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10 変化のない月日
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それから2年ほどレイラとセドリックは1ヶ月に一度お茶を一緒に飲み会わなかった期間の報告をする…婚約者同士の甘い会話や雰囲気はほとんどなく、お茶を飲む間だけ同じ空間にいるというだけの間柄であった。
セドリックに期待することなく心踊らせることもしないように何度も、何度も自分に言い聞かせているが、たまに見せる優しさに未だ全てを諦める事はできないレイラであった。
今も贈られたネックレスが入っている箱と花束を眺めながら複雑な心境になる。
──たまに人が変わったように見えるのは気のせいなのかしら…
学園内ではほとんど繋がりはないが、外に出るとそうもいかず、王宮主催の催しには必ずセドリックと一緒に参加していた。
今もシーズン始まりの夜会の為新しいドレスを着てセドリックと入場した。
入場からファーストダンスまでは完璧なエスコートだが、ダンスが終わればいつも一人残される。
令嬢達に囲まれているセドリックを見ても表情を変えずに向きを変えその場から遠ざかるように歩きだす。
一人壁際で立ちながら小さくため息を吐き目を閉じた。
──早く帰りたい…
そんなレイラに声をかける者はほとんどいない。
二人で夜会などに参加した当初は残されたレイラに声をかける貴族の子息もいたが、しばらく話をしていると必ずセドリックが邪魔をしにきて脅しをかけるので今は誰も近づこうともしない。
──私が一人でいる所を見て笑ってらっしゃるのね…
「レイラ様、何か召し上がられますか?」
顔をあげるとセドリックの側近レナートが立っていた。
セドリックから言われているのかレイラが一人になると必ずがやってくる。
セドリックが留学を終えた頃からの側近で、この国には珍しい褐色の肌に黒髪、濃い紫色の目をしていた。
セドリックと同じ歳頃に見えるが学園内で見たことがないのでかなり年上なのかもしれない。
レイラはなぜかレナートが苦手で、いつも避けていた。
「ありがとうございます。でも大丈夫です私もう帰りますから」
「では馬車までご案内致します」
「兄と話をしてから帰りますので大丈夫です」
──セドリック様の側近と関わるつもりはないわ…
「お兄様」
「レイラ…もう帰るのか?」
「はい。私の役目は終わりましたから」
アルフは一瞬複雑な表情をしたが、レイラを見つめ肩に手を置いた。
「馬車まで送るよ」
「ありがとうございます」
二人で何を話すでもなく賑やかな会場を背にして歩き出す。
パーティーが開かれる度いつも一人で会場を後にするが当然誰も声をかけない。
今日は兄がいてよかった…と少し微笑むと兄も苦しそうに笑っていた。
「お兄様?」
「いや…」
ダンヴィル公爵家の紋章をつけた馬車の前でレイラ付きのアイナが待っていた。
二人の姿を確認すると扉を開けレイラのドレスが邪魔にならないように少し持ち上げながら馬車へ誘導した。
アルフも一緒に馬車に乗りレイラの向かえに座りしばらく目を閉じ考え込んでいたが、ゆっくり目を開けレイラの顔を見る。
「お兄様どうされたのですか?」
「レイラ…お父様に話をしたよ」
「え?」
「殿下との婚約を考え直した方がいいと話をした」
目を見開いてアルフの顔を見るも、反論やその先の話を急かす事も出来ず、震え出す手を握った。
「帰ったら話があると思う…」
「分かりました。今内容を聞くことは出来ないのですね?」
「どう判断されるかはお父様次第だからね」
アルフは下を向いてしまった妹の手を包み込むように握り不安そうになっている顔を覗き、優しく微笑む。
「お父様も心配している。レイラが考えているような最悪な事にはならないから」
「お兄様…」
アルフはレイラの目から落ちそうになっている涙を拭い、笑顔を見せながら馬車から降りた。
アイナが乗り込み扉を閉め馬車は公爵家へと動き出す。
馬車が見えなくなるまで見送ったアルフは先程までの表情から一変し、厳しい目付きで会場に戻った。
セドリックに期待することなく心踊らせることもしないように何度も、何度も自分に言い聞かせているが、たまに見せる優しさに未だ全てを諦める事はできないレイラであった。
今も贈られたネックレスが入っている箱と花束を眺めながら複雑な心境になる。
──たまに人が変わったように見えるのは気のせいなのかしら…
学園内ではほとんど繋がりはないが、外に出るとそうもいかず、王宮主催の催しには必ずセドリックと一緒に参加していた。
今もシーズン始まりの夜会の為新しいドレスを着てセドリックと入場した。
入場からファーストダンスまでは完璧なエスコートだが、ダンスが終わればいつも一人残される。
令嬢達に囲まれているセドリックを見ても表情を変えずに向きを変えその場から遠ざかるように歩きだす。
一人壁際で立ちながら小さくため息を吐き目を閉じた。
──早く帰りたい…
そんなレイラに声をかける者はほとんどいない。
二人で夜会などに参加した当初は残されたレイラに声をかける貴族の子息もいたが、しばらく話をしていると必ずセドリックが邪魔をしにきて脅しをかけるので今は誰も近づこうともしない。
──私が一人でいる所を見て笑ってらっしゃるのね…
「レイラ様、何か召し上がられますか?」
顔をあげるとセドリックの側近レナートが立っていた。
セドリックから言われているのかレイラが一人になると必ずがやってくる。
セドリックが留学を終えた頃からの側近で、この国には珍しい褐色の肌に黒髪、濃い紫色の目をしていた。
セドリックと同じ歳頃に見えるが学園内で見たことがないのでかなり年上なのかもしれない。
レイラはなぜかレナートが苦手で、いつも避けていた。
「ありがとうございます。でも大丈夫です私もう帰りますから」
「では馬車までご案内致します」
「兄と話をしてから帰りますので大丈夫です」
──セドリック様の側近と関わるつもりはないわ…
「お兄様」
「レイラ…もう帰るのか?」
「はい。私の役目は終わりましたから」
アルフは一瞬複雑な表情をしたが、レイラを見つめ肩に手を置いた。
「馬車まで送るよ」
「ありがとうございます」
二人で何を話すでもなく賑やかな会場を背にして歩き出す。
パーティーが開かれる度いつも一人で会場を後にするが当然誰も声をかけない。
今日は兄がいてよかった…と少し微笑むと兄も苦しそうに笑っていた。
「お兄様?」
「いや…」
ダンヴィル公爵家の紋章をつけた馬車の前でレイラ付きのアイナが待っていた。
二人の姿を確認すると扉を開けレイラのドレスが邪魔にならないように少し持ち上げながら馬車へ誘導した。
アルフも一緒に馬車に乗りレイラの向かえに座りしばらく目を閉じ考え込んでいたが、ゆっくり目を開けレイラの顔を見る。
「お兄様どうされたのですか?」
「レイラ…お父様に話をしたよ」
「え?」
「殿下との婚約を考え直した方がいいと話をした」
目を見開いてアルフの顔を見るも、反論やその先の話を急かす事も出来ず、震え出す手を握った。
「帰ったら話があると思う…」
「分かりました。今内容を聞くことは出来ないのですね?」
「どう判断されるかはお父様次第だからね」
アルフは下を向いてしまった妹の手を包み込むように握り不安そうになっている顔を覗き、優しく微笑む。
「お父様も心配している。レイラが考えているような最悪な事にはならないから」
「お兄様…」
アルフはレイラの目から落ちそうになっている涙を拭い、笑顔を見せながら馬車から降りた。
アイナが乗り込み扉を閉め馬車は公爵家へと動き出す。
馬車が見えなくなるまで見送ったアルフは先程までの表情から一変し、厳しい目付きで会場に戻った。
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