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第六音
第六音④
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そうしているうちに更に十五分が経過した。鈴はスマートフォンを確認することも忘れて、ただただ外を眺めていた。窓の外は相変わらず雨が降り続いている。
(良く降るなぁ……)
日が落ちかけているのか、外の暗さは増していく。鈴が日が落ちたら帰ろうと決めたときだった。
「鈴っ!」
駅の構内に鈴の名前が響いた。鈴がその声に反射的に振り返ると、そこにはびしょ濡れになった和真の姿があった。
「和真くんっ?」
驚いた鈴が和真に駆け寄る。近くで見ると和真は肩で息をしており、かなり急いできたことが伝わってくる。鈴が目を丸くしていると、
「悪い……!」
和真はそう言って頭を下げた。鈴はそんな和真の様子に慌てる。
「だ、大丈夫だよっ?」
鈴はそう言うとスクールバッグの中からハンドタオルを取り出し、伏せている和真の顔に手を伸ばして濡れているその頬を拭いていく。
「本当、ごめんな。待たせたよな?」
されるがままに言う和真の言葉に鈴が返す。
「気にしないで。私が勝手に来ちゃっただけだから。私の方こそ、忙しいときにいきなり来ちゃって、ごめんね」
「いや……」
和真はそう言うとじっと鈴を見つめた。和真の顔をハンドタオルで拭いていた鈴は、その視線に気付いて視線を向ける。すると真剣な和真の視線とぶつかった。
鈴の鼓動が一気に跳ねた。そんな鈴へ和真は、
「それで、大事な話って……?」
「あ……、あの……」
和真からの問いかけに鈴が言いよどむ。ここまで来て、和真が心変わりしていたらどうしようという恐怖心が鈴を襲う。気付けば足が震え、喉がカラカラになっていく。
(なんで? 私の気持ち、決まってるじゃん)
気付けば鈴は和真から視線を逸らして自分を叱責していた。それから数度、深呼吸を繰り返すとしっかりと和真の目を見つめた。和真もそんな鈴の視線をしっかりと真正面から受けとめる。
その澄んだ和真の視線に鈴は一瞬たじろぐが、心を決めた。
「あのね、和真くん。私、和真くんのことが、あの……」
そこで鈴はスッと息を吸い込むと、
「好きです!」
一気に吐き出した。気付けば鈴は両目をぎゅっとつぶっている。しかし目の前に立っている和真がホッと息をついたのが伝わってきた。
「良かった……」
和真のかすれた声が降ってきた。その声に鈴がそろそろと両目を開ける。そうして見た和真の表情は、やわらかな笑顔だった。その表情に鈴の心臓がドクンと高鳴る。
「俺の気持ち、受け取ってくれたと思っても?」
和真の確認の声に、鈴は顔を真っ赤にさせながら頷いた。それを見た和真も安心したのか、深く息を吐き出す。それから、
「ありがとう、鈴。大事にする」
そう言って、笑うのだった。
鈴は和真の笑顔に顔を赤らめながらも笑顔を返す。二人の間に言葉はなかったが、二人を包む空気はやわらかなものだった。
気付けばあんなにも降っていた外の雨も今は小降りになっている。
そうしてしばらく見つめ合っていた二人だったが、ホームに電車が滑り込む音で、はっとした。
「今、何時だ? ……七時半?」
和真がポケットからスマートフォンを取り出して時刻を確認する。その和真の声に鈴もスマートフォンを確認した。そこには家族からのメッセージが入っていた。
「やっば! 和真くん、ごめんね! 私、帰らなきゃ……」
「一人で大丈夫か?」
「うん、平気! じゃあ、また月曜日にね!」
鈴はそう言うと慌ただしく改札へと駆け出していった。和真はその後ろ姿が消えるまでじっと見つめているのだった。
鈴は電車を待っている間に電車の時刻をアプリで調べると、自分の最寄り駅に到着する時刻を家族へと送った。到着予定時刻が夜の九時半を回ることを告げると、すぐに電話が鳴った。
『迎えに行くから、話はその時ね! とりあえず、気を付けて帰ってらっしゃい!』
母親はそう言うだけ言うと電話を切った。鈴は少しだけ家に帰るのが億劫になるのだった。
「あー、疲れた! 怒られた!」
家に帰り着いた鈴はバタッとベッドへ倒れ込んだ。
無事、自身が普段から利用している最寄り駅に到着した鈴は、そこへ迎えに来ていた母と共に帰宅した。その時、車の中でたっぷり叱られたのだった。
「あんなに怒らなくたって、いいじゃんね……」
鈴がブツブツと文句を言っていると、スマートフォンが震えた。電車に乗るときにマナーモードに切り替えていたことを思い出した鈴がスマートフォンを取り出す。そこには心配している和真と、和真との関係を応援してくれた『ルナティック・ガールズ』のメンバーからのメッセージが映し出されていた。
鈴はまず和真に、帰宅した旨のメッセージを送った。その後、カノンと琴音からの『ルナティック・ガールズ』のグループメッセージを読む。琴音が駅で鈴と別れたことを書いていると、カノンが和真はちゃんと鈴の元へと行くのかと心配している。それに対して、琴音は大丈夫だろうと返していた。とにかく鈴からの連絡を待とうと言うことで、二人の会話はまとまっていた。
(二人とも……。待っててくれてありがとう)
鈴は心の中で二人に感謝をすると、和真と付き合えることになったことを二人に報告した。しばらくして既読が一つ付く。その既読はカノンだったようですぐに、
『良かったじゃん! おめでとう!』
短いメッセージの後におめでとうスタンプが送られる。その後、再びカノンからメッセージが送られてきた。
『これで小林くんの彼女ですって、学校でも堂々とできるね!』
楽しんでいるようなカノンのメッセージに鈴は少し顔を赤くしながら、
『最初からコソコソしてないよ!』
そう返すと、遅くなってしまった寝る準備を始めて行くのだった。
(良く降るなぁ……)
日が落ちかけているのか、外の暗さは増していく。鈴が日が落ちたら帰ろうと決めたときだった。
「鈴っ!」
駅の構内に鈴の名前が響いた。鈴がその声に反射的に振り返ると、そこにはびしょ濡れになった和真の姿があった。
「和真くんっ?」
驚いた鈴が和真に駆け寄る。近くで見ると和真は肩で息をしており、かなり急いできたことが伝わってくる。鈴が目を丸くしていると、
「悪い……!」
和真はそう言って頭を下げた。鈴はそんな和真の様子に慌てる。
「だ、大丈夫だよっ?」
鈴はそう言うとスクールバッグの中からハンドタオルを取り出し、伏せている和真の顔に手を伸ばして濡れているその頬を拭いていく。
「本当、ごめんな。待たせたよな?」
されるがままに言う和真の言葉に鈴が返す。
「気にしないで。私が勝手に来ちゃっただけだから。私の方こそ、忙しいときにいきなり来ちゃって、ごめんね」
「いや……」
和真はそう言うとじっと鈴を見つめた。和真の顔をハンドタオルで拭いていた鈴は、その視線に気付いて視線を向ける。すると真剣な和真の視線とぶつかった。
鈴の鼓動が一気に跳ねた。そんな鈴へ和真は、
「それで、大事な話って……?」
「あ……、あの……」
和真からの問いかけに鈴が言いよどむ。ここまで来て、和真が心変わりしていたらどうしようという恐怖心が鈴を襲う。気付けば足が震え、喉がカラカラになっていく。
(なんで? 私の気持ち、決まってるじゃん)
気付けば鈴は和真から視線を逸らして自分を叱責していた。それから数度、深呼吸を繰り返すとしっかりと和真の目を見つめた。和真もそんな鈴の視線をしっかりと真正面から受けとめる。
その澄んだ和真の視線に鈴は一瞬たじろぐが、心を決めた。
「あのね、和真くん。私、和真くんのことが、あの……」
そこで鈴はスッと息を吸い込むと、
「好きです!」
一気に吐き出した。気付けば鈴は両目をぎゅっとつぶっている。しかし目の前に立っている和真がホッと息をついたのが伝わってきた。
「良かった……」
和真のかすれた声が降ってきた。その声に鈴がそろそろと両目を開ける。そうして見た和真の表情は、やわらかな笑顔だった。その表情に鈴の心臓がドクンと高鳴る。
「俺の気持ち、受け取ってくれたと思っても?」
和真の確認の声に、鈴は顔を真っ赤にさせながら頷いた。それを見た和真も安心したのか、深く息を吐き出す。それから、
「ありがとう、鈴。大事にする」
そう言って、笑うのだった。
鈴は和真の笑顔に顔を赤らめながらも笑顔を返す。二人の間に言葉はなかったが、二人を包む空気はやわらかなものだった。
気付けばあんなにも降っていた外の雨も今は小降りになっている。
そうしてしばらく見つめ合っていた二人だったが、ホームに電車が滑り込む音で、はっとした。
「今、何時だ? ……七時半?」
和真がポケットからスマートフォンを取り出して時刻を確認する。その和真の声に鈴もスマートフォンを確認した。そこには家族からのメッセージが入っていた。
「やっば! 和真くん、ごめんね! 私、帰らなきゃ……」
「一人で大丈夫か?」
「うん、平気! じゃあ、また月曜日にね!」
鈴はそう言うと慌ただしく改札へと駆け出していった。和真はその後ろ姿が消えるまでじっと見つめているのだった。
鈴は電車を待っている間に電車の時刻をアプリで調べると、自分の最寄り駅に到着する時刻を家族へと送った。到着予定時刻が夜の九時半を回ることを告げると、すぐに電話が鳴った。
『迎えに行くから、話はその時ね! とりあえず、気を付けて帰ってらっしゃい!』
母親はそう言うだけ言うと電話を切った。鈴は少しだけ家に帰るのが億劫になるのだった。
「あー、疲れた! 怒られた!」
家に帰り着いた鈴はバタッとベッドへ倒れ込んだ。
無事、自身が普段から利用している最寄り駅に到着した鈴は、そこへ迎えに来ていた母と共に帰宅した。その時、車の中でたっぷり叱られたのだった。
「あんなに怒らなくたって、いいじゃんね……」
鈴がブツブツと文句を言っていると、スマートフォンが震えた。電車に乗るときにマナーモードに切り替えていたことを思い出した鈴がスマートフォンを取り出す。そこには心配している和真と、和真との関係を応援してくれた『ルナティック・ガールズ』のメンバーからのメッセージが映し出されていた。
鈴はまず和真に、帰宅した旨のメッセージを送った。その後、カノンと琴音からの『ルナティック・ガールズ』のグループメッセージを読む。琴音が駅で鈴と別れたことを書いていると、カノンが和真はちゃんと鈴の元へと行くのかと心配している。それに対して、琴音は大丈夫だろうと返していた。とにかく鈴からの連絡を待とうと言うことで、二人の会話はまとまっていた。
(二人とも……。待っててくれてありがとう)
鈴は心の中で二人に感謝をすると、和真と付き合えることになったことを二人に報告した。しばらくして既読が一つ付く。その既読はカノンだったようですぐに、
『良かったじゃん! おめでとう!』
短いメッセージの後におめでとうスタンプが送られる。その後、再びカノンからメッセージが送られてきた。
『これで小林くんの彼女ですって、学校でも堂々とできるね!』
楽しんでいるようなカノンのメッセージに鈴は少し顔を赤くしながら、
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