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第四音
第四音③
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翌日の放課後。
鈴と琴音はもはや日課となっているカノンの教室へと集まっていた。今後どう木村を説得し、大会へ出場するかを話し合うためだ。
「昨日の鈴の配信、見た? 琴音」
「見てたよー! 鈴ちゃん、今日からあんなに嫌がってた勉強を始めるって」
「そうなんだよ! 驚いて私、あの後すぐにメッセージ、送っちゃった」
カノンと琴音が楽しそうに話すのに、鈴だけは苦虫をかみつぶしたような顔をしている。一晩経って、自分がとんでもない宣言を生配信でしたのではないかと後悔していたからだ。そんな鈴の顔を見た琴音が苦笑いをする。
「鈴ちゃん、さっきから凄い顔をしてるよ」
「むー……」
唸る鈴を見て、カノンが腹を抱えて大笑いする。鈴はそんなカノンをぎろりと睨むと、
「カノン、約束、忘れてないよね?」
「一緒に勉強するってヤツでしょ? 大丈夫、大丈夫。本当に一緒にやるってば!」
鈴のどんよりした声にカノンは笑顔で答えると、どんどんと鈴の背中を叩く。その様子をにこにこと見守っていた琴音は、
「じゃあ、木村先生をどう説得するか、話し合おう!」
その言葉にカノンと鈴は姿勢を正す。
勉強をすることを決めた三人ではあったが、ただ漠然と勉強をしても意味がないように感じる。何よりそれでは張り合いがない。
「何か、目標が欲しいよね」
カノンの言葉に二人は頷く。しかし期末テストの結果が出る頃は大会の応募締め切りが過ぎている。期末テストを口にしていた木村の期待には応えられない。
「なんで応募締め切りが期末テスト中なんだよー!」
そう叫んだところで締め切りもテストの日程も変わることはない。
「とりあえず、さ。テスト対策として頑張る教科を決めない? まさか、全教科に力を入れるの?」
琴音の言葉にカノンと鈴は反射的に首を振る。全教科の成績がグッと上がることがいちばん良いことは分かっている。しかし数週間では全教科の成績を上げるためにかかる負担が半端ない。
「鈴ちゃんは中間テストで赤点を取った数学を頑張るとして、私とカノンちゃんはどうしようか?」
「んー……」
琴音の言葉にカノンが頭を抱える。そんな二人へ鈴が言った。
「二人とも中間テストでいちばん悪かった教科で良くない? 私だけ苦しむなんてヤダ! 死なば諸共、一蓮托生、でしょっ?」
鈴の言葉の後半は完全に私情になっているのだが、琴音もカノンもそんな鈴の提案に異を唱えることはなかった。
「鈴ちゃんの案でいくなら、私は英語だなぁ……」
「私は生物」
「じゃあ、教科はこれで決まりね!」
こうして三人のテスト対策の教科が決まった。
鈴は数学。
カノンは生物。
そして琴音は英語である。
「後は、どう結果を木村に示していくか、だよねぇ……」
鈴の言葉に三人は再び頭を抱える。期末テストという分かりやすい結果の示し方ができない以上、別の方法を模索する必要がある。しかしどれだけ考えたところで、
「いい案が全く浮かばない……」
鈴の言葉に三人はがっくりと肩を落とすのだった。
「『ルナティック・ガールズ』の皆さん、お悩みかなっ!」
「大和……」
「げっ」
うなだれていた三人の頭上から賑やかな声が降ってくる。部活動を終えた大和だ。その声にカノンは呆れ、鈴は身構えてしまう。そんな鈴の様子など慣れている大和は気にせず言葉を続けた。
「それで、それで。三人は何をそんなお通夜みたいになっていたの? 三人が顔を合わせているってことは、大会のことなんでしょ?」
察しのいい大和に琴音が実は、と説明をした。
「なるほど? 木村に示す結果についてねぇ……。それさ、テストで良くない?」
「はぁ? 話、聞いてた? その手が使えないから、こうして悩んでるんだってば!」
「ノンノン!」
鈴の抗議の声に大和は得意げに顔の前で人差し指を振る。何やら大和には妙案があるようだ。
「大和くん、何かいい案があるの?」
琴音の問いかけに大和は胸を張ると、
「過去問をやればいいんだよ!」
「過去、問……?」
鈴の言葉に大和が説明した。
それは去年の一学期期末テスト、通称過去問を行い、木村にテスト対策をしていることを示すというものだ。
「過去問は俺が、いつも世話になっている先輩から今回も借りるとして、その過去問を三人もやればいいんだよ!」
大和はカノンを追って入学したこの高校で、入学直後の実力テスト、中間テストで散々な結果を出してしまった。このままでは全教科での赤点は必須。留年は確定。そんな未来を想像して悲嘆に暮れる大和は、部活の先輩に相談した。先輩は大和を気に入ってくれていたため、テスト対策として自分の受けたテストを貸してくれたのだという。
そのお陰もあって去年の残りのテストで全教科の赤点を回避することができ、無事に二年生に進級できたのだった。
「俺の場合、毎回暗記する勢いで先輩から借りたテストをやってるけど、三人は本番のテストのリハーサルとして、一発勝負で過去問をやるんだよ。で、その結果を持って、木村を説得する!」
どう? と言う大和の案を飲み込むように三人は黙り込む。三人では正直行き詰まっていた木村を説得させる材料だったが、これなら何とかなるかもしれない。
「テスト週間は今から三週間後、か。時間もそんなにないし、私は大和の案でいいと思う」
「そうだね、大和くんの過去問作戦、私も賛成だな。鈴ちゃんは?」
カノンと琴音が言うのに鈴も、
「それしか方法がないなら、やるしかないよね……」
鈴のこの言葉で、満場一致でテスト対策の方向性が決まった。
鈴と琴音はもはや日課となっているカノンの教室へと集まっていた。今後どう木村を説得し、大会へ出場するかを話し合うためだ。
「昨日の鈴の配信、見た? 琴音」
「見てたよー! 鈴ちゃん、今日からあんなに嫌がってた勉強を始めるって」
「そうなんだよ! 驚いて私、あの後すぐにメッセージ、送っちゃった」
カノンと琴音が楽しそうに話すのに、鈴だけは苦虫をかみつぶしたような顔をしている。一晩経って、自分がとんでもない宣言を生配信でしたのではないかと後悔していたからだ。そんな鈴の顔を見た琴音が苦笑いをする。
「鈴ちゃん、さっきから凄い顔をしてるよ」
「むー……」
唸る鈴を見て、カノンが腹を抱えて大笑いする。鈴はそんなカノンをぎろりと睨むと、
「カノン、約束、忘れてないよね?」
「一緒に勉強するってヤツでしょ? 大丈夫、大丈夫。本当に一緒にやるってば!」
鈴のどんよりした声にカノンは笑顔で答えると、どんどんと鈴の背中を叩く。その様子をにこにこと見守っていた琴音は、
「じゃあ、木村先生をどう説得するか、話し合おう!」
その言葉にカノンと鈴は姿勢を正す。
勉強をすることを決めた三人ではあったが、ただ漠然と勉強をしても意味がないように感じる。何よりそれでは張り合いがない。
「何か、目標が欲しいよね」
カノンの言葉に二人は頷く。しかし期末テストの結果が出る頃は大会の応募締め切りが過ぎている。期末テストを口にしていた木村の期待には応えられない。
「なんで応募締め切りが期末テスト中なんだよー!」
そう叫んだところで締め切りもテストの日程も変わることはない。
「とりあえず、さ。テスト対策として頑張る教科を決めない? まさか、全教科に力を入れるの?」
琴音の言葉にカノンと鈴は反射的に首を振る。全教科の成績がグッと上がることがいちばん良いことは分かっている。しかし数週間では全教科の成績を上げるためにかかる負担が半端ない。
「鈴ちゃんは中間テストで赤点を取った数学を頑張るとして、私とカノンちゃんはどうしようか?」
「んー……」
琴音の言葉にカノンが頭を抱える。そんな二人へ鈴が言った。
「二人とも中間テストでいちばん悪かった教科で良くない? 私だけ苦しむなんてヤダ! 死なば諸共、一蓮托生、でしょっ?」
鈴の言葉の後半は完全に私情になっているのだが、琴音もカノンもそんな鈴の提案に異を唱えることはなかった。
「鈴ちゃんの案でいくなら、私は英語だなぁ……」
「私は生物」
「じゃあ、教科はこれで決まりね!」
こうして三人のテスト対策の教科が決まった。
鈴は数学。
カノンは生物。
そして琴音は英語である。
「後は、どう結果を木村に示していくか、だよねぇ……」
鈴の言葉に三人は再び頭を抱える。期末テストという分かりやすい結果の示し方ができない以上、別の方法を模索する必要がある。しかしどれだけ考えたところで、
「いい案が全く浮かばない……」
鈴の言葉に三人はがっくりと肩を落とすのだった。
「『ルナティック・ガールズ』の皆さん、お悩みかなっ!」
「大和……」
「げっ」
うなだれていた三人の頭上から賑やかな声が降ってくる。部活動を終えた大和だ。その声にカノンは呆れ、鈴は身構えてしまう。そんな鈴の様子など慣れている大和は気にせず言葉を続けた。
「それで、それで。三人は何をそんなお通夜みたいになっていたの? 三人が顔を合わせているってことは、大会のことなんでしょ?」
察しのいい大和に琴音が実は、と説明をした。
「なるほど? 木村に示す結果についてねぇ……。それさ、テストで良くない?」
「はぁ? 話、聞いてた? その手が使えないから、こうして悩んでるんだってば!」
「ノンノン!」
鈴の抗議の声に大和は得意げに顔の前で人差し指を振る。何やら大和には妙案があるようだ。
「大和くん、何かいい案があるの?」
琴音の問いかけに大和は胸を張ると、
「過去問をやればいいんだよ!」
「過去、問……?」
鈴の言葉に大和が説明した。
それは去年の一学期期末テスト、通称過去問を行い、木村にテスト対策をしていることを示すというものだ。
「過去問は俺が、いつも世話になっている先輩から今回も借りるとして、その過去問を三人もやればいいんだよ!」
大和はカノンを追って入学したこの高校で、入学直後の実力テスト、中間テストで散々な結果を出してしまった。このままでは全教科での赤点は必須。留年は確定。そんな未来を想像して悲嘆に暮れる大和は、部活の先輩に相談した。先輩は大和を気に入ってくれていたため、テスト対策として自分の受けたテストを貸してくれたのだという。
そのお陰もあって去年の残りのテストで全教科の赤点を回避することができ、無事に二年生に進級できたのだった。
「俺の場合、毎回暗記する勢いで先輩から借りたテストをやってるけど、三人は本番のテストのリハーサルとして、一発勝負で過去問をやるんだよ。で、その結果を持って、木村を説得する!」
どう? と言う大和の案を飲み込むように三人は黙り込む。三人では正直行き詰まっていた木村を説得させる材料だったが、これなら何とかなるかもしれない。
「テスト週間は今から三週間後、か。時間もそんなにないし、私は大和の案でいいと思う」
「そうだね、大和くんの過去問作戦、私も賛成だな。鈴ちゃんは?」
カノンと琴音が言うのに鈴も、
「それしか方法がないなら、やるしかないよね……」
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