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恋敵
恋敵VⅢ
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礼火はそのことをちゃんと聞いていなかったから、こうやって強く言い切れる。
さっきも亮人は氷華たちに対して、あやふやだったが否定しているような部分は無かった。
『亮人の事を大切に思ってくれてるのはよくわかってるわよ。この一週間、ずっとあんたの近くで生活してきたんだから。でもね……私達も未来が懸かってるのよ』
この三人の中では一番年上に見える氷華は、表面は冷静でありながらも、
『私たち妖魔は人間としか子供が作れない。妖怪の子供は異種間であってもどちらかの特性を持った子供が生まれるからいいけど、私達は一種としか子供は産めない。それも人間じゃないといけないって制約があって尚更、私達は子孫を残して行かないといけない。それの重要差があんたに分かるって言うの?』
強い口調。これまでの氷華なら、ここまで押し切るような口調はしなかった。だが、いきなりあーだこーだ文句を言われたのが癪だったらしい。
『そうだよっ! シャーリー達だっていろいろと苦労してる中でこうやってお兄ちゃんを見つけてきたんだからっ!』
そんな強気の氷華の後ろに回ったシャーリーは隠れながらも、礼火に反抗する。
二対一。この状況は礼火に不利で、しかも相手は妖魔。喧嘩をすると言っても絶対に勝てるわけがない。
そんないがみ合いの中で一階のキッチンからは香ばしい匂いがしてくると同時に、
「みんなー、ご飯出来たから降りてきて―」
と、亮人の場を和ませるような声が聞こえてきた。
『この話は後にして、先に私たちは亮人の料理を食べに行くわよ。亮人にこれ以上、余計な心配ごとを増やさない為にも』
そそくさと足を一階へと向けた氷華は凛とした声で、
『今から行くからご飯よそっておいて!!』
とキッチンにいる亮人へと言って、階段を降りて行った。
そして、そんな氷華の後ろを着いて行くようにシャーリーも階段を降りて行き、料理が並べられている食卓へと急いでいく。
ただ、そんな二人を見つめていた礼火は氷華が最後に口にしたことを思い出す。
『これ以上、余計な心配ごとを増やさない為にも』
これを聞いただけでも、あの二人が亮人に対して害がない事は分かった。
少しでも危害を加えるようなら、礼火自身が亮人に無理をしてでも彼女たちを追い出すように言うつもりだった。
だが、もう言うつもりはなくなった。
彼女達が亮人に対してどれだけの信頼を置いているのかも、さっきの話で理解できたから。
二人が降りて行ってからまだ二分ぐらいしか経っていないが、下からは亮人が心配したような声音で、
「礼火―、晩ご飯食べるよ? 早くしないと礼火の分のご飯も食べちゃうけどいいのー?」
おふざけ半分といったところだろう。亮人はそんな声音で礼火を呼んだのだ。
「今から行くから待っててっ! 私の分は必ず残す様にっ!」
亮人の声はどこか不思議で、礼火の不安になるような気持ちをどこかへと飛ばしていく。そして、礼火は勢いよく階段を降りていくなり廊下で礼火の事を待っていた亮人へと飛んで抱き着き、自分の唇で亮人の唇を塞いだ。
「―――――――――ッ!!」
『『………………………』』
氷華たち二人はその様子を冷えた眼差しで見ていれば、何故だか氷華の周りでは空中で出来た小さな氷の粒が地面へと落ちて行き、シャーリーの左手は何故か獣のような鋭い爪を持った手へと変わっていた。
「亮人の馬鹿っ!!」
ただ、いきなり亮人の唇を塞いだ礼火は亮人にそれだけ言い残して危険な食卓へと身を乗り込ませる。
「亮人は渡さないよ、絶対。私だって狙ってるんだから」
妖魔の二人へと宣戦布告をした礼火は笑顔でそう言った。ただ、それだけでも氷華とシャーリーは何となくわかった。
あぁ、自分たちは認められたんだ……。
亮人以外にも自分たちのことを認めてくれたことを頭の隅で考えると、凄く嬉しい事だ。頭の中では、これまで我慢してきた感情がまた膨らむようで、それを抑えるだけで精いっぱいになる。
「ほら、みんなでご飯食べよう? 亮人も早くして」
「…………うん」
呆けるように廊下に立っていた亮人は礼火の声を聞くなり、心ここにあらずといった感じに食卓へと着いて、手を合わせて「いただきます」と言ってご飯を食べ始める。
ただ、その時の亮人の頬は紅潮していて三人は子供のような亮人を見ながら微笑んでいたのだ。
『私も絶対に礼火には負けないわよ。私はこれが最後の出会いだって思ってるんだから』
『シャーリーだって絶対に渡さないんだからっ! でも、今は目の前にあるご飯に集中っ!』
「私だってっ!」
三人は顔を合わせるなり、笑顔を浮かべながら一緒のご飯を食べ始める。
そんな光景を少しずつ思考が戻り始めた亮人は思った。
これが家族なんだ……。
自分が理想としてきた家族像が少しずつ出来てきたのが嬉しくて、一滴だけ……この場にいる誰にも見られない様に一滴だけ涙を流し、それから笑顔を浮かべて、
「俺も一緒にご飯食べてるんだから、会話に混ぜてくれよっ!」
それからと言えば、家族のように見える四人の食事が始まった。他人から見ても、それは兄弟のようにしか見えず、両親がいなくともそれが家族だと思える程に。
亮人がこれまでずっと欲してきたもの。
亮人は偽物だと言え、本当に近い家族を手に入れた。
笑顔が絶えず、時には喧嘩をするような家族。亮人は目尻に水滴を浮かび上がらせながら笑顔を振り撒いて、この今日と言う時間を過ごした。
さっきも亮人は氷華たちに対して、あやふやだったが否定しているような部分は無かった。
『亮人の事を大切に思ってくれてるのはよくわかってるわよ。この一週間、ずっとあんたの近くで生活してきたんだから。でもね……私達も未来が懸かってるのよ』
この三人の中では一番年上に見える氷華は、表面は冷静でありながらも、
『私たち妖魔は人間としか子供が作れない。妖怪の子供は異種間であってもどちらかの特性を持った子供が生まれるからいいけど、私達は一種としか子供は産めない。それも人間じゃないといけないって制約があって尚更、私達は子孫を残して行かないといけない。それの重要差があんたに分かるって言うの?』
強い口調。これまでの氷華なら、ここまで押し切るような口調はしなかった。だが、いきなりあーだこーだ文句を言われたのが癪だったらしい。
『そうだよっ! シャーリー達だっていろいろと苦労してる中でこうやってお兄ちゃんを見つけてきたんだからっ!』
そんな強気の氷華の後ろに回ったシャーリーは隠れながらも、礼火に反抗する。
二対一。この状況は礼火に不利で、しかも相手は妖魔。喧嘩をすると言っても絶対に勝てるわけがない。
そんないがみ合いの中で一階のキッチンからは香ばしい匂いがしてくると同時に、
「みんなー、ご飯出来たから降りてきて―」
と、亮人の場を和ませるような声が聞こえてきた。
『この話は後にして、先に私たちは亮人の料理を食べに行くわよ。亮人にこれ以上、余計な心配ごとを増やさない為にも』
そそくさと足を一階へと向けた氷華は凛とした声で、
『今から行くからご飯よそっておいて!!』
とキッチンにいる亮人へと言って、階段を降りて行った。
そして、そんな氷華の後ろを着いて行くようにシャーリーも階段を降りて行き、料理が並べられている食卓へと急いでいく。
ただ、そんな二人を見つめていた礼火は氷華が最後に口にしたことを思い出す。
『これ以上、余計な心配ごとを増やさない為にも』
これを聞いただけでも、あの二人が亮人に対して害がない事は分かった。
少しでも危害を加えるようなら、礼火自身が亮人に無理をしてでも彼女たちを追い出すように言うつもりだった。
だが、もう言うつもりはなくなった。
彼女達が亮人に対してどれだけの信頼を置いているのかも、さっきの話で理解できたから。
二人が降りて行ってからまだ二分ぐらいしか経っていないが、下からは亮人が心配したような声音で、
「礼火―、晩ご飯食べるよ? 早くしないと礼火の分のご飯も食べちゃうけどいいのー?」
おふざけ半分といったところだろう。亮人はそんな声音で礼火を呼んだのだ。
「今から行くから待っててっ! 私の分は必ず残す様にっ!」
亮人の声はどこか不思議で、礼火の不安になるような気持ちをどこかへと飛ばしていく。そして、礼火は勢いよく階段を降りていくなり廊下で礼火の事を待っていた亮人へと飛んで抱き着き、自分の唇で亮人の唇を塞いだ。
「―――――――――ッ!!」
『『………………………』』
氷華たち二人はその様子を冷えた眼差しで見ていれば、何故だか氷華の周りでは空中で出来た小さな氷の粒が地面へと落ちて行き、シャーリーの左手は何故か獣のような鋭い爪を持った手へと変わっていた。
「亮人の馬鹿っ!!」
ただ、いきなり亮人の唇を塞いだ礼火は亮人にそれだけ言い残して危険な食卓へと身を乗り込ませる。
「亮人は渡さないよ、絶対。私だって狙ってるんだから」
妖魔の二人へと宣戦布告をした礼火は笑顔でそう言った。ただ、それだけでも氷華とシャーリーは何となくわかった。
あぁ、自分たちは認められたんだ……。
亮人以外にも自分たちのことを認めてくれたことを頭の隅で考えると、凄く嬉しい事だ。頭の中では、これまで我慢してきた感情がまた膨らむようで、それを抑えるだけで精いっぱいになる。
「ほら、みんなでご飯食べよう? 亮人も早くして」
「…………うん」
呆けるように廊下に立っていた亮人は礼火の声を聞くなり、心ここにあらずといった感じに食卓へと着いて、手を合わせて「いただきます」と言ってご飯を食べ始める。
ただ、その時の亮人の頬は紅潮していて三人は子供のような亮人を見ながら微笑んでいたのだ。
『私も絶対に礼火には負けないわよ。私はこれが最後の出会いだって思ってるんだから』
『シャーリーだって絶対に渡さないんだからっ! でも、今は目の前にあるご飯に集中っ!』
「私だってっ!」
三人は顔を合わせるなり、笑顔を浮かべながら一緒のご飯を食べ始める。
そんな光景を少しずつ思考が戻り始めた亮人は思った。
これが家族なんだ……。
自分が理想としてきた家族像が少しずつ出来てきたのが嬉しくて、一滴だけ……この場にいる誰にも見られない様に一滴だけ涙を流し、それから笑顔を浮かべて、
「俺も一緒にご飯食べてるんだから、会話に混ぜてくれよっ!」
それからと言えば、家族のように見える四人の食事が始まった。他人から見ても、それは兄弟のようにしか見えず、両親がいなくともそれが家族だと思える程に。
亮人がこれまでずっと欲してきたもの。
亮人は偽物だと言え、本当に近い家族を手に入れた。
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