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恋敵
恋敵VⅡ
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ソファに寝転んでから早くも一時間。亮人は倒していた体を起き上がらせると、
「二人とも……せめて一日一回とかルールを決めてくれないかな? 俺の身が持たないよ……」
キスをすることは許して、回数に限度を設けるのもどうかと礼火は思っていたが、氷華たち二人が笑顔で『はーい』と返事をしているところ、この三人の関係は爛ただれていないという事だけは確認できた。
『その前にお兄ちゃん? あの子がシャーリーたちの事を見られるってことはもう、こそこそとしなくていいんだよね? 大胆にお兄ちゃんと子作りしてもいいんだよね?』
「「―――っ!!」」
大胆にも自分たちの目的である、子孫を作ることをことのほか礼火の前で言うシャーリーに亮人と、その関係を初めて知った礼火は口の前で手を抑えて噴き出していた。
『だって、私たち妖魔が人と一緒にいるのは子供を産むことだよ? でも、その子がいたから子作りしたくても出来なかったんでしょ? シャーリー知ってるんだからね? その子が来る直前にお姉ちゃんと子作りしようとしてたの……』
『なっ……シャーリーっ!? あの時寝たふりしてたの!?』
「亮人……この爛れた関係はどういうことなの?」
氷華たちは二人で口論をし始めれば、そんな一方で結局、爛れた関係を持っていた亮人に礼火は殺す勢いで鋭い視線を向けた。
「違うっ! 俺はそんな関係になんかなってないよっ!」
『えっ…………』
予想外な発言でもしたかのように氷華が亮人を見つめれば、その瞳には少しずつ涙が溜まり始め、目尻から零れる涙は氷の粒となって床へと落ちていく。
『私……亮人が本気になってくれたって思ってたのに……亮人は私と子作りするのなんか嫌なんだ……』
あまりにも飛躍しすぎる会話に呆然と口を開けることしか出来ない礼火は目の前の状況にどうすればいいのか分からなくなった。
ただ、氷華に泣かれそうになっている亮人は挙動不審に、
「いやっ、そういうわけでもないんだよ? ただ、礼火の前でそういう話はさ、やめておいた方がいいんじゃないかなって? そう思っただけで、俺が氷華とその……子供を作りたくないってわけじゃないんだよ……」
自分で言っていて何を言っているんだと思い始めた亮人。だが、シャーリーはこの困ったような状況を傍から見て、口を手で押さえて笑いを堪えようとしていた。
『なら……今度は最後までしなさいよ? そうじゃなきゃ……私、許さないんだから……』
頭を掻きながら困った表情を浮かべている亮人は溜息を一回つくと、シャーリーのところへと歩いて行き、
「氷華のこと、頼んでいい? 俺はもうご飯の準備しなきゃいけないから」
亮人が指を指した時計。その針が差している時間は七時半と、普通なら晩ご飯を食べている時間帯だ。
『お兄ちゃん、お姉ちゃんの事は任せて美味しい料理作ってね』
「任せておいて。料理なら得意だからさ」
苦笑いを浮かべながらキッチンへと向かった亮人の後ろ姿。そんな姿を見ていたシャーリーは氷華が崩れているソファの後ろへと行き、
『お姉ちゃん……ショックなのは分かるけど、お兄ちゃんも人間の友達にそんな恥ずかしい事を言われたら、ああやって誤魔化しちゃうんだよ。シャーリー達には分からない感情だけど、お兄ちゃんは人間なんだから理解してあげなくちゃダメだよ?』
普段とは真逆の立場となっている今、シャーリーは氷華の頭を優しく撫で続ければ続いて礼火に近づいて頭を撫で続ける。
『礼火って呼べばいいのかな? まあ、お兄ちゃんの友達だから礼火って呼ぶけど、後でシャーリーたち妖魔について教えてあげるから二階のお兄ちゃんの部屋に来て?』
「……………………」
無言でいる礼火だが、そんなシャーリーの言葉はちゃんと耳に届いているらしく頭をコクコクと縦に振っている。
それを確認したシャーリーは氷華を小さな体で背負うなり二階の亮人の部屋へと運んで行き、ついでに礼火の事も亮人の部屋へと運んで置く。
これから少しだけ妖魔について説明して、なんでシャーリーや氷華がここまで亮人の事を慕っているのかを話そうとシャーリーは思う。
『お兄ちゃーん! シャーリーたち二階にいるから晩ご飯出来たら呼んで?』
「はいはーい。後で呼びに行くからねえ」
そして、シャーリーは礼火達がいる亮人の部屋へと入り、これまでの経緯いきさつを話し始める。
たったの二十分だが、ただそれだけでも説明するには十分な時間だ。
シャーリーは亮人といつ会ったのか、そして氷華が亮人とどんな風に出会ったのか。そして、それからどうしてシャーリー達が亮人の家で一緒に暮らしているのか。
それらを話していると、礼火も顔を頷かせながら理解してくれた。
「要するに亮人を婿養子にしたいってことよね?」
『近い言葉で言えばそうなるのかな……?』
「………………………ダメ」
『……何がダメなの?』
「亮人を取っちゃダメっ! 亮人は普通の人と子供を作るのっ、妖魔となんか子供は作っちゃダメっ!」
シャーリーは茫然ぼうぜんとした。いきなり人間に子供を作っちゃダメ、だなんて言われたのだ。妖魔にとって、人間と子供を作ることがどれだけ大切なのかを分かってもいないのに、いきなしに否定された。
二十分間の間に生気を取り戻した氷華も呆気あっけにとられていた。
「亮人は普通の女の子と結婚して、子供と一緒に楽しく暮らすのっ! なのに、いきなり妖魔とか人じゃないのに子供を作るなんておかしいよっ!」
怒鳴り散らすように言葉を大にして言ってくる礼火は顔を真っ赤にするくらいに頭に血を昇らせていた。
亮人がこんな妖魔とかいうのに連れて行かれちゃう……絶対にそんなことはさせないっ!
そんな礼火の決意とは裏腹に亮人はと言えば、礼火が泊まりに来る直前まで氷華と子作りの一歩手前まで仕掛けていた。
「二人とも……せめて一日一回とかルールを決めてくれないかな? 俺の身が持たないよ……」
キスをすることは許して、回数に限度を設けるのもどうかと礼火は思っていたが、氷華たち二人が笑顔で『はーい』と返事をしているところ、この三人の関係は爛ただれていないという事だけは確認できた。
『その前にお兄ちゃん? あの子がシャーリーたちの事を見られるってことはもう、こそこそとしなくていいんだよね? 大胆にお兄ちゃんと子作りしてもいいんだよね?』
「「―――っ!!」」
大胆にも自分たちの目的である、子孫を作ることをことのほか礼火の前で言うシャーリーに亮人と、その関係を初めて知った礼火は口の前で手を抑えて噴き出していた。
『だって、私たち妖魔が人と一緒にいるのは子供を産むことだよ? でも、その子がいたから子作りしたくても出来なかったんでしょ? シャーリー知ってるんだからね? その子が来る直前にお姉ちゃんと子作りしようとしてたの……』
『なっ……シャーリーっ!? あの時寝たふりしてたの!?』
「亮人……この爛れた関係はどういうことなの?」
氷華たちは二人で口論をし始めれば、そんな一方で結局、爛れた関係を持っていた亮人に礼火は殺す勢いで鋭い視線を向けた。
「違うっ! 俺はそんな関係になんかなってないよっ!」
『えっ…………』
予想外な発言でもしたかのように氷華が亮人を見つめれば、その瞳には少しずつ涙が溜まり始め、目尻から零れる涙は氷の粒となって床へと落ちていく。
『私……亮人が本気になってくれたって思ってたのに……亮人は私と子作りするのなんか嫌なんだ……』
あまりにも飛躍しすぎる会話に呆然と口を開けることしか出来ない礼火は目の前の状況にどうすればいいのか分からなくなった。
ただ、氷華に泣かれそうになっている亮人は挙動不審に、
「いやっ、そういうわけでもないんだよ? ただ、礼火の前でそういう話はさ、やめておいた方がいいんじゃないかなって? そう思っただけで、俺が氷華とその……子供を作りたくないってわけじゃないんだよ……」
自分で言っていて何を言っているんだと思い始めた亮人。だが、シャーリーはこの困ったような状況を傍から見て、口を手で押さえて笑いを堪えようとしていた。
『なら……今度は最後までしなさいよ? そうじゃなきゃ……私、許さないんだから……』
頭を掻きながら困った表情を浮かべている亮人は溜息を一回つくと、シャーリーのところへと歩いて行き、
「氷華のこと、頼んでいい? 俺はもうご飯の準備しなきゃいけないから」
亮人が指を指した時計。その針が差している時間は七時半と、普通なら晩ご飯を食べている時間帯だ。
『お兄ちゃん、お姉ちゃんの事は任せて美味しい料理作ってね』
「任せておいて。料理なら得意だからさ」
苦笑いを浮かべながらキッチンへと向かった亮人の後ろ姿。そんな姿を見ていたシャーリーは氷華が崩れているソファの後ろへと行き、
『お姉ちゃん……ショックなのは分かるけど、お兄ちゃんも人間の友達にそんな恥ずかしい事を言われたら、ああやって誤魔化しちゃうんだよ。シャーリー達には分からない感情だけど、お兄ちゃんは人間なんだから理解してあげなくちゃダメだよ?』
普段とは真逆の立場となっている今、シャーリーは氷華の頭を優しく撫で続ければ続いて礼火に近づいて頭を撫で続ける。
『礼火って呼べばいいのかな? まあ、お兄ちゃんの友達だから礼火って呼ぶけど、後でシャーリーたち妖魔について教えてあげるから二階のお兄ちゃんの部屋に来て?』
「……………………」
無言でいる礼火だが、そんなシャーリーの言葉はちゃんと耳に届いているらしく頭をコクコクと縦に振っている。
それを確認したシャーリーは氷華を小さな体で背負うなり二階の亮人の部屋へと運んで行き、ついでに礼火の事も亮人の部屋へと運んで置く。
これから少しだけ妖魔について説明して、なんでシャーリーや氷華がここまで亮人の事を慕っているのかを話そうとシャーリーは思う。
『お兄ちゃーん! シャーリーたち二階にいるから晩ご飯出来たら呼んで?』
「はいはーい。後で呼びに行くからねえ」
そして、シャーリーは礼火達がいる亮人の部屋へと入り、これまでの経緯いきさつを話し始める。
たったの二十分だが、ただそれだけでも説明するには十分な時間だ。
シャーリーは亮人といつ会ったのか、そして氷華が亮人とどんな風に出会ったのか。そして、それからどうしてシャーリー達が亮人の家で一緒に暮らしているのか。
それらを話していると、礼火も顔を頷かせながら理解してくれた。
「要するに亮人を婿養子にしたいってことよね?」
『近い言葉で言えばそうなるのかな……?』
「………………………ダメ」
『……何がダメなの?』
「亮人を取っちゃダメっ! 亮人は普通の人と子供を作るのっ、妖魔となんか子供は作っちゃダメっ!」
シャーリーは茫然ぼうぜんとした。いきなり人間に子供を作っちゃダメ、だなんて言われたのだ。妖魔にとって、人間と子供を作ることがどれだけ大切なのかを分かってもいないのに、いきなしに否定された。
二十分間の間に生気を取り戻した氷華も呆気あっけにとられていた。
「亮人は普通の女の子と結婚して、子供と一緒に楽しく暮らすのっ! なのに、いきなり妖魔とか人じゃないのに子供を作るなんておかしいよっ!」
怒鳴り散らすように言葉を大にして言ってくる礼火は顔を真っ赤にするくらいに頭に血を昇らせていた。
亮人がこんな妖魔とかいうのに連れて行かれちゃう……絶対にそんなことはさせないっ!
そんな礼火の決意とは裏腹に亮人はと言えば、礼火が泊まりに来る直前まで氷華と子作りの一歩手前まで仕掛けていた。
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