妖魔のCHILDREN〜孤独な少年は人外少女たちの子作りの為に言い寄られながら彼女らを守る〜

将星出流

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 そんな氷華の隣ではシャーリーが真剣に操作法を覚えようと氷華の手の動きを見て、どのボタンを押せばいいのかを確認する。

『あとは洗濯が終わるまでの間、テレビでも見ながら休むわよ?』

 洗面所から出て行く氷華の後ろを歩くシャーリーは大きなテレビがあるリビングへと入れば、ソファへと座って一息入れる。
 その間に氷華はさっき使った食器を洗って元あった場所へと拭いてから入れておく。
 それから休むためにシャーリーが座っているソファへと一緒に座ってテレビを見ていると、瞼は重くなり始め、テレビを点けながら氷華は眠ってしまった。
 そんな氷華の隣でいたシャーリーも氷華と同じように眠りについていた。
 肩を寄り添わせ、頭を付け合せて眠りに就いている二人はまるで姉妹のようで、亮人が帰ってくるまでの間ずっと眠っていた。
そして、亮人と礼火が帰ってきた時もまだ氷華たちは眠りながら寝言で、

『亮人の為に……掃除したんだから……』

『お兄ちゃん……大好き……』

 二人は笑顔で口にして、亮人はそんな二人の眠っているソファへ、

「俺も二人の事が大好きだよ……大切な家族なんだから」

 二人の頭を撫でながら亮人は彼女たちに二階から掛布団を持ってきて、そっと体に掛ける。

「……そこにいるの?」

 何もないソファに掛布団が掛けられれば、そこは何かがいるかのように浮かび上がる。
 礼火はその光景を見て、

本当に妖魔がいるんだ……

 と、思った。

「礼火は先にそこに座って待ってくれるか? 俺は先に洗濯物を畳んできちゃうから」

 洗濯機がある洗面所へと歩いて行った亮人は大きな籠かごに洗濯された洋服を入れてもう一度リビングへと戻ってきた。そして、二人がいつでも起きて良い様にソファの隣に正座をしながら服を畳み始める。

「亮人……怖くないの? いきなり妖魔っていうのが家に来て」

 もっともなことを口にしている礼火だが、亮人にはそんな感情は一切無かった。
 最初に氷華と出会った時、あの時は普通の可愛い女の子にしか見えなかったし、山奥の古びた神社に一人でいたのが心配だったから家に呼んだ。
 そしてシャーリーは体に傷があることから、大変な思いをして亮人に逢いに来たという事が分かったから家に招き入れた。

 たった、ほんとにたったそれだけしか考えなかった。
 怖いなんて一切ない。ただ、彼女達が一人でいたことに自分と同じものを感じ、そして彼女たちに偽りであろうと家族のように接しているのだ。

「怖くなんかないよ……いつも俺の事を心配してくれる優しい二人を怖いだなんて、俺には思えないし、今日はいろいろと頑張ってくれたみたいだからさ……」

 家を見れば掃除をしたように綺麗なリビングに部屋があった。
 亮人が学校に行っている間、氷華たちが家の中を掃除してくれていたことにはすぐに気が付いた。
 ソファで眠りに就いている彼女達を微笑むように見つめている亮人に、最初は紹介して欲しいと思っていた礼火は心配になり始めた。

 亮人が大変なことに捲き込まれないか、それが心配で仕方がない。

「この二人と会った時に思ったんだ……氷華は一人で山に住んでいて寂しくないのかなって……それにシャーリーは一人で痛い思いまでして俺に会いに来てくれて……そんな二人がどうしても放って置けなかったから、こうやって二人の世話をしてるんだよ。俺の親はしてくれなかった世話を俺はこの二人にしてあげたい……大切なんだよ、二人が」

 礼火の目の前には愛おしそうにソファを見つめる亮人が居て、そんな亮人がソファに眠ってる妖魔に亮人を取られるんじゃないかと心の隅で考えてしまう。

『うぅん? 亮人、帰ってたの?』

「おはよう、氷華。俺はさっき帰って来たばっかりだよ」

『そうなの……ほら、シャーリー? 亮人が帰って来たから起きなさい』

『お兄ちゃん、帰ってきたのぉ? ふぁぁ……お兄ちゃ~ん』

 ソファに掛けられていた布団は氷華たちが起きたことで地面へと落ち、それを見ていた礼火は妖魔が起きたことを見て分かった。
 そして、亮人の目の前で起きたシャーリーは寝起きのせいか、寝ぼけて亮人のところまで歩けば、そのまま亮人の口をシャーリーの可愛らしい唇が塞ぐ。

「――――――――――ッ!」

 目を見開いた亮人はシャーリーに押し倒されるように後ろへと倒れると、そのままシャーリーはキスをしてくる。

「亮人、どうしたのっ!」

 目の前でいきなり亮人が倒れたのを見た礼火は、心配して近寄って亮人の肩を掴もうとした。
 だが、亮人の肩には何かが覆いかぶさっているせいか、触れることが出来ない。
 シャーリーにキスをされている亮人はどうにかしてシャーリーを体から剥がそうとしても、妖魔と人間の力には漠然の差がある。
 力一杯に引き剥がそうとするも、ビクともしないシャーリーはそのまま亮人にキスを続けた。

『シャーリー? 何度も言わせないの……怒るわよ……』

『……わかったよ……もう』

 亮人はシャーリーが離れるなり、大きく深呼吸をして息を整える。

「し、死ぬかと思った……」

 亮人の前では氷華がシャーリーを叱っていて、亮人の隣では

「本当に大丈夫……?」

 と心配の色に染められた視線と向けてくる礼火。
 亮人としては普段の事だから仕方がないとは思っているのだが、流石に礼火の目の前でされるのは恥ずかしかった。
 見えてないとは言え、亮人は礼火の目の前でシャーリーとキスをしていた。
 その事実を亮人は頭を抱えながら考えれば、憂鬱な気分になってしまった。

「先に晩ご飯作るね……」

 意気消沈といった空気を醸し出しながら亮人はリビングからキッチンへと移るなり大きく溜息をついた。

「シャーリーの寝起きが悪いことぐらい知ってたのになぁ……なんで礼火の目の前でキスなんかしちゃったんだよ……俺は」

 幼馴染の礼火は頭に?マークを浮かべ、それでいて見えていないだろうが氷華たちが座っているソファを見つめていた。

『亮人? さっきから礼火が私たちの方を見てるんだけど……どういうことなの?』

 訝いぶかしげに礼火を見据えている氷華はシャーリーの頭を撫でながら亮人の方へと言葉を発すれば、礼火へと歩を進める。

『私たちのこと……亮人は話したの? そうじゃないと、私達がいる方なんて普通は見ないわよね?』

「礼火には氷華たちのことを話しちゃった。だって、氷華たちだって自己主張するみたいに家の中で足音立てたり、トイレに入ったりしてたでしょ?」

『確かにそうだけど、ここまで本格的に見つめられると私達が見えてるのかなって思っちゃうのよ』
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