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襲撃者
襲撃者XV
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目の前で地面へと倒れている亮人がいきなり変なことを口にしたのだ。それは妖魔である氷華やシャーリーに掛けた言葉。ただ、それを人である麗夜に言うのはどうかと思った。
だが、亮人の言葉はまだ続く。
「麗夜君……いま、どうやって暮らしてるの?」
「いや、暮らしてるって言っても俺は家が無いし……」
「だったら、俺の家に九尾と一緒に来なよ。俺はいつでも歓迎だからさ」
『『……………………………』』
この時の氷華たちは、何を言ってるの……? という表情で固まっていた。
敵を突然、家に招き入れるなんてことは普通ならしないのに、目の前に倒れている亮人と言えば、そんなことを平然としてしまおうとしているのだ。これに固まらない奴などいるのだろうか。
ただ、そんな亮人の提案を聞いた麗夜本人は笑いを堪えるのに必死と言った感じで、口を手で押さえていた。
「…………はは、アハハハっ! 本当に変な奴だな、あんたって。普通なら絶対そんなこと言わないって、ハハハ。おかしくて腹が捩ねじれそうっ」
笑いを堪えきれなくなった麗夜が腹を抱えながら笑い出すと、亮人は「なんで笑うの?」と、訝しげに麗夜を見つめ直す。
「あんたの提案は凄く面白くていいけどよ、遠慮させて貰うわ」
目尻に溜まった笑い涙を指先で拭う麗夜は未だに腹を抱えながら口にした。
「俺はまだ行きたいところとかもあるし……それに、そこの妖魔たちが物凄い勢いで俺の事を睨んできてるからな。あんたの家にまで行って邪魔するのも悪い」
「二人とも……そんなに警戒しなくてもいいのに」
亮人が倒れながらも、にこやかに二人へと笑顔を向けたがそんな亮人の笑顔とは裏腹に氷華たちは亮人を守るように麗夜との間に割り込んでくる。
『今回はお兄ちゃんが良いって言うから殺さないけど、次にお兄ちゃんの事を傷つけた時は絶対に殺すから』
『私も次に亮人の所に来たら、真っ先に殺しに行くから覚悟しなさいよ?』
そして、氷華は亮人をシャーリーの背中に乗せれば家へと帰り始める。
『あんたは家で療養しないといけないわよ? これから一週間は家で絶対安静……良いわね?』
「もう……その眼つきから強制だよね、絶対……」
『当たり前……』
亮人を睨んでいる氷華は、睨むのと同時に瞳に涙を浮かべながら亮人を抱きしめた。
体をひんやりと冷やす氷華の体温は今の亮人には丁度いいくらいだ。
抵抗する事もなく亮人は氷華に抱かれ、そしてシャーリーの背中に乗せて貰っている。
ただ、亮人は顔だけを麗夜の方へと向ければ、
「困ったことがあったら、いつでもうちに来ていいからね! いつでも話聞くからー」
微笑みかける亮人の視線の先には、照れくさそうに頬を掻いている麗夜がいる。
そして、そんな亮人に溜息を漏らす氷華たちは家への帰路を静かに就く。その間に亮人はシャーリーの背中で静かな寝息を立てながら眠りに就いていた。その時の亮人の寝顔を見ていた氷華はシャーリーを呼ぶなり、亮人の寝顔を見せる。
シャーリーは亮人の寝顔を見るなりクスクスと笑い、それと一緒に氷華も笑顔を浮かべる。
あんなに激しい戦いがあった後だというのに、この二人はたった一人の人間の寝顔を見ただけで笑顔を浮かべることが出来ているのだ。
『お兄ちゃんって不思議だよね? シャーリー達にこんなに優しいんだから』
『まぁ、それが亮人の良い所なのよ。誰に対しても優しい……本当にそんなことが出来る人なんか、たぶんこの世の中に本当にいるのかって思うくらいなんだから』
氷華はそう呟きながら亮人の顔をちょんっ、と指先で突いた。
『幸せそうな顔で寝ちゃって……そんな亮人を見てる私たちなんかもっと幸せなんだからね?』
悪戯いたずらをするように突く氷華の瞳からは自然と溜まっていた涙が亮人の寝顔へと落ちた。
『シャーリー……』
氷華が声を震わせながらシャーリーを呼ぶなり、
『私達で亮人の事をこれからも守って行くわよ……どんなに辛いことがこれからあっても、絶対に亮人だけは私達で守って行こう……』
と、強い意志と覚悟を孕んだ言葉を震わせながらも言い切った。
そんな氷華の言葉を聞いていたシャーリーは、何も言わずにただ頷くだけ。
でも、シャーリーの瞳から流れる涙はポタポタと地面へと落ちていて、地面は点々と濡れているのが氷華から見えた。
そして、シャーリーが一言、
『シャーリー達と出会ってくれてありがとう……お兄ちゃん』
震えている声には嗚咽も混ざっていたが、たったそれだけの言葉には多くの感情が含まれていて、氷華も無言で頷く。
この時、二人の妖魔はいるか分からない神に感謝の言葉を口にした。
『『この人に逢わせてくれてありがとう……』』
そして、三人は家へと無事に帰ることができた。
その途中で、家の前で足を凍らせられていた九尾を自由にすると、
『ありがとう……』
と口にして、颯爽と麗夜がいる方へと走って行った。
そして、今日という長くも短かった一件は終わった。
たったの数時間。そのたったの数時間には信じられない位の言葉と感情がぶつかり合った。でも、それで分かり合えることもできた。
『シャーリー、亮人に包帯巻くから手伝って』
『今度はシャーリーが巻いていいんだね……優しく巻いてあげなきゃっ!』
家の中では深い眠りに就いている亮人を看病している二人の妖魔。
それからと言うもの、氷華たちは亮人を二階の部屋へと運ぶなりと、亮人と一緒にベッドで眠りに就いた。
三人は仲良く川の字で静かに眠りに就いたのだ。
だが、亮人の言葉はまだ続く。
「麗夜君……いま、どうやって暮らしてるの?」
「いや、暮らしてるって言っても俺は家が無いし……」
「だったら、俺の家に九尾と一緒に来なよ。俺はいつでも歓迎だからさ」
『『……………………………』』
この時の氷華たちは、何を言ってるの……? という表情で固まっていた。
敵を突然、家に招き入れるなんてことは普通ならしないのに、目の前に倒れている亮人と言えば、そんなことを平然としてしまおうとしているのだ。これに固まらない奴などいるのだろうか。
ただ、そんな亮人の提案を聞いた麗夜本人は笑いを堪えるのに必死と言った感じで、口を手で押さえていた。
「…………はは、アハハハっ! 本当に変な奴だな、あんたって。普通なら絶対そんなこと言わないって、ハハハ。おかしくて腹が捩ねじれそうっ」
笑いを堪えきれなくなった麗夜が腹を抱えながら笑い出すと、亮人は「なんで笑うの?」と、訝しげに麗夜を見つめ直す。
「あんたの提案は凄く面白くていいけどよ、遠慮させて貰うわ」
目尻に溜まった笑い涙を指先で拭う麗夜は未だに腹を抱えながら口にした。
「俺はまだ行きたいところとかもあるし……それに、そこの妖魔たちが物凄い勢いで俺の事を睨んできてるからな。あんたの家にまで行って邪魔するのも悪い」
「二人とも……そんなに警戒しなくてもいいのに」
亮人が倒れながらも、にこやかに二人へと笑顔を向けたがそんな亮人の笑顔とは裏腹に氷華たちは亮人を守るように麗夜との間に割り込んでくる。
『今回はお兄ちゃんが良いって言うから殺さないけど、次にお兄ちゃんの事を傷つけた時は絶対に殺すから』
『私も次に亮人の所に来たら、真っ先に殺しに行くから覚悟しなさいよ?』
そして、氷華は亮人をシャーリーの背中に乗せれば家へと帰り始める。
『あんたは家で療養しないといけないわよ? これから一週間は家で絶対安静……良いわね?』
「もう……その眼つきから強制だよね、絶対……」
『当たり前……』
亮人を睨んでいる氷華は、睨むのと同時に瞳に涙を浮かべながら亮人を抱きしめた。
体をひんやりと冷やす氷華の体温は今の亮人には丁度いいくらいだ。
抵抗する事もなく亮人は氷華に抱かれ、そしてシャーリーの背中に乗せて貰っている。
ただ、亮人は顔だけを麗夜の方へと向ければ、
「困ったことがあったら、いつでもうちに来ていいからね! いつでも話聞くからー」
微笑みかける亮人の視線の先には、照れくさそうに頬を掻いている麗夜がいる。
そして、そんな亮人に溜息を漏らす氷華たちは家への帰路を静かに就く。その間に亮人はシャーリーの背中で静かな寝息を立てながら眠りに就いていた。その時の亮人の寝顔を見ていた氷華はシャーリーを呼ぶなり、亮人の寝顔を見せる。
シャーリーは亮人の寝顔を見るなりクスクスと笑い、それと一緒に氷華も笑顔を浮かべる。
あんなに激しい戦いがあった後だというのに、この二人はたった一人の人間の寝顔を見ただけで笑顔を浮かべることが出来ているのだ。
『お兄ちゃんって不思議だよね? シャーリー達にこんなに優しいんだから』
『まぁ、それが亮人の良い所なのよ。誰に対しても優しい……本当にそんなことが出来る人なんか、たぶんこの世の中に本当にいるのかって思うくらいなんだから』
氷華はそう呟きながら亮人の顔をちょんっ、と指先で突いた。
『幸せそうな顔で寝ちゃって……そんな亮人を見てる私たちなんかもっと幸せなんだからね?』
悪戯いたずらをするように突く氷華の瞳からは自然と溜まっていた涙が亮人の寝顔へと落ちた。
『シャーリー……』
氷華が声を震わせながらシャーリーを呼ぶなり、
『私達で亮人の事をこれからも守って行くわよ……どんなに辛いことがこれからあっても、絶対に亮人だけは私達で守って行こう……』
と、強い意志と覚悟を孕んだ言葉を震わせながらも言い切った。
そんな氷華の言葉を聞いていたシャーリーは、何も言わずにただ頷くだけ。
でも、シャーリーの瞳から流れる涙はポタポタと地面へと落ちていて、地面は点々と濡れているのが氷華から見えた。
そして、シャーリーが一言、
『シャーリー達と出会ってくれてありがとう……お兄ちゃん』
震えている声には嗚咽も混ざっていたが、たったそれだけの言葉には多くの感情が含まれていて、氷華も無言で頷く。
この時、二人の妖魔はいるか分からない神に感謝の言葉を口にした。
『『この人に逢わせてくれてありがとう……』』
そして、三人は家へと無事に帰ることができた。
その途中で、家の前で足を凍らせられていた九尾を自由にすると、
『ありがとう……』
と口にして、颯爽と麗夜がいる方へと走って行った。
そして、今日という長くも短かった一件は終わった。
たったの数時間。そのたったの数時間には信じられない位の言葉と感情がぶつかり合った。でも、それで分かり合えることもできた。
『シャーリー、亮人に包帯巻くから手伝って』
『今度はシャーリーが巻いていいんだね……優しく巻いてあげなきゃっ!』
家の中では深い眠りに就いている亮人を看病している二人の妖魔。
それからと言うもの、氷華たちは亮人を二階の部屋へと運ぶなりと、亮人と一緒にベッドで眠りに就いた。
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