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第一章
一 倉田奏②
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「私、湊あずさ。お兄さん、憑かれちゃってるね」
「えっ?」
湊あずさと名乗った少女は鈴を転がすような声音で言った。傍らにヤタガラスを控えさせたその神秘的な姿に、奏は声が出ない。
「お兄さん、大事にしているものがあるんでしょ?」
あずさは奏に向かって言った。奏はその神秘的な雰囲気に気圧されながらも答えた。
「え、えぇ。母から貰った鏡があるわ」
「その鏡、付喪神ね。大事にしてあげて」
あずさはにっこりと微笑んだ。
「ところで、お兄さんのお名前は?」
あずさの問いかけに呆然としていた奏の意識がゆっくりと戻ってくる。
「倉田奏、よ」
「やっだ! お兄さん、オネェなの?」
今までの神秘的な雰囲気をぶち壊す様な驚きの声に奏はついていけない。少女は、オネェ初めて見た~! と奏の周りを回りながら興奮した様子である。その様は年相応の少女のものだった。
「あ、あずさちゃん、だったかしら?」
「うん?」
「どうしてヤタガラスと一緒にいるのかしら」
奏は少女に出会ってからずっと疑問に思っていたことを口に出した。少女はその質問に、
「話すと長くなるの。でもお兄さんと一緒で私も、ヤタガラスに選ばれ たってこと」
「ヤタガラスに選ばれる?」
「そうだよ」
少女はにこにこと笑いながら続ける。
「私ね、『見える』ようになっちゃったの。色々ね。何を基準に選ばれてるのか全くわからないけれど、これからしなくちゃいけないことがあるの。お兄さんは私の助手として選ばれたって感じかな?」
少女――あずさの説明に奏の頭はついていかない。
今まで不思議な出来事はたくさんあった。しかし、ここまでのことは起きてこなかった。今目の前で起きていることは本当に現実なのだろうか?
「あ、今現実か? って疑ったでしょ~?」
そんな奏の様子を見破るように少女はくすくす笑いながら言う。
「超、現実だから! 急で信じられないかもしれないけれど、アナタがヤタガラスを認識し、ヤタガラスがここにアナタをつれて来た。それだけでもう現実離れしてることなんだよ。大丈夫。お兄さんを悪いようにはしないから!」
くるくると表情を変える目の前の少女の言葉に翻弄されながらも奏は少しずつ現実を飲み込んでいく。
「アタシ、何をしたらいいのかしら? あずさちゃんの助手なんて、見えないアタシに出来ることかしら」
「大丈夫大丈夫! それじゃあ無事に合流できたことを報告しないといけないから、私はここらで失礼するね。奏お兄さん……いやお姉さん? めんどくさいから奏でいっか。奏は本来の仕事に戻っていいからね!」
あずさはそれだけ言うとひらひらと手を振って去っていった。
残された奏は茫然自失だ。あずさは奏自身のことを助手だと言っていた。これから一体どんなことが待ち受けているのか。
一つ確かなことは、ヤタガラスに導かれただけでは済まない何か不思議な日常がこれから始まる、と言うことだけだった。
「えっ?」
湊あずさと名乗った少女は鈴を転がすような声音で言った。傍らにヤタガラスを控えさせたその神秘的な姿に、奏は声が出ない。
「お兄さん、大事にしているものがあるんでしょ?」
あずさは奏に向かって言った。奏はその神秘的な雰囲気に気圧されながらも答えた。
「え、えぇ。母から貰った鏡があるわ」
「その鏡、付喪神ね。大事にしてあげて」
あずさはにっこりと微笑んだ。
「ところで、お兄さんのお名前は?」
あずさの問いかけに呆然としていた奏の意識がゆっくりと戻ってくる。
「倉田奏、よ」
「やっだ! お兄さん、オネェなの?」
今までの神秘的な雰囲気をぶち壊す様な驚きの声に奏はついていけない。少女は、オネェ初めて見た~! と奏の周りを回りながら興奮した様子である。その様は年相応の少女のものだった。
「あ、あずさちゃん、だったかしら?」
「うん?」
「どうしてヤタガラスと一緒にいるのかしら」
奏は少女に出会ってからずっと疑問に思っていたことを口に出した。少女はその質問に、
「話すと長くなるの。でもお兄さんと一緒で私も、ヤタガラスに選ばれ たってこと」
「ヤタガラスに選ばれる?」
「そうだよ」
少女はにこにこと笑いながら続ける。
「私ね、『見える』ようになっちゃったの。色々ね。何を基準に選ばれてるのか全くわからないけれど、これからしなくちゃいけないことがあるの。お兄さんは私の助手として選ばれたって感じかな?」
少女――あずさの説明に奏の頭はついていかない。
今まで不思議な出来事はたくさんあった。しかし、ここまでのことは起きてこなかった。今目の前で起きていることは本当に現実なのだろうか?
「あ、今現実か? って疑ったでしょ~?」
そんな奏の様子を見破るように少女はくすくす笑いながら言う。
「超、現実だから! 急で信じられないかもしれないけれど、アナタがヤタガラスを認識し、ヤタガラスがここにアナタをつれて来た。それだけでもう現実離れしてることなんだよ。大丈夫。お兄さんを悪いようにはしないから!」
くるくると表情を変える目の前の少女の言葉に翻弄されながらも奏は少しずつ現実を飲み込んでいく。
「アタシ、何をしたらいいのかしら? あずさちゃんの助手なんて、見えないアタシに出来ることかしら」
「大丈夫大丈夫! それじゃあ無事に合流できたことを報告しないといけないから、私はここらで失礼するね。奏お兄さん……いやお姉さん? めんどくさいから奏でいっか。奏は本来の仕事に戻っていいからね!」
あずさはそれだけ言うとひらひらと手を振って去っていった。
残された奏は茫然自失だ。あずさは奏自身のことを助手だと言っていた。これから一体どんなことが待ち受けているのか。
一つ確かなことは、ヤタガラスに導かれただけでは済まない何か不思議な日常がこれから始まる、と言うことだけだった。
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