5 / 27
5 重ねた意地
しおりを挟む
アルフと二人で控えの部屋で待っているが、長い時間誰も呼びに来ない。
セドリックが国王に挨拶を終えるとすぐに声がかかると思っていたアルフは席を立つ。
「少し確認してくるからレイラはこのまま待っていて」
「はい。よろしくお願いします」
アルフは扉を開け急ぎセドリックの元へ向かった。
一人残されたレイラは胸元につけたブローチに手をあてる。
セドリックからもらったブローチは落とすのが怖く常に宝石箱に入れていたが、今日こそはと合わせてもおかしくないドレスを選んでいた。
自分のために選んでくれたブローチをつけることが出来て、心が弾んでいたが、セドリックと話をするのも本当に久しぶりでそちらも不安と期待が混じりドキドキしていた。
──まずは誕生日パーティーでの事を謝って…今さらだけど許していただけるかしら…それから、エルンテ国の事もお聞きしたいな
先程見たセドリックが二人で話をしている時に微笑むところを想像して少し恥ずかしくなり、両手で頬を挟む。
火照りが落ち着いてきたころ、中々戻らないアルフの事が気になり、ソファーから立ち上がり部屋の扉まで歩いて行く。
──お兄様遅いな…セドリック様は帰ってきたすぐでお忙しいのかしら?
廊下を覗こうかと取手に手をかけたところでかすかに人の声が聞こえた。
そっと扉を開けるとアルフの声がした。
「おかしいだろ!!ここまで来ている婚約者に会う暇もないほど殿下は忙しいのか!!」
「申し訳ございませんが殿下はレイラ様とお会いする時間はございません」
アルフは目線も合わせず言い放ったセドリックの側近に詰め寄る。
今にも胸ぐらをつかみそうな勢いだったので急いで止めに入った。
「お兄様!落ち着いてください」
「私も忙しいので失礼します。お二人も早めのご帰宅をお願いいたします」
側近は一礼すると足早にその場から去っていった。
「これはあまりにも…」
怒りが収まらないアルフは拳を震わせていたが自分の腕を掴んでいる小さな手が力を無くし離れていくのに気が付きレイラを見た。
青白い顔をして今にも泣きそうな妹は、それでもスっと背筋を伸ばし唇を引き締め気丈に声を出した。
「お兄様帰りましょう」
「レイラ…」
朝期待を膨らませ歩いた廊下を、重い足を無理やり動かしアルフより先に歩いた。
馬車に乗り込んで家に向い出発する。
馬車の振動が響くと自然と涙がこぼれた。
「レイラ」
「大丈夫ですわ。セドリック様…殿下にお会い出来なくてもなんともありません」
──そうですわ。この3年お会いしてなかったのですから今日お会いできなかった事なんて…傷つく事では…ないですわ…
ただ目から勝手に涙が出るだけです…
レイラはまっすぐ顔を上げて手を膝の上で握りしめた。
セドリックが国王に挨拶を終えるとすぐに声がかかると思っていたアルフは席を立つ。
「少し確認してくるからレイラはこのまま待っていて」
「はい。よろしくお願いします」
アルフは扉を開け急ぎセドリックの元へ向かった。
一人残されたレイラは胸元につけたブローチに手をあてる。
セドリックからもらったブローチは落とすのが怖く常に宝石箱に入れていたが、今日こそはと合わせてもおかしくないドレスを選んでいた。
自分のために選んでくれたブローチをつけることが出来て、心が弾んでいたが、セドリックと話をするのも本当に久しぶりでそちらも不安と期待が混じりドキドキしていた。
──まずは誕生日パーティーでの事を謝って…今さらだけど許していただけるかしら…それから、エルンテ国の事もお聞きしたいな
先程見たセドリックが二人で話をしている時に微笑むところを想像して少し恥ずかしくなり、両手で頬を挟む。
火照りが落ち着いてきたころ、中々戻らないアルフの事が気になり、ソファーから立ち上がり部屋の扉まで歩いて行く。
──お兄様遅いな…セドリック様は帰ってきたすぐでお忙しいのかしら?
廊下を覗こうかと取手に手をかけたところでかすかに人の声が聞こえた。
そっと扉を開けるとアルフの声がした。
「おかしいだろ!!ここまで来ている婚約者に会う暇もないほど殿下は忙しいのか!!」
「申し訳ございませんが殿下はレイラ様とお会いする時間はございません」
アルフは目線も合わせず言い放ったセドリックの側近に詰め寄る。
今にも胸ぐらをつかみそうな勢いだったので急いで止めに入った。
「お兄様!落ち着いてください」
「私も忙しいので失礼します。お二人も早めのご帰宅をお願いいたします」
側近は一礼すると足早にその場から去っていった。
「これはあまりにも…」
怒りが収まらないアルフは拳を震わせていたが自分の腕を掴んでいる小さな手が力を無くし離れていくのに気が付きレイラを見た。
青白い顔をして今にも泣きそうな妹は、それでもスっと背筋を伸ばし唇を引き締め気丈に声を出した。
「お兄様帰りましょう」
「レイラ…」
朝期待を膨らませ歩いた廊下を、重い足を無理やり動かしアルフより先に歩いた。
馬車に乗り込んで家に向い出発する。
馬車の振動が響くと自然と涙がこぼれた。
「レイラ」
「大丈夫ですわ。セドリック様…殿下にお会い出来なくてもなんともありません」
──そうですわ。この3年お会いしてなかったのですから今日お会いできなかった事なんて…傷つく事では…ないですわ…
ただ目から勝手に涙が出るだけです…
レイラはまっすぐ顔を上げて手を膝の上で握りしめた。
33
お気に入りに追加
616
あなたにおすすめの小説

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません
かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。
……約束の時間を過ぎてから。
侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。
貴族の結婚なんて、所詮は政略で。
家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。
なのに……
何もかも義姉優先。
挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。
挙句の果て、侯爵家なのだから。
そっちは子爵家なのだからと見下される始末。
そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。
更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!?
流石にそこはお断りしますけど!?
もう、付き合いきれない。
けれど、婚約白紙を今更出来ない……
なら、新たに契約を結びましょうか。
義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。
-----------------------
※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!
as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。
しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。


【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~
瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)
ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。
3歳年下のティーノ様だ。
本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。
行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。
なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。
もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。
そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。
全7話の短編です 完結確約です。

【完結】「婚約者は妹のことが好きなようです。妹に婚約者を譲ったら元婚約者と妹の様子がおかしいのですが」
まほりろ
恋愛
※小説家になろうにて日間総合ランキング6位まで上がった作品です!2022/07/10
私の婚約者のエドワード様は私のことを「アリーシア」と呼び、私の妹のクラウディアのことを「ディア」と愛称で呼ぶ。
エドワード様は当家を訪ねて来るたびに私には黄色い薔薇を十五本、妹のクラウディアにはピンクの薔薇を七本渡す。
エドワード様は薔薇の花言葉が色と本数によって違うことをご存知ないのかしら?
それにピンクはエドワード様の髪と瞳の色。自分の髪や瞳の色の花を異性に贈る意味をエドワード様が知らないはずがないわ。
エドワード様はクラウディアを愛しているのね。二人が愛し合っているなら私は身を引くわ。
そう思って私はエドワード様との婚約を解消した。
なのに婚約を解消したはずのエドワード様が先触れもなく当家を訪れ、私のことを「シア」と呼び迫ってきて……。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。
夢風 月
恋愛
カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。
顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。
我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。
そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。
「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」
そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。
「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」
「……好きだからだ」
「……はい?」
いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。
※タグをよくご確認ください※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる