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『運命の相手』(4)

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「しかしカシムの奴、どういう風の吹き回しだ」

 ギルが疑わしいといった感じで言う。
 それはそうなるだろう。ギルからすればカシムとの関係は、『自分を殺しに来た者』で止まっている。かく言う私も、捕まった部屋に彼が現れたときは身構えた。

「えーと……詳しい事情はわかりません。でも、ギルが犯人だと思ったら真犯人がいたみたいな……そんな展開、でしょうか」

 カシムの重い身の上話をいったん置き、さらに物凄く端折るとそうなる。
 そうなるが、やはりこれでは幾ら何でも言葉足らずか。私はそう考え直し――

「よし、じゃあそれは明後日聞く」
「それも明後日なんですか」

 しかしそのリテイクを披露する前に、ギルに先送りにされた。
 お腹にあったギルの手が、私の首の後ろへと回される。

「ずっとサラに触れてなかったから、明日までいつキスをしてもいい時間だ」

 ギルがニッと笑う。
 その笑い方を見るのは久しぶりだなと思っている間に、ギルのキスが降ってきた。
 唇から始まって、髪、こめかみ、頬と辿って唇に戻ってくる。

「ん……ふっ……」

 ゆっくりと割り入ってくるギルの舌に、勇気を出してこちらからも触れに行く。
 ギルが少し驚いた顔をして、それから嬉しそうに笑む。

「サラも、もっと?」

 一瞬だけ離れたギルの唇が聞いてくる。

(うん、もっと)

 その私の答は、深いけれど穏やかな彼のキスの中に呑まれていった。



「俺たちの子供……卵か人型か、どっちだろう」

 長い長いキスの時間の後、私を抱き寄せながらギルは幸せそうに言った。
 ギルの言葉に、「男の子かな女の子かな」の前にそれもあったなぁと、ぼんやりとしてきた頭で考える。
 ぼんやり。うん……ぼんやりしている。ギルを寝かせるはずが、私の方が寝てしまいそうだ。
 何だかんだいっても、向こうに残されたと思ってからここまで、気を張っていたのかもしれない。

「ん……眠い」

 私の頭を撫でるギルの手に、眠気が加速する。

「おやすみ、サラ。今度こそ、この先ずっと守るから。お前も、この子も」

 心地良い声、温かい腕の中。世界で一番安心できる場所。

「おやすみ……なさい」

 私は大きな多幸感の中、瞼を閉じた。
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