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4 帰国
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『来月帰国する』
その手紙を受け取ったのはレイラが13歳になる少し前であった。
月日が経ちレイラの髪も腰まで伸び幼さの残っていた顔も大人びてきて美しいと言う言葉も似合うようになっていた。
出立の時は見送りに行けなかったが、今回は来るなとは書いていない…
──私は行っても大丈夫なのかしら…
自室の窓際に立ち、セドリックの手紙をずっと眺め考え込んでいた。
「アイナ…お兄様に手紙を書くわ」
「はい。すぐ準備しますね」
アルフに相談の手紙を書くと、一緒に行ってくれると返事がきたので、急いで準備に取りかかる。
ドレスを今から仕立てるのは無理なので1番お気に入りのドレスを選び、そのドレスに合うアクセサリーを選び髪型をどうするか決めた。
勉強も調整して何日か休日にできるように寝る時間を削って調節した。
直前は目の下に隈など作らないように気をつけ、準備に余念がない。
──ふふっ。セドリック様気がついてくれるかしら
久しぶりに会う婚約者に落胆されないように準備をするのはとても楽しかったのか自然と笑顔になっていた。
アイナは本当に楽しそうなレイラを見て涙が出そうになっていた。
「お嬢様、私にお任せください!一番輝くお嬢様に仕上げます!!」
「ありがとうアイナ」
当日は朝からアイナはじめメイド達が頑張って支度をした。夜会やパーティーではないので華やかになりすぎず、しかし普段とは違うギリギリのところを攻めていた。
支度も終わった頃アルフが迎えに来た。
レイラは1階のロビーで待っていたのですぐに兄と会うことができた。
アレフは目を細めレイラを見つめる。
「レイラ…今日はすごく綺麗だよ。こんなレイラを一番にエスコートするのが私で申し訳ない」
「ふふっ。お兄様お上手ですわ」
「殿下も驚くよ」
アレフは完璧な紳士の振る舞いで手を伸ばす。レイラも戸惑うことなく手を乗せて外に出た。
馬車に乗って王宮まで向かう。事前に話が通っているのかすぐに控えの部屋に案内された。
控えの部屋と言っても王宮内なので置いてある調度品は高級品ばかりで、ソファーに座りながらひとつひとつ興味深く見てみたくなっていた。
アレフと二人座って待っている間、レイラは学園の話を聞いていた。
アレフ達が通っている学園は王宮近くにある格式高い貴族しか通えない学園であり、卒業後の道も確定されており人気も高いがレベルも相当高いため在学するのも大変な努力がいる。
男子は12歳、女子は13歳から入学を許可されるが強制ではない。
容赦なく落とされるのではじめから別の学園に入る貴族もいるらしい。
レイラも通う予定をしていたので中の様子など聞いておきたかった。
「レイラは家からの通いになると思うよ」
「寮ではダメですか?」
「家での勉強もあるでしょ?多分お父様が認めないかな」
家が嫌いな訳では無いが一度家以外もいいかなと思っていたので少し残念な気がした。
勉強面を聞こうとしていると扉がノックされ、王宮仕えの執事が呼びに来た。
「もうすぐ王子を乗せた馬車が到着します」
早馬が知らせてくれたようで王宮入口まで急いだ。他にも出迎える人はいて馬車が到着する位置に人垣が出来ていた。
アルフとレイラも連なるように並んで馬車を待った。
──久しぶりにセドリック様に会える
レイラは高鳴る胸を押さえ門の向こうに続く道を眺めていた。
「あっ…」
道の奥に小さく見えた馬車は王族専用の紋章を確認できるほどドンドン大きく見えあっという間に人垣の近くに止まった。
従者が馬車の扉を開けると先に側近が降りその後からセドリックが降りてきた。
15歳になっていたセドリックは少年と青年の間の不安定な時期とは思えないほど、貫禄あるしかし美しさも兼ね備えた姿に成長していた。
黒色の軍服のような服がさらに凄さを増していた。
馬車から降りる時にレイラと目が合った。
瞬間目を見開いて動きが止まった。
しばらくレイラから目を離さず中々動かずにいたが一歩動き出すとまっすぐレイラの元に進もうとするのをセドリックの側近が制し王宮内に進んで行った。
「殿下気がついてくれてたね」
「はい」
それが嬉しくて表情が緩む。
「とりあえず中で殿下を待とうか」
「はい」
この後ゆっくり話ができるかもと期待を膨らませながら、先程案内された部屋に一度戻ることにした。
その手紙を受け取ったのはレイラが13歳になる少し前であった。
月日が経ちレイラの髪も腰まで伸び幼さの残っていた顔も大人びてきて美しいと言う言葉も似合うようになっていた。
出立の時は見送りに行けなかったが、今回は来るなとは書いていない…
──私は行っても大丈夫なのかしら…
自室の窓際に立ち、セドリックの手紙をずっと眺め考え込んでいた。
「アイナ…お兄様に手紙を書くわ」
「はい。すぐ準備しますね」
アルフに相談の手紙を書くと、一緒に行ってくれると返事がきたので、急いで準備に取りかかる。
ドレスを今から仕立てるのは無理なので1番お気に入りのドレスを選び、そのドレスに合うアクセサリーを選び髪型をどうするか決めた。
勉強も調整して何日か休日にできるように寝る時間を削って調節した。
直前は目の下に隈など作らないように気をつけ、準備に余念がない。
──ふふっ。セドリック様気がついてくれるかしら
久しぶりに会う婚約者に落胆されないように準備をするのはとても楽しかったのか自然と笑顔になっていた。
アイナは本当に楽しそうなレイラを見て涙が出そうになっていた。
「お嬢様、私にお任せください!一番輝くお嬢様に仕上げます!!」
「ありがとうアイナ」
当日は朝からアイナはじめメイド達が頑張って支度をした。夜会やパーティーではないので華やかになりすぎず、しかし普段とは違うギリギリのところを攻めていた。
支度も終わった頃アルフが迎えに来た。
レイラは1階のロビーで待っていたのですぐに兄と会うことができた。
アレフは目を細めレイラを見つめる。
「レイラ…今日はすごく綺麗だよ。こんなレイラを一番にエスコートするのが私で申し訳ない」
「ふふっ。お兄様お上手ですわ」
「殿下も驚くよ」
アレフは完璧な紳士の振る舞いで手を伸ばす。レイラも戸惑うことなく手を乗せて外に出た。
馬車に乗って王宮まで向かう。事前に話が通っているのかすぐに控えの部屋に案内された。
控えの部屋と言っても王宮内なので置いてある調度品は高級品ばかりで、ソファーに座りながらひとつひとつ興味深く見てみたくなっていた。
アレフと二人座って待っている間、レイラは学園の話を聞いていた。
アレフ達が通っている学園は王宮近くにある格式高い貴族しか通えない学園であり、卒業後の道も確定されており人気も高いがレベルも相当高いため在学するのも大変な努力がいる。
男子は12歳、女子は13歳から入学を許可されるが強制ではない。
容赦なく落とされるのではじめから別の学園に入る貴族もいるらしい。
レイラも通う予定をしていたので中の様子など聞いておきたかった。
「レイラは家からの通いになると思うよ」
「寮ではダメですか?」
「家での勉強もあるでしょ?多分お父様が認めないかな」
家が嫌いな訳では無いが一度家以外もいいかなと思っていたので少し残念な気がした。
勉強面を聞こうとしていると扉がノックされ、王宮仕えの執事が呼びに来た。
「もうすぐ王子を乗せた馬車が到着します」
早馬が知らせてくれたようで王宮入口まで急いだ。他にも出迎える人はいて馬車が到着する位置に人垣が出来ていた。
アルフとレイラも連なるように並んで馬車を待った。
──久しぶりにセドリック様に会える
レイラは高鳴る胸を押さえ門の向こうに続く道を眺めていた。
「あっ…」
道の奥に小さく見えた馬車は王族専用の紋章を確認できるほどドンドン大きく見えあっという間に人垣の近くに止まった。
従者が馬車の扉を開けると先に側近が降りその後からセドリックが降りてきた。
15歳になっていたセドリックは少年と青年の間の不安定な時期とは思えないほど、貫禄あるしかし美しさも兼ね備えた姿に成長していた。
黒色の軍服のような服がさらに凄さを増していた。
馬車から降りる時にレイラと目が合った。
瞬間目を見開いて動きが止まった。
しばらくレイラから目を離さず中々動かずにいたが一歩動き出すとまっすぐレイラの元に進もうとするのをセドリックの側近が制し王宮内に進んで行った。
「殿下気がついてくれてたね」
「はい」
それが嬉しくて表情が緩む。
「とりあえず中で殿下を待とうか」
「はい」
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