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暖かい日常
暖かい日常VⅡ
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「で、買い物はいつするの?」
「う~ん……クリスマスイブに買いに行こうかなとは思ってるんだよね。氷華はクリスマスが初めてらしいから、街でイルミネーションとか見ながら楽しもうかなって」
「クリスマスが初めてなのっ!?」
『なっ、なによっ!! 文句でもあるの!?』
『やっぱり驚くよねぇ~、お姉ちゃんって意外と世間知らずだからさぁ』
『シャァァリィィ?』
『お姉ちゃんが怒ったっ!!』
「もう、二人とも氷華を弄りすぎだよ。知らないからクリスマスに遊びに行くんだから」
『そうよ……私を苛めていいのは亮人だけなのよ?』
「それはそれで誤解を生みそうなことを言わないでよ」
『いいじゃない、減るもんじゃないし。ついでにほら』
亮人の前にある湯気が出ているカレーが一瞬にして冷める。
『ふふ……こうやって意地悪するのも楽しいわね』
「ご飯で遊ばないの、氷華」
『ごめんごめん、面白くてついイタズラしたくなっちゃった。温め直してくるわよ』
食事を囲みながら話す賑やかな空間。笑顔も怒ったりする表情に楽しさがある。そこにはそれぞれが思い描いていた家族が存在した。
個々人が感じている幸せの時間はあっという間に過ぎ、
「氷華は早めにお風呂入っちゃいなよ~」
『はいはい。二人とも、皿洗い任せてもいい?』
「いいよ、それくらい」
『任せてっ』
『ありがと。あと、亮人、少しだけこっち来てくれない?』
「んっ? どうしたの?」
氷華に連れられるように亮人はリビングをあとにする。
柔らかな彼女の手に握られるだけで亮人の鼓動は少しずつ速まる。目の前にいる煌びやかに輝く白髪に艶めかしい唇、凛とした彼女の顔は亮人へ振り返る時には俯いていた。
「氷華? どうしたの、何かあった?」
『……………………な、何かあったというか……その、クリスマスなんだけど……』
離された氷華の手は彼女の胸元で恥ずかしがるように絡められる。
呼吸をするたびに彼女の吐息は白息となる。ただ、次に彼女が顔を上げた時には、赤面となっている彼女の目元は閏るとしていた。
『クリスマスっ!! 私とデートしてほしいっ!!』
そう口にした氷華の顔は亮人の目と鼻の先に近づき、少しでも動いてしまえばキスが出来てしまいそうだ。体も一緒に亮人へと密着させ、氷華の心拍が亮人の胸の奥へと響いていく。
頬が紅潮する彼女の瞳に吸い込まれるように亮人の顔が近づいていき、自然と二人は唇を重ね合わせた。静かな廊下に佇む二人を邪魔する者はそこにはいない。ただ、二人はこの時間を、この空間を共有した。
「……氷華……そろそろお風呂入ってきな」
『……うん、入ってくるわね』
瞳を潤ませている氷華の肩を掴んだ亮人は視線を逸らし、恥ずかしげに口にする。
氷華は踵を返し脱衣所へと向かっていった。
前みたいに困んなくなってる……。
以前の亮人なら拒んでいたはずだが、今では自分から唇を重ねるようになっている。少しずつ慣れてきているのか、それが生活の一部になっているのか。
そんな変化を気にせずにいる亮人は、シャーリー達がいるリビングの方へと振り返る。
「ニャァァ」
亮人の足元にすり寄ってきたクロ。爪を立てながら亮人へよじ登り、肩まで上がると亮人の耳を甘噛みする。まるで甘えたいかのように普段とは違った噛み方で亮人の気を引こうとする。
「珍しいね、クロが優しく噛むなんて」
「ニャァァ……」
亮人の頬に顔を擦り付けるクロは喉からゴロゴロと音を鳴らす。クロを抱きかかえ、リビングに戻ると、シャーリーと礼火が二人して話をしていた。
「二人はなに話してるの?」
声をかけると、二人は
「『なーいーしょーっ!!』」
と満面の笑みを向け、抱きついてきた。
「う~ん……クリスマスイブに買いに行こうかなとは思ってるんだよね。氷華はクリスマスが初めてらしいから、街でイルミネーションとか見ながら楽しもうかなって」
「クリスマスが初めてなのっ!?」
『なっ、なによっ!! 文句でもあるの!?』
『やっぱり驚くよねぇ~、お姉ちゃんって意外と世間知らずだからさぁ』
『シャァァリィィ?』
『お姉ちゃんが怒ったっ!!』
「もう、二人とも氷華を弄りすぎだよ。知らないからクリスマスに遊びに行くんだから」
『そうよ……私を苛めていいのは亮人だけなのよ?』
「それはそれで誤解を生みそうなことを言わないでよ」
『いいじゃない、減るもんじゃないし。ついでにほら』
亮人の前にある湯気が出ているカレーが一瞬にして冷める。
『ふふ……こうやって意地悪するのも楽しいわね』
「ご飯で遊ばないの、氷華」
『ごめんごめん、面白くてついイタズラしたくなっちゃった。温め直してくるわよ』
食事を囲みながら話す賑やかな空間。笑顔も怒ったりする表情に楽しさがある。そこにはそれぞれが思い描いていた家族が存在した。
個々人が感じている幸せの時間はあっという間に過ぎ、
「氷華は早めにお風呂入っちゃいなよ~」
『はいはい。二人とも、皿洗い任せてもいい?』
「いいよ、それくらい」
『任せてっ』
『ありがと。あと、亮人、少しだけこっち来てくれない?』
「んっ? どうしたの?」
氷華に連れられるように亮人はリビングをあとにする。
柔らかな彼女の手に握られるだけで亮人の鼓動は少しずつ速まる。目の前にいる煌びやかに輝く白髪に艶めかしい唇、凛とした彼女の顔は亮人へ振り返る時には俯いていた。
「氷華? どうしたの、何かあった?」
『……………………な、何かあったというか……その、クリスマスなんだけど……』
離された氷華の手は彼女の胸元で恥ずかしがるように絡められる。
呼吸をするたびに彼女の吐息は白息となる。ただ、次に彼女が顔を上げた時には、赤面となっている彼女の目元は閏るとしていた。
『クリスマスっ!! 私とデートしてほしいっ!!』
そう口にした氷華の顔は亮人の目と鼻の先に近づき、少しでも動いてしまえばキスが出来てしまいそうだ。体も一緒に亮人へと密着させ、氷華の心拍が亮人の胸の奥へと響いていく。
頬が紅潮する彼女の瞳に吸い込まれるように亮人の顔が近づいていき、自然と二人は唇を重ね合わせた。静かな廊下に佇む二人を邪魔する者はそこにはいない。ただ、二人はこの時間を、この空間を共有した。
「……氷華……そろそろお風呂入ってきな」
『……うん、入ってくるわね』
瞳を潤ませている氷華の肩を掴んだ亮人は視線を逸らし、恥ずかしげに口にする。
氷華は踵を返し脱衣所へと向かっていった。
前みたいに困んなくなってる……。
以前の亮人なら拒んでいたはずだが、今では自分から唇を重ねるようになっている。少しずつ慣れてきているのか、それが生活の一部になっているのか。
そんな変化を気にせずにいる亮人は、シャーリー達がいるリビングの方へと振り返る。
「ニャァァ」
亮人の足元にすり寄ってきたクロ。爪を立てながら亮人へよじ登り、肩まで上がると亮人の耳を甘噛みする。まるで甘えたいかのように普段とは違った噛み方で亮人の気を引こうとする。
「珍しいね、クロが優しく噛むなんて」
「ニャァァ……」
亮人の頬に顔を擦り付けるクロは喉からゴロゴロと音を鳴らす。クロを抱きかかえ、リビングに戻ると、シャーリーと礼火が二人して話をしていた。
「二人はなに話してるの?」
声をかけると、二人は
「『なーいーしょーっ!!』」
と満面の笑みを向け、抱きついてきた。
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