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Blood X`mas
Blood X`mas
しおりを挟む亮人にとって家族との初めての催し事が始まった。
クリスマスイブ。
三人にとっても大切な出来事になるであろう催し物だ。
『クリスマス……亮人とデート……へへ』
クリスマスツリーの飾り付けをしている氷華は頬を緩ませる。
「凄いな……氷華」
『お姉ちゃんってやっぱり器用だよね』
『そうかしら?』
彼女の手には既製品の飾りではなく、能力で作られた氷の結晶が様々な形を作りだされる。透明度が高い氷からわざとヒビを入れ、光の屈折で煌びやかに輝く飾り。それは単なるクリスマスツリーを豪華絢爛なものへと変質させる。
氷の結晶で色付けされたクリスマスツリーを背景に振り向く氷華の姿は氷の妖精を想像させる。
「本当に凄いね。でも、これって溶けたりしない?」
『そこは大丈夫よ。私が完璧に作った氷だから、簡単には溶けないわ』
自信満々に腰へ手を当てる氷華は飾り付けが終わらせ、リビングを後にする。数分後、階段を駆け下りてくる足音と開け放たれたリビングのドア。その向こう側にいる氷華の手には小さな巾着を下げていた。
『二人ともっ!! 早く街に行くわよっ!!』
『楽しみだったんだね、お姉ちゃん……』
「わかったから、少し落ち着いてね」
苦笑いを浮かべた二人を気にすることなく、氷華は準備ができた亮人とシャーリーの手を掴み、意気揚々と家から飛び出した。
『ふふ~ん、クリスマスって初めてだから楽しみなのよ?』
「見てればわかるよ。なら、今日はしっかり楽しまないとね」
『…………あと、デートも付き合いなさいよ?』
街へ移動する三人、亮人は耳元で囁く氷華の冷たい吐息に鼓動を強くする。
『二人でコソコソ話して……ズルい……』
二人の様子を後ろから見つめるシャーリー。仲睦まじいい二人の間に加わりたい気持ち、それとは正反対の邪魔したくない気持ち。この葛藤がシャーリーの胸の奥を締め付ける。
お姉ちゃんに楽しんでほしい……
姉のように優しく愛でてくれる氷華の気持ちを知っている。自分も氷華と同じ気持ちでいるからよく分かる。
毎日、亮人に対して甘えている自分を冗談を口にしながら許してくれる彼女の優しさを、シャーリーは幼いながらも理解はしていた。
『亮人には私に似合う可愛いエプロンを買ってもらうんだから、しっかり選びなさいよ?』
「氷華は何でも似合うけど、可愛らしいの選ぶから安心してね。もちろん、シャーリーにもしっかりプレゼント買ってあげるからね」
『うんっ、ありがとっ!!』
華奢な体で大きくリアクションを取るシャーリーは満面の笑顔を振りまく。ただ、瞳には陰りを落としながら。
「シャーリー……我慢しなくて大丈夫だよ。ほらっ、こっちにおいで」
『珍しく静かだと思ったら、気なんか使っちゃって。シャーリーは子供らしく気なんか使わずにたくさん我儘いいなさいよ?』
彼女の前にいる優しい二人は同時にシャーリーへと手を伸ばす。
たった一つの光景。
『…………うんっ!!』
陰りを見せていた瞳の奥からはまた、小さく輝きが宿り、差し出された二つの手へと自ら手を握った。
誰かがこの三人を観れたのなら、こう口にしただろう。
『幸せでよかった』
と。
しかし、この言葉は三人には届かなくとも、口にされていた。
クリスマスイブ。
三人にとっても大切な出来事になるであろう催し物だ。
『クリスマス……亮人とデート……へへ』
クリスマスツリーの飾り付けをしている氷華は頬を緩ませる。
「凄いな……氷華」
『お姉ちゃんってやっぱり器用だよね』
『そうかしら?』
彼女の手には既製品の飾りではなく、能力で作られた氷の結晶が様々な形を作りだされる。透明度が高い氷からわざとヒビを入れ、光の屈折で煌びやかに輝く飾り。それは単なるクリスマスツリーを豪華絢爛なものへと変質させる。
氷の結晶で色付けされたクリスマスツリーを背景に振り向く氷華の姿は氷の妖精を想像させる。
「本当に凄いね。でも、これって溶けたりしない?」
『そこは大丈夫よ。私が完璧に作った氷だから、簡単には溶けないわ』
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『二人ともっ!! 早く街に行くわよっ!!』
『楽しみだったんだね、お姉ちゃん……』
「わかったから、少し落ち着いてね」
苦笑いを浮かべた二人を気にすることなく、氷華は準備ができた亮人とシャーリーの手を掴み、意気揚々と家から飛び出した。
『ふふ~ん、クリスマスって初めてだから楽しみなのよ?』
「見てればわかるよ。なら、今日はしっかり楽しまないとね」
『…………あと、デートも付き合いなさいよ?』
街へ移動する三人、亮人は耳元で囁く氷華の冷たい吐息に鼓動を強くする。
『二人でコソコソ話して……ズルい……』
二人の様子を後ろから見つめるシャーリー。仲睦まじいい二人の間に加わりたい気持ち、それとは正反対の邪魔したくない気持ち。この葛藤がシャーリーの胸の奥を締め付ける。
お姉ちゃんに楽しんでほしい……
姉のように優しく愛でてくれる氷華の気持ちを知っている。自分も氷華と同じ気持ちでいるからよく分かる。
毎日、亮人に対して甘えている自分を冗談を口にしながら許してくれる彼女の優しさを、シャーリーは幼いながらも理解はしていた。
『亮人には私に似合う可愛いエプロンを買ってもらうんだから、しっかり選びなさいよ?』
「氷華は何でも似合うけど、可愛らしいの選ぶから安心してね。もちろん、シャーリーにもしっかりプレゼント買ってあげるからね」
『うんっ、ありがとっ!!』
華奢な体で大きくリアクションを取るシャーリーは満面の笑顔を振りまく。ただ、瞳には陰りを落としながら。
「シャーリー……我慢しなくて大丈夫だよ。ほらっ、こっちにおいで」
『珍しく静かだと思ったら、気なんか使っちゃって。シャーリーは子供らしく気なんか使わずにたくさん我儘いいなさいよ?』
彼女の前にいる優しい二人は同時にシャーリーへと手を伸ばす。
たった一つの光景。
『…………うんっ!!』
陰りを見せていた瞳の奥からはまた、小さく輝きが宿り、差し出された二つの手へと自ら手を握った。
誰かがこの三人を観れたのなら、こう口にしただろう。
『幸せでよかった』
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しかし、この言葉は三人には届かなくとも、口にされていた。
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