妖魔のCHILDREN〜孤独な少年は人外少女たちの子作りの為に言い寄られながら彼女らを守る〜

将星出流

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波乱万丈

波乱万丈V

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 顔を向けたのは良いが、亮人の視線の先には体を薄手のバスタオルで巻いている氷華がいる。
 胸を隠し、バスタオルは太ももまで伸び、その太ももは部屋を照らしている蛍光灯の光によってつるつるとした表面を艶めかしく煌びやか。そしてバスタオルを巻いたことで押し潰されている氷華の胸には拭き取れていない水滴が幾つもある。
 風呂上がりの氷華を見ていると毎回のように脈が速くなってしまう。

『あとどれくらいで晩ご飯は出来上がるの?』

 寄り掛かっていた氷華が胸の前で腕を組みながら亮人へと近づいて来れば、その組んだ腕で持ち上げられている胸が亮人の視線の的になる。
 亮人自身はなるべく見ない様にしているのだが、それでもまだ十七歳の高校生としては女子の胸が目の前にあることで視線は勝手に胸へと移ってしまう。

「……もう少しで出来上がるからさ、早く寝間着来て……お願いだから」

 さっきお風呂場まで寝間着を持って行ったはずなのに、氷華は寝間着を着もせずに亮人の目の前にやってくるなり、

『少し体を冷やしたくなったからバスタオルを巻いてるんだけど……刺激強すぎた?』

「………………うん」

 正直言って、亮人の心も氷華とエッチな事をしたいとは思っている。だが、そこに本当の恋愛って言えるようなものが無いが為に、苦しい思いをしながら自分と苦闘している。
 亮人の状況を知っているような氷華はより亮人へと体を密着させれば、

『だったら、そのまま情に流されちゃいなさいよ……私は亮人だったらいつでもいいわよ』

 そのまま亮人の顔へと近づいて来る氷華は、身体からひんやりとした空気を周りへと放ちながら亮人の口を塞ぐ。
 艶つやのある色っぽい唇が亮人の口を塞ぐと、これまで以上に長いキスを氷華はしてくる。体を密着させてくれば、その氷華の綺麗な胸が亮人の胸へと押し当てられ、形を変える。
 一度、氷華が亮人から離れるともう一度亮人を求めるように唇を塞ぎ、それに対して亮人は

 「もうどうにでもなれ……」

 といった風に氷華を受け入れていたのだ。
 コンロの上で香ばしい匂いをさせていた野菜たちがこれ以上痛まないように氷華がコンロのスイッチを片手で切れば、亮人はそんな氷華の手を掴み、自分の手と絡み合わせる。

『ちょっ、亮人? いきなり、どうしたの……っん!!』

 氷華が言葉を発する為に亮人の口から離れたのも束の間、今度は亮人が氷華の唇を塞ぐ。そして、彼女の体を自分の体へと抱き寄せる。
 普段のような優しい一面とは違った力強い亮人。

『ひょっ、あひと……ごうひんすひだよ……(ちょっ、あきと……強引過ぎだよ……)』

 頬を赤く染め始めた氷華は体から力が抜けて、ヨレヨレと床へと座り込む。それと一緒になって亮人も床へと腰を降ろしてキスを続ける。
 何分間もこうしてキスを続けている亮人達。
 亮人の理性はすでに飛びかけていて、目の前にいる氷華と一つになりたい。
 そう思ってしまっている。
 自分の考えを曲げかけている亮人を止められるのは誰もいない。シャーリーはクロの横で寝息を立てて眠っている。

「なぁ、ここでするのも何だし……俺の部屋に行かないか?」

 普段のような優しい口調に少しだけ男らしさを強くした亮人。それは頬を赤くした氷華にとってはとても逞しく、それでいて子供を作るならもう亮人しかあり得ないと思わせるほど。そこまでに氷華は亮人へ思い入れをし始めていたのだ。

『私……もう亮人の子供……作りたい。勢いでこんなになっちゃったけど、もう作るしかないと……思うの……』

 色っぽい雰囲気に艶のある声。それが亮人には十分すぎる程に理性を飛ばす。
 床に腰を降ろしている氷華を背負うと二階にある自分の部屋へと行こうとする。
 そして、亮人の部屋へと向かうための階段に差し掛かったところでインターホンが家の中に響き渡った。

 誰かな……ちょうどいいとこでに家に来たのに……。

 亮人は階段に氷華を座らせて目の前の玄関へと近寄って鍵を開ければ、

「亮人……突然なのは分かってるんだけど、泊まらせて欲しいの……お願い」

 と、夜の八時半現在。
 理性が飛んでいた亮人の目の前には幼馴染の礼火が大きな鞄を手に持ちながら亮人の目の前に佇んでいた。そして、礼火のおかげで理性が飛んでいた亮人は見事、飛んでいた理性を取り戻すことが出来たのであった。

「それで礼火はどうして、そんな大きな鞄を持って俺の所に来たのかな?」

 さっきまで氷華とやる気でいた亮人はシャーリーたちを二階の部屋へと行かせ、玄関にいた礼火をリビングのソファへと座らせたのだ。クロはシャーリーを起こすのと一緒に起きれば、礼火の足元へと行き、頬を礼火の足に擦らせていた。

「あのね……それがお母さんと喧嘩しちゃって、「亮人の家に泊まってくるッ!」って言い残して家から出てきちゃったんだよね……巻き込んでごめんね」

「そういうことね……まぁ、喧嘩なら一週間以内には納まるだろうし何とか匿ってあげるけど……なぁ?」

「ミャァァ……」

 亮人の膝へと飛び込んできたクロ。そんなクロに窺うかがうように言葉を濁せば、クロからも言葉を濁したように返事が返ってくる。
 実際、亮人としては礼火を家に泊まらせるくらいどうってこともない。
 亮人の家の居候二人が、礼火の事をどう思うかが心配で仕方がなかった。
 シャーリーは昨日、礼火に向かって牙を立てていた。それで今日の夜にこうやって来たことで、シャーリーが目尻をつり上げて睨んでくるのが簡単に想像できてしまう。
 氷華も氷華で、さっき礼火を家に上げた時に敵でも見るように礼火を睨んでいた。
 だからこそ、この家は礼火にとって安全な場所ではないかもしれない。一番安全なのは多分、礼火の家だ。ここなんかよりは安全だろうし、怒られるだけで済むならまだマシだ。

「亮人……なんでそんな心配そうに私の事を見つめて来るの?」

 亮人が頭の中で礼火が襲われないかを心配していると、礼火は、

 「家に泊まらせられない」

 と言われると思ったのか、泣きそうな表情で見つめてくる。

 そんな目で見られたら断れないよ……断るつもりもなかったけど。

「なんでもないよ、今日はうちに泊まって行っていいよ? でも、少しだけ忠告しておきたいことがあるんだけどいいかな?」

 念のためにルールを付け加えておかないといけない。亮人は礼火の耳に、

「なるべく俺の近くにいない方がいいよ……殺されかねないから」

 と、囁いた。

「――っ、なんで殺されっ!」

 礼火が何とも物騒な言葉を普通の声量で口に仕掛けたことで、亮人は礼火の口を手で抑える。

「……そんなことを口にしてると本当に殺されるかもしれないから、気を付けた方がいいよ。俺の家ってなんか憑りついたみたいだから……」
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