意地を張っていたら6年もたってしまいました

Hkei

文字の大きさ
上 下
12 / 27

12 気の進まないお茶会

しおりを挟む
『なぜこんな所で隠れているの?』

屋敷からは見えにくい庭の一番奥、大きな木の根元に座り込んでいた。
誰にも見つからないと思っていたので、いきなり聞こえてきた声にびっくりした。

『セドリック様?』
『かくれんぼ?誰か見つけにくるまで僕もここにいよう』

その場が明るくなる笑顔で、綺麗な服が汚れるのも気にせず座り込んだ。

『アルフが探してたけど、あの探し方だと見つけられないね』

本当にかくれんぼだと思っているのかすごく楽しそうなセドリックを見て、流していた涙を慌てて拭いた。

『見つけてもらえなくて泣いていたの?僕が見つけたから大丈夫だよ』


隠れているのに気にせずあれこれと喋り続けるセドリックに自然とレイラも笑顔になった。


『アルフ…全くいつまで探してるのかな?隠れているのも飽きたし…そうだ!いきなり現れて驚かそう!』

『レイラ行こう!』

レイラの手を引き立たせると手を繋いだまま走り出した。屋敷の中でレイラの名前を呼んで探しているアレフを窓から確認してレイラの顔を見て

『レイラも静かにね!アルフ驚くかな』

兄アルフと比べられ、ため息ばかりの家庭教師との勉強から逃げていたレイラは、本当に楽しそうに笑っているセドリックにつられ久しぶりに笑顔になっていた。













「レイラ様…そろそろ起きてください。今日は殿下とのお茶会の日ですよ」

アイナに声をかけられ重い瞼をあけた。


──夢か…

「おはようアイナ」

上半身を起こし軽く伸びをしてベッドから降りた。

「行きたくないな…お茶会」

ボソッと言ったつもりだったがアイナにはしっかりと聞かれていた。

「朝食しっかり召し上がってください。料理長がレイラ様のお好きな果物用意してくれてます。その後私が気合いを入れてお支度させていただきます」

「アイナありがとう」



今日のお茶会でセドリックに誕生日会の招待状を渡す…今まで止まっていた針を自分で進めることになる。
ふふっと自虐的に笑い目線を下げる。

──私はまだ…少しでもと期待しているのかしら…もうほぼ望みはないのに









アイナがいつもより時間をかけ丁寧に支度をしてくれた。馬車まで歩いていると後ろにいるアイナが自信満々に胸を張っているのが面白かった。

馬車はお茶会の開かれる学園へと向かっている。王宮で行うことが多いが、たまに変更もあるので気にはしていなかったが、学園でのお茶会は兄アルフと呼ばれた時以来なので不思議ではあった。



休みの日ではあるが学園の門は開いており馬車を止めアイナと歩き出す。
王族専用エリアの扉から執事が急いでこちらに向かっていた。

「申し訳ございません。お迎えに間に合わず…」

歳を召した執事が走ってきたので息が上がっていた。

「大丈夫です」

「ではご案内いたします」

息を整えて、執事が来た道を戻ろうとすると誰かが扉の前で立っていた。執事が眉を寄せ迷惑そうに声をかける。

「コラリー様、本日はお休みの日ですが…」

珍しいピンク色の髪を派手な髪飾りをつけコラリーは立っていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。 ……約束の時間を過ぎてから。 侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。 貴族の結婚なんて、所詮は政略で。 家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。 なのに…… 何もかも義姉優先。 挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。 挙句の果て、侯爵家なのだから。 そっちは子爵家なのだからと見下される始末。 そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。 更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!? 流石にそこはお断りしますけど!? もう、付き合いきれない。 けれど、婚約白紙を今更出来ない…… なら、新たに契約を結びましょうか。 義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。 ----------------------- ※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!

as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。 しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

婚約破棄を喜んで受け入れてみた結果

宵闇 月
恋愛
ある日婚約者に婚約破棄を告げられたリリアナ。 喜んで受け入れてみたら… ※ 八話完結で書き終えてます。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

お別れを言うはずが

にのまえ
恋愛
婚約者に好きな人ができたのなら、婚約破棄いたしましよう。 エブリスタに掲載しています。

愛しの貴方にサヨナラのキスを

百川凛
恋愛
王立学園に通う伯爵令嬢シャロンは、王太子の側近候補で騎士を目指すラルストン侯爵家の次男、テオドールと婚約している。 良い関係を築いてきた2人だが、ある1人の男爵令嬢によりその関係は崩れてしまう。王太子やその側近候補たちが、その男爵令嬢に心惹かれてしまったのだ。 愛する婚約者から婚約破棄を告げられる日。想いを断ち切るため最後に一度だけテオドールの唇にキスをする──と、彼はバタリと倒れてしまった。 後に、王太子をはじめ数人の男子生徒に魅了魔法がかけられている事が判明する。 テオドールは魅了にかかってしまった自分を悔い、必死にシャロンの愛と信用を取り戻そうとするが……。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

処理中です...