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恋敵
恋敵Ⅲ
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「亮人の家に何か憑いてるって前に言ってたでしょ?」
学校へと続く道を急ぎ足で歩いていると突然、亮人の横で頑張って早く歩いている礼火が話しかけてきた。
「何か憑りついてるのは本当だけど……それがどうかしたの?」
「亮人が言ってたほど危ないわけでもないよね……時々、階段から下りてくる足音とか勝手にトイレが開いたりとかしか起こってないし……」
それだけ、と言うが実際に起こっている出来事を目の前にして驚くわけでもなく、怖がるわけでもなくただ見つめている礼火は凄いのかもしれない。
それでいて氷華たちの存在を危険なものではないと感じていることも亮人にとっては嬉しいことだ。氷華たちもそれなりに礼火には配慮をしてくれているのもそうだが、そんな心遣いを感じている礼火としては、既に氷華たちは危険な存在からただ普通に生活しているようにしか見えなくなっている。
「亮人は見えるんでしょ? だったら、今度紹介して欲しいな……幽霊? と友達になれるなんて凄い事だもん」
小さな体に純粋無垢な瞳を亮人へと向け、無邪気な子供のように楽しそうな笑顔を浮かべて亮人へと言い寄ってくる。
そんな礼火の頭を亮人は子供をあやす時のように優しく撫でて、
「そんなに紹介して欲しいの?」
と聞いておく。
もしも礼火がそれでいいなら、もちろん紹介することには抵抗はない。だが、紹介をすると言っても礼火には氷華たちの姿は見えない。
ならどうするべきなのか、そう言った考えに至るわけだ。
「見えなくてもいいの。ただ、幽霊がそこにいるっていう事実だけでも私は十分満足できるし、それを見たら明日には帰るから。お願いっ、私に幽霊を見せてっ!」
「……見えなくてもいいなら、家に帰ればすぐに会わせてあげるよ。でも、驚くと思うよ? だって幽霊じゃないんだから」
幽霊じゃないことだけは伝えておく。
氷華たちは幽霊ではなく妖魔。そこを履き違えれば氷華たちも少しだけ残念がるかもしれないから先に言っておいても大丈夫だろう。
「幽霊じゃないって、じゃあ何なの?」
亮人の言葉に小首を傾げながら不思議そうにしている礼火は少しずつ亮人の歩調に合わせられなくなり、遅れ始める。
亮人は遅れ始めた礼火を確認すれば、礼火と一緒のペースに変えて隣で歩き始める。
「簡単に言えば妖怪。だけど、俺の家にいる妖怪は人間と妖怪の間に産まれたハーフらしいよ? それで氷華たちは自分たちの事を妖魔って呼んでる」
「氷菓って……誰のこと?」
「あぁ、氷華っていうのは前の科学の授業で雪ちゃんって呼んでた女の子の名前だよ」
「それじゃあ、亮人が隠してたことって……」
「そう、礼火に隠してたのは俺の家に妖魔が住み始めたって話。どうせ信じてくれるか分からないから話さなかったし、今だって信じられないでしょ?」
少しずつ見えてくる亮人達が通っている学校。少しだけ時間に余裕を持って家を出ている関係、あと十分は学校で休む時間がある。
「流石にそこまで飛躍した話は信じられないけど、家に妖怪がいるっていう事は何となく理解できたよ? だって、時々私の横を冷たい何かが通った時もあったから」
「それが氷華だよ。氷華は雪女だから近くにいれば少し寒いけど、それでも今頃は家の家事をしてくれるって言ってたから、帰ったら家が綺麗になってるかもしれないね」
礼火へと微笑みながら学校の正門を通った亮人は下駄箱で上履きに履き替え、自分たちのクラスへと歩いて行く。
亮人の後ろでは
「そんなこともしてくれるって……もう家族みたい」
と呟いていて、亮人も心の中で
「家族だよ」
と呟いた。
それからというもの、礼火は亮人に氷華たちの事を少しだけ聞くと寂しそうな表情を浮かべてしまった。
そして、授業開始のチャイムが学校中に鳴り響き、授業を受け始める。
授業が終わったとしても礼火は亮人に話しかけることなく、他の友達と話をしている。
「なんで礼火は急に寂しそうな顔したんだろう……」
訳が分からず亮人は次の授業の準備をして机に座る。
それからの一日は普通に授業を受けて、礼火と一緒にお昼を食べて、また授業を受けるといった毎日となんら変わりない生活を送った。
学校へと続く道を急ぎ足で歩いていると突然、亮人の横で頑張って早く歩いている礼火が話しかけてきた。
「何か憑りついてるのは本当だけど……それがどうかしたの?」
「亮人が言ってたほど危ないわけでもないよね……時々、階段から下りてくる足音とか勝手にトイレが開いたりとかしか起こってないし……」
それだけ、と言うが実際に起こっている出来事を目の前にして驚くわけでもなく、怖がるわけでもなくただ見つめている礼火は凄いのかもしれない。
それでいて氷華たちの存在を危険なものではないと感じていることも亮人にとっては嬉しいことだ。氷華たちもそれなりに礼火には配慮をしてくれているのもそうだが、そんな心遣いを感じている礼火としては、既に氷華たちは危険な存在からただ普通に生活しているようにしか見えなくなっている。
「亮人は見えるんでしょ? だったら、今度紹介して欲しいな……幽霊? と友達になれるなんて凄い事だもん」
小さな体に純粋無垢な瞳を亮人へと向け、無邪気な子供のように楽しそうな笑顔を浮かべて亮人へと言い寄ってくる。
そんな礼火の頭を亮人は子供をあやす時のように優しく撫でて、
「そんなに紹介して欲しいの?」
と聞いておく。
もしも礼火がそれでいいなら、もちろん紹介することには抵抗はない。だが、紹介をすると言っても礼火には氷華たちの姿は見えない。
ならどうするべきなのか、そう言った考えに至るわけだ。
「見えなくてもいいの。ただ、幽霊がそこにいるっていう事実だけでも私は十分満足できるし、それを見たら明日には帰るから。お願いっ、私に幽霊を見せてっ!」
「……見えなくてもいいなら、家に帰ればすぐに会わせてあげるよ。でも、驚くと思うよ? だって幽霊じゃないんだから」
幽霊じゃないことだけは伝えておく。
氷華たちは幽霊ではなく妖魔。そこを履き違えれば氷華たちも少しだけ残念がるかもしれないから先に言っておいても大丈夫だろう。
「幽霊じゃないって、じゃあ何なの?」
亮人の言葉に小首を傾げながら不思議そうにしている礼火は少しずつ亮人の歩調に合わせられなくなり、遅れ始める。
亮人は遅れ始めた礼火を確認すれば、礼火と一緒のペースに変えて隣で歩き始める。
「簡単に言えば妖怪。だけど、俺の家にいる妖怪は人間と妖怪の間に産まれたハーフらしいよ? それで氷華たちは自分たちの事を妖魔って呼んでる」
「氷菓って……誰のこと?」
「あぁ、氷華っていうのは前の科学の授業で雪ちゃんって呼んでた女の子の名前だよ」
「それじゃあ、亮人が隠してたことって……」
「そう、礼火に隠してたのは俺の家に妖魔が住み始めたって話。どうせ信じてくれるか分からないから話さなかったし、今だって信じられないでしょ?」
少しずつ見えてくる亮人達が通っている学校。少しだけ時間に余裕を持って家を出ている関係、あと十分は学校で休む時間がある。
「流石にそこまで飛躍した話は信じられないけど、家に妖怪がいるっていう事は何となく理解できたよ? だって、時々私の横を冷たい何かが通った時もあったから」
「それが氷華だよ。氷華は雪女だから近くにいれば少し寒いけど、それでも今頃は家の家事をしてくれるって言ってたから、帰ったら家が綺麗になってるかもしれないね」
礼火へと微笑みながら学校の正門を通った亮人は下駄箱で上履きに履き替え、自分たちのクラスへと歩いて行く。
亮人の後ろでは
「そんなこともしてくれるって……もう家族みたい」
と呟いていて、亮人も心の中で
「家族だよ」
と呟いた。
それからというもの、礼火は亮人に氷華たちの事を少しだけ聞くと寂しそうな表情を浮かべてしまった。
そして、授業開始のチャイムが学校中に鳴り響き、授業を受け始める。
授業が終わったとしても礼火は亮人に話しかけることなく、他の友達と話をしている。
「なんで礼火は急に寂しそうな顔したんだろう……」
訳が分からず亮人は次の授業の準備をして机に座る。
それからの一日は普通に授業を受けて、礼火と一緒にお昼を食べて、また授業を受けるといった毎日となんら変わりない生活を送った。
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