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6 閉ざされた扉
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セドリックが帰国してから数日後、レイラは父親からの呼び出しで屋敷内の執務室まで来ていた。
家族揃っての食事などアルフが帰ってくる時ぐらいなので、父親と面と向かって話をするのは久しぶりだ。
──お父様からの話…まさか婚約の事?さすがにそれは…ないわよね
ドクンと胸が痛む。面会も出来なかった事を聞いているのかもしれない…また失望させてしまい最悪な結論を出されていたら…
息をするのも苦しくなり、執務室の扉の前で胸を押さえゆっくり息を吐く。
呼吸を整えて震える手でノックして中に入った。
「お父様。遅くなりました」
「ああ、そこに座りなさい」
顔も上げず書類に目を通しながらソファーを指さされた。
そっと座り父親の仕事が終わるのを待つ間も不安に潰されそうだった。
ペンのはしる音が止まり、父親のジョスタンがソファーまでやってくる。
「レイラ」
「はい」
ジョスタンの手元には書類の束が置かれている。
「お前の…学園への入学は認められなかった」
「え?」
「事前試験の成績は問題ないのだが…王室から認められなかった」
「なぜ…でしょうか?」
成績に問題ないのならなぜ?と口に出してしまった。
「王太子妃としての勉強をここでしっかりやれとの事だ。他の学園にも行くなと」
「それは…学園に通いながらでもできると思うのですが」
納得がいかず父親にはじめて逆らってみたが鋭い視線を感じ下を向いてしまった。
「これは私の意見ではない」
──王室の許可…ではなく殿下に認められなかったと言う事ですね…
「…今まで以上にやらなければ認めてはもらえない。しっかりやりなさい」
「…はい」
ショックと情けなさと悲しさと…ぐちゃぐちゃになった感情を無理やり押さえ込み出て行こうとした時、名前を呼ばれた。
「レイラ」
今まで聞いたことがない優しさが含まれた声で呼ばれびっくりして振り返る。
「辛いならはっきり言いなさい」
「お父様…?」
「今回の件は…私も納得していない。この理由は今までのレイラを全く見ていない証拠だ」
「お父様…」
「こちらにも考えはある。しばらくは耐えてくれ」
──お父様は私を見てくれていた!!それだけでも嬉しい。
「はい」
◇◆◇
レイラが学園に入学しないと言う事は噂としてすぐに広まった。
人を悪く印象づける噂ほど、真実からかけ離れている物が多いが、それ故に面白おかしく広がるのも早い。
今もジョスタンの仕事関係でパーティーに招待され、兄アルフにエスコートしてもらい会場に入った時、皆の視線がレイラに集中した。
『あの令嬢が…例の…』
『あまりに出来が悪くて…』
『婚約破棄の話もあるらしい…』
『見向きもされてないらしい…』
公爵家の人間にあからさまに言葉をかける者もいないが、コソコソと話す内容はあまりにも酷く、アルフがレイラに優しく頭を振った。
「レイラは何も聞かなくていいよ。レイラを知っている人は絶対に言わない事だから」
「お兄様…ありがとうございます」
アルフは挨拶だけして帰ろうと父親に言いに行こうとした時、入口に見たくない人物を見つけてしまった。
周りを令嬢に囲まれたセドリックがいたのだ。参加するとは聞いてなかった為レイラとは別になっていた。
『殿下もいらっしゃるのにご一緒ではないなんて』
『やはり噂は本当ですわね』
さらに嘲笑う声や視線がレイラをがんじがらめにしてしまう。アルフがレイラを庇う様に移動しようとした時、目の前にセドリックがいた。
「アルフ、レイラは私がエスコートしよう」
「は?」「え?」
アルフとレイラは驚いて同時に声を出していた。
家族揃っての食事などアルフが帰ってくる時ぐらいなので、父親と面と向かって話をするのは久しぶりだ。
──お父様からの話…まさか婚約の事?さすがにそれは…ないわよね
ドクンと胸が痛む。面会も出来なかった事を聞いているのかもしれない…また失望させてしまい最悪な結論を出されていたら…
息をするのも苦しくなり、執務室の扉の前で胸を押さえゆっくり息を吐く。
呼吸を整えて震える手でノックして中に入った。
「お父様。遅くなりました」
「ああ、そこに座りなさい」
顔も上げず書類に目を通しながらソファーを指さされた。
そっと座り父親の仕事が終わるのを待つ間も不安に潰されそうだった。
ペンのはしる音が止まり、父親のジョスタンがソファーまでやってくる。
「レイラ」
「はい」
ジョスタンの手元には書類の束が置かれている。
「お前の…学園への入学は認められなかった」
「え?」
「事前試験の成績は問題ないのだが…王室から認められなかった」
「なぜ…でしょうか?」
成績に問題ないのならなぜ?と口に出してしまった。
「王太子妃としての勉強をここでしっかりやれとの事だ。他の学園にも行くなと」
「それは…学園に通いながらでもできると思うのですが」
納得がいかず父親にはじめて逆らってみたが鋭い視線を感じ下を向いてしまった。
「これは私の意見ではない」
──王室の許可…ではなく殿下に認められなかったと言う事ですね…
「…今まで以上にやらなければ認めてはもらえない。しっかりやりなさい」
「…はい」
ショックと情けなさと悲しさと…ぐちゃぐちゃになった感情を無理やり押さえ込み出て行こうとした時、名前を呼ばれた。
「レイラ」
今まで聞いたことがない優しさが含まれた声で呼ばれびっくりして振り返る。
「辛いならはっきり言いなさい」
「お父様…?」
「今回の件は…私も納得していない。この理由は今までのレイラを全く見ていない証拠だ」
「お父様…」
「こちらにも考えはある。しばらくは耐えてくれ」
──お父様は私を見てくれていた!!それだけでも嬉しい。
「はい」
◇◆◇
レイラが学園に入学しないと言う事は噂としてすぐに広まった。
人を悪く印象づける噂ほど、真実からかけ離れている物が多いが、それ故に面白おかしく広がるのも早い。
今もジョスタンの仕事関係でパーティーに招待され、兄アルフにエスコートしてもらい会場に入った時、皆の視線がレイラに集中した。
『あの令嬢が…例の…』
『あまりに出来が悪くて…』
『婚約破棄の話もあるらしい…』
『見向きもされてないらしい…』
公爵家の人間にあからさまに言葉をかける者もいないが、コソコソと話す内容はあまりにも酷く、アルフがレイラに優しく頭を振った。
「レイラは何も聞かなくていいよ。レイラを知っている人は絶対に言わない事だから」
「お兄様…ありがとうございます」
アルフは挨拶だけして帰ろうと父親に言いに行こうとした時、入口に見たくない人物を見つけてしまった。
周りを令嬢に囲まれたセドリックがいたのだ。参加するとは聞いてなかった為レイラとは別になっていた。
『殿下もいらっしゃるのにご一緒ではないなんて』
『やはり噂は本当ですわね』
さらに嘲笑う声や視線がレイラをがんじがらめにしてしまう。アルフがレイラを庇う様に移動しようとした時、目の前にセドリックがいた。
「アルフ、レイラは私がエスコートしよう」
「は?」「え?」
アルフとレイラは驚いて同時に声を出していた。
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