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13 気の進まない招待
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「わかってますわ。私、今日はセドリック様に呼ばれております」
口元を扇子で隠して話をしているが、レイラの顔を見てあきらかに侮蔑したような表情をしているのは、目元だけ見ても充分に分かる。
「申し訳ございませんが、殿下から何も伺っておりません。本日はお引き取りください」
「は?聞いてないわけないでしょ」
「いえ、私は聞いておりません」
扉を開けようとしない執事を睨みコラリーはさらに食い下がる。
「私はセドリック様に呼ばれているの!中に入れて」
「出来ません」
両方引かずいつまでたってもこのまま続きそうだったのでレイラが静かに声を出す。
「とりあえず殿下に確認されてはいかがですか?」
はっと顔を上げレイラを見た執事は一礼して
「そうですね。大変申し訳ございませんレイラ様。しばらくお待ち頂けますか」
執事が扉を開け中に入ろうとした瞬間コラリーが執事を押しのけ先に入って行ってしまった。
あまりにも早い行動と、貴族令嬢としてありえない行動だった為執事も咄嗟に対応できず固まってしまっていたが、慌ててコラリーを追いかけるように中に入って行った。
残されたレイラは大きなため息をはく。
「なっ…なんですか?あのご令嬢は?」
アイナがびっくりしてレイラに尋ねたがレイラも肩を少し上げ知らないと顔を横に振るしかなかった。
──月一回のお茶会でさえ、私を見たくないと言うことなのね。帰りたい…招待状だけ執事に渡して帰ろうかしら
しばらく待っていると扉が開き執事が出てきた。
「大変お待たせしましたレイラ様。こちらにどうぞ」
案内されて中に入り進んでいると言い争う声がする。
「セドリック様なぜですか!私は今日呼ばれてそろそろお話があるものと…」
「お前は誰だ?ここは王族しか入れない場所だぞ、早く出ていけ。衛兵は何をしている遅い」
「セドリック様」
「気安く名前を呼ぶな!!」
近寄ってくるコラリーを避けるようにセドリックは扉から外に出た。
ちょうど案内されてレイラが歩いていた廊下だった為目が合った。
その瞬間セドリックは表情を変えレイラの前まで来てニッコリ笑う。
「久しぶりだなレイラ。今日はゆっくり話がしたい」
──え?
「あちらにレイラが好きだと言っていたお菓子も用意した」
笑顔でレイラの手を引き奥に進もうとするセドリックにかなり動揺してレイラは掴まれている手を引いてしまった。
「レイラ?」
掴まれていた手を自分で握りしめセドリックを見つめる。
「殿下?どう…なされたのですか…?」
「…その呼び方は嫌だと前も言ったはずだが…」
セドリックが眉を寄せ少し寂しそうな顔をしたのを見て前も同じ表情同じようなセリフを聞いた事があるとレイラが思い出そうとした時、ものすごい勢いでコラリーが飛び出してきた。
「セドリック様!!なぜその女の手を取るのですか!!」
執事が咄嗟にコラリーの行く手を阻み、護衛の騎士が走ってきて、コラリーを取り押さえる。
「遅い!先程から何をやっている」
「申し訳ございません殿下!直ちにこの者を連れて行きます」
「離しなさいよ!私はセドリック様と婚約する未来の王妃よ!無礼は許しません!!セドリック様!!」
「今…なんと?」
「で…ですから私はセドリック様と…」
「名前も知らぬお前と婚約など…戯けたことをよく口に出せるものだな」
「しかし…セドリック様があの…」
「名前を呼ぶな」
セドリックの顔が恐ろしい程に怒りに満ちていてコラリーも目を見開いて言葉に詰まる。
「さっさと連れてゆけ。処分は後で伝える」
「はっ!」
引きずられるように連れて行かれるコラリーはずっと何かを叫んでいたが、聞き取れなかった。
──殿下と婚約?誰が?
「すまない。レイラが入ってくるまでに出すつもりだったのだが…」
全て解決したと言う感じで普通に話すセドリックを見てさらに混乱するレイラはすぐに声が出なかったが、ゆっくりと絞り出す
「殿下…申し訳ございません…私今少し…混乱しておりまして」
「レイラ?」
「…本日は失礼してもよろしいでしょうか?」
「待ってくれ。今日はやっと…」
「申し訳ございません…私本当に…」
顔色も悪くなり倒れそうなレイラを見てセドリックは諦めたように軽く息を吐きレイラの右手を握る。
「分かった…。でも一つだけ約束してくれるか?」
「…はい…なんでしょうか?」
「何があっても私を信じて欲しい」
「え?」
「すまない…確かな事は私もまだ…だが私を信じて欲しい」
──今日の殿下は何か…
セドリックの顔を今日初めてしっかりと見つめ握られていない左手を頬に伸ばす。
「お辛いのですか?殿下」
途端セドリックの顔が真っ赤になりレイラから離れた。手で顔を隠し後ろを向いてしまった。
「執事に送らせる…」
「はい。大変申し訳ございません」
執事が廊下を戻るように案内しようとしてレイラも向きを変えようとした時再度声がかかる。
「後一つ追加で約束してくれないか」
また向きを変えセドリックの前まで行ったレイラに本当に小さい声でセドリックが言う。
「名前で呼んでくれ…」
驚いてすぐに返事が出来なかったレイラだったが、思い出して持っていた招待状をだしセドリックの前に差し出した。
「お聞きかと思いますが、来月誕生日パーティーを開きますのでぜひ…セドリック様にも来て頂きたいです」
顔を上げ笑顔で頷きながら受け取る。
「必ず行く」
口元を扇子で隠して話をしているが、レイラの顔を見てあきらかに侮蔑したような表情をしているのは、目元だけ見ても充分に分かる。
「申し訳ございませんが、殿下から何も伺っておりません。本日はお引き取りください」
「は?聞いてないわけないでしょ」
「いえ、私は聞いておりません」
扉を開けようとしない執事を睨みコラリーはさらに食い下がる。
「私はセドリック様に呼ばれているの!中に入れて」
「出来ません」
両方引かずいつまでたってもこのまま続きそうだったのでレイラが静かに声を出す。
「とりあえず殿下に確認されてはいかがですか?」
はっと顔を上げレイラを見た執事は一礼して
「そうですね。大変申し訳ございませんレイラ様。しばらくお待ち頂けますか」
執事が扉を開け中に入ろうとした瞬間コラリーが執事を押しのけ先に入って行ってしまった。
あまりにも早い行動と、貴族令嬢としてありえない行動だった為執事も咄嗟に対応できず固まってしまっていたが、慌ててコラリーを追いかけるように中に入って行った。
残されたレイラは大きなため息をはく。
「なっ…なんですか?あのご令嬢は?」
アイナがびっくりしてレイラに尋ねたがレイラも肩を少し上げ知らないと顔を横に振るしかなかった。
──月一回のお茶会でさえ、私を見たくないと言うことなのね。帰りたい…招待状だけ執事に渡して帰ろうかしら
しばらく待っていると扉が開き執事が出てきた。
「大変お待たせしましたレイラ様。こちらにどうぞ」
案内されて中に入り進んでいると言い争う声がする。
「セドリック様なぜですか!私は今日呼ばれてそろそろお話があるものと…」
「お前は誰だ?ここは王族しか入れない場所だぞ、早く出ていけ。衛兵は何をしている遅い」
「セドリック様」
「気安く名前を呼ぶな!!」
近寄ってくるコラリーを避けるようにセドリックは扉から外に出た。
ちょうど案内されてレイラが歩いていた廊下だった為目が合った。
その瞬間セドリックは表情を変えレイラの前まで来てニッコリ笑う。
「久しぶりだなレイラ。今日はゆっくり話がしたい」
──え?
「あちらにレイラが好きだと言っていたお菓子も用意した」
笑顔でレイラの手を引き奥に進もうとするセドリックにかなり動揺してレイラは掴まれている手を引いてしまった。
「レイラ?」
掴まれていた手を自分で握りしめセドリックを見つめる。
「殿下?どう…なされたのですか…?」
「…その呼び方は嫌だと前も言ったはずだが…」
セドリックが眉を寄せ少し寂しそうな顔をしたのを見て前も同じ表情同じようなセリフを聞いた事があるとレイラが思い出そうとした時、ものすごい勢いでコラリーが飛び出してきた。
「セドリック様!!なぜその女の手を取るのですか!!」
執事が咄嗟にコラリーの行く手を阻み、護衛の騎士が走ってきて、コラリーを取り押さえる。
「遅い!先程から何をやっている」
「申し訳ございません殿下!直ちにこの者を連れて行きます」
「離しなさいよ!私はセドリック様と婚約する未来の王妃よ!無礼は許しません!!セドリック様!!」
「今…なんと?」
「で…ですから私はセドリック様と…」
「名前も知らぬお前と婚約など…戯けたことをよく口に出せるものだな」
「しかし…セドリック様があの…」
「名前を呼ぶな」
セドリックの顔が恐ろしい程に怒りに満ちていてコラリーも目を見開いて言葉に詰まる。
「さっさと連れてゆけ。処分は後で伝える」
「はっ!」
引きずられるように連れて行かれるコラリーはずっと何かを叫んでいたが、聞き取れなかった。
──殿下と婚約?誰が?
「すまない。レイラが入ってくるまでに出すつもりだったのだが…」
全て解決したと言う感じで普通に話すセドリックを見てさらに混乱するレイラはすぐに声が出なかったが、ゆっくりと絞り出す
「殿下…申し訳ございません…私今少し…混乱しておりまして」
「レイラ?」
「…本日は失礼してもよろしいでしょうか?」
「待ってくれ。今日はやっと…」
「申し訳ございません…私本当に…」
顔色も悪くなり倒れそうなレイラを見てセドリックは諦めたように軽く息を吐きレイラの右手を握る。
「分かった…。でも一つだけ約束してくれるか?」
「…はい…なんでしょうか?」
「何があっても私を信じて欲しい」
「え?」
「すまない…確かな事は私もまだ…だが私を信じて欲しい」
──今日の殿下は何か…
セドリックの顔を今日初めてしっかりと見つめ握られていない左手を頬に伸ばす。
「お辛いのですか?殿下」
途端セドリックの顔が真っ赤になりレイラから離れた。手で顔を隠し後ろを向いてしまった。
「執事に送らせる…」
「はい。大変申し訳ございません」
執事が廊下を戻るように案内しようとしてレイラも向きを変えようとした時再度声がかかる。
「後一つ追加で約束してくれないか」
また向きを変えセドリックの前まで行ったレイラに本当に小さい声でセドリックが言う。
「名前で呼んでくれ…」
驚いてすぐに返事が出来なかったレイラだったが、思い出して持っていた招待状をだしセドリックの前に差し出した。
「お聞きかと思いますが、来月誕生日パーティーを開きますのでぜひ…セドリック様にも来て頂きたいです」
顔を上げ笑顔で頷きながら受け取る。
「必ず行く」
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