……少し離れて?」
逃げるように亮人は財布から1万ずつ二人に渡すと、一気に距離を取る。
おかしい……
以前までならドキドキするだけで治っていたはずだったが、今では動悸のようなものになりつつあった。亮人の表情も困惑するように、恐怖するように変わり、二人の表情も驚きとなった。
『どうかしたの……亮人?』
『お兄ちゃん?』
二人の視線が亮人を刺す。
自分が変になっていることが自覚できた。変化しているだけじゃない、おかしくなってきている。
「気にしないで? ちょっとドキドキしちゃっただけだから。ほら、二人とも俺にプレゼント買ってくれるんでしょ? 楽しみにしてるから買ってきて?」
無理に笑顔を浮かべると、二人はそれに気づかなかったかのように満面の笑みで亮人の前から走り去っていく。
「……よかった」
自然と口に出ていた。
早まっていた鼓動は息を吐くようにゆったりとしたものになる。二人の距離が離れる度にゆっくりと……。
「本当は大丈夫じゃないんでしょ、亮人」
急に握られた手。
隣に来ていた礼火がキュッと締めるように力を込める。
「……バレてた?」
「バレてるよ……そんなの。幼馴染なんだからすぐわかるよ。どうかしたの?」
亮人の手を引きながら礼火は振り返る。心配そうな表情とは裏腹に力を込められた手から伝わる安心感。
だからか、亮人は店前にあった椅子へと座ると、
「最近……少し変なんだ。前までなら二人に近づかれたらドキドキするだけだったのに、今は……俺から二人を抱きたくなってきてる……少し、自分が怖くなってるんだと思う」
「そうなんだ……」
見つめてくる礼火の声は少し残念そうだが、それでも手に込められる力は変わらない。
「でも、大丈夫だよ。亮人ならなんとかなるよ!! これまでだって、こうやって何とかやってこれてるんだからさ!!」
作り笑いではない彼女の笑顔は綺麗なものに亮人は見えた。
明確に解決したわけでもない。ただ、彼女の一言だけで亮人は何故か安心できた。
そんな二人の前に落ち込みながら帰ってきた氷華とシャーリー。
理由は……
『私たちが見えないから、買いたいって伝えられなかった……』
瞳から涙を流す二人に亮人と礼火は苦笑いするしかなかったのである。
氷華は普段の我慢や目新しいものに夢中になり、いろんなものを強請る。それはシャーリーも同じだった。礼火は欲しいものを厳選するような鋭い視線を周りへと向けていた。
女の子との買い物って大変なんだなぁ……。
普段は一人で買い物へ出かけていることが幸いして、時間がかからずに家へと帰っていた。しかし、今回は三人の買い物。女子の買い物に時間が掛かるとは世間的にも言われていることだが、身を以て体験している亮人は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
「ねぇ、亮人は欲しいものとかないの?」
「俺は今のところ欲しいのはないかなぁ……家にはもう十分なくらいものもあるし、アクセサリーとかも付けないから」
「そっかぁ……」
手に持っている商品を見つめながら礼火は亮人へと質問をした。
『亮人にも何かプレゼントしたいから、申し訳ないんだけどお金少しもらってもいい?』
『あっ、私も何かプレゼントしたいっ!!』
その質問に便乗するように二人は亮人に密着するように駆け寄ってくる。
「そんなのいいのに」
『いいから、お金少しだけ貸しなさいよ』
『お願い、お兄ちゃん……』
二人の顔が目の前に近づく。潤ませている二人の瞳に亮人は吸い込まれそうになる。
彼女たちの魅惑な雰囲気に心の中にある欲求が表に出てくる感覚が亮人を襲う。心拍数が急激に高まり、息苦しくなりそうになる。
「わ、わかったから……少し離れて?」
逃げるように亮人は財布から1万ずつ二人に渡すと、一気に距離を取る。
おかしい……
以前までならドキドキするだけで治っていたはずだったが、今では動悸のようなものになりつつあった。亮人の表情も困惑するように、恐怖するように変わり、二人の表情も驚きとなった。
『どうかしたの……亮人?』
『お兄ちゃん?』
二人の視線が亮人を刺す。
自分が変になっていることが自覚できた。変化しているだけじゃない、おかしくなってきている。
「気にしないで? ちょっとドキドキしちゃっただけだから。ほら、二人とも俺にプレゼント買ってくれるんでしょ? 楽しみにしてるから買ってきて?」
無理に笑顔を浮かべると、二人はそれに気づかなかったかのように満面の笑みで亮人の前から走り去っていく。
「……よかった」
自然と口に出ていた。
早まっていた鼓動は息を吐くようにゆったりとしたものになる。二人の距離が離れる度にゆっくりと……。
「本当は大丈夫じゃないんでしょ、亮人」
急に握られた手。
隣に来ていた礼火がキュッと締めるように力を込める。
「……バレてた?」
「バレてるよ……そんなの。幼馴染なんだからすぐわかるよ。どうかしたの?」
亮人の手を引きながら礼火は振り返る。心配そうな表情とは裏腹に力を込められた手から伝わる安心感。
だからか、亮人は店前にあった椅子へと座ると、
「最近……少し変なんだ。前までなら二人に近づかれたらドキドキするだけだったのに、今は……俺から二人を抱きたくなってきてる……少し、自分が怖くなってるんだと思う」
「そうなんだ……」
見つめてくる礼火の声は少し残念そうだが、それでも手に込められる力は変わらない。
「でも、大丈夫だよ。亮人ならなんとかなるよ!! これまでだって、こうやって何とかやってこれてるんだからさ!!」
作り笑いではない彼女の笑顔は綺麗なものに亮人は見えた。
明確に解決したわけでもない。ただ、彼女の一言だけで亮人は何故か安心できた。
そんな二人の前に落ち込みながら帰ってきた氷華とシャーリー。
理由は……
『私たちが見えないから、買いたいって伝えられなかった……』
瞳から涙を流す二人に亮人と礼火は苦笑いするしかなかったのである。
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