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16 誕生日パーティー
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「お嬢様起きてください!今日は忙しいですよ」
窓を開け朝の空気を部屋に入れながら、アイナが起こしに来た。普段ならこんな無理やり起こすような事はしないが、今日は朝から動かないと間に合わない為アイナも気合いが入っている。
「おはようアイナ」
憂鬱な1日の始まりで、本当は起きたくなかったがそんな我儘は通用しないのは分かっている為、嫌々ながらも身体を起こした。
簡単な夜着に着替え、朝食を食べに食堂に向かう。すれ違う使用人達は本当に忙しそうで声をかけるのも迷う程だったが、皆レイラを見ると笑顔で挨拶と祝いの言葉を添えてくれた。
食べる気分でもなかったが、しっかりゆっくりと食べるのは今しかないとアイナに言われ食べられる量を味わって食べた。
少し休憩をとった後負担の少ないハンドケアから始まりそこからはされるがままで、気がつけばパーティーが始まる直前であった。
六年前と同じ黄色のドレスを着て髪もあの人同じように編み込んである。
「お嬢様完璧です!」
「ありがとうアイナ。あなたは既におつかれのようね」
「大丈夫です。お嬢様は後楽しんでください。私は後ろで控えております」
恭しく頭を下げるアイナに少し違和感を感じながらも前を向くと部屋の扉を執事が開けその先には両親と兄が待っていた。
「お待たせしました」
「…行くか」
ジョスタンがクラーラの手を取り先に歩きはじめた。アルフがスっと手をだしレイラをエスコートする。
「後で殿下にかわるけど、それまではね」
「ありがとうございます。お兄様」
「今日は本当に綺麗だよ」
「お兄様は私に甘いですわ」
そのままパーティー会場の控え室まで向かう。
パーティー会場には招待客が続々と集まっており後は主役が出るだけになっていた。
「殿下はまだか」
ジョスタンが執事に確認をしているが、セドリックはまだ来ていない。
「旦那様そろそろお時間ですが、いかがいたしましょう」
「…殿下は後から来るだろう。さあ行こうか」
本来なら会場に入る前からセドリックがエスコートして一緒に登場するのが理想だったが、これ以上待たせる訳にはいかず、公爵家として出ることにした。
公爵夫妻が先に会場に入り集まってくれたお客に礼を述べ、後からアルフとレイラが呼ばれた。
盛大な拍手の中笑顔で入ってくが、レイラは不安に押しつぶされそうだった。
一通り挨拶が終わった頃、主役のレイラがダンスをするのが流れだが、相手のセドリックがまだ来ていない。
──来てくださる…セドリック様は必ず行くと…
グッと手を握り下を向く。
「レイラ。下を向いてはダメだ。とりあえず私と踊ろう」
アルフがエスコートしてホール中央まで進みゆっくりと踊り出した。
兄妹のダンスは見事で見ている全ての人を魅了した。二人のダンスが終わると見ていた招待客も一斉に踊り出した。
ドレスがクルクルと周り華やかな世界が広がっている。
レイラはそんな様子を見ながら、自分はドンドン闇の中に沈んで行く感覚に耐えていた。
少し遅れているだけと思われていたセドリックが現れず、ずっとアレフの側にいるレイラに好奇の視線が集まり出した頃、ジョスタンが締めの挨拶を行った。
招待客がゾロゾロと帰っていく中、見送りに出ていたジョスタンは一度視線を会場に向けた。視線の先には気丈に振る舞うレイラがいた。
──セドリック様は…必ず…
最後の客が帰りバタンと扉がしまった時、レイラの目の前は真っ暗になりプツリと何かが切れた感覚を感じた瞬間、意識が遠のいた。
窓を開け朝の空気を部屋に入れながら、アイナが起こしに来た。普段ならこんな無理やり起こすような事はしないが、今日は朝から動かないと間に合わない為アイナも気合いが入っている。
「おはようアイナ」
憂鬱な1日の始まりで、本当は起きたくなかったがそんな我儘は通用しないのは分かっている為、嫌々ながらも身体を起こした。
簡単な夜着に着替え、朝食を食べに食堂に向かう。すれ違う使用人達は本当に忙しそうで声をかけるのも迷う程だったが、皆レイラを見ると笑顔で挨拶と祝いの言葉を添えてくれた。
食べる気分でもなかったが、しっかりゆっくりと食べるのは今しかないとアイナに言われ食べられる量を味わって食べた。
少し休憩をとった後負担の少ないハンドケアから始まりそこからはされるがままで、気がつけばパーティーが始まる直前であった。
六年前と同じ黄色のドレスを着て髪もあの人同じように編み込んである。
「お嬢様完璧です!」
「ありがとうアイナ。あなたは既におつかれのようね」
「大丈夫です。お嬢様は後楽しんでください。私は後ろで控えております」
恭しく頭を下げるアイナに少し違和感を感じながらも前を向くと部屋の扉を執事が開けその先には両親と兄が待っていた。
「お待たせしました」
「…行くか」
ジョスタンがクラーラの手を取り先に歩きはじめた。アルフがスっと手をだしレイラをエスコートする。
「後で殿下にかわるけど、それまではね」
「ありがとうございます。お兄様」
「今日は本当に綺麗だよ」
「お兄様は私に甘いですわ」
そのままパーティー会場の控え室まで向かう。
パーティー会場には招待客が続々と集まっており後は主役が出るだけになっていた。
「殿下はまだか」
ジョスタンが執事に確認をしているが、セドリックはまだ来ていない。
「旦那様そろそろお時間ですが、いかがいたしましょう」
「…殿下は後から来るだろう。さあ行こうか」
本来なら会場に入る前からセドリックがエスコートして一緒に登場するのが理想だったが、これ以上待たせる訳にはいかず、公爵家として出ることにした。
公爵夫妻が先に会場に入り集まってくれたお客に礼を述べ、後からアルフとレイラが呼ばれた。
盛大な拍手の中笑顔で入ってくが、レイラは不安に押しつぶされそうだった。
一通り挨拶が終わった頃、主役のレイラがダンスをするのが流れだが、相手のセドリックがまだ来ていない。
──来てくださる…セドリック様は必ず行くと…
グッと手を握り下を向く。
「レイラ。下を向いてはダメだ。とりあえず私と踊ろう」
アルフがエスコートしてホール中央まで進みゆっくりと踊り出した。
兄妹のダンスは見事で見ている全ての人を魅了した。二人のダンスが終わると見ていた招待客も一斉に踊り出した。
ドレスがクルクルと周り華やかな世界が広がっている。
レイラはそんな様子を見ながら、自分はドンドン闇の中に沈んで行く感覚に耐えていた。
少し遅れているだけと思われていたセドリックが現れず、ずっとアレフの側にいるレイラに好奇の視線が集まり出した頃、ジョスタンが締めの挨拶を行った。
招待客がゾロゾロと帰っていく中、見送りに出ていたジョスタンは一度視線を会場に向けた。視線の先には気丈に振る舞うレイラがいた。
──セドリック様は…必ず…
最後の客が帰りバタンと扉がしまった時、レイラの目の前は真っ暗になりプツリと何かが切れた感覚を感じた瞬間、意識が遠のいた。
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