13 / 27
13 気の進まない招待
しおりを挟む
「わかってますわ。私、今日はセドリック様に呼ばれております」
口元を扇子で隠して話をしているが、レイラの顔を見てあきらかに侮蔑したような表情をしているのは、目元だけ見ても充分に分かる。
「申し訳ございませんが、殿下から何も伺っておりません。本日はお引き取りください」
「は?聞いてないわけないでしょ」
「いえ、私は聞いておりません」
扉を開けようとしない執事を睨みコラリーはさらに食い下がる。
「私はセドリック様に呼ばれているの!中に入れて」
「出来ません」
両方引かずいつまでたってもこのまま続きそうだったのでレイラが静かに声を出す。
「とりあえず殿下に確認されてはいかがですか?」
はっと顔を上げレイラを見た執事は一礼して
「そうですね。大変申し訳ございませんレイラ様。しばらくお待ち頂けますか」
執事が扉を開け中に入ろうとした瞬間コラリーが執事を押しのけ先に入って行ってしまった。
あまりにも早い行動と、貴族令嬢としてありえない行動だった為執事も咄嗟に対応できず固まってしまっていたが、慌ててコラリーを追いかけるように中に入って行った。
残されたレイラは大きなため息をはく。
「なっ…なんですか?あのご令嬢は?」
アイナがびっくりしてレイラに尋ねたがレイラも肩を少し上げ知らないと顔を横に振るしかなかった。
──月一回のお茶会でさえ、私を見たくないと言うことなのね。帰りたい…招待状だけ執事に渡して帰ろうかしら
しばらく待っていると扉が開き執事が出てきた。
「大変お待たせしましたレイラ様。こちらにどうぞ」
案内されて中に入り進んでいると言い争う声がする。
「セドリック様なぜですか!私は今日呼ばれてそろそろお話があるものと…」
「お前は誰だ?ここは王族しか入れない場所だぞ、早く出ていけ。衛兵は何をしている遅い」
「セドリック様」
「気安く名前を呼ぶな!!」
近寄ってくるコラリーを避けるようにセドリックは扉から外に出た。
ちょうど案内されてレイラが歩いていた廊下だった為目が合った。
その瞬間セドリックは表情を変えレイラの前まで来てニッコリ笑う。
「久しぶりだなレイラ。今日はゆっくり話がしたい」
──え?
「あちらにレイラが好きだと言っていたお菓子も用意した」
笑顔でレイラの手を引き奥に進もうとするセドリックにかなり動揺してレイラは掴まれている手を引いてしまった。
「レイラ?」
掴まれていた手を自分で握りしめセドリックを見つめる。
「殿下?どう…なされたのですか…?」
「…その呼び方は嫌だと前も言ったはずだが…」
セドリックが眉を寄せ少し寂しそうな顔をしたのを見て前も同じ表情同じようなセリフを聞いた事があるとレイラが思い出そうとした時、ものすごい勢いでコラリーが飛び出してきた。
「セドリック様!!なぜその女の手を取るのですか!!」
執事が咄嗟にコラリーの行く手を阻み、護衛の騎士が走ってきて、コラリーを取り押さえる。
「遅い!先程から何をやっている」
「申し訳ございません殿下!直ちにこの者を連れて行きます」
「離しなさいよ!私はセドリック様と婚約する未来の王妃よ!無礼は許しません!!セドリック様!!」
「今…なんと?」
「で…ですから私はセドリック様と…」
「名前も知らぬお前と婚約など…戯けたことをよく口に出せるものだな」
「しかし…セドリック様があの…」
「名前を呼ぶな」
セドリックの顔が恐ろしい程に怒りに満ちていてコラリーも目を見開いて言葉に詰まる。
「さっさと連れてゆけ。処分は後で伝える」
「はっ!」
引きずられるように連れて行かれるコラリーはずっと何かを叫んでいたが、聞き取れなかった。
──殿下と婚約?誰が?
「すまない。レイラが入ってくるまでに出すつもりだったのだが…」
全て解決したと言う感じで普通に話すセドリックを見てさらに混乱するレイラはすぐに声が出なかったが、ゆっくりと絞り出す
「殿下…申し訳ございません…私今少し…混乱しておりまして」
「レイラ?」
「…本日は失礼してもよろしいでしょうか?」
「待ってくれ。今日はやっと…」
「申し訳ございません…私本当に…」
顔色も悪くなり倒れそうなレイラを見てセドリックは諦めたように軽く息を吐きレイラの右手を握る。
「分かった…。でも一つだけ約束してくれるか?」
「…はい…なんでしょうか?」
「何があっても私を信じて欲しい」
「え?」
「すまない…確かな事は私もまだ…だが私を信じて欲しい」
──今日の殿下は何か…
セドリックの顔を今日初めてしっかりと見つめ握られていない左手を頬に伸ばす。
「お辛いのですか?殿下」
途端セドリックの顔が真っ赤になりレイラから離れた。手で顔を隠し後ろを向いてしまった。
「執事に送らせる…」
「はい。大変申し訳ございません」
執事が廊下を戻るように案内しようとしてレイラも向きを変えようとした時再度声がかかる。
「後一つ追加で約束してくれないか」
また向きを変えセドリックの前まで行ったレイラに本当に小さい声でセドリックが言う。
「名前で呼んでくれ…」
驚いてすぐに返事が出来なかったレイラだったが、思い出して持っていた招待状をだしセドリックの前に差し出した。
「お聞きかと思いますが、来月誕生日パーティーを開きますのでぜひ…セドリック様にも来て頂きたいです」
顔を上げ笑顔で頷きながら受け取る。
「必ず行く」
口元を扇子で隠して話をしているが、レイラの顔を見てあきらかに侮蔑したような表情をしているのは、目元だけ見ても充分に分かる。
「申し訳ございませんが、殿下から何も伺っておりません。本日はお引き取りください」
「は?聞いてないわけないでしょ」
「いえ、私は聞いておりません」
扉を開けようとしない執事を睨みコラリーはさらに食い下がる。
「私はセドリック様に呼ばれているの!中に入れて」
「出来ません」
両方引かずいつまでたってもこのまま続きそうだったのでレイラが静かに声を出す。
「とりあえず殿下に確認されてはいかがですか?」
はっと顔を上げレイラを見た執事は一礼して
「そうですね。大変申し訳ございませんレイラ様。しばらくお待ち頂けますか」
執事が扉を開け中に入ろうとした瞬間コラリーが執事を押しのけ先に入って行ってしまった。
あまりにも早い行動と、貴族令嬢としてありえない行動だった為執事も咄嗟に対応できず固まってしまっていたが、慌ててコラリーを追いかけるように中に入って行った。
残されたレイラは大きなため息をはく。
「なっ…なんですか?あのご令嬢は?」
アイナがびっくりしてレイラに尋ねたがレイラも肩を少し上げ知らないと顔を横に振るしかなかった。
──月一回のお茶会でさえ、私を見たくないと言うことなのね。帰りたい…招待状だけ執事に渡して帰ろうかしら
しばらく待っていると扉が開き執事が出てきた。
「大変お待たせしましたレイラ様。こちらにどうぞ」
案内されて中に入り進んでいると言い争う声がする。
「セドリック様なぜですか!私は今日呼ばれてそろそろお話があるものと…」
「お前は誰だ?ここは王族しか入れない場所だぞ、早く出ていけ。衛兵は何をしている遅い」
「セドリック様」
「気安く名前を呼ぶな!!」
近寄ってくるコラリーを避けるようにセドリックは扉から外に出た。
ちょうど案内されてレイラが歩いていた廊下だった為目が合った。
その瞬間セドリックは表情を変えレイラの前まで来てニッコリ笑う。
「久しぶりだなレイラ。今日はゆっくり話がしたい」
──え?
「あちらにレイラが好きだと言っていたお菓子も用意した」
笑顔でレイラの手を引き奥に進もうとするセドリックにかなり動揺してレイラは掴まれている手を引いてしまった。
「レイラ?」
掴まれていた手を自分で握りしめセドリックを見つめる。
「殿下?どう…なされたのですか…?」
「…その呼び方は嫌だと前も言ったはずだが…」
セドリックが眉を寄せ少し寂しそうな顔をしたのを見て前も同じ表情同じようなセリフを聞いた事があるとレイラが思い出そうとした時、ものすごい勢いでコラリーが飛び出してきた。
「セドリック様!!なぜその女の手を取るのですか!!」
執事が咄嗟にコラリーの行く手を阻み、護衛の騎士が走ってきて、コラリーを取り押さえる。
「遅い!先程から何をやっている」
「申し訳ございません殿下!直ちにこの者を連れて行きます」
「離しなさいよ!私はセドリック様と婚約する未来の王妃よ!無礼は許しません!!セドリック様!!」
「今…なんと?」
「で…ですから私はセドリック様と…」
「名前も知らぬお前と婚約など…戯けたことをよく口に出せるものだな」
「しかし…セドリック様があの…」
「名前を呼ぶな」
セドリックの顔が恐ろしい程に怒りに満ちていてコラリーも目を見開いて言葉に詰まる。
「さっさと連れてゆけ。処分は後で伝える」
「はっ!」
引きずられるように連れて行かれるコラリーはずっと何かを叫んでいたが、聞き取れなかった。
──殿下と婚約?誰が?
「すまない。レイラが入ってくるまでに出すつもりだったのだが…」
全て解決したと言う感じで普通に話すセドリックを見てさらに混乱するレイラはすぐに声が出なかったが、ゆっくりと絞り出す
「殿下…申し訳ございません…私今少し…混乱しておりまして」
「レイラ?」
「…本日は失礼してもよろしいでしょうか?」
「待ってくれ。今日はやっと…」
「申し訳ございません…私本当に…」
顔色も悪くなり倒れそうなレイラを見てセドリックは諦めたように軽く息を吐きレイラの右手を握る。
「分かった…。でも一つだけ約束してくれるか?」
「…はい…なんでしょうか?」
「何があっても私を信じて欲しい」
「え?」
「すまない…確かな事は私もまだ…だが私を信じて欲しい」
──今日の殿下は何か…
セドリックの顔を今日初めてしっかりと見つめ握られていない左手を頬に伸ばす。
「お辛いのですか?殿下」
途端セドリックの顔が真っ赤になりレイラから離れた。手で顔を隠し後ろを向いてしまった。
「執事に送らせる…」
「はい。大変申し訳ございません」
執事が廊下を戻るように案内しようとしてレイラも向きを変えようとした時再度声がかかる。
「後一つ追加で約束してくれないか」
また向きを変えセドリックの前まで行ったレイラに本当に小さい声でセドリックが言う。
「名前で呼んでくれ…」
驚いてすぐに返事が出来なかったレイラだったが、思い出して持っていた招待状をだしセドリックの前に差し出した。
「お聞きかと思いますが、来月誕生日パーティーを開きますのでぜひ…セドリック様にも来て頂きたいです」
顔を上げ笑顔で頷きながら受け取る。
「必ず行く」
2
お気に入りに追加
483
あなたにおすすめの小説
【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!
as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。
しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー
余命わずかな私は家族にとって邪魔なので死を選びますが、どうか気にしないでくださいね?
日々埋没。
恋愛
昔から病弱だった侯爵令嬢のカミラは、そのせいで婚約者からは婚約破棄をされ、世継ぎどころか貴族の長女として何の義務も果たせない自分は役立たずだと思い悩んでいた。
しかし寝たきり生活を送るカミラが出来ることといえば、家の恥である彼女を疎んでいるであろう家族のために自らの死を願うことだった。
そんなある日願いが通じたのか、突然の熱病で静かに息を引き取ったカミラ。
彼女の意識が途切れる最後の瞬間、これで残された家族は皆喜んでくれるだろう……と思いきや、ある男性のおかげでカミラに新たな人生が始まり――!?
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
完璧令嬢が仮面を外す時
編端みどり
恋愛
※本編完結、番外編を更新中です。
冷たいけど完璧。それが王太子の婚約者であるマーガレットの評価。
ある日、婚約者の王太子に好きな人ができたから婚約を解消して欲しいと頼まれたマーガレットは、神妙に頷きながら内心ガッツポーズをしていた。
王太子は優しすぎて、マーガレットの好みではなかったからだ。
婚約を解消するには長い道のりが必要だが、自分を愛してくれない男と結婚するより良い。そう思っていたマーガレットに、身内枠だと思っていた男がストレートに告白してきた。
実はマーガレットは、恋愛小説が大好きだった。憧れていたが自分には無関係だと思っていた甘いシチュエーションにキャパオーバーするマーガレットと、意地悪そうな笑みを浮かべながら微笑む男。
彼はマーガレットの知らない所で、様々な策を練っていた。
マーガレットは彼の仕掛けた策を解明できるのか?
全24話 ※話数の番号ずれてました。教えて頂きありがとうございます!
※アルファポリス様と、カクヨム様に投稿しています。
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた婚約者。
完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
第一皇子とその方が相思相愛ならいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
カクヨム、なろうにも投稿しています。
婚約者様は連れ子の妹に夢中なようなので別れる事にした。〜連れ子とは知らなかったと言い訳をされましても〜
おしゃれスナイプ
恋愛
事あるごとに婚約者の実家に金の無心をしてくる碌でなし。それが、侯爵令嬢アルカ・ハヴェルの婚約者であるドルク・メルアを正しくあらわす言葉であった。
落ち目の危機に瀕しているメルア侯爵家であったが、これまでの付き合いから見捨てられなかった父が縁談を纏めてしまったのが全ての始まり。
しかし、ある日転機が訪れる。
アルカの父の再婚相手の連れ子、妹にあたるユーミスがドルクの婚約者の地位をアルカから奪おうと試みたのだ。
そして、ドルクもアルカではなく、過剰に持ち上げ、常にご機嫌を取るユーミスを気に入ってゆき、果てにはアルカへ婚約の破談を突きつけてしまう事になる。
私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】
青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。
そして気付いてしまったのです。
私が我慢する必要ありますか?
※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定!
コミックシーモア様にて12/25より配信されます。
コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。
リンク先
https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/
ヤンデレ悪役令嬢の前世は喪女でした。反省して婚約者へのストーキングを止めたら何故か向こうから近寄ってきます。
砂礫レキ
恋愛
伯爵令嬢リコリスは嫌われていると知りながら婚約者であるルシウスに常日頃からしつこく付き纏っていた。
ある日我慢の限界が来たルシウスに突き飛ばされリコリスは後頭部を強打する。
その結果自分の前世が20代後半喪女の乙女ゲーマーだったことと、
この世界が女性向け恋愛ゲーム『花ざかりスクールライフ』に酷似していることに気づく。
顔がほぼ見えない長い髪、血走った赤い目と青紫の唇で婚約者に執着する黒衣の悪役令嬢。
前世の記憶が戻ったことで自らのストーカー行為を反省した彼女は婚約解消と不気味過ぎる外見のイメージチェンジを決心するが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる