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新婚期
使用人達の処遇
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職人が仕事を綺麗にしあげた翌日、ドランジェ伯爵の邸宅は大忙しだった。
使用人は主人たちの朝食を用意した後、大急ぎで各々のすべきことをこなした。
掃除メイドは全員で使用人部屋をのゴミを次々と片付け、床を掃いて拭いて綺麗にした。
ドルトンは力もちの男性使用人達に指示して、修繕は終わったが消せない傷が残った小さめの家具たちを管理職の者の部屋へ運び、管理職の部屋にあった家具を他の部屋への入れ替えを行った。
プリマに礼節をもって接していたメイドの大半は、客室に吊ってあった古いカーテンを補修して丈を調節したものを、次々と使用人の部屋へととりつけていった。
そしてその他の使用人達はプリマの指示通りに自分たちの荷物をまとめたトランクを持って、今は使用していないダンスフロアへと集まった。
ダンスフロアはざわざわとしていた。
「どうやら部屋の家具が新しくなったらしいわ」
「カーテンも新しくなったって!」
「素敵なカーテンだったわ~!楽しみ~!」
嬉しそうな声であふれ、使用人達はそれぞれ胸を躍らせていた。
その頃、玄関先ではマリィアンナが真剣な顔で待っていた。
「若奥様、到着しました」
ティナが丁寧な礼をしてから言った。
「ありがとう。では控室で皆、待機を」
「かしこまりました」
ティナはマリィアンナの指示通り、控室へと向かった。
そしてすぐ後にアンデルが邸宅へ到着した。
「若奥様、お連れしました」
アンデルが連れてきた人物達はペコリと頭を下げた。
マリィアンナは微笑みながら
「…ありがとう、アンデル。では、まいりましょう」
颯爽とマリィアンナはダンスフロアへと誘導した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「では、こちらでお待ちください」
アンデルの連れてきた人物達をマリィアンナはドアの前に配置した。
マリィアンナは深呼吸してからドアを開けた。
広いダンスフロアは使用人がほぼ集まっているようだ。
マリィアンナは凛とした声で言った。
「使用人のみなさん、全員集まりましたか?」
すると、1人の使用人が
「若奥様、まだプリマさんとテレズさんとティナさんが…」
「そう、わかったわ。…皆さんに大事なお話があります。邸宅で使用していた家具やカーテンを補修し、不要になったものを修繕して使用人の皆の部屋へと下げることにしました」
使用人達がワッと喜びの声をあげた。
「そこで、部屋割を一新することといたしました。名前を呼ばれた人はこちらに一列に並んでください」
マリィアンナは書類を片手に、名前をあげていく。
呼ばれたものは嬉しそうにニコニコ並んでいく。
半分ほど名前をあげ終わったところで、書類をパサリと閉じた。
残りの使用人は不思議そうな顔でマリィアンナを見た。
「以上です」
と、マリィアンナは微笑みながら答えた。
残された使用人も、名前を呼ばれて一列に並んだ使用人達も目が点になって、あっけにとられていた。
次第にザワザワと声が大きくなっていく。
「ど…どういうことですか?」
残された使用人達がマリィアンナに焦りながら問いただした。
「部屋を与える使用人は、ここにいる者の中ではこちらに並んだ人達です」
「…は?」
「貴方達の部屋は必要ありません。貴方達は…今日で解雇します」
「!!!???」
使用人達は口を半開きにしてあっけにとられていた。
「ちょっと!待ちなさいよ!なんでそんな!」
後方の方から、ずいずいと前へと女性が出てきた。プティだった。
「おかしいでしょ!こんなの!!私達が何したっていうの!横暴だわ!」
プティの声に、他の使用人も同意を示した。
マリィアンナはそんな使用人の前で微笑んだまま
「そういう態度だからでしょう」
と、答えた。
「え?」
「主人に対してそのような態度をとる使用人を…雇い続ける意味はないの。だから解雇よ」
「態度って…」
未だにマリィアンナへ不敬な態度を示したプティへ、マリィアンナはさらに言った。
「使用人として仕事をするにあたって、わたくしに不敬な態度をするものは不要と判断しただけよ」
「不敬って…」
プティは悔しそうに拳を握りしめた。そして…
「そのような権限あなたにあるんですかぁ~?」
口をひくひくさせながら問いかけた。
その顔は醜悪な顔そのものだった。
「ありませんよね~だってあなたは」
「あるわ」
醜悪な顔で、喜々として人を気づつけようとしていたプティにマリィアンナは凛とした声で答えた。
プティは思わず「へ?」と間抜けな声を出した。
他の使用人達も予想外だったのか、動揺を隠せなかった。
「貴方達は、わたくしを政略結婚で嫁いできた箱入り娘の伯爵令嬢、お飾りの妻と思ってバカにしていたのでしょう」
プティは絶句した。
マリィアンナは強い口調で続けた。
「ドランジェ伯爵夫人は亡くなっているから女主人は不在と思っていたのかしら。すでにわたくしは伯爵様に女主人代行の許可をいただいているわ。もちろんアルベルト様の許可も。今、この邸宅の女主人はわたくしです」
ギリギリとプティは歯ぎしりした。
「女主人に無礼な態度をとって無事で済むと思って?」
シーンとダンスフロアが鎮まる。
「そんなの関係ない…女主人だからって…だからって…だからってなによぉおおお!!」
プティは静寂をやぶるように大きいヒステリックな声をあげた。
その時、バンとドア付近で大きい音がした。
使用人達もマリィアンナも一斉に音がした方を見た。
ドアの前にはアルベルトが立っていた。
使用人は主人たちの朝食を用意した後、大急ぎで各々のすべきことをこなした。
掃除メイドは全員で使用人部屋をのゴミを次々と片付け、床を掃いて拭いて綺麗にした。
ドルトンは力もちの男性使用人達に指示して、修繕は終わったが消せない傷が残った小さめの家具たちを管理職の者の部屋へ運び、管理職の部屋にあった家具を他の部屋への入れ替えを行った。
プリマに礼節をもって接していたメイドの大半は、客室に吊ってあった古いカーテンを補修して丈を調節したものを、次々と使用人の部屋へととりつけていった。
そしてその他の使用人達はプリマの指示通りに自分たちの荷物をまとめたトランクを持って、今は使用していないダンスフロアへと集まった。
ダンスフロアはざわざわとしていた。
「どうやら部屋の家具が新しくなったらしいわ」
「カーテンも新しくなったって!」
「素敵なカーテンだったわ~!楽しみ~!」
嬉しそうな声であふれ、使用人達はそれぞれ胸を躍らせていた。
その頃、玄関先ではマリィアンナが真剣な顔で待っていた。
「若奥様、到着しました」
ティナが丁寧な礼をしてから言った。
「ありがとう。では控室で皆、待機を」
「かしこまりました」
ティナはマリィアンナの指示通り、控室へと向かった。
そしてすぐ後にアンデルが邸宅へ到着した。
「若奥様、お連れしました」
アンデルが連れてきた人物達はペコリと頭を下げた。
マリィアンナは微笑みながら
「…ありがとう、アンデル。では、まいりましょう」
颯爽とマリィアンナはダンスフロアへと誘導した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「では、こちらでお待ちください」
アンデルの連れてきた人物達をマリィアンナはドアの前に配置した。
マリィアンナは深呼吸してからドアを開けた。
広いダンスフロアは使用人がほぼ集まっているようだ。
マリィアンナは凛とした声で言った。
「使用人のみなさん、全員集まりましたか?」
すると、1人の使用人が
「若奥様、まだプリマさんとテレズさんとティナさんが…」
「そう、わかったわ。…皆さんに大事なお話があります。邸宅で使用していた家具やカーテンを補修し、不要になったものを修繕して使用人の皆の部屋へと下げることにしました」
使用人達がワッと喜びの声をあげた。
「そこで、部屋割を一新することといたしました。名前を呼ばれた人はこちらに一列に並んでください」
マリィアンナは書類を片手に、名前をあげていく。
呼ばれたものは嬉しそうにニコニコ並んでいく。
半分ほど名前をあげ終わったところで、書類をパサリと閉じた。
残りの使用人は不思議そうな顔でマリィアンナを見た。
「以上です」
と、マリィアンナは微笑みながら答えた。
残された使用人も、名前を呼ばれて一列に並んだ使用人達も目が点になって、あっけにとられていた。
次第にザワザワと声が大きくなっていく。
「ど…どういうことですか?」
残された使用人達がマリィアンナに焦りながら問いただした。
「部屋を与える使用人は、ここにいる者の中ではこちらに並んだ人達です」
「…は?」
「貴方達の部屋は必要ありません。貴方達は…今日で解雇します」
「!!!???」
使用人達は口を半開きにしてあっけにとられていた。
「ちょっと!待ちなさいよ!なんでそんな!」
後方の方から、ずいずいと前へと女性が出てきた。プティだった。
「おかしいでしょ!こんなの!!私達が何したっていうの!横暴だわ!」
プティの声に、他の使用人も同意を示した。
マリィアンナはそんな使用人の前で微笑んだまま
「そういう態度だからでしょう」
と、答えた。
「え?」
「主人に対してそのような態度をとる使用人を…雇い続ける意味はないの。だから解雇よ」
「態度って…」
未だにマリィアンナへ不敬な態度を示したプティへ、マリィアンナはさらに言った。
「使用人として仕事をするにあたって、わたくしに不敬な態度をするものは不要と判断しただけよ」
「不敬って…」
プティは悔しそうに拳を握りしめた。そして…
「そのような権限あなたにあるんですかぁ~?」
口をひくひくさせながら問いかけた。
その顔は醜悪な顔そのものだった。
「ありませんよね~だってあなたは」
「あるわ」
醜悪な顔で、喜々として人を気づつけようとしていたプティにマリィアンナは凛とした声で答えた。
プティは思わず「へ?」と間抜けな声を出した。
他の使用人達も予想外だったのか、動揺を隠せなかった。
「貴方達は、わたくしを政略結婚で嫁いできた箱入り娘の伯爵令嬢、お飾りの妻と思ってバカにしていたのでしょう」
プティは絶句した。
マリィアンナは強い口調で続けた。
「ドランジェ伯爵夫人は亡くなっているから女主人は不在と思っていたのかしら。すでにわたくしは伯爵様に女主人代行の許可をいただいているわ。もちろんアルベルト様の許可も。今、この邸宅の女主人はわたくしです」
ギリギリとプティは歯ぎしりした。
「女主人に無礼な態度をとって無事で済むと思って?」
シーンとダンスフロアが鎮まる。
「そんなの関係ない…女主人だからって…だからって…だからってなによぉおおお!!」
プティは静寂をやぶるように大きいヒステリックな声をあげた。
その時、バンとドア付近で大きい音がした。
使用人達もマリィアンナも一斉に音がした方を見た。
ドアの前にはアルベルトが立っていた。
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