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21 予想外
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次の日の朝、レイラはジョスタンに会う為に食堂へ向かっていた。昨夜遅く帰ってきた父親とは会えずにいたからだ。
──お父様に相談しないと…
急ぎ足で食堂へ入ると、奥にジョスタンがいた。
仕事で遅かったはずなのに疲れを顔に出さず書類を見ていた。
「おはようございます。お父様」
「おはようレイラ」
席に座りレイラが声を出そうとするより先にジョスタンが話し始める。
「この国に入ってから見張られていたみたいだな」
「え?」
「陛下はレイラがいる事は既にご存知だった」
「まあ、殿下が自ら動くとは思ってなかったが…」
「実は本日も案内していただけると…」
大きく息を吐きジョスタンは目を閉じる。
「レイラ」
「はい」
手を組みテーブルの上に置き鋭い目線をレイラに向ける。
「お前はダンヴィル家の者であると同時、まだラファラン国第一王子の婚約者だ。その事は忘れるな」
「…はい」
言動には気をつけろと念を押されたのも同じであった。
「お断りするのは…難しいのでしょうか?」
「何日も続くと言うことはないだろうから…今は陛下の気ままに付き合うのも仕事だと思えば良い」
「はい」
ジョスタンは再び目を閉じ考え込む。
──国境付近に近づいた辺りからアルフからの連絡が途絶えた…これも何か関係あるのか…
ふと目を開けると、自分を覗き込んでいる心配顔の娘と目があった。
「お父様お疲れではないですか?ずっとお仕事されながらの長旅でしたし、一度お休みされては」
少し表情を緩め娘に微笑む。
「大丈夫だ。レイラが心配するなら早めに交渉を終わらせよう」
顔に出ていたかと少し反省してジョスタンは気を引き締め直す。
二人で朝食を食べ終えた頃、グリードからの知らせが入る。
「もうじき来られるの?早く支度しないと…」
持っていたカップを置き立ち上がろうとするレイラに再度声をかける
「レイラ」
「はい」
「気を緩めることなく立場を考えて…しかし気負うことなく…その…少しは…」
傷ついた心を和ませる為に連れてきた事で、他国でも気を使わなければならない状況の娘に、何か一言と思うが、いざとなるとなんと声をかければいいのか口ごもっていると、レイラが笑顔で答えた。
「ありがとうございますお父様。行ってまいります」
一礼して食堂を去っていく娘を見つめるしかできず、拳を握りしめた。
「おはようレイラ嬢。さて行こうか」
一度部屋に戻り服を着替えある程度の支度をして宿の入口ホールまで出ていくと既にグリードは来ていた。
「殿下お待たせしてしまって申し訳ございません」
「俺が早めに来てるから」
そう言って笑うグリードは昨日よりラフな格好の為か口調まで砕けていた。
「さあ行こう!」
何日も続くわけはない…ジョスタンの予想は見事に外れた。
その日から7日連続グリードはレイラをあちこち連れ周った。そして夕方宿まで送った後、明日も来ると言われ、さすがに明日は断ろうと思い切って呼び止めた。
「殿下、この数日私の為に案内してばかりでは公務に支障も出るのではないですか?」
「心配ない。これが既に公務扱いになっている」
「ですが…ずっと私と一緒ですと不快に思われる方もいらっしゃるのでは…」
「そんな事を言う者は俺の周りにはいないな。明日は飛び切りの所に行くから楽しみにしておいて」
「殿下!しかし…」
レイラの言葉を完全に無視して笑いながらグリードは帰ってしまった。
「お嬢様…戻りましょう」
しばらくその場に立ち尽くしていたが、アイナの声で我に返る。
「そう…ね」
小さく息を吐き部屋に戻った。
──お父様に相談しないと…
急ぎ足で食堂へ入ると、奥にジョスタンがいた。
仕事で遅かったはずなのに疲れを顔に出さず書類を見ていた。
「おはようございます。お父様」
「おはようレイラ」
席に座りレイラが声を出そうとするより先にジョスタンが話し始める。
「この国に入ってから見張られていたみたいだな」
「え?」
「陛下はレイラがいる事は既にご存知だった」
「まあ、殿下が自ら動くとは思ってなかったが…」
「実は本日も案内していただけると…」
大きく息を吐きジョスタンは目を閉じる。
「レイラ」
「はい」
手を組みテーブルの上に置き鋭い目線をレイラに向ける。
「お前はダンヴィル家の者であると同時、まだラファラン国第一王子の婚約者だ。その事は忘れるな」
「…はい」
言動には気をつけろと念を押されたのも同じであった。
「お断りするのは…難しいのでしょうか?」
「何日も続くと言うことはないだろうから…今は陛下の気ままに付き合うのも仕事だと思えば良い」
「はい」
ジョスタンは再び目を閉じ考え込む。
──国境付近に近づいた辺りからアルフからの連絡が途絶えた…これも何か関係あるのか…
ふと目を開けると、自分を覗き込んでいる心配顔の娘と目があった。
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少し表情を緩め娘に微笑む。
「大丈夫だ。レイラが心配するなら早めに交渉を終わらせよう」
顔に出ていたかと少し反省してジョスタンは気を引き締め直す。
二人で朝食を食べ終えた頃、グリードからの知らせが入る。
「もうじき来られるの?早く支度しないと…」
持っていたカップを置き立ち上がろうとするレイラに再度声をかける
「レイラ」
「はい」
「気を緩めることなく立場を考えて…しかし気負うことなく…その…少しは…」
傷ついた心を和ませる為に連れてきた事で、他国でも気を使わなければならない状況の娘に、何か一言と思うが、いざとなるとなんと声をかければいいのか口ごもっていると、レイラが笑顔で答えた。
「ありがとうございますお父様。行ってまいります」
一礼して食堂を去っていく娘を見つめるしかできず、拳を握りしめた。
「おはようレイラ嬢。さて行こうか」
一度部屋に戻り服を着替えある程度の支度をして宿の入口ホールまで出ていくと既にグリードは来ていた。
「殿下お待たせしてしまって申し訳ございません」
「俺が早めに来てるから」
そう言って笑うグリードは昨日よりラフな格好の為か口調まで砕けていた。
「さあ行こう!」
何日も続くわけはない…ジョスタンの予想は見事に外れた。
その日から7日連続グリードはレイラをあちこち連れ周った。そして夕方宿まで送った後、明日も来ると言われ、さすがに明日は断ろうと思い切って呼び止めた。
「殿下、この数日私の為に案内してばかりでは公務に支障も出るのではないですか?」
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「ですが…ずっと私と一緒ですと不快に思われる方もいらっしゃるのでは…」
「そんな事を言う者は俺の周りにはいないな。明日は飛び切りの所に行くから楽しみにしておいて」
「殿下!しかし…」
レイラの言葉を完全に無視して笑いながらグリードは帰ってしまった。
「お嬢様…戻りましょう」
しばらくその場に立ち尽くしていたが、アイナの声で我に返る。
「そう…ね」
小さく息を吐き部屋に戻った。
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