15 / 27
15 誕生日パーティー前日
しおりを挟む
いつものように目が覚めた。
今日は明日のパーティーのために最終チェックが行われ、料理の手配、ホールの準備など、とにかく家中バタバタと忙しい日であった。
昼食を終え、レイラは特にすることも無くアイナから明日朝からのスケジュールを何回目かと思うほど説明され適当に相槌をうっていた。
「お嬢様聞いてますか?本当に明日は大変ですよ!でも楽しみですね」
「そう…ね」
明日は突きつけられた期限日。全てが終わるかもしれない日…そう考えると楽しみよりも恐怖しかないレイラは手を握りしめ祈るしかない。
昨晩震える身体を落ち着かせる為、力を入れすぎて唇を噛んでしまいアイナに心配されたので、今は噛まないようにギュッと力を入れる。
何も知らないアイナや使用人達に変に思われないように、必死にいつも通りに振舞おうとしても、背後から迫る真っ黒な恐怖を振り払うことは出来なかった。
──明日こんなことで皆様の前に出れるのかしら…
「お嬢様よろしいでしょうか?」
執事が部屋の扉をノックして入ってきた。
「どうしたの?」
「アルフ様が間もなくこちらにおいでになられます。本日は屋敷にお泊まりになるとの事です」
「お兄様が?」
そのまま執事とアイナと一緒に玄関前まで行くと、ちょうど馬車が到着してアルフを迎える事が出来た。
「レイラ。ただいま」
「お兄様!おかえりなさいませ」
久しぶりに見た兄の顔に自然と笑顔がこぼれた。パーティー準備で騒然としている一階を後にして、落ち着ける二階応接間に二人は移動した。
「レイラ準備はもういいのかい?」
「私は何もすることはございません」
後は任せるだけと笑うレイラの顔を見て気がついた。
「唇は…噛んでしまったのか?」
「あっ…これは…」
「殿下から連絡は?」
「…」
静かに首を振り下を向いてしまったレイラの肩に手を置き優しく声をかける。
「大丈夫だ」
「はい…」
大丈夫…その言葉を聞いて、ふっと今まで張っていた緊張がとけ少しだけ重かった気分が楽になった。
「お兄様…この前お茶会であった事なのですが」
体調を崩し報告が遅れてしまっていた事を簡単に説明すると、アルフは眉を寄せ怪訝な表情に変わった。
「殿下は何一つ変わった様子もなくあの令嬢もいつも通りだったが…」
「もうなにがなんだか…分からなくて」
二人で顔を見合わせ考え込んでしまう。
「とにかく殿下を信じるしかない…か」
「それも何をって感じですが」
ふっとアルフが笑いレイラもつられて笑顔になった時、母親のクラーラとアイナが入ってきた。
「アルフおかえりなさい」
「お母様戻りました」
「私もお邪魔してもいいかしら」
「勿論です。久しぶりにお母様のお話聞かせてください」
アルフがクラーラをエスコートしてソファーに案内して座り直した。
アイナがお茶の準備をして、親子三人夕食までゆっくりと過ごした。
今日は明日のパーティーのために最終チェックが行われ、料理の手配、ホールの準備など、とにかく家中バタバタと忙しい日であった。
昼食を終え、レイラは特にすることも無くアイナから明日朝からのスケジュールを何回目かと思うほど説明され適当に相槌をうっていた。
「お嬢様聞いてますか?本当に明日は大変ですよ!でも楽しみですね」
「そう…ね」
明日は突きつけられた期限日。全てが終わるかもしれない日…そう考えると楽しみよりも恐怖しかないレイラは手を握りしめ祈るしかない。
昨晩震える身体を落ち着かせる為、力を入れすぎて唇を噛んでしまいアイナに心配されたので、今は噛まないようにギュッと力を入れる。
何も知らないアイナや使用人達に変に思われないように、必死にいつも通りに振舞おうとしても、背後から迫る真っ黒な恐怖を振り払うことは出来なかった。
──明日こんなことで皆様の前に出れるのかしら…
「お嬢様よろしいでしょうか?」
執事が部屋の扉をノックして入ってきた。
「どうしたの?」
「アルフ様が間もなくこちらにおいでになられます。本日は屋敷にお泊まりになるとの事です」
「お兄様が?」
そのまま執事とアイナと一緒に玄関前まで行くと、ちょうど馬車が到着してアルフを迎える事が出来た。
「レイラ。ただいま」
「お兄様!おかえりなさいませ」
久しぶりに見た兄の顔に自然と笑顔がこぼれた。パーティー準備で騒然としている一階を後にして、落ち着ける二階応接間に二人は移動した。
「レイラ準備はもういいのかい?」
「私は何もすることはございません」
後は任せるだけと笑うレイラの顔を見て気がついた。
「唇は…噛んでしまったのか?」
「あっ…これは…」
「殿下から連絡は?」
「…」
静かに首を振り下を向いてしまったレイラの肩に手を置き優しく声をかける。
「大丈夫だ」
「はい…」
大丈夫…その言葉を聞いて、ふっと今まで張っていた緊張がとけ少しだけ重かった気分が楽になった。
「お兄様…この前お茶会であった事なのですが」
体調を崩し報告が遅れてしまっていた事を簡単に説明すると、アルフは眉を寄せ怪訝な表情に変わった。
「殿下は何一つ変わった様子もなくあの令嬢もいつも通りだったが…」
「もうなにがなんだか…分からなくて」
二人で顔を見合わせ考え込んでしまう。
「とにかく殿下を信じるしかない…か」
「それも何をって感じですが」
ふっとアルフが笑いレイラもつられて笑顔になった時、母親のクラーラとアイナが入ってきた。
「アルフおかえりなさい」
「お母様戻りました」
「私もお邪魔してもいいかしら」
「勿論です。久しぶりにお母様のお話聞かせてください」
アルフがクラーラをエスコートしてソファーに案内して座り直した。
アイナがお茶の準備をして、親子三人夕食までゆっくりと過ごした。
28
お気に入りに追加
616
あなたにおすすめの小説

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません
かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。
……約束の時間を過ぎてから。
侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。
貴族の結婚なんて、所詮は政略で。
家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。
なのに……
何もかも義姉優先。
挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。
挙句の果て、侯爵家なのだから。
そっちは子爵家なのだからと見下される始末。
そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。
更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!?
流石にそこはお断りしますけど!?
もう、付き合いきれない。
けれど、婚約白紙を今更出来ない……
なら、新たに契約を結びましょうか。
義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。
-----------------------
※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!
as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。
しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー

成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。


愛しの貴方にサヨナラのキスを
百川凛
恋愛
王立学園に通う伯爵令嬢シャロンは、王太子の側近候補で騎士を目指すラルストン侯爵家の次男、テオドールと婚約している。
良い関係を築いてきた2人だが、ある1人の男爵令嬢によりその関係は崩れてしまう。王太子やその側近候補たちが、その男爵令嬢に心惹かれてしまったのだ。
愛する婚約者から婚約破棄を告げられる日。想いを断ち切るため最後に一度だけテオドールの唇にキスをする──と、彼はバタリと倒れてしまった。
後に、王太子をはじめ数人の男子生徒に魅了魔法がかけられている事が判明する。
テオドールは魅了にかかってしまった自分を悔い、必死にシャロンの愛と信用を取り戻そうとするが……。


初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる