意地を張っていたら6年もたってしまいました

Hkei

文字の大きさ
上 下
26 / 27

26 驚愕(アルフ視点)

しおりを挟む
連絡なしでの訪問で中に入れてくれるとは思っていなかったが、セドリックの様子だけでも聞ければと入口で呼び鈴を鳴らす。

普段ならすぐに反応があるはずがしばらく待っていても誰も出てこない。

もう一度呼び鈴を鳴らし待っているといつもの執事ではなくアルフと同じ歳か下の少年が出てきた。

アルフの顔を見て慌てて一礼し、そのまま話し始めた。

「アルフ様大変申し訳ございません。今ご案内出来ません」

「こちらが約束なしで来ているのは承知している。しかし今回は通してもらえないだろうか?」

「申し訳ございません」

「では殿下の様子だけでも教えてもらえないか?」

「申し訳ございません」


何度かこのやり取りを繰り返す。
頭を下げたまま断ってこいと言われているのか、ずっとそのままで答える男を見て、軽くため息を吐き腰に手を当て頭を振る。

「では、明日お会いできるかだけでも確認取ってくれないか?」






「…しばらくお待ちください」


困惑した顔をしたが踵を返し扉の中に入って行った。

──こちらもこのままでは納得できない




そのまま待っていると、いつもの執事が出てきた。

「アルフ様大変申し訳ございませんでした。今殿下はお会いできる状態ではなく…」

「殿下はやはり体調が悪いのか?それでパーティーにも来れなかった…?」

「そうではないのです…」
「違うのか?」


いつもとは様子の違う執事は珍しく狼狽えていた。体調が原因ではないと言ってから思い詰めたように下を向きそのまま話し始めた。

「本日はまだ殿下の状態が良くないですので明日同じ時間におこし頂けますか」

「…了解した」

一礼し執事は扉の奥に消えていった。その扉をじっと見ながらアルフはそのままその場で考え込んだ。


──体調は悪いがそれが原因ではない…では何が原因だと言うのか…



──とりあえず明日殿下にあって聞けばいいことだ



明日には全てが明らかになると、少し足取り軽く寮に帰った。












次の日学園にセドリックは来なかったが、それはわかっていた事なので気にせず、アルフは通常通り授業を受けていた。

全てが終わり昨日と同じように尋ね呼び鈴を鳴らす。

すぐに出てくると思っていたが、今日も待たされる。


──今日は約束したし…おかしいな…

もう一度鳴らそうかと一歩足を出した時扉があき、昨日の少年が出てきたが様子がおかしい。目は腫れており明らかに泣いている。

「アルフ様…お待たせ…しました」
「どうした?何かあったのか?」


アルフが声をかけるとその少年は泣き崩れ

「昨日対応した…祖父が…亡くなりました」
「っ!!」

驚いて声が出なかったが、驚いている場合ではない。

「何があった!殿下は無事か!」

「…中でお待ちです。ご案内いたします」

目を擦り涙を拭きながらその少年が扉を開け、一緒に中に入った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。 ……約束の時間を過ぎてから。 侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。 貴族の結婚なんて、所詮は政略で。 家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。 なのに…… 何もかも義姉優先。 挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。 挙句の果て、侯爵家なのだから。 そっちは子爵家なのだからと見下される始末。 そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。 更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!? 流石にそこはお断りしますけど!? もう、付き合いきれない。 けれど、婚約白紙を今更出来ない…… なら、新たに契約を結びましょうか。 義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。 ----------------------- ※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!

as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。 しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

お別れを言うはずが

にのまえ
恋愛
婚約者に好きな人ができたのなら、婚約破棄いたしましよう。 エブリスタに掲載しています。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

公爵令嬢の白銀の指輪

夜桜
恋愛
 公爵令嬢エリザは幸せな日々を送っていたはずだった。  婚約者の伯爵ヘイズは婚約指輪をエリザに渡した。けれど、その指輪には猛毒が塗布されていたのだ。  違和感を感じたエリザ。  彼女には貴金属の目利きスキルがあった。  直ちに猛毒のことを訴えると、伯爵は全てを失うことになった。しかし、これは始まりに過ぎなかった……。

私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。

夢風 月
恋愛
 カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。  顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。  我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。  そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。 「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」  そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。 「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」 「……好きだからだ」 「……はい?」  いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。 ※タグをよくご確認ください※

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

処理中です...