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『ハナキ』(4)
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「ギルはこの後、また闇の精霊を捜しに行くんですよね。精霊の居場所が特定できないと、やっぱり転移魔法は使えないんですか?」
気付けばいつの間にやら、こうなる前に提案した『顔を見て話しませんか?』な雰囲気だったので話題転換してみる。
桃色展開でなくて残念だったような、ほっとしたような。そう思いながらギルを見れば、耳まで赤いくせに平然を装った顔が目に入った。
思わず、パッと目を逸らす。気恥ずかしさに、私は無意味に両足をパタパタさせた。きっと私は、彼と同じ顔をしているだろうから。
「いや、魔法自体は使える」
私より先に立ち直ったらしいギルが、落ち着いた声で私の問いに返してきた。
「ただ、魔力の振れ幅が大きくなって、通路が狭くなったり広くなったりするだろうな」
携帯電話でいうところの、電波はあるけどアンテナが一本しか立ってない、みたいなものだろうか。その状態で電話を掛けたら、大抵途中で切れていた気がする。
「それは止めておいた方がいいですね」
電話なら改めて掛け直せばいい。けれど、異空間を渡っている途中に道がブツッと切れるとか。それは絶対、御免蒙りたい。
「次は奈落を捜してみるか」
「奈落……」
『奈落』という仰々しいしい単語。そして、それを険しい表情で口にしたギル。幾ら魔王でも、気軽で行ける場所でないことが察せられる。そんなところへは、できる限り出向いて欲しくない。
「奈落の他には、候補は無いんですか?」
「うーん……他、か。闇の精霊は気難しくて。壊されたあの闇の祠は、定住するまで百回は改築させられたという噂も聞いたし」
「百回……」
ツッチーに作ったような、なんちゃって祠ならともかく、森から見える建物なレベルの祠を百回とは。それは確かに、おいそれとは次の定住地は見つからなさそうだ。
でもギルに、奈落に行って欲しくない。
気付けばいつの間にやら、こうなる前に提案した『顔を見て話しませんか?』な雰囲気だったので話題転換してみる。
桃色展開でなくて残念だったような、ほっとしたような。そう思いながらギルを見れば、耳まで赤いくせに平然を装った顔が目に入った。
思わず、パッと目を逸らす。気恥ずかしさに、私は無意味に両足をパタパタさせた。きっと私は、彼と同じ顔をしているだろうから。
「いや、魔法自体は使える」
私より先に立ち直ったらしいギルが、落ち着いた声で私の問いに返してきた。
「ただ、魔力の振れ幅が大きくなって、通路が狭くなったり広くなったりするだろうな」
携帯電話でいうところの、電波はあるけどアンテナが一本しか立ってない、みたいなものだろうか。その状態で電話を掛けたら、大抵途中で切れていた気がする。
「それは止めておいた方がいいですね」
電話なら改めて掛け直せばいい。けれど、異空間を渡っている途中に道がブツッと切れるとか。それは絶対、御免蒙りたい。
「次は奈落を捜してみるか」
「奈落……」
『奈落』という仰々しいしい単語。そして、それを険しい表情で口にしたギル。幾ら魔王でも、気軽で行ける場所でないことが察せられる。そんなところへは、できる限り出向いて欲しくない。
「奈落の他には、候補は無いんですか?」
「うーん……他、か。闇の精霊は気難しくて。壊されたあの闇の祠は、定住するまで百回は改築させられたという噂も聞いたし」
「百回……」
ツッチーに作ったような、なんちゃって祠ならともかく、森から見える建物なレベルの祠を百回とは。それは確かに、おいそれとは次の定住地は見つからなさそうだ。
でもギルに、奈落に行って欲しくない。
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