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11 決められた期限
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馬車はゆっくりとした速度で進み公爵家に到着した。
アイナが扉を開けて先に降り下で待っていた。
──着いてしまったのね…
「レイラ様?」
すぐに降りてこないレイラを心配してアイナが声をかける。
呼び出しがあると思ってすくんでしまった足に力を入れ、覚悟を決め馬車から降りた。
そのまま足早に自分の部屋まで行き重いドレスを脱ぎ普段のドレスに着替えた。
そのまま休むと思っていたアイナは少し驚いて尋ねる。
「お休みにならないのですか?湯浴みの用意は如何しましょう…レイラ様まだどこかに行かれるのですか?」
「多分お父様から呼び出しがあると思うの」
首を傾け不思議そうにしているアイナだったが、程なくしてレイラの部屋をノックする音がした。
扉を開けると執事が立っていてレイラに頭を下げた。
「レイラ様、旦那様がお呼びでございます」
「分かりました。すぐ参ります」
レイラは立ち上がり少し微笑みながらアイナにはここで待っていて欲しいと伝え執事と共に歩きはじめた。
「こちらでございます」
「ありがとう」
執事が扉を開けレイラを中に誘導する。部屋の中央にあるソファーにレイラが腰をかけると執事は奥にある扉をノックした。
しばらくして父親であるジョスタンが入ってきた。
「戻ったか」
「はい…」
手に書類を持っていたがその束をやや乱暴にレイラの前の机に置く。
「アルフからある程度聞いてはいるが…それとは別に私の元にも話は入ってくる。この報告書のように…」
──殿下と私の事…?
「レイラ…」
厳しい声ではなく娘を心配する父親として名前を呼ばれ、構えていたレイラは驚いて顔を上げた。
「私は貴族間の結婚に恋愛感情などは必要ないと思っている。それぞれの家の結び付きを重んじる事がほとんどで…多少本人同士が仲が悪くても問題ないと」
「…はい」
ジョスタンはソファーに預けていた背中を起こし、両手を合わせ膝の上に置きながら娘の顔を見る。
「しかし、お前の相手は王族…しかも第一王子と言うことは後々この国を統べる立場になる…その二人に必要な物は何かわかるか?」
レイラは顔を上げ父親を見るがなんと答えたら良いのか分からずにいた。
ジョスタンは下を向き少し長めに息を吐いてから顔を上げた。
「絶対的な信頼だ」
「自分たちのことではなく国や国民の為の全ての最終決断、責任を任される立場になる王とその王を支える王妃の間には揺るがない信頼があるべきだと私は思っている」
「婚約者になってから今まで、王子との間にその信頼関係をきずけたか?」
「!!」
レイラは震えそうになる身体を抑え、溢れそうになる涙を堪える。
──私はそうなりたかったのです…でもセドリック様は…
「レイラに落ち度がある…とは思っていない。お前はよくやった」
ジョスタンは静かに立ち上がり、レイラの横に座り直し手を握った。
「お父様」
「来月はお前の16歳の誕生月だ…今年は盛大なパーティーを開こう。その時殿下がどう対応なさるか…見極めて今後を考えるつもりだ」
真横にいる今まで見たことがない優しい表情の父親を見て、堪えていた涙が溢れ出た。
ジョスタンが少しぎこちなく娘の頭を撫で軽くレイラを抱きしめる。
「何があろうがお前には私たちがついている。大丈夫だ」
「お父様…」
部屋に戻るとアイナは何も聞かず、いつも通り支度をしてくれた。
「レイラ様ゆっくりお休みください」
「おやすみアイナ」
パタンと扉が閉まる音の後、静まり返る部屋に中でレイラはセドリックから贈られたプレゼントを眺め小さく息を吐く…
──期限は後少し
「あのパーティーから6年も経つのね…」
レイラは最初に意地を張った誕生パーティーを思い出していた。
アイナが扉を開けて先に降り下で待っていた。
──着いてしまったのね…
「レイラ様?」
すぐに降りてこないレイラを心配してアイナが声をかける。
呼び出しがあると思ってすくんでしまった足に力を入れ、覚悟を決め馬車から降りた。
そのまま足早に自分の部屋まで行き重いドレスを脱ぎ普段のドレスに着替えた。
そのまま休むと思っていたアイナは少し驚いて尋ねる。
「お休みにならないのですか?湯浴みの用意は如何しましょう…レイラ様まだどこかに行かれるのですか?」
「多分お父様から呼び出しがあると思うの」
首を傾け不思議そうにしているアイナだったが、程なくしてレイラの部屋をノックする音がした。
扉を開けると執事が立っていてレイラに頭を下げた。
「レイラ様、旦那様がお呼びでございます」
「分かりました。すぐ参ります」
レイラは立ち上がり少し微笑みながらアイナにはここで待っていて欲しいと伝え執事と共に歩きはじめた。
「こちらでございます」
「ありがとう」
執事が扉を開けレイラを中に誘導する。部屋の中央にあるソファーにレイラが腰をかけると執事は奥にある扉をノックした。
しばらくして父親であるジョスタンが入ってきた。
「戻ったか」
「はい…」
手に書類を持っていたがその束をやや乱暴にレイラの前の机に置く。
「アルフからある程度聞いてはいるが…それとは別に私の元にも話は入ってくる。この報告書のように…」
──殿下と私の事…?
「レイラ…」
厳しい声ではなく娘を心配する父親として名前を呼ばれ、構えていたレイラは驚いて顔を上げた。
「私は貴族間の結婚に恋愛感情などは必要ないと思っている。それぞれの家の結び付きを重んじる事がほとんどで…多少本人同士が仲が悪くても問題ないと」
「…はい」
ジョスタンはソファーに預けていた背中を起こし、両手を合わせ膝の上に置きながら娘の顔を見る。
「しかし、お前の相手は王族…しかも第一王子と言うことは後々この国を統べる立場になる…その二人に必要な物は何かわかるか?」
レイラは顔を上げ父親を見るがなんと答えたら良いのか分からずにいた。
ジョスタンは下を向き少し長めに息を吐いてから顔を上げた。
「絶対的な信頼だ」
「自分たちのことではなく国や国民の為の全ての最終決断、責任を任される立場になる王とその王を支える王妃の間には揺るがない信頼があるべきだと私は思っている」
「婚約者になってから今まで、王子との間にその信頼関係をきずけたか?」
「!!」
レイラは震えそうになる身体を抑え、溢れそうになる涙を堪える。
──私はそうなりたかったのです…でもセドリック様は…
「レイラに落ち度がある…とは思っていない。お前はよくやった」
ジョスタンは静かに立ち上がり、レイラの横に座り直し手を握った。
「お父様」
「来月はお前の16歳の誕生月だ…今年は盛大なパーティーを開こう。その時殿下がどう対応なさるか…見極めて今後を考えるつもりだ」
真横にいる今まで見たことがない優しい表情の父親を見て、堪えていた涙が溢れ出た。
ジョスタンが少しぎこちなく娘の頭を撫で軽くレイラを抱きしめる。
「何があろうがお前には私たちがついている。大丈夫だ」
「お父様…」
部屋に戻るとアイナは何も聞かず、いつも通り支度をしてくれた。
「レイラ様ゆっくりお休みください」
「おやすみアイナ」
パタンと扉が閉まる音の後、静まり返る部屋に中でレイラはセドリックから贈られたプレゼントを眺め小さく息を吐く…
──期限は後少し
「あのパーティーから6年も経つのね…」
レイラは最初に意地を張った誕生パーティーを思い出していた。
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