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襲撃者
襲撃者Ⅶ
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お兄ちゃんがこんな顔するなんて思わなかった……。
心の中で呟くシャーリーはこの目の前に広がる光景を見た時よりもずっと驚いた。
シャーリーは体を人へと変えれば、亮人の手をそっと握る。そんなシャーリーに亮人もそれに合わせて握り返す。ただ、握り返す時の力が優しい物じゃなく、何かを壊すような力強いものでシャーリーは一瞬だけ苦痛に顔を歪ませた。
少しぐらい我慢しなきゃ……お兄ちゃんの方が辛いんだから……。
それからシャーリーは亮人の手を握りながら亮人へと体を寄せた。
『お兄ちゃん……大丈夫だから。もう、こんなことが起こらない様にシャーリーがどうにかするから……だからお願い、そんな顔しないで……』
シャーリーは亮人の顔を見上げる。そして、その時の亮人の表情を見ているだけでも胸のあたりに鋭い痛みが走る。
シャーリーの視線の先にいる亮人はもう違う人に見えた。
いつもの優しい表情を浮かべていた亮人の面影は消えて、何かを憎むような悍ましい表情を浮かべていたのだ。
「俺って……何か悪いことしたのか……どうして、こんなことになるんだ……?」
沈んだ声は亮人自身をより深い部分へと誘うように思えた。
「ただ……俺は家族が増えればいいなって思っただけなんだ……それの何が悪い……何でこんな思いしなきゃいけないんだよっ!!」
ぽろぽろと落ちる涙は亮人へと抱き着いていたシャーリーの頬へと落ちる。そして、そんな言葉を耳にしたシャーリーも涙を流す。
『お兄ちゃん、ごめんね……私がお兄ちゃんの所に来たから……私がお兄ちゃんの所に来なきゃ、こんなことにならなかったのに……』
もう謝ることしか出来なかった。
シャーリーが出来ることは何もない。事はもう起こってしまった。もう時間は巻き戻せない。
ただ、そんな時でも亮人は自然とシャーリーの頭へと乗せて撫でた。でも、亮人は無言で撫でるのだ。笑顔を浮かべず、ただ苦痛に歪んだ顔で撫でるのだ。それは無理をしていると言っているような表情で。
『お兄ちゃん、撫でなくていいよ……シャーリーには撫でられる権利なんてないから……』
目の前に広がる光景を見ている亮人はその場で座り込むと、何かを吐き出す様に口にする。でも、それはあまりにも小さな声でシャーリーですら聞き取れなかった。
『シャーリーは家を見てくるね……お姉ちゃんがいるかもしれないから』
万が一の可能性を信じてシャーリーは座り込む亮人を見つめてから金色の狼へと姿を変え家の方へと走り出す。
後ろでは目の前に広がる焼け野原を見つめながら、絶望したかのような表情でいる亮人がいる。
『お兄ちゃん……ごめん……』
家に着くまでの間、ずっとこれだけを往復して口にするシャーリー。
そして、少しずつ近づいて来る家へと着く直前、家の前に一人の子供を見つけた。そして、その後ろにいる一匹の傷ついた九尾を。
お兄ちゃんの大切な場所を壊した奴は殺すっ!
罪滅ぼし。
そう覚悟を決めたシャーリーはこれまで以上に速度を上げて九尾へと走り出す。それは目にも止まらない速さで……。
そして、再び戦闘が始まった。
心の中で呟くシャーリーはこの目の前に広がる光景を見た時よりもずっと驚いた。
シャーリーは体を人へと変えれば、亮人の手をそっと握る。そんなシャーリーに亮人もそれに合わせて握り返す。ただ、握り返す時の力が優しい物じゃなく、何かを壊すような力強いものでシャーリーは一瞬だけ苦痛に顔を歪ませた。
少しぐらい我慢しなきゃ……お兄ちゃんの方が辛いんだから……。
それからシャーリーは亮人の手を握りながら亮人へと体を寄せた。
『お兄ちゃん……大丈夫だから。もう、こんなことが起こらない様にシャーリーがどうにかするから……だからお願い、そんな顔しないで……』
シャーリーは亮人の顔を見上げる。そして、その時の亮人の表情を見ているだけでも胸のあたりに鋭い痛みが走る。
シャーリーの視線の先にいる亮人はもう違う人に見えた。
いつもの優しい表情を浮かべていた亮人の面影は消えて、何かを憎むような悍ましい表情を浮かべていたのだ。
「俺って……何か悪いことしたのか……どうして、こんなことになるんだ……?」
沈んだ声は亮人自身をより深い部分へと誘うように思えた。
「ただ……俺は家族が増えればいいなって思っただけなんだ……それの何が悪い……何でこんな思いしなきゃいけないんだよっ!!」
ぽろぽろと落ちる涙は亮人へと抱き着いていたシャーリーの頬へと落ちる。そして、そんな言葉を耳にしたシャーリーも涙を流す。
『お兄ちゃん、ごめんね……私がお兄ちゃんの所に来たから……私がお兄ちゃんの所に来なきゃ、こんなことにならなかったのに……』
もう謝ることしか出来なかった。
シャーリーが出来ることは何もない。事はもう起こってしまった。もう時間は巻き戻せない。
ただ、そんな時でも亮人は自然とシャーリーの頭へと乗せて撫でた。でも、亮人は無言で撫でるのだ。笑顔を浮かべず、ただ苦痛に歪んだ顔で撫でるのだ。それは無理をしていると言っているような表情で。
『お兄ちゃん、撫でなくていいよ……シャーリーには撫でられる権利なんてないから……』
目の前に広がる光景を見ている亮人はその場で座り込むと、何かを吐き出す様に口にする。でも、それはあまりにも小さな声でシャーリーですら聞き取れなかった。
『シャーリーは家を見てくるね……お姉ちゃんがいるかもしれないから』
万が一の可能性を信じてシャーリーは座り込む亮人を見つめてから金色の狼へと姿を変え家の方へと走り出す。
後ろでは目の前に広がる焼け野原を見つめながら、絶望したかのような表情でいる亮人がいる。
『お兄ちゃん……ごめん……』
家に着くまでの間、ずっとこれだけを往復して口にするシャーリー。
そして、少しずつ近づいて来る家へと着く直前、家の前に一人の子供を見つけた。そして、その後ろにいる一匹の傷ついた九尾を。
お兄ちゃんの大切な場所を壊した奴は殺すっ!
罪滅ぼし。
そう覚悟を決めたシャーリーはこれまで以上に速度を上げて九尾へと走り出す。それは目にも止まらない速さで……。
そして、再び戦闘が始まった。
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