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5 重ねた意地
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アルフと二人で控えの部屋で待っているが、長い時間誰も呼びに来ない。
セドリックが国王に挨拶を終えるとすぐに声がかかると思っていたアルフは席を立つ。
「少し確認してくるからレイラはこのまま待っていて」
「はい。よろしくお願いします」
アルフは扉を開け急ぎセドリックの元へ向かった。
一人残されたレイラは胸元につけたブローチに手をあてる。
セドリックからもらったブローチは落とすのが怖く常に宝石箱に入れていたが、今日こそはと合わせてもおかしくないドレスを選んでいた。
自分のために選んでくれたブローチをつけることが出来て、心が弾んでいたが、セドリックと話をするのも本当に久しぶりでそちらも不安と期待が混じりドキドキしていた。
──まずは誕生日パーティーでの事を謝って…今さらだけど許していただけるかしら…それから、エルンテ国の事もお聞きしたいな
先程見たセドリックが二人で話をしている時に微笑むところを想像して少し恥ずかしくなり、両手で頬を挟む。
火照りが落ち着いてきたころ、中々戻らないアルフの事が気になり、ソファーから立ち上がり部屋の扉まで歩いて行く。
──お兄様遅いな…セドリック様は帰ってきたすぐでお忙しいのかしら?
廊下を覗こうかと取手に手をかけたところでかすかに人の声が聞こえた。
そっと扉を開けるとアルフの声がした。
「おかしいだろ!!ここまで来ている婚約者に会う暇もないほど殿下は忙しいのか!!」
「申し訳ございませんが殿下はレイラ様とお会いする時間はございません」
アルフは目線も合わせず言い放ったセドリックの側近に詰め寄る。
今にも胸ぐらをつかみそうな勢いだったので急いで止めに入った。
「お兄様!落ち着いてください」
「私も忙しいので失礼します。お二人も早めのご帰宅をお願いいたします」
側近は一礼すると足早にその場から去っていった。
「これはあまりにも…」
怒りが収まらないアルフは拳を震わせていたが自分の腕を掴んでいる小さな手が力を無くし離れていくのに気が付きレイラを見た。
青白い顔をして今にも泣きそうな妹は、それでもスっと背筋を伸ばし唇を引き締め気丈に声を出した。
「お兄様帰りましょう」
「レイラ…」
朝期待を膨らませ歩いた廊下を、重い足を無理やり動かしアルフより先に歩いた。
馬車に乗り込んで家に向い出発する。
馬車の振動が響くと自然と涙がこぼれた。
「レイラ」
「大丈夫ですわ。セドリック様…殿下にお会い出来なくてもなんともありません」
──そうですわ。この3年お会いしてなかったのですから今日お会いできなかった事なんて…傷つく事では…ないですわ…
ただ目から勝手に涙が出るだけです…
レイラはまっすぐ顔を上げて手を膝の上で握りしめた。
セドリックが国王に挨拶を終えるとすぐに声がかかると思っていたアルフは席を立つ。
「少し確認してくるからレイラはこのまま待っていて」
「はい。よろしくお願いします」
アルフは扉を開け急ぎセドリックの元へ向かった。
一人残されたレイラは胸元につけたブローチに手をあてる。
セドリックからもらったブローチは落とすのが怖く常に宝石箱に入れていたが、今日こそはと合わせてもおかしくないドレスを選んでいた。
自分のために選んでくれたブローチをつけることが出来て、心が弾んでいたが、セドリックと話をするのも本当に久しぶりでそちらも不安と期待が混じりドキドキしていた。
──まずは誕生日パーティーでの事を謝って…今さらだけど許していただけるかしら…それから、エルンテ国の事もお聞きしたいな
先程見たセドリックが二人で話をしている時に微笑むところを想像して少し恥ずかしくなり、両手で頬を挟む。
火照りが落ち着いてきたころ、中々戻らないアルフの事が気になり、ソファーから立ち上がり部屋の扉まで歩いて行く。
──お兄様遅いな…セドリック様は帰ってきたすぐでお忙しいのかしら?
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そっと扉を開けるとアルフの声がした。
「おかしいだろ!!ここまで来ている婚約者に会う暇もないほど殿下は忙しいのか!!」
「申し訳ございませんが殿下はレイラ様とお会いする時間はございません」
アルフは目線も合わせず言い放ったセドリックの側近に詰め寄る。
今にも胸ぐらをつかみそうな勢いだったので急いで止めに入った。
「お兄様!落ち着いてください」
「私も忙しいので失礼します。お二人も早めのご帰宅をお願いいたします」
側近は一礼すると足早にその場から去っていった。
「これはあまりにも…」
怒りが収まらないアルフは拳を震わせていたが自分の腕を掴んでいる小さな手が力を無くし離れていくのに気が付きレイラを見た。
青白い顔をして今にも泣きそうな妹は、それでもスっと背筋を伸ばし唇を引き締め気丈に声を出した。
「お兄様帰りましょう」
「レイラ…」
朝期待を膨らませ歩いた廊下を、重い足を無理やり動かしアルフより先に歩いた。
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馬車の振動が響くと自然と涙がこぼれた。
「レイラ」
「大丈夫ですわ。セドリック様…殿下にお会い出来なくてもなんともありません」
──そうですわ。この3年お会いしてなかったのですから今日お会いできなかった事なんて…傷つく事では…ないですわ…
ただ目から勝手に涙が出るだけです…
レイラはまっすぐ顔を上げて手を膝の上で握りしめた。
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