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23 驚き
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さほど長い時間ではなかったと思う。馬車が止まり扉が開いた。
「すまなかった。もう目隠しを外しても大丈夫だ」
グリードの声を聞き、エミリアが自分の目隠しをとったあとレイラの目隠しもとってくれた。
「すぐに外に出ると眩しいからゆっくりと…」
目を慣らしてから外に出た。平屋の扉が開いておりそこへ案内される。護衛のエミリアはここで待つように指示されレイラだけが反対側の扉から外へ出る。窓から見ることができるのでエミリアは後ろから見守っている。
「不便を強いて申し訳なかった。さあどうぞ」
案内されて目の前に見えたのは湾と呼ぶには小さい入り江のような場所で、今まで見てきた海と大きな違いはなかった。
「殿下…?」
ここが何かと見上げると、グリードは小さな笛を出しピッと短めに高い音を出した。
瞬間海から鳴き声が聞こえ海面に何かが出てきた。
「あっ…」
「ヒュー」
グリードが名前を呼ぶと嬉しそうに泳いで海面から高くジャンプした。
「俺の守り神」
「本で読んだ気がします…本当だったんですね」
学園に入る前、父親の書斎で読んだ中にエルンテ国王族に関する憶測として表記されていたことを思い出す。
王族が産まれると同時イルカが現れ生涯を共にすると。
「このような大切な事を私に見せて良かったのですか?」
国家秘密を目の前にして小さく震える。
半身とも言えるこのイルカにもしものことがあると、死にはしないが極端に弱くなると仮定ではあったが書かれていた事も思い出す。
「ヒューの存在は知れ渡っているし、この場所は厳重に管理されているから大丈夫だ」
「ですが…」
「あなたに見てもらいたかったし、ヒューにも紹介したかった」
爽やかに笑うグリードを見てもまだどうしていいか分からないレイラは自分でもどんな表情をしていいのか、しているのか…とりあえず複雑な顔をしていた。
「レイラ嬢?」
グリードがレイラの顔を覗き込もうと海を背にしてレイラの前に立った時、海にいたヒューが尾びれを動かし海水を巻き上げた。
後ろから大量の海水を被る形になり二人ともすぶ濡れになった。
「ヒュー!!」
グリードが怒って海に叫ぶと、イタズラをしたヒューは笑っているように楽しそうに泳いでいた。
「あいつ!!」
振り返りレイラにすぐに声をかける。
「大丈夫か?本当にすまない。まさかこんな事に…」
慌てているグリードと全身ずぶ濡れになっている自分と本当に笑っているように見えるイルカを交互に見て、なんだかおかしくて声を出して笑ってしまう。
「レイラ嬢?」
「笑ってしまい申し訳ございま…ふふっ」
言い終えることなくまた笑ってしまう。
「とっ…とりあえずすぐに着替えを」
急いで戻ろうとレイラの手を取り平屋へ向かう。
「レイラ様!!大丈夫ですか?」
すぐに外に出ようとしたのを止められていたエミリアが真っ先にレイラの元に駆け寄る。
「殿下これはいったい…」
「エミリアいいのよ。私イタズラされてしまっただけなの」
「しかし…」
正式に抗議したいところだがそれよりも濡れているレイラを着替えさせたいとぐっと堪え、グリードの側近が持ってきたタオルでレイラを包んだ。
「すまない!少しだけ待っていてくれ」
グリードも濡れては板がタオルを使うことなく平屋から出ていき、ほんの数分で着替えを持ってきた。
「とりあえずこれを…いやあの俺はドレスは選んだがその他はうちのメイドが…いやあの…とりあえずこれを」
焦りすぎて同じことを繰り返すグリードからエミリアが包みを預かり二人で奥の部屋に向かう。
「一旦全員外に出るので支度終われば知らせてくれたら…その…」
「殿下、着替えありがとうございます。しばらくお待ち頂けますか?」
「本当にすまない。外で待っている」
そう言ってグリードは外に出た。
「レイラ様お早く着替えないと…海水はベタつきますので」
「ありがとうエミリア」
奥の部屋に入り、エミリアが用意したタオルで身体を拭き渡して貰ったドレスを着た。南国の1枚仕立てのドレスで腰紐を結びとても着心地のよい服であった。腕が出てたが薄手の羽織ものもあったのでさほど気にしなくても大丈夫だった。
髪はエミリアが簡単にまとめあげてくれたが、帰ってからすぐ洗わないと痛みそうである。
ある程度の支度が終わり外に出るとグリードも上着のみ着替えて待っていた。
「殿下お待たせしました」
「…ああ」
グリードは自国の服を着たレイラに目を奪われていた。ラフな服ではあったがレイラの気品は失われずとても似合っていたからだ。
「殿下?」
「また目隠しはしてもらうが、街まで戻ろう」
「はい」
行きと同じように馬車に乗り護衛達が待っている場所まで戻ってきた。
「王宮で食事を用意したからそちらに向かうが構わないか?」
「そこまでご用意頂かなくても…」
「いや…本当に今日は申し訳なく…」
「殿下。王子がそう何度も謝ってはいけません。ふふっ私今日久々に声を出して笑えました」
「本当に楽しかったです。なのでもう謝らないで頂けませんか?」
そう言って笑うレイラは確かに今まで見た笑顔の中ではとびきり楽しそうに笑っていた為、グリードは自然と手を取ろうとして慌てて引いた。
「では…お腹が空いたので一緒に食べてくれないか?」
「はい。喜んで」
「すまなかった。もう目隠しを外しても大丈夫だ」
グリードの声を聞き、エミリアが自分の目隠しをとったあとレイラの目隠しもとってくれた。
「すぐに外に出ると眩しいからゆっくりと…」
目を慣らしてから外に出た。平屋の扉が開いておりそこへ案内される。護衛のエミリアはここで待つように指示されレイラだけが反対側の扉から外へ出る。窓から見ることができるのでエミリアは後ろから見守っている。
「不便を強いて申し訳なかった。さあどうぞ」
案内されて目の前に見えたのは湾と呼ぶには小さい入り江のような場所で、今まで見てきた海と大きな違いはなかった。
「殿下…?」
ここが何かと見上げると、グリードは小さな笛を出しピッと短めに高い音を出した。
瞬間海から鳴き声が聞こえ海面に何かが出てきた。
「あっ…」
「ヒュー」
グリードが名前を呼ぶと嬉しそうに泳いで海面から高くジャンプした。
「俺の守り神」
「本で読んだ気がします…本当だったんですね」
学園に入る前、父親の書斎で読んだ中にエルンテ国王族に関する憶測として表記されていたことを思い出す。
王族が産まれると同時イルカが現れ生涯を共にすると。
「このような大切な事を私に見せて良かったのですか?」
国家秘密を目の前にして小さく震える。
半身とも言えるこのイルカにもしものことがあると、死にはしないが極端に弱くなると仮定ではあったが書かれていた事も思い出す。
「ヒューの存在は知れ渡っているし、この場所は厳重に管理されているから大丈夫だ」
「ですが…」
「あなたに見てもらいたかったし、ヒューにも紹介したかった」
爽やかに笑うグリードを見てもまだどうしていいか分からないレイラは自分でもどんな表情をしていいのか、しているのか…とりあえず複雑な顔をしていた。
「レイラ嬢?」
グリードがレイラの顔を覗き込もうと海を背にしてレイラの前に立った時、海にいたヒューが尾びれを動かし海水を巻き上げた。
後ろから大量の海水を被る形になり二人ともすぶ濡れになった。
「ヒュー!!」
グリードが怒って海に叫ぶと、イタズラをしたヒューは笑っているように楽しそうに泳いでいた。
「あいつ!!」
振り返りレイラにすぐに声をかける。
「大丈夫か?本当にすまない。まさかこんな事に…」
慌てているグリードと全身ずぶ濡れになっている自分と本当に笑っているように見えるイルカを交互に見て、なんだかおかしくて声を出して笑ってしまう。
「レイラ嬢?」
「笑ってしまい申し訳ございま…ふふっ」
言い終えることなくまた笑ってしまう。
「とっ…とりあえずすぐに着替えを」
急いで戻ろうとレイラの手を取り平屋へ向かう。
「レイラ様!!大丈夫ですか?」
すぐに外に出ようとしたのを止められていたエミリアが真っ先にレイラの元に駆け寄る。
「殿下これはいったい…」
「エミリアいいのよ。私イタズラされてしまっただけなの」
「しかし…」
正式に抗議したいところだがそれよりも濡れているレイラを着替えさせたいとぐっと堪え、グリードの側近が持ってきたタオルでレイラを包んだ。
「すまない!少しだけ待っていてくれ」
グリードも濡れては板がタオルを使うことなく平屋から出ていき、ほんの数分で着替えを持ってきた。
「とりあえずこれを…いやあの俺はドレスは選んだがその他はうちのメイドが…いやあの…とりあえずこれを」
焦りすぎて同じことを繰り返すグリードからエミリアが包みを預かり二人で奥の部屋に向かう。
「一旦全員外に出るので支度終われば知らせてくれたら…その…」
「殿下、着替えありがとうございます。しばらくお待ち頂けますか?」
「本当にすまない。外で待っている」
そう言ってグリードは外に出た。
「レイラ様お早く着替えないと…海水はベタつきますので」
「ありがとうエミリア」
奥の部屋に入り、エミリアが用意したタオルで身体を拭き渡して貰ったドレスを着た。南国の1枚仕立てのドレスで腰紐を結びとても着心地のよい服であった。腕が出てたが薄手の羽織ものもあったのでさほど気にしなくても大丈夫だった。
髪はエミリアが簡単にまとめあげてくれたが、帰ってからすぐ洗わないと痛みそうである。
ある程度の支度が終わり外に出るとグリードも上着のみ着替えて待っていた。
「殿下お待たせしました」
「…ああ」
グリードは自国の服を着たレイラに目を奪われていた。ラフな服ではあったがレイラの気品は失われずとても似合っていたからだ。
「殿下?」
「また目隠しはしてもらうが、街まで戻ろう」
「はい」
行きと同じように馬車に乗り護衛達が待っている場所まで戻ってきた。
「王宮で食事を用意したからそちらに向かうが構わないか?」
「そこまでご用意頂かなくても…」
「いや…本当に今日は申し訳なく…」
「殿下。王子がそう何度も謝ってはいけません。ふふっ私今日久々に声を出して笑えました」
「本当に楽しかったです。なのでもう謝らないで頂けませんか?」
そう言って笑うレイラは確かに今まで見た笑顔の中ではとびきり楽しそうに笑っていた為、グリードは自然と手を取ろうとして慌てて引いた。
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「はい。喜んで」
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