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15 誕生日パーティー前日
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いつものように目が覚めた。
今日は明日のパーティーのために最終チェックが行われ、料理の手配、ホールの準備など、とにかく家中バタバタと忙しい日であった。
昼食を終え、レイラは特にすることも無くアイナから明日朝からのスケジュールを何回目かと思うほど説明され適当に相槌をうっていた。
「お嬢様聞いてますか?本当に明日は大変ですよ!でも楽しみですね」
「そう…ね」
明日は突きつけられた期限日。全てが終わるかもしれない日…そう考えると楽しみよりも恐怖しかないレイラは手を握りしめ祈るしかない。
昨晩震える身体を落ち着かせる為、力を入れすぎて唇を噛んでしまいアイナに心配されたので、今は噛まないようにギュッと力を入れる。
何も知らないアイナや使用人達に変に思われないように、必死にいつも通りに振舞おうとしても、背後から迫る真っ黒な恐怖を振り払うことは出来なかった。
──明日こんなことで皆様の前に出れるのかしら…
「お嬢様よろしいでしょうか?」
執事が部屋の扉をノックして入ってきた。
「どうしたの?」
「アルフ様が間もなくこちらにおいでになられます。本日は屋敷にお泊まりになるとの事です」
「お兄様が?」
そのまま執事とアイナと一緒に玄関前まで行くと、ちょうど馬車が到着してアルフを迎える事が出来た。
「レイラ。ただいま」
「お兄様!おかえりなさいませ」
久しぶりに見た兄の顔に自然と笑顔がこぼれた。パーティー準備で騒然としている一階を後にして、落ち着ける二階応接間に二人は移動した。
「レイラ準備はもういいのかい?」
「私は何もすることはございません」
後は任せるだけと笑うレイラの顔を見て気がついた。
「唇は…噛んでしまったのか?」
「あっ…これは…」
「殿下から連絡は?」
「…」
静かに首を振り下を向いてしまったレイラの肩に手を置き優しく声をかける。
「大丈夫だ」
「はい…」
大丈夫…その言葉を聞いて、ふっと今まで張っていた緊張がとけ少しだけ重かった気分が楽になった。
「お兄様…この前お茶会であった事なのですが」
体調を崩し報告が遅れてしまっていた事を簡単に説明すると、アルフは眉を寄せ怪訝な表情に変わった。
「殿下は何一つ変わった様子もなくあの令嬢もいつも通りだったが…」
「もうなにがなんだか…分からなくて」
二人で顔を見合わせ考え込んでしまう。
「とにかく殿下を信じるしかない…か」
「それも何をって感じですが」
ふっとアルフが笑いレイラもつられて笑顔になった時、母親のクラーラとアイナが入ってきた。
「アルフおかえりなさい」
「お母様戻りました」
「私もお邪魔してもいいかしら」
「勿論です。久しぶりにお母様のお話聞かせてください」
アルフがクラーラをエスコートしてソファーに案内して座り直した。
アイナがお茶の準備をして、親子三人夕食までゆっくりと過ごした。
今日は明日のパーティーのために最終チェックが行われ、料理の手配、ホールの準備など、とにかく家中バタバタと忙しい日であった。
昼食を終え、レイラは特にすることも無くアイナから明日朝からのスケジュールを何回目かと思うほど説明され適当に相槌をうっていた。
「お嬢様聞いてますか?本当に明日は大変ですよ!でも楽しみですね」
「そう…ね」
明日は突きつけられた期限日。全てが終わるかもしれない日…そう考えると楽しみよりも恐怖しかないレイラは手を握りしめ祈るしかない。
昨晩震える身体を落ち着かせる為、力を入れすぎて唇を噛んでしまいアイナに心配されたので、今は噛まないようにギュッと力を入れる。
何も知らないアイナや使用人達に変に思われないように、必死にいつも通りに振舞おうとしても、背後から迫る真っ黒な恐怖を振り払うことは出来なかった。
──明日こんなことで皆様の前に出れるのかしら…
「お嬢様よろしいでしょうか?」
執事が部屋の扉をノックして入ってきた。
「どうしたの?」
「アルフ様が間もなくこちらにおいでになられます。本日は屋敷にお泊まりになるとの事です」
「お兄様が?」
そのまま執事とアイナと一緒に玄関前まで行くと、ちょうど馬車が到着してアルフを迎える事が出来た。
「レイラ。ただいま」
「お兄様!おかえりなさいませ」
久しぶりに見た兄の顔に自然と笑顔がこぼれた。パーティー準備で騒然としている一階を後にして、落ち着ける二階応接間に二人は移動した。
「レイラ準備はもういいのかい?」
「私は何もすることはございません」
後は任せるだけと笑うレイラの顔を見て気がついた。
「唇は…噛んでしまったのか?」
「あっ…これは…」
「殿下から連絡は?」
「…」
静かに首を振り下を向いてしまったレイラの肩に手を置き優しく声をかける。
「大丈夫だ」
「はい…」
大丈夫…その言葉を聞いて、ふっと今まで張っていた緊張がとけ少しだけ重かった気分が楽になった。
「お兄様…この前お茶会であった事なのですが」
体調を崩し報告が遅れてしまっていた事を簡単に説明すると、アルフは眉を寄せ怪訝な表情に変わった。
「殿下は何一つ変わった様子もなくあの令嬢もいつも通りだったが…」
「もうなにがなんだか…分からなくて」
二人で顔を見合わせ考え込んでしまう。
「とにかく殿下を信じるしかない…か」
「それも何をって感じですが」
ふっとアルフが笑いレイラもつられて笑顔になった時、母親のクラーラとアイナが入ってきた。
「アルフおかえりなさい」
「お母様戻りました」
「私もお邪魔してもいいかしら」
「勿論です。久しぶりにお母様のお話聞かせてください」
アルフがクラーラをエスコートしてソファーに案内して座り直した。
アイナがお茶の準備をして、親子三人夕食までゆっくりと過ごした。
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