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24 動揺
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王宮内の客間に案内され、湯浴みや着替えを侍女に手伝ってもらいあまり時間をかけずに用意ができた。
席に案内され待っているとグリードが来てレイラの対面に座った。
「待たせたかな?」
「いえ、また着替えまで用意して頂いてありがとうございます」
先程の簡易なものではなくドレスが用意されていた。
「気に入ってもらえるか分からなかったが良かった」
「後でお返しします」
「いやいいよ。さっきのもそのまま貰ってくれればいいし」
「では食べようか」
レイラが反論する余裕を持てないようにグリードが食事を開始してしまった。
食事もほぼ終わりに近づいた頃、レイラは少し姿勢を正しグリードを見る。
「父の仕事も終わりそうなので近々帰国します。滞在中は殿下に色々案内して頂いてとても楽しかったです。ありがとうございました」
「え?もう帰国するの?」
「はい」
──帰るのは…まだ少し気が重いけど…
俯いて答えたレイラを見て、グリードは下を向き少し考えていたが顔を上げレイラを見つめた。
「はじめましてと挨拶してもらったと思うが…実は俺はレイラ嬢を知っていた」
「え?」
「あれは6年前かな?あなたの誕生日パーティーに俺もいたんだ」
何人かアルフの学友がいたと記憶しているが、あの中にグリードがいたのか…と戸惑っていると
「だから…セドリックの婚約者だという事も知っている」
ドクッ。
久しぶりに聞くその名前に一気に血が巡るように心臓が痛くなる。
「王子の婚約者であるレイラ嬢がこんなに長く国を離れるのは…何かあったのか?」
ドクドクッ。
さらに鼓動も早くなり胸の前で手を握りしめ呼吸を元に戻そうと大きく息を吸い込んだがすぐには戻らなかった。
明らかに動揺しているレイラを見てグリードは立ち上がる。
「もし…もし何かあって帰国したくないのであればこのままこの国に…残らないか」
「俺が責任をもってレイラ嬢を預かる!」
レイラの近くまで歩み寄るが、胸を押さえたまま動かない。
「申し訳…ございません。少し気分が優れないので…途中で本当に申し訳ないのですが失礼してもよろしいでしょうか」
「レイラ嬢!俺で良ければ力になる」
かなり動揺して立ち上がった為少しよろけそうになるレイラを、控えていたエミリアより先に支えた。
「申し訳ございません。離して頂いて大丈夫…」
「離したくないと言ったら…困らせるだけか?」
「申し訳ございません」
泣きそうなレイラを見てグリードは悔しそうに表情を歪めながら手を離す。
「もう…謝らないでくれ…ただ何かあるなら相談してくれ」
「殿下…ありがとうございます」
エミリアが側に寄りレイラを支えた。
「本当にお気遣い嬉しいです。落ち着きましたら連絡させて頂きます」
「分かった…」
歩きはじめようとするがレイラの力が抜けてしまっているのかなかなか進めないのを見てグリードが動いた。
「少しの間許せ」
すっとレイラを横抱きに抱えあげ部屋を出ていく。
「殿下!!」
「そのまま歩くのは無理だ。馬車までこのまま行かせてくれ」
下ろすつもりもないので馬車まで急ぐ。
馬車にレイラを座らせるとグリードは外に出た。
「気をつけて帰ってくれ。護衛に送らせる」
「殿下…」
いつも通り笑顔で見送ってくれているグリードを可能な限り目で見ながら宿に向かった。
「レイラ様着きました。大丈夫ですか?」
「ありがとう。大丈夫歩けるわ」
エミリアが支えながらレイラを馬車から下ろし宿の中に連れて行く。
ゆっくり歩いていたレイラはふと振り返る。
宿からはだいぶ離れた場所、建物の角にフードを被った人物がいたがレイラがそちらを見ると逃げるように走り去った。
レイラはその人物に見覚えがあった。
席に案内され待っているとグリードが来てレイラの対面に座った。
「待たせたかな?」
「いえ、また着替えまで用意して頂いてありがとうございます」
先程の簡易なものではなくドレスが用意されていた。
「気に入ってもらえるか分からなかったが良かった」
「後でお返しします」
「いやいいよ。さっきのもそのまま貰ってくれればいいし」
「では食べようか」
レイラが反論する余裕を持てないようにグリードが食事を開始してしまった。
食事もほぼ終わりに近づいた頃、レイラは少し姿勢を正しグリードを見る。
「父の仕事も終わりそうなので近々帰国します。滞在中は殿下に色々案内して頂いてとても楽しかったです。ありがとうございました」
「え?もう帰国するの?」
「はい」
──帰るのは…まだ少し気が重いけど…
俯いて答えたレイラを見て、グリードは下を向き少し考えていたが顔を上げレイラを見つめた。
「はじめましてと挨拶してもらったと思うが…実は俺はレイラ嬢を知っていた」
「え?」
「あれは6年前かな?あなたの誕生日パーティーに俺もいたんだ」
何人かアルフの学友がいたと記憶しているが、あの中にグリードがいたのか…と戸惑っていると
「だから…セドリックの婚約者だという事も知っている」
ドクッ。
久しぶりに聞くその名前に一気に血が巡るように心臓が痛くなる。
「王子の婚約者であるレイラ嬢がこんなに長く国を離れるのは…何かあったのか?」
ドクドクッ。
さらに鼓動も早くなり胸の前で手を握りしめ呼吸を元に戻そうと大きく息を吸い込んだがすぐには戻らなかった。
明らかに動揺しているレイラを見てグリードは立ち上がる。
「もし…もし何かあって帰国したくないのであればこのままこの国に…残らないか」
「俺が責任をもってレイラ嬢を預かる!」
レイラの近くまで歩み寄るが、胸を押さえたまま動かない。
「申し訳…ございません。少し気分が優れないので…途中で本当に申し訳ないのですが失礼してもよろしいでしょうか」
「レイラ嬢!俺で良ければ力になる」
かなり動揺して立ち上がった為少しよろけそうになるレイラを、控えていたエミリアより先に支えた。
「申し訳ございません。離して頂いて大丈夫…」
「離したくないと言ったら…困らせるだけか?」
「申し訳ございません」
泣きそうなレイラを見てグリードは悔しそうに表情を歪めながら手を離す。
「もう…謝らないでくれ…ただ何かあるなら相談してくれ」
「殿下…ありがとうございます」
エミリアが側に寄りレイラを支えた。
「本当にお気遣い嬉しいです。落ち着きましたら連絡させて頂きます」
「分かった…」
歩きはじめようとするがレイラの力が抜けてしまっているのかなかなか進めないのを見てグリードが動いた。
「少しの間許せ」
すっとレイラを横抱きに抱えあげ部屋を出ていく。
「殿下!!」
「そのまま歩くのは無理だ。馬車までこのまま行かせてくれ」
下ろすつもりもないので馬車まで急ぐ。
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「気をつけて帰ってくれ。護衛に送らせる」
「殿下…」
いつも通り笑顔で見送ってくれているグリードを可能な限り目で見ながら宿に向かった。
「レイラ様着きました。大丈夫ですか?」
「ありがとう。大丈夫歩けるわ」
エミリアが支えながらレイラを馬車から下ろし宿の中に連れて行く。
ゆっくり歩いていたレイラはふと振り返る。
宿からはだいぶ離れた場所、建物の角にフードを被った人物がいたがレイラがそちらを見ると逃げるように走り去った。
レイラはその人物に見覚えがあった。
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