妖魔のCHILDREN〜孤独な少年は人外少女たちの子作りの為に言い寄られながら彼女らを守る〜

将星出流

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暖かい日常

暖かい日常Ⅱ

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 異様な寒さを感じさせる翌日の朝五時。亮人のベッドには愛猫のクロが入り込んでいた。爪を立て、亮人の洋服を引っ掻き回すそんなクロに亮人は文句も言わず、抱きかかえ、

「まったく、クロは仕方がないなぁ……」

 と口にしながら起き上がり、いつものようにカーテンを開いた。その眼前に広がっていた光景に

「………綺麗だなぁ」と言葉を亮人は漏らした。

 亮人の眼の前に広がるのは、一面に広がる白い世界だ。道路も目の前にある家の天井も真っ白に染められ、氷柱ができているほどだ。冬を感じさせる光景に亮人は、年終わりが近づいてきているのを感じた。
 今年も何事もなく、ただ平凡な日常を送ると思っていた亮人。だが、そんな亮人の目の前に現れた二人の少女。彼女たちが亮人の日常を変え、大切なものを感じさせた。考え耽るように亮人は窓越しに夜中の空を見上げ、心の中で来年も楽しい一年でありますようにと亮人は祈ったのである。

「さて、そろそろ下に行ってニュースでも見ようかな?」

 ドアを開き、一階のリビングへ着くなりテレビをつけた。テレビで流れるニュースは来週に控えたクリスマス特集が多く、肝心な情報が手に入らなかった。ただ、そういった中でもクリスマスプレゼントについてのニュースだけが耳に残る。

《プレゼントするなら、その人にあったデザインの装飾品を渡すと好印象を持たれますよっ!》

 という、笑顔のニュースがあった。

 ……本当かな?

 疑問を考えながらも、一応候補に入れておこうと頭の隅に入れた亮人は寝ぼけている頭を起こすために顔を洗う。水道から流れてくる水は氷水のように冷たく、氷華を連想させた。冷たく冷えた体とは裏腹に暖かく優しい心を持っている彼女に亮人は安心させてもらっている。学校に行っている間はシャーリーの面倒を見てくれ、家事や掃除も多くのことを努力してくれている。そして、帰って来れば、シャーリーと二人で『おかえり』と家に迎えてくれる。そんな幸せをくれているのも、氷華と出会えたからだと亮人は思った。

『今日も早起きしてるのね、亮人』

「ーーーーーーっ!!」

 そんな考えを巡らせていると白い装束を纏った氷華が亮人を後ろから抱きしめた。
 亮人の背中に当たる二つの物体が抱きつくことで変形し、その感触に慌てふためく亮人。

『そんなに驚かなくてもいいじゃない。そろそろ慣れてくれないと私としては困るのよね、もう……』

「そんなこと言われても、俺は健全な男子高校生なんだよ!? 慌てるよっ!」

 心底残念そうに氷華はためため息をつきながら、亮人から離れた氷華は話題を変えるように、

『外……雪が降ってるみたいね』

「もう十二月だからね。それにクリスマスも近いし、もしかしたらこのまま続いてホワイトクリスマスを迎えられるかもしれないよ?」

 顔を赤く染めながら俯く亮人をクスッと笑みを浮かべて笑う氷華。朝が早い中、こうした仲睦まじい光景に亮人の心は温かくなる。
 顔を拭いた亮人が氷華へ振り返ると、亮人の唇はひんやりとした感触の柔らかいものに塞がれる。

「っ!?」

『んっ…………はぁ……』

「んっっ!! んんーーーーっ!!」

 氷華の肩を掴み、体から話そうとするも妖魔の力は普通の人間とは一線を越えるほどだ。亮人は剥がそうとするも剥がせず、悶えるだけ。数十秒と続くキスに息苦しさを感じながらも、諦め始めた頃に救世主が現れる。

「ニャァァ」

 氷華の寝間着を引っ張るようにクロが助けてくれる。

『クロったら、今は邪魔したらダメでしょ?』

「っぷは!!」

「ニャァァ、ニャゴ」

 今度は亮人の服を引っ掻き回すように爪を立て、餌を入れる容器をポンポンと柔らかな肉球で叩く。

「あぁ、ご飯ね……」

 助けてくれたわけじゃないんだね……。

 目の前の愛猫は助けたわけではなく、お腹が減ったからご飯を要求するために氷華との間に入ったのだと感じ、少しガッカリする。ただ、そのおかげで氷華から離れることができた亮人は、

「氷華もそんなことばっかりしてないで、一緒に朝ごはん作るよ? 今日も簡単にスクランブルエッグとオニオンスープにするから。」

『もう……わかったわよ。そしたら、先に玉ねぎ切っておくわよ。』

 素っ気なく顔を逸らし、氷華は料理の準備を始めた。

「それにしても、氷華と会ってから一カ月以上経つんだね。楽しい時間ってあっという間だったね。」

『まぁ、会ってから色々とあって驚いたし、大変だったけどね。』

 出会ってからここまでの短い時間の中で、色々なことがあった。
 シャーリーに出会って、家の中ではいろんなハプニングがあったり、麗夜と樟との死闘。
あの麗夜たちとの死闘の影響は色んなところに出た。家は一部半壊、町や公園は多数壊れるといったことがあり、ニュースにも取り上げられるくらいだ。たまたま、目撃した人はいなかったことが救いではあった。しかし、

「妖魔殺し……か。」

 麗夜たちが教えた妖魔殺し。
 妖魔に異常な恨みを持つ人間による妖魔狩り。
 麗夜たちから忠告されたことで初めて知った情報だが、亮人はそのことに対して深くは考えないようにしていた。

 せっかく守れた家族なんだ……また、壊そうとする奴が来たら……。

 そのことを考えるだけで亮人の心の底には触れてはいけない悍ましいものが膨れ上がる。そのことを理解していたからこそ、亮人は考えないようにしていた。

『亮人……どうかしたの?』

 隣に立ち、料理の準備をしていた氷華は異様な雰囲気を感じ取ったのか、心配そうに亮人を見入る。
 知らない間に力が入っていた亮人の右手へと氷華の冷たくも、優しく触れる手が自然と力んでいた右手をほぐしてくれる。

「なんでもないよ。なんか、心配させちゃったかな?」

「本当? 亮人……私たちには嘘とか我慢とかしないようにしなさいよ? 私たちはいつでも亮人のそばにいるから。それだけは分かっててね。」

 優しく微笑む氷華の表情に、

「ありがとう、氷華。」

 握られている右手で氷華の柔い手を握り返した。

『おはよぉぉ……あああーーっ!! お姉ちゃんだけずるいよっ!! 私もお兄ちゃんとイチャイチャしたいっ!!』

 そこに寝ぼけ眼で起きてきたシャーリーが加わり、賑やかになったのは言うまでものない。
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