妖魔のCHILDREN〜孤独な少年は人外少女たちの子作りの為に言い寄られながら彼女らを守る〜

将星出流

文字の大きさ
上 下
52 / 110
暖かい日常

暖かい日常V

しおりを挟む
久々の学校を終え、机に突っ伏している礼火がいた。寝息をたてながら笑みを浮かべる彼女の頬を突く亮人。

「礼火……そろそろ帰るよ」

「ふぁぁぁ?」

「ほら、リュック背負って帰るよ?」

「わふぁったぁぁ」

 礼火にリュックを背負わせると亮人は自ら礼火の手を引いて教室から出ていく。

「今日はうちに来るの? 来るなら材料買いに行きたいんだけど、どうする?」

「今日も亮人のお家にいく~」

「はいはい、礼火は何が食べたいのかな?」

「う~ん…………オムライスがいいなぁ」

「オムライスね」

 礼火は寝ぼけ眼を片手でこすりながら亮人に連れられる。その姿は子供が親に迷子にならないよう手を繋がれているようだ。小さな歩幅で亮人に合わせる礼火は忙しなく歩く。

「亮人歩くの早いよぉ~」

「あっ、ごめんごめん」

「ありがと~、亮人はいつも優しいから嬉しいよ~」

「ほら、氷華たちもご飯待ってるんだから早く帰るよ?」

「はぁ~い」

 帰宅途中、氷華と出会った神社の前を通り、濃い二ヶ月を思い出す。
 氷華にシャーリー。彼女たちに出会ったからか、色々と考え耽る時間が増えた。
 家族のことや生活のこと、自分の今後についても、この一週間の時間の中で自然と考えるようになっていた。

 自分が彼女たちにできることがなにか……。

 自分にとって家族がなんなのか……。

 自分が生活する上で今後、どう立ち回っていく必要があるのか。
 麗夜が言っていた妖魔殺し。
 これから氷華やシャーリーを襲うかもしれない存在を認識するが、それが杞憂に終われば一番いい。しかし、万が一を考えないといけない。
 そんなことを考えながら歩いていると、目の前には麗夜と氷華が死闘を繰り広げた公園、亮人と家族の思い出があった公園が広がり、立ち止まる。

「…………亮人、まだ気にしてるの?」

「ううん……大丈夫だよ。ただ、いろんなこと考えてて……」

「いろんなこと?」

「そう、いろんなこと」

「……………………そっか」

 亮人の手を握っていた礼火の手に力が込められた。
 その意味を亮人はわかっている。だから、彼女の手を強く握り返した。そんな状況の中、亮人と礼火の視線の先、公園の中心に一人の男子が立っていた。
 周りを見渡しながら、何かを探すような素振りを見せる彼。

「あの人、何か探してるのかな?」

「……どうかな。探してるんだろうけど……」

 この時、脳裏には麗夜の言葉が復唱された。

「妖魔殺し……」

 このフレーズが思い浮かび、亮人は歩く速度を上げた。彼から逃げるように礼火の手を引っ張りながら。

「あ、亮人?」

「少し静かにして」

「わ、わかった……」

 亮人の声音はさっきまでの柔らかなものではなかった。
 礼火の手を握る力は少しずつ強まり、公園から100M離れたあたりから弱まっていった。

「どうかしたの?」

 不安そうに下から見つめる礼火の瞳には麗夜と戦った時を彷彿とさせるものがあった。亮人の変化に敏感な彼女には、目の前にいる彼が何を考えているのか、何を感じているのかがわかっているのかもしれない。

「いや……思い過ごしだといいんだけどね……ちょっと考えすぎなのかもしれない。気にしないでいいよ」

「でも……」

「大丈夫…………何かあった時は俺が必ずなんとかするから」

「……うん」

 笑みを浮かべる亮人に礼火はそれ以上何も言わない。これ以上、無理に聞いても意味がないことは彼女が一番理解していた。

 前と同じだよ……亮人……。

 そう心で呟いた礼火だが、

「亮人っ!! 早く帰らないと二人が待ってるんでしょ? 急いで買い物しちゃお?」

「あっ、そうだった急いで買い物して帰らないと」

 今度は礼火が亮人の手を引くように走り出す。

 大丈夫……亮人のことは絶対に守るから。亮人だけに辛い思いさせないから……。

 礼火は亮人の手を離さないように再度、力を込めて手を握る。

「礼火っ、手が痛いって」

 そんな亮人の言葉は礼火の耳には届かなかった。
 ただ、そんな後ろ姿を見つめていた亮人は心なしか安心感を感じた。
 そんなに心配しなくて大丈夫だよ。もう、傷つけないから……。
 だから、もう一度亮人からも礼火の手を握り返した。その力は礼火の潰すような力ではなく、感謝からくる優しさの力だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...