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「天使の髪飾り」
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結局2人共、何も買わずに本屋を後にした。
「良かったのですか、MORION∴Ψさん?」
心配そうな眼差しを向けるARISA໒꒱に対し、
「大丈夫だ、何か参考になればと
思って見に来ただけだからな。」
と彼女の気遣いを無にしたくない想いで答えた。
そして俺は、ふと思い付いた事をそのままARISA໒꒱に
打ち明けた。
「なぁ、ARISA໒꒱…まだ時間あるか…?」
「えっ、どうしたんですか?」
少し戸惑った様子の彼女が、俺の次の言葉を待つ。
「もし良ければなんだが、このまま俺の行きつけの
天然石の店に行かないか…?」
今の俺には精一杯の言葉を吐き出し、彼女の答えを
待つ。ほんの一瞬の沈黙がとても長く感じられた…
いくら何でも急過ぎたかと後悔したその時、
「良いんですか、是非(笑)!」
と彼女のキラキラ輝く瞳を見て、俺は内心安堵した。
「良かった、ちょっと作ってみたいモノが
思い浮かんでさ。」
そう話す俺の言葉を遮る様に、
「さっ、早く行きましょ(笑)」
と弾む声で意気揚々と話す笑顔のARISA໒꒱の姿が
そこにはあった。
「ところで、何を作るんです…?」
天然石の店に向かいながら、ARISA໒꒱が
問い掛けた。
「あぁ、かんざしを一本な。」
ARISA໒꒱は目を皿の様に丸くして
「えっ、かんざしですか!?すごーい(笑)!」
と感嘆の声を上げた。
「そんなに驚かなくても…(笑)」
彼女の大袈裟にも見えるリアクションに
少し笑いを堪えていると、
「笑わないで下さいよ、もぅ…(照)!」
と肩をバンバン叩いて来た。
「あっ、ゴメンなさい…」
やり過ぎたかと申し訳なさそうに謝る彼女に
俺は心配するなとの想いを込め、
笑みを浮かべ思わず頭を撫でていた。
「は、恥ずかしいです…(照)」
顔を赤らめる彼女に
「あぁ、悪い…」
とその手を退ける。
「い、いえ…(照)」
頬を赤らめながら照れるARISA໒꒱を
今にも抱き締めたい気持ちを必死に抑えながら、
天然石の店に歩を進める。
「着いたぞ、ここだ。」
ARISA໒꒱の目の前に現れたのは木目を基調とした
デザインのこじんまりとした建物。
「可愛らしいですね、物語に出てくるお家
みたいです!」
その声のトーンから、ARISA໒꒱が
胸を躍らせウキウキしているのは明らかだった。
店内に入ると、彼女の目は一層光り輝いた。
そこには色とりどりの様々な天然石がカラー毎に
所狭しと並べられ、ガラスのショーケースには原石や
ブレスレットが存在感を放っていた。
「スゴい綺麗です(笑)!」
嬉しそうに喜ぶ彼女を尻目に、3人の女性スタッフが
俺をイジリ倒してくる…
「おっ、今日は女連れ!?」
「どうする、記念にお揃いの
オリジナルブレスレット作る?
質の良いホタル玉あるよ(笑)?」
「よし、馴れ初め聞かせろ、飲み行くぞ!」
それぞれのスタッフに俺がツッコミを入れるのを
ARISA໒꒱は優しく見守っていた。
「あぁ、悪い(笑)早速なんだけど、ARISA໒꒱に
選んで欲しい物があってさ。」
「えっ、私に…?」
驚く彼女に、俺は説明を始めた。
「かんざしに使う天然石を選んで欲しいんだ。
天然石の種類は決めてあるから、ARISA໒꒱が
これって思える物を選んで欲しい。」
「そんな、私が選んで良いんですか…!?」
驚き、申し訳なさそうに話す彼女に
「今回はARISA໒꒱に選んで欲しいんだ。
ARISA໒꒱の選んだ物で、作ってみたい…」
と説得した。すると彼女は意を決した様に
「分かりました、頑張ります!」
と答えてくれた。
俺は早速、ハート型のルチルクォーツ、
天使の羽根の形をした水晶とローズクォーツ、
丸い形のエンジェライトを目の前に並べ、
各種類を一つずつARISA໒꒱に選んで貰った。
「うーん…」
途中で何度も見比べて頭を抱えていたが、
ようやく霧が晴れたのか、
「決まりました(笑)!」
と笑顔でこちらを向いた。
会計を済ませ、店を出ると辺りは
すっかり暗くなっていた。
「もう、帰ろうか…?」
伺う様な眼差しの俺に対し、
ARISA໒꒱も同じ考えだった様で、
「そうですね…(笑)」
と苦笑いしながら答えた。
「すっかり暗くなりましたね…(笑)」
「悪い…」
申し訳なさそうに謝る俺に対し突然ARISA໒꒱が
叫んだ。
「あっ!夕飯どうしましょ…?」
「あっ、楽し過ぎて忘れてた…(笑)」
互いに顔を見合せ、気付けば自然と笑い合っていた。
「どうする、夕飯も外食にする程、金銭的余裕は
ないだろ…?」
俺が悩んでいるとARISA໒꒱が恐る恐る口を開いた…
「あの…!MORION∴Ψさんの部屋で食べませんか…?」
思わぬ申し出に俺は高まる心を抑え込むのに
必死だった…
「で、でも食材はどうする…?
ここからじゃ市場は遠いし…」
「大丈夫ですよ、私の部屋にもありますし、
食堂のも使えます(笑)」
そう言って微笑むARISA໒꒱の笑顔は
瞬く間に俺の不安を払拭した。
屋敷に戻ると、食堂やARISA໒꒱の部屋にあった食材を
掻き集めて料理を始めた。
「夕飯、何にするんですか…?」
不思議そうに尋ねるARISA໒꒱に対し、俺は
「今日は雑穀米とローストチキンのプレートに
しようと思う。」
と告げた。途端に彼女は
「えっ、そんなオシャレなの作れるんですか!?」
と驚いていた。何度見ても彼女の驚く顔は
可愛くて見飽きない。
「何だよ、意外か…?」
「スゴく意外です…って失礼ですね、すみません…」
平謝りする彼女に
「じゃあお詫びに、手伝ってくれよ…?」
と、本心をひた隠す様に頼んだ。
「分かりました、何すれば良いですか(笑)?」
素直に受け入れてくれる彼女に手伝わせるのが
少し忍びないのだが、
「それじゃあプレートに盛るクルトンサラダと
目玉焼きを2つ焼いてくれ。」
とお願いした。すると彼女は元気よく
「はい(笑)!」
と返事をし、サラダに取り掛かった。
「しかしMORION∴Ψさん、よく雑穀米なんて
持ってましたね…?」
と質問してきたARISA໒꒱に対し、
「あぁ、前に旅の途中で助けた爺さんがくれたんだ。」
と俺は昔話を始めた。
「助けた…?その方も悪魔なのですか?」
「いや、その爺さんは天使だったな。」
「天使を悪魔が助けるなんて、珍しい…」
物珍しそうにARISA໒꒱は話に聞き入っていた。
「まぁそうかもな。今でこそ天使と悪魔は共生関係に
あるが、その意義を理解せずに天使に乱暴をする悪魔も
未だに居てな、そいつらから助けた時にさ…」
「そうなんですね、やっぱりMORION∴Ψさんは
優しいです(笑)!」
「ふふっ、そうか…?流石に米だから最初は俺も
断ったが、その爺さんがしつこくてな…
若いモンこそ沢山食べて、力付けろ!ってな(笑)」
「そうなんですね、それだけ感謝してる
って事ですよ(笑)」
「なら良いが…(笑)」
「はい(笑)!」
話に夢中になっていると、あっという間に雑穀米が
炊きあがり、チキンも程良く焼けてきた。
「ARISA໒꒱、目玉焼きとサラダはどうだ?」
「大丈夫ですよ(笑)」
クルトンサラダを添え、ローストチキンに目玉焼きを
被せ、ドーム状に雑穀米を盛り付けた。
夕食の用意が整い、それをカートに乗せて
俺の部屋へと運び、テーブルへと並べた。
「それじゃあ、頂きます。」
ARISA໒꒱は料理を口に運び、
「美味しい~(笑)」
と満面の笑みで楽しんでいた。
俺も一口。
「ほう、この雑穀米美味いな。様々な穀物の
豊かな風味が互いを干渉する事無く、
肉汁溢れ塩胡椒の効いたローストチキンや
白身と黄身のバランスが絶妙な目玉焼き、
クルトンのカリカリ食感にシーザードレッシングの
クセある風味とベビーリーフ、レタスの
シャキシャキ食感に寄り添い演出してくれる…」
と気付いたら語っていた…
それを見たARISA໒꒱は大爆笑…
「そんなに笑うなよ、恥ずかしい…(照)」
「だって急に真面目な顔して語るんですもん(笑)」
恥ずかしそうにうつ向く俺に、ARISA໒꒱は
慰める様に
「大丈夫ですよ(笑)」
と励ましていたが、目の奥は笑っていた。
食後、並んで洗い物をしていると
それまで晴れていた空に次第に暗雲がたちこめ、
突如雷鳴が轟いた…
「キャ!」
どうやらARISA໒꒱は雷が苦手らしく、その場に
しゃがみ込んだ…
「おいおい、大丈夫か…?」
そう声掛けた俺に対し、ARISA໒꒱は
「大丈夫です。」
と答えたが、その笑顔は引きつっている。
「雷、苦手なのか…?」
「はい…」
地獄にて育った悪魔である俺にとっては
聴き慣れた音だが、
天上で育った天使であるARISA໒꒱にとっては
聴き慣れない、恐怖の音の様だ…
「あ、あの…一つお願いがあります…」
突然の申し出だ、一体何だろうか…?
「もし良かったら、今夜MORION∴Ψさんの部屋に
泊めて貰えませんか…?
雷鳴る中で一人寝るのは怖いです…」
まさかの申し出に少し躊躇った、
何故姉の様に慕うROSE໒꒱ではなく
出逢って間もない俺にそんな事を頼むのか…
確認も兼ねて、質問を投げ掛けた。
「それなら、俺よりもROSE໒꒱が
良いんじゃないか…?」
恐る恐る問い掛けた俺に対し、
彼女から返ってきた答えは
「ROSE໒꒱姉さんにはいつも御迷惑掛けてますし…
それに…MORION∴Ψさんが、良いんです…」
突然舞い降りた幸運に内心戸惑いながらも
小さくガッツポーズ。
だがARISA໒꒱が俺を好きだという保証は
何処にも無いのだ、この想いが知られて彼女との
関係が崩れるのも怖かった…
心境が顔に出ていたのだろう、ARISA໒꒱が
「あの、もし御迷惑なら…」
と申し訳なさそうに聞いてきたが、
「大丈夫だ、俺で良ければ歓迎だ。」
声が上擦っていないか心配したが、彼女の
ホッとした様子から察するに大丈夫だろう。
「本当ですか!?有難う御座います(笑)」
ARISA໒꒱はつい先程まで雷にビクついていたとは
思えない程の明るい笑顔を俺に向けてきた。
「じゃ、残りは俺がやっとくから、
先に風呂入ってきて良いぞ。」
館に風呂は一つしかないので、皆それぞれ
タイミングを見ながら入っているのだ。
ARISA໒꒱が入浴している間、俺は天然石店で
買った天然石を使って作業を始めた…
ARISA໒꒱が入浴中、浴室のドアに映る人影。
「おや、誰か入ってるの…?」
声の主はパスタ店で別れたROSE໒꒱だ。
「あっ、ROSE໒꒱姉さん。」
「ARISA໒꒱、帰ってたのかい…(笑)
あの男に何も変な事されなかった…?」
「疑い過ぎですよ、MORION∴Ψさんは
とてもお優しい方ですよ…?」
「そっか…あっ、今夜は雷スゴいけど大丈夫…?
ARISA໒꒱苦手だろ…?」
「これ位なら大丈夫ですよ…(笑)」
この時のARISA໒꒱は、動揺を悟られない様に
するので精一杯だっただろう…
「なら良いんだけど、無理ならすぐに飛び込んで来て
良いからね…?」
そう言うとROSE໒꒱は脱衣場を後にした。
「ふぅ…ROSE໒꒱姉さんに初めて嘘を
ついてしまいました…」
心の中でARISA໒꒱はそう呟いた…
ROSE໒꒱に気付かれない様にMORION∴Ψの部屋に
戻ると、MORION∴Ψは窓際に座って雷雨の空を
眺めていた…
「すみません、お風呂お先に頂きました…(照)」
「あぁ、おかえり(笑)」
そういうとMORION∴ΨはARISA໒꒱に近付いて行き、
そっと頭を撫でた…
「な、何ですか…!?」
戸惑うARISA໒꒱が頭に手をやると、
そこには一本のかんざし、そしてそれには
ARISA໒꒱の選んだ天然石があしらわれていた…
「えっ、これって…!?」
「今日の御礼だ…」
「そ、そんな…頂けませんよ…」
慌てて取ろうとするARISA໒꒱の手を止め、
MORION∴Ψは続けた…
「良いんだ、俺がARISA໒꒱に渡したいんだ。
受け取って欲しい…」
ARISA໒꒱はその想いを受け止める様に、
外したそのかんざしを胸の中に
そっと包み仕舞い込んだ…
「有難う御座います、大切にします…」
そしてそのかんざしを傍にあった一輪挿しの花瓶に
そっと差した…
「じゃあ、風呂行ってくる…」
そう言うとMORION∴Ψは部屋を出て、
浴室へ向かった…
「あっ、はい、いってらっしゃい。」
その姿をARISA໒꒱は優しく見守っていた…
「良かったのですか、MORION∴Ψさん?」
心配そうな眼差しを向けるARISA໒꒱に対し、
「大丈夫だ、何か参考になればと
思って見に来ただけだからな。」
と彼女の気遣いを無にしたくない想いで答えた。
そして俺は、ふと思い付いた事をそのままARISA໒꒱に
打ち明けた。
「なぁ、ARISA໒꒱…まだ時間あるか…?」
「えっ、どうしたんですか?」
少し戸惑った様子の彼女が、俺の次の言葉を待つ。
「もし良ければなんだが、このまま俺の行きつけの
天然石の店に行かないか…?」
今の俺には精一杯の言葉を吐き出し、彼女の答えを
待つ。ほんの一瞬の沈黙がとても長く感じられた…
いくら何でも急過ぎたかと後悔したその時、
「良いんですか、是非(笑)!」
と彼女のキラキラ輝く瞳を見て、俺は内心安堵した。
「良かった、ちょっと作ってみたいモノが
思い浮かんでさ。」
そう話す俺の言葉を遮る様に、
「さっ、早く行きましょ(笑)」
と弾む声で意気揚々と話す笑顔のARISA໒꒱の姿が
そこにはあった。
「ところで、何を作るんです…?」
天然石の店に向かいながら、ARISA໒꒱が
問い掛けた。
「あぁ、かんざしを一本な。」
ARISA໒꒱は目を皿の様に丸くして
「えっ、かんざしですか!?すごーい(笑)!」
と感嘆の声を上げた。
「そんなに驚かなくても…(笑)」
彼女の大袈裟にも見えるリアクションに
少し笑いを堪えていると、
「笑わないで下さいよ、もぅ…(照)!」
と肩をバンバン叩いて来た。
「あっ、ゴメンなさい…」
やり過ぎたかと申し訳なさそうに謝る彼女に
俺は心配するなとの想いを込め、
笑みを浮かべ思わず頭を撫でていた。
「は、恥ずかしいです…(照)」
顔を赤らめる彼女に
「あぁ、悪い…」
とその手を退ける。
「い、いえ…(照)」
頬を赤らめながら照れるARISA໒꒱を
今にも抱き締めたい気持ちを必死に抑えながら、
天然石の店に歩を進める。
「着いたぞ、ここだ。」
ARISA໒꒱の目の前に現れたのは木目を基調とした
デザインのこじんまりとした建物。
「可愛らしいですね、物語に出てくるお家
みたいです!」
その声のトーンから、ARISA໒꒱が
胸を躍らせウキウキしているのは明らかだった。
店内に入ると、彼女の目は一層光り輝いた。
そこには色とりどりの様々な天然石がカラー毎に
所狭しと並べられ、ガラスのショーケースには原石や
ブレスレットが存在感を放っていた。
「スゴい綺麗です(笑)!」
嬉しそうに喜ぶ彼女を尻目に、3人の女性スタッフが
俺をイジリ倒してくる…
「おっ、今日は女連れ!?」
「どうする、記念にお揃いの
オリジナルブレスレット作る?
質の良いホタル玉あるよ(笑)?」
「よし、馴れ初め聞かせろ、飲み行くぞ!」
それぞれのスタッフに俺がツッコミを入れるのを
ARISA໒꒱は優しく見守っていた。
「あぁ、悪い(笑)早速なんだけど、ARISA໒꒱に
選んで欲しい物があってさ。」
「えっ、私に…?」
驚く彼女に、俺は説明を始めた。
「かんざしに使う天然石を選んで欲しいんだ。
天然石の種類は決めてあるから、ARISA໒꒱が
これって思える物を選んで欲しい。」
「そんな、私が選んで良いんですか…!?」
驚き、申し訳なさそうに話す彼女に
「今回はARISA໒꒱に選んで欲しいんだ。
ARISA໒꒱の選んだ物で、作ってみたい…」
と説得した。すると彼女は意を決した様に
「分かりました、頑張ります!」
と答えてくれた。
俺は早速、ハート型のルチルクォーツ、
天使の羽根の形をした水晶とローズクォーツ、
丸い形のエンジェライトを目の前に並べ、
各種類を一つずつARISA໒꒱に選んで貰った。
「うーん…」
途中で何度も見比べて頭を抱えていたが、
ようやく霧が晴れたのか、
「決まりました(笑)!」
と笑顔でこちらを向いた。
会計を済ませ、店を出ると辺りは
すっかり暗くなっていた。
「もう、帰ろうか…?」
伺う様な眼差しの俺に対し、
ARISA໒꒱も同じ考えだった様で、
「そうですね…(笑)」
と苦笑いしながら答えた。
「すっかり暗くなりましたね…(笑)」
「悪い…」
申し訳なさそうに謝る俺に対し突然ARISA໒꒱が
叫んだ。
「あっ!夕飯どうしましょ…?」
「あっ、楽し過ぎて忘れてた…(笑)」
互いに顔を見合せ、気付けば自然と笑い合っていた。
「どうする、夕飯も外食にする程、金銭的余裕は
ないだろ…?」
俺が悩んでいるとARISA໒꒱が恐る恐る口を開いた…
「あの…!MORION∴Ψさんの部屋で食べませんか…?」
思わぬ申し出に俺は高まる心を抑え込むのに
必死だった…
「で、でも食材はどうする…?
ここからじゃ市場は遠いし…」
「大丈夫ですよ、私の部屋にもありますし、
食堂のも使えます(笑)」
そう言って微笑むARISA໒꒱の笑顔は
瞬く間に俺の不安を払拭した。
屋敷に戻ると、食堂やARISA໒꒱の部屋にあった食材を
掻き集めて料理を始めた。
「夕飯、何にするんですか…?」
不思議そうに尋ねるARISA໒꒱に対し、俺は
「今日は雑穀米とローストチキンのプレートに
しようと思う。」
と告げた。途端に彼女は
「えっ、そんなオシャレなの作れるんですか!?」
と驚いていた。何度見ても彼女の驚く顔は
可愛くて見飽きない。
「何だよ、意外か…?」
「スゴく意外です…って失礼ですね、すみません…」
平謝りする彼女に
「じゃあお詫びに、手伝ってくれよ…?」
と、本心をひた隠す様に頼んだ。
「分かりました、何すれば良いですか(笑)?」
素直に受け入れてくれる彼女に手伝わせるのが
少し忍びないのだが、
「それじゃあプレートに盛るクルトンサラダと
目玉焼きを2つ焼いてくれ。」
とお願いした。すると彼女は元気よく
「はい(笑)!」
と返事をし、サラダに取り掛かった。
「しかしMORION∴Ψさん、よく雑穀米なんて
持ってましたね…?」
と質問してきたARISA໒꒱に対し、
「あぁ、前に旅の途中で助けた爺さんがくれたんだ。」
と俺は昔話を始めた。
「助けた…?その方も悪魔なのですか?」
「いや、その爺さんは天使だったな。」
「天使を悪魔が助けるなんて、珍しい…」
物珍しそうにARISA໒꒱は話に聞き入っていた。
「まぁそうかもな。今でこそ天使と悪魔は共生関係に
あるが、その意義を理解せずに天使に乱暴をする悪魔も
未だに居てな、そいつらから助けた時にさ…」
「そうなんですね、やっぱりMORION∴Ψさんは
優しいです(笑)!」
「ふふっ、そうか…?流石に米だから最初は俺も
断ったが、その爺さんがしつこくてな…
若いモンこそ沢山食べて、力付けろ!ってな(笑)」
「そうなんですね、それだけ感謝してる
って事ですよ(笑)」
「なら良いが…(笑)」
「はい(笑)!」
話に夢中になっていると、あっという間に雑穀米が
炊きあがり、チキンも程良く焼けてきた。
「ARISA໒꒱、目玉焼きとサラダはどうだ?」
「大丈夫ですよ(笑)」
クルトンサラダを添え、ローストチキンに目玉焼きを
被せ、ドーム状に雑穀米を盛り付けた。
夕食の用意が整い、それをカートに乗せて
俺の部屋へと運び、テーブルへと並べた。
「それじゃあ、頂きます。」
ARISA໒꒱は料理を口に運び、
「美味しい~(笑)」
と満面の笑みで楽しんでいた。
俺も一口。
「ほう、この雑穀米美味いな。様々な穀物の
豊かな風味が互いを干渉する事無く、
肉汁溢れ塩胡椒の効いたローストチキンや
白身と黄身のバランスが絶妙な目玉焼き、
クルトンのカリカリ食感にシーザードレッシングの
クセある風味とベビーリーフ、レタスの
シャキシャキ食感に寄り添い演出してくれる…」
と気付いたら語っていた…
それを見たARISA໒꒱は大爆笑…
「そんなに笑うなよ、恥ずかしい…(照)」
「だって急に真面目な顔して語るんですもん(笑)」
恥ずかしそうにうつ向く俺に、ARISA໒꒱は
慰める様に
「大丈夫ですよ(笑)」
と励ましていたが、目の奥は笑っていた。
食後、並んで洗い物をしていると
それまで晴れていた空に次第に暗雲がたちこめ、
突如雷鳴が轟いた…
「キャ!」
どうやらARISA໒꒱は雷が苦手らしく、その場に
しゃがみ込んだ…
「おいおい、大丈夫か…?」
そう声掛けた俺に対し、ARISA໒꒱は
「大丈夫です。」
と答えたが、その笑顔は引きつっている。
「雷、苦手なのか…?」
「はい…」
地獄にて育った悪魔である俺にとっては
聴き慣れた音だが、
天上で育った天使であるARISA໒꒱にとっては
聴き慣れない、恐怖の音の様だ…
「あ、あの…一つお願いがあります…」
突然の申し出だ、一体何だろうか…?
「もし良かったら、今夜MORION∴Ψさんの部屋に
泊めて貰えませんか…?
雷鳴る中で一人寝るのは怖いです…」
まさかの申し出に少し躊躇った、
何故姉の様に慕うROSE໒꒱ではなく
出逢って間もない俺にそんな事を頼むのか…
確認も兼ねて、質問を投げ掛けた。
「それなら、俺よりもROSE໒꒱が
良いんじゃないか…?」
恐る恐る問い掛けた俺に対し、
彼女から返ってきた答えは
「ROSE໒꒱姉さんにはいつも御迷惑掛けてますし…
それに…MORION∴Ψさんが、良いんです…」
突然舞い降りた幸運に内心戸惑いながらも
小さくガッツポーズ。
だがARISA໒꒱が俺を好きだという保証は
何処にも無いのだ、この想いが知られて彼女との
関係が崩れるのも怖かった…
心境が顔に出ていたのだろう、ARISA໒꒱が
「あの、もし御迷惑なら…」
と申し訳なさそうに聞いてきたが、
「大丈夫だ、俺で良ければ歓迎だ。」
声が上擦っていないか心配したが、彼女の
ホッとした様子から察するに大丈夫だろう。
「本当ですか!?有難う御座います(笑)」
ARISA໒꒱はつい先程まで雷にビクついていたとは
思えない程の明るい笑顔を俺に向けてきた。
「じゃ、残りは俺がやっとくから、
先に風呂入ってきて良いぞ。」
館に風呂は一つしかないので、皆それぞれ
タイミングを見ながら入っているのだ。
ARISA໒꒱が入浴している間、俺は天然石店で
買った天然石を使って作業を始めた…
ARISA໒꒱が入浴中、浴室のドアに映る人影。
「おや、誰か入ってるの…?」
声の主はパスタ店で別れたROSE໒꒱だ。
「あっ、ROSE໒꒱姉さん。」
「ARISA໒꒱、帰ってたのかい…(笑)
あの男に何も変な事されなかった…?」
「疑い過ぎですよ、MORION∴Ψさんは
とてもお優しい方ですよ…?」
「そっか…あっ、今夜は雷スゴいけど大丈夫…?
ARISA໒꒱苦手だろ…?」
「これ位なら大丈夫ですよ…(笑)」
この時のARISA໒꒱は、動揺を悟られない様に
するので精一杯だっただろう…
「なら良いんだけど、無理ならすぐに飛び込んで来て
良いからね…?」
そう言うとROSE໒꒱は脱衣場を後にした。
「ふぅ…ROSE໒꒱姉さんに初めて嘘を
ついてしまいました…」
心の中でARISA໒꒱はそう呟いた…
ROSE໒꒱に気付かれない様にMORION∴Ψの部屋に
戻ると、MORION∴Ψは窓際に座って雷雨の空を
眺めていた…
「すみません、お風呂お先に頂きました…(照)」
「あぁ、おかえり(笑)」
そういうとMORION∴ΨはARISA໒꒱に近付いて行き、
そっと頭を撫でた…
「な、何ですか…!?」
戸惑うARISA໒꒱が頭に手をやると、
そこには一本のかんざし、そしてそれには
ARISA໒꒱の選んだ天然石があしらわれていた…
「えっ、これって…!?」
「今日の御礼だ…」
「そ、そんな…頂けませんよ…」
慌てて取ろうとするARISA໒꒱の手を止め、
MORION∴Ψは続けた…
「良いんだ、俺がARISA໒꒱に渡したいんだ。
受け取って欲しい…」
ARISA໒꒱はその想いを受け止める様に、
外したそのかんざしを胸の中に
そっと包み仕舞い込んだ…
「有難う御座います、大切にします…」
そしてそのかんざしを傍にあった一輪挿しの花瓶に
そっと差した…
「じゃあ、風呂行ってくる…」
そう言うとMORION∴Ψは部屋を出て、
浴室へ向かった…
「あっ、はい、いってらっしゃい。」
その姿をARISA໒꒱は優しく見守っていた…
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それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
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