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暖かい日常
暖かい日常IV
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「ただいま、二人とも」
『おかえりなさい、亮人』
『おかえりっ、お兄ちゃんっ!!』
家へと帰宅した亮人を出迎える二人。氷華は白装束に白いエプロンと昭和の母親をイメージさせる格好。シャーリーはダボつくTシャツで亮人へと抱きついた。
「二人とも久しぶり~」
『あっ、礼火だっ!! 久しぶりだね。元気にしてた?』
「いつもと変わらないよ。二人こそ、元気にしてたの?」
『私はいつも通りだけど、シャーリーはいつも以上に元気みたいよ? 毎日、亮人に言い寄ってるぐらい元気。そんな私もなんだかんだで言い寄ってはいるけどね』
「へぇ~~」
不敵な笑みを浮かべる氷華にジト目を亮人へと向ける礼火。そんな二人をよそにシャーリーは亮人へと抱きついたまま、顔を胸へと埋めている。
「はは……」
前途多難といった表情を浮かべながら亮人はシャーリーを抱きかかえて、ソファに座らせる。ただ、そんな亮人にシャーリーは頬を膨らませながら、
『お兄ちゃんのケチっ!!』
と文句をつく。
「そんなことを言う子には晩御飯は抜きにするよ?」
『……もう、わかったよぉ』
「いい子だね」
『へへへ』
優しい笑みを浮かべながらシャーリーの頭を撫でる亮人。そんな風景を依然とジト目で見つめる礼火。ただ、その数秒後には諦めるかのようにため息を吐き、手にしていた買い物袋をダイニングテーブルに乗せる。
「亮人の怪我も治ったことだし、今日は久しぶりにみんなでご飯が食べたくて来ちゃったんだけど、大丈夫だった?」
『そんなのいいに決まってるじゃない。それに私たちが決めることじゃないし、亮人がそれでよかったらいいわよ。亮人のためにしてくれるんでしょ? 嫌なんて言うわけないわよ』
「ありがと、氷華。シャーリーもいい?」
『シャーリーはお兄ちゃんが楽しんでくれればなんでもいいよ~。ねー、クロ』
「ミャァァ」
欠伸をしながら、返事をするクロは「どうでもいい」といった雰囲気を醸しながらシャーリーの膝上へと鎮座した。
「それにもうそろそろクリスマスだからね。クリスマスはどうするのかなって思って、みんなに聞きたかったの。亮人、クリスマスの予定はどうなってるの?」
「クリスマスは三人で買い物に行こうかなって。氷華は新しいエプロンが欲しいって朝教えてくれたし、シャーリーにも何か買ってあげようと思って、みんなで行くつもり。礼火も一緒に行く? 氷華、今日はカレーにするから準備手伝ってくれる?」
『もちろん、いいわよ?』
二人で調理を始める風景を礼火は後ろから眺める。
いいなぁ……前までは私があそこに立つ予定だったんだけどな……。
まるで夫婦のように楽しげに料理を作っている二人の後ろ姿は礼火の心を締め付ける。ただ、そこに礼火が付け入る隙はない。
「私も料理ができればなぁ……」
普段から亮人や母親にご飯を作ってもらっているからか、料理が苦手な礼火。亮人との関係が変わったら一緒に教えてもらいながら、楽しい生活を送ろうと考えていたけど、先を越された。
『なら、礼火も手伝ってくればいいのに』
「できれば、とっくにしてるよ……けど、なんかこうも仲がいいところを見てると入れないよ……」
『そうかなぁ? なら、こうすればいいだけだよね?』
シャーリーは礼火の手を取り、
『お兄ちゃん~みんなでご飯作りたいなっ!!』
「んっ? そうだね、その方が早く終わるかもしれないね。なら、シャーリーと礼火もこっちに来て一緒に作ろっか」
優しく微笑む亮人の表情が礼火の心を暖かくする。同時に手を握って連れて来てくれたシャーリーの耳元で、
「ありがとね」
と囁くとシャーリーは亮人にしたように礼火にも抱きついた。シャーリーも礼火と同じように
『ううん……礼火もありがと。私ね……これからもみんなとずっと楽しくいたいな』
「うん、私もみんなとずっといたいよ」
「二人とも、手伝ってくれないのー?」
「いま行くっ!!」
『手伝うよっ!!』
亮人の視線は目の前の料理に向けているから、二人の光景を見ていない。後ろからバタバタと走り駆け寄ってくる二人の仲睦まじい様子を亮人は知らない。
『おかえりなさい、亮人』
『おかえりっ、お兄ちゃんっ!!』
家へと帰宅した亮人を出迎える二人。氷華は白装束に白いエプロンと昭和の母親をイメージさせる格好。シャーリーはダボつくTシャツで亮人へと抱きついた。
「二人とも久しぶり~」
『あっ、礼火だっ!! 久しぶりだね。元気にしてた?』
「いつもと変わらないよ。二人こそ、元気にしてたの?」
『私はいつも通りだけど、シャーリーはいつも以上に元気みたいよ? 毎日、亮人に言い寄ってるぐらい元気。そんな私もなんだかんだで言い寄ってはいるけどね』
「へぇ~~」
不敵な笑みを浮かべる氷華にジト目を亮人へと向ける礼火。そんな二人をよそにシャーリーは亮人へと抱きついたまま、顔を胸へと埋めている。
「はは……」
前途多難といった表情を浮かべながら亮人はシャーリーを抱きかかえて、ソファに座らせる。ただ、そんな亮人にシャーリーは頬を膨らませながら、
『お兄ちゃんのケチっ!!』
と文句をつく。
「そんなことを言う子には晩御飯は抜きにするよ?」
『……もう、わかったよぉ』
「いい子だね」
『へへへ』
優しい笑みを浮かべながらシャーリーの頭を撫でる亮人。そんな風景を依然とジト目で見つめる礼火。ただ、その数秒後には諦めるかのようにため息を吐き、手にしていた買い物袋をダイニングテーブルに乗せる。
「亮人の怪我も治ったことだし、今日は久しぶりにみんなでご飯が食べたくて来ちゃったんだけど、大丈夫だった?」
『そんなのいいに決まってるじゃない。それに私たちが決めることじゃないし、亮人がそれでよかったらいいわよ。亮人のためにしてくれるんでしょ? 嫌なんて言うわけないわよ』
「ありがと、氷華。シャーリーもいい?」
『シャーリーはお兄ちゃんが楽しんでくれればなんでもいいよ~。ねー、クロ』
「ミャァァ」
欠伸をしながら、返事をするクロは「どうでもいい」といった雰囲気を醸しながらシャーリーの膝上へと鎮座した。
「それにもうそろそろクリスマスだからね。クリスマスはどうするのかなって思って、みんなに聞きたかったの。亮人、クリスマスの予定はどうなってるの?」
「クリスマスは三人で買い物に行こうかなって。氷華は新しいエプロンが欲しいって朝教えてくれたし、シャーリーにも何か買ってあげようと思って、みんなで行くつもり。礼火も一緒に行く? 氷華、今日はカレーにするから準備手伝ってくれる?」
『もちろん、いいわよ?』
二人で調理を始める風景を礼火は後ろから眺める。
いいなぁ……前までは私があそこに立つ予定だったんだけどな……。
まるで夫婦のように楽しげに料理を作っている二人の後ろ姿は礼火の心を締め付ける。ただ、そこに礼火が付け入る隙はない。
「私も料理ができればなぁ……」
普段から亮人や母親にご飯を作ってもらっているからか、料理が苦手な礼火。亮人との関係が変わったら一緒に教えてもらいながら、楽しい生活を送ろうと考えていたけど、先を越された。
『なら、礼火も手伝ってくればいいのに』
「できれば、とっくにしてるよ……けど、なんかこうも仲がいいところを見てると入れないよ……」
『そうかなぁ? なら、こうすればいいだけだよね?』
シャーリーは礼火の手を取り、
『お兄ちゃん~みんなでご飯作りたいなっ!!』
「んっ? そうだね、その方が早く終わるかもしれないね。なら、シャーリーと礼火もこっちに来て一緒に作ろっか」
優しく微笑む亮人の表情が礼火の心を暖かくする。同時に手を握って連れて来てくれたシャーリーの耳元で、
「ありがとね」
と囁くとシャーリーは亮人にしたように礼火にも抱きついた。シャーリーも礼火と同じように
『ううん……礼火もありがと。私ね……これからもみんなとずっと楽しくいたいな』
「うん、私もみんなとずっといたいよ」
「二人とも、手伝ってくれないのー?」
「いま行くっ!!」
『手伝うよっ!!』
亮人の視線は目の前の料理に向けているから、二人の光景を見ていない。後ろからバタバタと走り駆け寄ってくる二人の仲睦まじい様子を亮人は知らない。
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