17 / 110
波乱万丈
波乱万丈VⅢ
しおりを挟む
シャーリーたちは亮人が一緒に礼火がいることが許せないみたいで、それで怒っているのだろうが、それに油を注ぐように礼火が一緒になって亮人の部屋で眠っていたら二人を確実に怒らせることは間違いない。
「…………………………」
今頃になって、自分が仕出かしてしまった約束が取り返しがつかない物だという事が分かった。だから、亮人は礼火に約束の取り止めにしようと口にしたが、
「約束は約束なんだからちゃんと守らないとダメだよ、亮人。男ならちゃんと約束を守るのが筋だと思う」
どれだけ亮人が約束を取り止めにしようとしても頑固にも譲ろうとしない礼火に諦めの意を見せた。
あぁ、絶対に今日の夜は殺されるかもしれないなぁ……それとも明日の朝に殺されるのかなぁ……俺は。
天井で明かりを灯している蛍光灯を見つめながら、目尻に涙を溜める亮人であった。
二階の氷華の部屋。そこでは氷華とシャーリーが聞き耳を立てながら一階にいる亮人と礼火の会話を聞いていた。
『シャーリー……亮人が礼火って子と一緒に寝るって言うのは聞いたわよね?』
『ちゃんと聞いてたよ……お兄ちゃんと一緒に寝るなんて何様のつもりなのかな、あの女……絶対に殺してやる』
シャーリーは牙を剥き出し、氷華は体からいつも以上に冷気を周りに振り撒いている。
いつになく強い殺気を放っている二人の殺気は一階にいる亮人の背筋を伸ばすほどの物。
『礼火っていう女の子には悪いけど、今日の夜は私達の部屋で亮人を寝かせることにするわ。シャーリーも私と亮人、一緒に眠ってたほうが安心できるでしょ?』
『お兄ちゃんが人と一緒にいることは当たり前なんだろうけど、シャーリーたち妖魔にとって、妖魔の事を見られる人間なんて数えるくらいしかいないんだから取らないで欲しいよ』
『確かにそうよね……私も亮人に逢うまでずっと一人で山の中に住んでたから寂しかったわよ……亮人に逢って、こうやって楽しくしてる人生なんて考えられなかったもの』
一人で生きてきた人生を振り返った氷華は一瞬だけ悲しい顔を浮かべるが、下で話をしている亮人の事を思えばすぐにそんな気持ちも無くなる。
『なら早速、亮人の所に行って私たちと一緒に寝るように言いに行くわよ』
氷華は部屋のドアを開くなり、道を静かに歩いて行く。
力強く床を踏みしめれば、姿は見えなくとも音は聞こえる。だから、自分たちの存在を知られることなく亮人へと近づいて行かないといけない。
一歩一歩静かに亮人のいる一階へと降りていく氷華についていくシャーリーも静かに階段を降りていく。それで一階へと着いた氷華たちは亮人が座っているソファへと歩いて行けば、
『亮人……提案があるんだけどいいかしら?』
と、耳打ちをする。
そう耳打ちをすると亮人は礼火に、「ちょっとトイレに行ってくるね?」と言い残してリビングを後にした。
リビングから出た亮人を追うように氷華とシャーリーもリビングから出て行き、廊下で待っていた亮人に自分達がさっき話し合った内容を伝えた。
『これなら私達も彼女の事を襲わなくても済むから、いい考えだと思わない?』
「いや、それはいい考えだと俺も思うけどさ……その前に襲うこと前提にしてる氷華たちがちょっと怖いよ……」
苦笑しながら亮人は氷華の事を見つめると、そんな亮人にお風呂場と同じように体に手を回して抱き着いたシャーリー。
彼女は亮人には笑顔でいるのに、亮人と一緒にいる礼火を見ていた時は、牙を剥き出しにして睨んでいた。
『シャーリーもお兄ちゃんと一緒に寝たいの。だから、途中からでもいいからシャーリーたちと一緒に寝て……お願い……』
閏うるうるとさせている瞳を亮人へと向けると、胴へと巻きつけていた両手を首へと回して亮人の顔を自分の顔へと近づけさせてはキスをしてくる。
『なっ……シャーリー? 私がいる前ではそういう事はしちゃダメよ? 私が怒るから』
わなわなと震わせている右手を左手で抑えている氷華にシャーリーは亮人から離れれば、『ごめんなさーい』と謝って氷華の後ろへと隠れる。
「確かに二人と寝れば礼火は安全なんだけど……二人とも俺に色気とか使ってくるから逆に寝れなくなっちゃうんだよね……もう疲れてるからゆっくり寝たいよ」
もっともなことを口にする亮人は氷華にそう言い残してリビングへと戻って行く。
『はぁ……亮人も流石に疲れてるわよね……私達みたいな妖魔の相手も疲れる原因の一つだろうし、今日は色気も何もなしでゆっくり私たちの横で寝かせてあげたほうがいいわよね』
『お兄ちゃんが疲れてるならゆっくり休ませてあげたいけど、あの女と一緒にいるのだけは許せない……』
ドアから見える礼火にシャーリーは牙を向けるが、そんなことは氷華が許さなかった。
『シャーリー? 亮人も人間なのよ、だから私達みたいな妖魔と関わってくれてるだけでも感謝しなくちゃダメよ。それに時々は自由にしてあげないと、亮人の体が持たないから』
これまで亮人は氷華を二週間も世話をしている。そして、昨日からはもう一人シャーリーが増えた。これ以上の負担は本当だったら亮人も辛いはずなのに、それでも亮人は嫌な顔を見せずに氷華たちの為に頑張っている。
それを分かっている氷華だからこそ、亮人に申し訳なさと感謝の意も込めて礼火がいる数日間は静かに暮らそうと心の中で決めたのだ。
そしてシャーリーもそれが分かったからだろうか、
『シャーリーもお兄ちゃんには感謝してるから、あの女がいる間は静かにするよ……でも、お姉ちゃんは困らないの? お姉ちゃんってお風呂が冷たくないとダメだけど、あの女がいると冷たいお風呂に入れなくなっちゃうよ?』
『なら、亮人達が帰って来る前に入っちゃえばいい話よ』
氷華はそれだけ言えば、そのまま二階へと戻って行く。
今度は足音を少しだけ立てるように、礼火に自分たちの存在を感じさせるように音を立てて歩いた。
「…………………………」
今頃になって、自分が仕出かしてしまった約束が取り返しがつかない物だという事が分かった。だから、亮人は礼火に約束の取り止めにしようと口にしたが、
「約束は約束なんだからちゃんと守らないとダメだよ、亮人。男ならちゃんと約束を守るのが筋だと思う」
どれだけ亮人が約束を取り止めにしようとしても頑固にも譲ろうとしない礼火に諦めの意を見せた。
あぁ、絶対に今日の夜は殺されるかもしれないなぁ……それとも明日の朝に殺されるのかなぁ……俺は。
天井で明かりを灯している蛍光灯を見つめながら、目尻に涙を溜める亮人であった。
二階の氷華の部屋。そこでは氷華とシャーリーが聞き耳を立てながら一階にいる亮人と礼火の会話を聞いていた。
『シャーリー……亮人が礼火って子と一緒に寝るって言うのは聞いたわよね?』
『ちゃんと聞いてたよ……お兄ちゃんと一緒に寝るなんて何様のつもりなのかな、あの女……絶対に殺してやる』
シャーリーは牙を剥き出し、氷華は体からいつも以上に冷気を周りに振り撒いている。
いつになく強い殺気を放っている二人の殺気は一階にいる亮人の背筋を伸ばすほどの物。
『礼火っていう女の子には悪いけど、今日の夜は私達の部屋で亮人を寝かせることにするわ。シャーリーも私と亮人、一緒に眠ってたほうが安心できるでしょ?』
『お兄ちゃんが人と一緒にいることは当たり前なんだろうけど、シャーリーたち妖魔にとって、妖魔の事を見られる人間なんて数えるくらいしかいないんだから取らないで欲しいよ』
『確かにそうよね……私も亮人に逢うまでずっと一人で山の中に住んでたから寂しかったわよ……亮人に逢って、こうやって楽しくしてる人生なんて考えられなかったもの』
一人で生きてきた人生を振り返った氷華は一瞬だけ悲しい顔を浮かべるが、下で話をしている亮人の事を思えばすぐにそんな気持ちも無くなる。
『なら早速、亮人の所に行って私たちと一緒に寝るように言いに行くわよ』
氷華は部屋のドアを開くなり、道を静かに歩いて行く。
力強く床を踏みしめれば、姿は見えなくとも音は聞こえる。だから、自分たちの存在を知られることなく亮人へと近づいて行かないといけない。
一歩一歩静かに亮人のいる一階へと降りていく氷華についていくシャーリーも静かに階段を降りていく。それで一階へと着いた氷華たちは亮人が座っているソファへと歩いて行けば、
『亮人……提案があるんだけどいいかしら?』
と、耳打ちをする。
そう耳打ちをすると亮人は礼火に、「ちょっとトイレに行ってくるね?」と言い残してリビングを後にした。
リビングから出た亮人を追うように氷華とシャーリーもリビングから出て行き、廊下で待っていた亮人に自分達がさっき話し合った内容を伝えた。
『これなら私達も彼女の事を襲わなくても済むから、いい考えだと思わない?』
「いや、それはいい考えだと俺も思うけどさ……その前に襲うこと前提にしてる氷華たちがちょっと怖いよ……」
苦笑しながら亮人は氷華の事を見つめると、そんな亮人にお風呂場と同じように体に手を回して抱き着いたシャーリー。
彼女は亮人には笑顔でいるのに、亮人と一緒にいる礼火を見ていた時は、牙を剥き出しにして睨んでいた。
『シャーリーもお兄ちゃんと一緒に寝たいの。だから、途中からでもいいからシャーリーたちと一緒に寝て……お願い……』
閏うるうるとさせている瞳を亮人へと向けると、胴へと巻きつけていた両手を首へと回して亮人の顔を自分の顔へと近づけさせてはキスをしてくる。
『なっ……シャーリー? 私がいる前ではそういう事はしちゃダメよ? 私が怒るから』
わなわなと震わせている右手を左手で抑えている氷華にシャーリーは亮人から離れれば、『ごめんなさーい』と謝って氷華の後ろへと隠れる。
「確かに二人と寝れば礼火は安全なんだけど……二人とも俺に色気とか使ってくるから逆に寝れなくなっちゃうんだよね……もう疲れてるからゆっくり寝たいよ」
もっともなことを口にする亮人は氷華にそう言い残してリビングへと戻って行く。
『はぁ……亮人も流石に疲れてるわよね……私達みたいな妖魔の相手も疲れる原因の一つだろうし、今日は色気も何もなしでゆっくり私たちの横で寝かせてあげたほうがいいわよね』
『お兄ちゃんが疲れてるならゆっくり休ませてあげたいけど、あの女と一緒にいるのだけは許せない……』
ドアから見える礼火にシャーリーは牙を向けるが、そんなことは氷華が許さなかった。
『シャーリー? 亮人も人間なのよ、だから私達みたいな妖魔と関わってくれてるだけでも感謝しなくちゃダメよ。それに時々は自由にしてあげないと、亮人の体が持たないから』
これまで亮人は氷華を二週間も世話をしている。そして、昨日からはもう一人シャーリーが増えた。これ以上の負担は本当だったら亮人も辛いはずなのに、それでも亮人は嫌な顔を見せずに氷華たちの為に頑張っている。
それを分かっている氷華だからこそ、亮人に申し訳なさと感謝の意も込めて礼火がいる数日間は静かに暮らそうと心の中で決めたのだ。
そしてシャーリーもそれが分かったからだろうか、
『シャーリーもお兄ちゃんには感謝してるから、あの女がいる間は静かにするよ……でも、お姉ちゃんは困らないの? お姉ちゃんってお風呂が冷たくないとダメだけど、あの女がいると冷たいお風呂に入れなくなっちゃうよ?』
『なら、亮人達が帰って来る前に入っちゃえばいい話よ』
氷華はそれだけ言えば、そのまま二階へと戻って行く。
今度は足音を少しだけ立てるように、礼火に自分たちの存在を感じさせるように音を立てて歩いた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる