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居候は雪と狼
居候は雪と狼V
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『ごちそうさま。あんたが作った料理…………まぁ、美味しかったわよ』
「それは嬉しい限り。俺も久しぶりに二人分の料理が作れて楽しかったよ」
亮人が作ったのはサラダにエビをふんだんに使ったトマトパスタ。
雪女はパスタを始めて食べたたらしいが、料理が本当に美味しかったらしく無我夢中という感じに無言でフォークを使って食べていた。
最初はフォークの使い方も分からなかった雪女も、亮人がフォークの使い方を教えればすぐに使えるようになって、黙々とフォークに巻かれたパスタは雪女の艶やか口元まで運んでいた。
『あんたが作る料理って毎日こんな感じなの?』
「大抵はこんな感じかな? 時々は普通にご飯と焼き魚とか気分転換に作ったりもするけど」
今の話を聞いた雪女は目をキラキラと輝かせれば、何かを期待している瞳で亮人へと視線を向ける。綺麗な黒真珠のような瞳が光を反射させ、それは本当に一切の濁りを足すことも無く、亮人の目とバッチリと視線が合う。
「それじゃあ、明日も何かご飯でも作るから期待していいよ?」
『やったっ……』
無邪気に笑みを浮かべた雪女は、そんな風貌からは全く感じられない子供らしさを亮人に惜しげもなく見せ、それを本人である雪女も気にする様子もない。
そして、亮人はふと思ったことを口にした。
「女の人に聞くのは悪いって思ってるけど……君って何歳なの?」
亮人は目の前にいるのが妖怪ならぬ妖魔ということはよく聞く話、歳は何歳まででも取れるのかもしれない。そんな疑問を抱いたのだ。
『私? 私はまだ十七歳だけど……それがどうかしたの?』
「……………………………」
流石の亮人も驚いた。
えっ、まだ君は十七歳なの? だとしたら、俺たちって同棲って考えてもいいくらいじゃないかな? それに、年頃の男女がそんな一緒に暮らすなんて……今思ったら大変なことを俺は仕出かしたんじゃないか?
あの階段では家に来れば? と言っていた亮人だが、実際に思えばまだ見知らぬ女子を家へと招き入れたことに今、気が付いた。
あの時の雪女の表情がどうしても見ていられなくて咄嗟とっさに口にしてしまったが、亮人は今の自分の状況に本当に今更ながら驚きが隠せない。
『いずれは本当にあんたの子供を産むんだからいいわよね? 私たちの未来が掛かったことだし、その軽い気持ちではとは言いたくないけど……ほんの少しだけ手伝う気持ちでいてくれたら、それで大丈夫だから……』
軽い気持ちって、そんな気持ちで俺は子供を作れない……。
目の前にいる十七歳の妖魔の女の子。白い装束で腰まで伸びた白い髪。そして、人の事を誘惑するかのように煌めく艶めかしい口に黒真珠のような一切の濁りが無い瞳。
そんな可愛らしい女子が亮人の目の前で、いずれは交わるなんてことを口にしているのだ。亮人本人は目の前にいる美少女と言える雪女からそんなことを言われて、実際には嬉しいと思っているが、それでもそう簡単に答えが出せるようなことではない。
「……まぁ、それは当分の間は置いておいて、またあんな場所に戻るのも寒いだろうしこれからは一緒にここに住んでもいいよ? 部屋も余ってるし、なによりこんな広い家を一人で使ってると寂しいからさ」
『確かに広いわよね……家に入る時は申し訳なくて家の外見を見るの忘れてたけど、家の中は凄く広いし、あと七人は普通に暮らせるんじゃないの?』
亮人の住んでいる家は三階建ての一軒家。窓の外を見れば、軽くテニスができるくらいの庭がある。そして、他にどんなものがあるのかと聞いたら「地下にプールもあるよ」と苦笑いをしながら雪女へと口を開いていた。
『どれだけ凄い親なのよ……』
冷や汗を掻きながら雪女は自分の使った食器を台所まで持って行っては洗剤を使って綺麗に食器を洗って行く。
「それくらい俺がやるからいいよ。君はお客さんなんだからリビングでテレビでも見ててくれる?」
『嫌よ、美味しいご飯だって食べさせてもらってその上、何もしないでいるなんて私の常識としてありえないわ。そういうあんたこそ、テレビでも見てなさいよ。ここは私がやっておくから休んでなさいっ!』
ひんやりとした手が亮人の背中をリビングまで押してはソファへと座らせてテレビの電源を点ける。
『絶対に手伝ったりしたら怒るんだからねっ!』
膨らませた頬を亮人の方へと向けてから踵を返す雪女は台所に置いた食器を洗い始め、亮人はしょうがなく雪女に言われた通りにテレビを見ることにした。
夜の九時となった今のテレビはお笑いが多く、ニュースが好きな亮人はすぐさまチャンネルを変えて報道番組を見始めた。
報道番組が伝えてくる情報は亮人にとってそこまで興味惹かれるようなものは少なく、あえなくテレビの電源を消してソファへと寝転んだ。
俺の人生って意外と変な方向に向いてるのかもしれないなぁ……。
天井を見つめながらそんなことを考えていれば、亮人のお腹には床から飛んできたクロがなるべく亮人に負担を掛けない様に歩き、亮人の顔の横で体を伏せてくる。
「クロも一緒に寝るか?」
「ミャァ……」
欠伸と共に亮人の顔に頬擦りしたクロは幸せそうな声音で唸り、そのまま亮人の横で眠り始めた。
寝息は一定の速度で時々、身体をビクッとさせるクロを優しく撫でていれば亮人の瞼も少しずつ重くなり始め、撫でている途中で亮人もクロと一緒に眠りに就いた。
『食器も洗ったし、ちゃんと私たちの事を説明しないといけ……ないんだけどね』
雪女がタオルで手を拭きながら亮人が寝転んでいるソファへと近づくと、亮人は静かに眠りに就いていて、起こそうかと思った雪女も流石に悪いと思ったのか、
『私もそっちで眠ろうかな……いきなりで疲れちゃったし、ね?』
亮人たちが眠っているソファと同じソファが向かい合うようにあり、そこに体を預けた雪女は亮人たち同様に翌日の朝までグッスリと眠りに就いた。
ただ、雪女は眠る一瞬前に、
『この人なら案外、私達の味方になってくれるかもしれない……』
と頭の中で呟いたのだ。
「それは嬉しい限り。俺も久しぶりに二人分の料理が作れて楽しかったよ」
亮人が作ったのはサラダにエビをふんだんに使ったトマトパスタ。
雪女はパスタを始めて食べたたらしいが、料理が本当に美味しかったらしく無我夢中という感じに無言でフォークを使って食べていた。
最初はフォークの使い方も分からなかった雪女も、亮人がフォークの使い方を教えればすぐに使えるようになって、黙々とフォークに巻かれたパスタは雪女の艶やか口元まで運んでいた。
『あんたが作る料理って毎日こんな感じなの?』
「大抵はこんな感じかな? 時々は普通にご飯と焼き魚とか気分転換に作ったりもするけど」
今の話を聞いた雪女は目をキラキラと輝かせれば、何かを期待している瞳で亮人へと視線を向ける。綺麗な黒真珠のような瞳が光を反射させ、それは本当に一切の濁りを足すことも無く、亮人の目とバッチリと視線が合う。
「それじゃあ、明日も何かご飯でも作るから期待していいよ?」
『やったっ……』
無邪気に笑みを浮かべた雪女は、そんな風貌からは全く感じられない子供らしさを亮人に惜しげもなく見せ、それを本人である雪女も気にする様子もない。
そして、亮人はふと思ったことを口にした。
「女の人に聞くのは悪いって思ってるけど……君って何歳なの?」
亮人は目の前にいるのが妖怪ならぬ妖魔ということはよく聞く話、歳は何歳まででも取れるのかもしれない。そんな疑問を抱いたのだ。
『私? 私はまだ十七歳だけど……それがどうかしたの?』
「……………………………」
流石の亮人も驚いた。
えっ、まだ君は十七歳なの? だとしたら、俺たちって同棲って考えてもいいくらいじゃないかな? それに、年頃の男女がそんな一緒に暮らすなんて……今思ったら大変なことを俺は仕出かしたんじゃないか?
あの階段では家に来れば? と言っていた亮人だが、実際に思えばまだ見知らぬ女子を家へと招き入れたことに今、気が付いた。
あの時の雪女の表情がどうしても見ていられなくて咄嗟とっさに口にしてしまったが、亮人は今の自分の状況に本当に今更ながら驚きが隠せない。
『いずれは本当にあんたの子供を産むんだからいいわよね? 私たちの未来が掛かったことだし、その軽い気持ちではとは言いたくないけど……ほんの少しだけ手伝う気持ちでいてくれたら、それで大丈夫だから……』
軽い気持ちって、そんな気持ちで俺は子供を作れない……。
目の前にいる十七歳の妖魔の女の子。白い装束で腰まで伸びた白い髪。そして、人の事を誘惑するかのように煌めく艶めかしい口に黒真珠のような一切の濁りが無い瞳。
そんな可愛らしい女子が亮人の目の前で、いずれは交わるなんてことを口にしているのだ。亮人本人は目の前にいる美少女と言える雪女からそんなことを言われて、実際には嬉しいと思っているが、それでもそう簡単に答えが出せるようなことではない。
「……まぁ、それは当分の間は置いておいて、またあんな場所に戻るのも寒いだろうしこれからは一緒にここに住んでもいいよ? 部屋も余ってるし、なによりこんな広い家を一人で使ってると寂しいからさ」
『確かに広いわよね……家に入る時は申し訳なくて家の外見を見るの忘れてたけど、家の中は凄く広いし、あと七人は普通に暮らせるんじゃないの?』
亮人の住んでいる家は三階建ての一軒家。窓の外を見れば、軽くテニスができるくらいの庭がある。そして、他にどんなものがあるのかと聞いたら「地下にプールもあるよ」と苦笑いをしながら雪女へと口を開いていた。
『どれだけ凄い親なのよ……』
冷や汗を掻きながら雪女は自分の使った食器を台所まで持って行っては洗剤を使って綺麗に食器を洗って行く。
「それくらい俺がやるからいいよ。君はお客さんなんだからリビングでテレビでも見ててくれる?」
『嫌よ、美味しいご飯だって食べさせてもらってその上、何もしないでいるなんて私の常識としてありえないわ。そういうあんたこそ、テレビでも見てなさいよ。ここは私がやっておくから休んでなさいっ!』
ひんやりとした手が亮人の背中をリビングまで押してはソファへと座らせてテレビの電源を点ける。
『絶対に手伝ったりしたら怒るんだからねっ!』
膨らませた頬を亮人の方へと向けてから踵を返す雪女は台所に置いた食器を洗い始め、亮人はしょうがなく雪女に言われた通りにテレビを見ることにした。
夜の九時となった今のテレビはお笑いが多く、ニュースが好きな亮人はすぐさまチャンネルを変えて報道番組を見始めた。
報道番組が伝えてくる情報は亮人にとってそこまで興味惹かれるようなものは少なく、あえなくテレビの電源を消してソファへと寝転んだ。
俺の人生って意外と変な方向に向いてるのかもしれないなぁ……。
天井を見つめながらそんなことを考えていれば、亮人のお腹には床から飛んできたクロがなるべく亮人に負担を掛けない様に歩き、亮人の顔の横で体を伏せてくる。
「クロも一緒に寝るか?」
「ミャァ……」
欠伸と共に亮人の顔に頬擦りしたクロは幸せそうな声音で唸り、そのまま亮人の横で眠り始めた。
寝息は一定の速度で時々、身体をビクッとさせるクロを優しく撫でていれば亮人の瞼も少しずつ重くなり始め、撫でている途中で亮人もクロと一緒に眠りに就いた。
『食器も洗ったし、ちゃんと私たちの事を説明しないといけ……ないんだけどね』
雪女がタオルで手を拭きながら亮人が寝転んでいるソファへと近づくと、亮人は静かに眠りに就いていて、起こそうかと思った雪女も流石に悪いと思ったのか、
『私もそっちで眠ろうかな……いきなりで疲れちゃったし、ね?』
亮人たちが眠っているソファと同じソファが向かい合うようにあり、そこに体を預けた雪女は亮人たち同様に翌日の朝までグッスリと眠りに就いた。
ただ、雪女は眠る一瞬前に、
『この人なら案外、私達の味方になってくれるかもしれない……』
と頭の中で呟いたのだ。
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