妖魔のCHILDREN〜孤独な少年は人外少女たちの子作りの為に言い寄られながら彼女らを守る〜

将星出流

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襲撃者

襲撃者XⅠ

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 麗夜は後ろを振り返らずにただ一言口にするだけ。たったそれだけで、麗夜を守るかのように背中から炎が一気に燃え盛る。
 麗夜の背中へと突き刺さろうとしていた氷槍は一瞬にして蒸発する。ただ、今投げつけた氷槍は氷華が咄嗟に投げたものだったことで本気だった。
 それを麗夜はすんなりと溶かしてしまったのだ。

『――――――なっ!』

『お姉ちゃんっ! 次が来るよっ!』

 驚いている暇なんてない。次々と飛んでくる白い炎は数を増やしていき、それをシャーリーが避け、その進行方向に合わせて足場を作る。避けきれない炎は氷華が分厚い氷壁を作って時間を稼ぐことでどうにかしていた。
 近づこうにも近づけない状況。シャーリーたちは防戦一方になるだけ。

『埒らちが明かないわね……この状況はッ!』

『それはシャーリーも同感ッ!』

 何本と氷華は氷槍を手に持ち、そしてシャーリーは九尾に疾走していく。

『貴方達が決めに来るなら、私も決めに行くわよッ!』

 両者が決死に覚悟を決めると、出力最大の攻防が始まった。
 氷華は右手に巨人でも殺すのかと言いたくなるような大きすぎる氷槍を握り、左手には小さな結晶を握り締める。そして、九尾は九本の尾を一つに束ね、一点集中させる白い炎は本当の太陽のように光を放つ。
 これから先は真っ向勝負だ。
 力と力のぶつかり合い。
 両者が相対すると、そこは静寂に包まれた。何も音がしない中で睨み合う。
 そして、瓦礫が地面へと落ちる音。それが響いた瞬間に決死の殺し合いは始まった。
 一撃必殺。
 それだけを掲げて、氷華たちは九尾へと近づいていき巨大な氷槍を九尾へと突き立てに行く。
 それと同時に九尾も尾を束ねて作った白く巨大な火炎球を氷華たちへと放っていた。
 全てを燃やし尽くさんとする白き炎に、巨大な氷槍を片手に白き炎へと駆けて行く氷華たち。
 そんな二人は静かに白い炎の中へと吸い込まれていった。
 その瞬間に九尾は勝ちを確定させた。あの炎の中で生きて行けるのは麗夜だけ。九尾の主人である麗夜だけが、あの炎の中で生きていける。

『私の勝ちよ……』

 それから背を向けた九尾は麗夜が走って行った方へと走ろうとする。
 ただ、走ろうとしたのはいいが体が動かなかった。

『……………どういうことなのかしら』

 九尾の体が動かなくなったのは足元が氷漬けにされているからだ。ただ、そんな氷を使う氷華はあの炎の中に突っ込んで塵も残さずに死んだはず。

『今度も私の勝ち……どう? 屈辱よね、九尾?』

『シャーリーたちが一致団結すれば、あんたなんか目じゃないんだから』

 そんな声が聞こえたと思うと、次には何かが大きく割れるような音が響いてきた。
 それは元々丸い球体で、とてつもない熱量を持っていたものだ。白い氷と化した物体は無残にも砕け散り、その破片は九尾の足元へと飛んで来る。

『もしかして……あれを凍らせたっていうの……貴方達は』

『もちろん、その通りよ。私があんたに真正面から戦って勝てるはずが無いじゃない。だから、私は少しだけズルをさせてもらったわ』

 九尾の喉元に氷槍を突き付けながら力強く握っていた左手を氷華は開くと、そこには未だに溶けていない小さな結晶がある。ただ、その結晶は炎に突っ込んでいった時よりも多少だが小さくなっていた。

『これは私たち雪女が大切に守ってきた『絶対零度』っていう結晶……自分達が危険な状況に陥った時に逃げる為に使う代物で、これはどんなに熱を持っているものだろうと凍らせることが出来るのよ……ただ、今ので使い過ぎたから、あと二回も使えるか分からないけど……』

 小さな結晶はそのまま氷華の左手に吸い込まれるように消えていく。

『私たちはあんたのことは殺さないわよ。亮人がそんなこと望むはずが無いし、私達も無駄に命を消すことも無いだろうから』

 氷華は氷槍を地面へと投げ捨てると、九尾を殺さずに麗夜が向かって行った方へとシャーリーと一緒に向かった。
 ただ、そんな時に後ろから、

『貴方達には悪い事をしたわね……』

 という、潔いさぎよい九尾の声が聞こえた。
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