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22 懇願
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仕事も一段落ついたのかジョスタンが珍しく夕方には宿に戻っていた。
「こちらの交渉はもう終わりそうだ」
「お疲れ様です。では…」
「後数日で帰国する」
ナイフとフォークをおいて口を拭き、目の前に座っているレイラをまっすぐ見る。
「殿下は明日も?」
「お断りしたのですが…」
「無理はしていないか?」
「大丈夫です。本当に色々と案内して頂いて感謝しております」
魚を売り買いする市場や南国ならではの植物園、船や真珠の加工場など、自国で見た事ない所ばかりで飽きることはなかった。
「殿下は全ての場所で働いている方と顔見知りの様で驚きました」
──本当に王子と言っても全然違う…
一瞬顔を、名前を思い出しそうになって頭を少し振る。
「そうか」
「明日お会いした時に、そろそろ帰国するとお伝えします」
その後ゆっくりと夕食を食べ早めに就寝した。
「おはよう」
「おはようございます殿下」
はじめは緊張していた馬車までのエスコートもさすがに毎日繰り返していると慣れて当たり前のようになっていた。
「今日は今までで一番驚くと思う」
「どちらに行かれるのですか?」
不思議そうに尋ねるも笑って教えてはくれなかった。
たわいない会話をしていると目的地についたのか馬車が止まった。
降りるのかと思ったが扉も開かないしグリードも立ち上がろうとしなかった。
「レイラ嬢申し訳ないが、ここから先は少し目隠しさせてくれないか」
「え?」
「今日行く場所が王家専属の…その…秘密の場所で」
「それでしたら私は辞退させて」
「いや君には見てもらいたい!だから…その…少し目隠しさせてくれないか」
「ですが…」
国民でも知らない所に他国の者が行っていいものか答えられずにいると、手を握られまっすぐ目を見つめられた。
「殿下…」
握られた手を引こうとしたが力強く握られた手を解くことは出来なかった。
「父上には許可をとった。場所が秘密なだけでそこで見るものは誰もが知っている事で…」
「ダメ…かな」
大きな身体を小さく丸めて言われると思わず小さい子をあやすように頭を撫でたくなる様な感覚になる。
「本当に私が行っても大丈夫なのですか?」
「ああ」
「両国にご迷惑をおかけすることは?」
「ない」
「目隠しだけで良いのですか?」
グリードはぱっと顔が明るくなった。
「目を閉じてくれてるだけでもいい!」
「…分かりました」
レイラがふっと力を抜いて半分諦めたように答えると、グリードはいつもの笑顔に戻り馬車の扉を開けた。
護衛の為エミリアと数人が並走してついて来ていたが、その前に立ち
「すまないがここから先は護衛は一人だけ、その他の者はこの場で待機してくれ」
エミリアが中にいるレイラを見る。
「エミリア。あなたが私と一緒に来てくれる?」
「レイラ様がよろしいのでしたら…」
エミリアは乗っていた馬から降り馬車に乗り込んだ。グリードが本当に申し訳ないがと布を渡してきたので目隠しをする。
「念の為馬車の窓も閉じるから…なるべく早く解くから我慢してくれ」
バタンと扉を閉められ馬車が動き出す。
「レイラ様大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
真っ暗な中、目隠しをされて閉じ込められている状況なのに、不思議と不安や恐怖などは感じなかった。
「こちらの交渉はもう終わりそうだ」
「お疲れ様です。では…」
「後数日で帰国する」
ナイフとフォークをおいて口を拭き、目の前に座っているレイラをまっすぐ見る。
「殿下は明日も?」
「お断りしたのですが…」
「無理はしていないか?」
「大丈夫です。本当に色々と案内して頂いて感謝しております」
魚を売り買いする市場や南国ならではの植物園、船や真珠の加工場など、自国で見た事ない所ばかりで飽きることはなかった。
「殿下は全ての場所で働いている方と顔見知りの様で驚きました」
──本当に王子と言っても全然違う…
一瞬顔を、名前を思い出しそうになって頭を少し振る。
「そうか」
「明日お会いした時に、そろそろ帰国するとお伝えします」
その後ゆっくりと夕食を食べ早めに就寝した。
「おはよう」
「おはようございます殿下」
はじめは緊張していた馬車までのエスコートもさすがに毎日繰り返していると慣れて当たり前のようになっていた。
「今日は今までで一番驚くと思う」
「どちらに行かれるのですか?」
不思議そうに尋ねるも笑って教えてはくれなかった。
たわいない会話をしていると目的地についたのか馬車が止まった。
降りるのかと思ったが扉も開かないしグリードも立ち上がろうとしなかった。
「レイラ嬢申し訳ないが、ここから先は少し目隠しさせてくれないか」
「え?」
「今日行く場所が王家専属の…その…秘密の場所で」
「それでしたら私は辞退させて」
「いや君には見てもらいたい!だから…その…少し目隠しさせてくれないか」
「ですが…」
国民でも知らない所に他国の者が行っていいものか答えられずにいると、手を握られまっすぐ目を見つめられた。
「殿下…」
握られた手を引こうとしたが力強く握られた手を解くことは出来なかった。
「父上には許可をとった。場所が秘密なだけでそこで見るものは誰もが知っている事で…」
「ダメ…かな」
大きな身体を小さく丸めて言われると思わず小さい子をあやすように頭を撫でたくなる様な感覚になる。
「本当に私が行っても大丈夫なのですか?」
「ああ」
「両国にご迷惑をおかけすることは?」
「ない」
「目隠しだけで良いのですか?」
グリードはぱっと顔が明るくなった。
「目を閉じてくれてるだけでもいい!」
「…分かりました」
レイラがふっと力を抜いて半分諦めたように答えると、グリードはいつもの笑顔に戻り馬車の扉を開けた。
護衛の為エミリアと数人が並走してついて来ていたが、その前に立ち
「すまないがここから先は護衛は一人だけ、その他の者はこの場で待機してくれ」
エミリアが中にいるレイラを見る。
「エミリア。あなたが私と一緒に来てくれる?」
「レイラ様がよろしいのでしたら…」
エミリアは乗っていた馬から降り馬車に乗り込んだ。グリードが本当に申し訳ないがと布を渡してきたので目隠しをする。
「念の為馬車の窓も閉じるから…なるべく早く解くから我慢してくれ」
バタンと扉を閉められ馬車が動き出す。
「レイラ様大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
真っ暗な中、目隠しをされて閉じ込められている状況なのに、不思議と不安や恐怖などは感じなかった。
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