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12 気の進まないお茶会
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『なぜこんな所で隠れているの?』
屋敷からは見えにくい庭の一番奥、大きな木の根元に座り込んでいた。
誰にも見つからないと思っていたので、いきなり聞こえてきた声にびっくりした。
『セドリック様?』
『かくれんぼ?誰か見つけにくるまで僕もここにいよう』
その場が明るくなる笑顔で、綺麗な服が汚れるのも気にせず座り込んだ。
『アルフが探してたけど、あの探し方だと見つけられないね』
本当にかくれんぼだと思っているのかすごく楽しそうなセドリックを見て、流していた涙を慌てて拭いた。
『見つけてもらえなくて泣いていたの?僕が見つけたから大丈夫だよ』
隠れているのに気にせずあれこれと喋り続けるセドリックに自然とレイラも笑顔になった。
『アルフ…全くいつまで探してるのかな?隠れているのも飽きたし…そうだ!いきなり現れて驚かそう!』
『レイラ行こう!』
レイラの手を引き立たせると手を繋いだまま走り出した。屋敷の中でレイラの名前を呼んで探しているアレフを窓から確認してレイラの顔を見て
『レイラも静かにね!アルフ驚くかな』
兄アルフと比べられ、ため息ばかりの家庭教師との勉強から逃げていたレイラは、本当に楽しそうに笑っているセドリックにつられ久しぶりに笑顔になっていた。
「レイラ様…そろそろ起きてください。今日は殿下とのお茶会の日ですよ」
アイナに声をかけられ重い瞼をあけた。
──夢か…
「おはようアイナ」
上半身を起こし軽く伸びをしてベッドから降りた。
「行きたくないな…お茶会」
ボソッと言ったつもりだったがアイナにはしっかりと聞かれていた。
「朝食しっかり召し上がってください。料理長がレイラ様のお好きな果物用意してくれてます。その後私が気合いを入れてお支度させていただきます」
「アイナありがとう」
今日のお茶会でセドリックに誕生日会の招待状を渡す…今まで止まっていた針を自分で進めることになる。
ふふっと自虐的に笑い目線を下げる。
──私はまだ…少しでもと期待しているのかしら…もうほぼ望みはないのに
アイナがいつもより時間をかけ丁寧に支度をしてくれた。馬車まで歩いていると後ろにいるアイナが自信満々に胸を張っているのが面白かった。
馬車はお茶会の開かれる学園へと向かっている。王宮で行うことが多いが、たまに変更もあるので気にはしていなかったが、学園でのお茶会は兄アルフと呼ばれた時以来なので不思議ではあった。
休みの日ではあるが学園の門は開いており馬車を止めアイナと歩き出す。
王族専用エリアの扉から執事が急いでこちらに向かっていた。
「申し訳ございません。お迎えに間に合わず…」
歳を召した執事が走ってきたので息が上がっていた。
「大丈夫です」
「ではご案内いたします」
息を整えて、執事が来た道を戻ろうとすると誰かが扉の前で立っていた。執事が眉を寄せ迷惑そうに声をかける。
「コラリー様、本日はお休みの日ですが…」
珍しいピンク色の髪を派手な髪飾りをつけコラリーは立っていた。
屋敷からは見えにくい庭の一番奥、大きな木の根元に座り込んでいた。
誰にも見つからないと思っていたので、いきなり聞こえてきた声にびっくりした。
『セドリック様?』
『かくれんぼ?誰か見つけにくるまで僕もここにいよう』
その場が明るくなる笑顔で、綺麗な服が汚れるのも気にせず座り込んだ。
『アルフが探してたけど、あの探し方だと見つけられないね』
本当にかくれんぼだと思っているのかすごく楽しそうなセドリックを見て、流していた涙を慌てて拭いた。
『見つけてもらえなくて泣いていたの?僕が見つけたから大丈夫だよ』
隠れているのに気にせずあれこれと喋り続けるセドリックに自然とレイラも笑顔になった。
『アルフ…全くいつまで探してるのかな?隠れているのも飽きたし…そうだ!いきなり現れて驚かそう!』
『レイラ行こう!』
レイラの手を引き立たせると手を繋いだまま走り出した。屋敷の中でレイラの名前を呼んで探しているアレフを窓から確認してレイラの顔を見て
『レイラも静かにね!アルフ驚くかな』
兄アルフと比べられ、ため息ばかりの家庭教師との勉強から逃げていたレイラは、本当に楽しそうに笑っているセドリックにつられ久しぶりに笑顔になっていた。
「レイラ様…そろそろ起きてください。今日は殿下とのお茶会の日ですよ」
アイナに声をかけられ重い瞼をあけた。
──夢か…
「おはようアイナ」
上半身を起こし軽く伸びをしてベッドから降りた。
「行きたくないな…お茶会」
ボソッと言ったつもりだったがアイナにはしっかりと聞かれていた。
「朝食しっかり召し上がってください。料理長がレイラ様のお好きな果物用意してくれてます。その後私が気合いを入れてお支度させていただきます」
「アイナありがとう」
今日のお茶会でセドリックに誕生日会の招待状を渡す…今まで止まっていた針を自分で進めることになる。
ふふっと自虐的に笑い目線を下げる。
──私はまだ…少しでもと期待しているのかしら…もうほぼ望みはないのに
アイナがいつもより時間をかけ丁寧に支度をしてくれた。馬車まで歩いていると後ろにいるアイナが自信満々に胸を張っているのが面白かった。
馬車はお茶会の開かれる学園へと向かっている。王宮で行うことが多いが、たまに変更もあるので気にはしていなかったが、学園でのお茶会は兄アルフと呼ばれた時以来なので不思議ではあった。
休みの日ではあるが学園の門は開いており馬車を止めアイナと歩き出す。
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「申し訳ございません。お迎えに間に合わず…」
歳を召した執事が走ってきたので息が上がっていた。
「大丈夫です」
「ではご案内いたします」
息を整えて、執事が来た道を戻ろうとすると誰かが扉の前で立っていた。執事が眉を寄せ迷惑そうに声をかける。
「コラリー様、本日はお休みの日ですが…」
珍しいピンク色の髪を派手な髪飾りをつけコラリーは立っていた。
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