意地を張っていたら6年もたってしまいました

Hkei

文字の大きさ
上 下
4 / 27

4 帰国

しおりを挟む
『来月帰国する』

その手紙を受け取ったのはレイラが13歳になる少し前であった。

月日が経ちレイラの髪も腰まで伸び幼さの残っていた顔も大人びてきて美しいと言う言葉も似合うようになっていた。

出立の時は見送りに行けなかったが、今回は来るなとは書いていない…



──私は行っても大丈夫なのかしら…

自室の窓際に立ち、セドリックの手紙をずっと眺め考え込んでいた。

「アイナ…お兄様に手紙を書くわ」
「はい。すぐ準備しますね」


アルフに相談の手紙を書くと、一緒に行ってくれると返事がきたので、急いで準備に取りかかる。

ドレスを今から仕立てるのは無理なので1番お気に入りのドレスを選び、そのドレスに合うアクセサリーを選び髪型をどうするか決めた。

勉強も調整して何日か休日にできるように寝る時間を削って調節した。
直前は目の下に隈など作らないように気をつけ、準備に余念がない。


──ふふっ。セドリック様気がついてくれるかしら

久しぶりに会う婚約者に落胆されないように準備をするのはとても楽しかったのか自然と笑顔になっていた。
アイナは本当に楽しそうなレイラを見て涙が出そうになっていた。

「お嬢様、私にお任せください!一番輝くお嬢様に仕上げます!!」
「ありがとうアイナ」




当日は朝からアイナはじめメイド達が頑張って支度をした。夜会やパーティーではないので華やかになりすぎず、しかし普段とは違うギリギリのところを攻めていた。

支度も終わった頃アルフが迎えに来た。
レイラは1階のロビーで待っていたのですぐに兄と会うことができた。

アレフは目を細めレイラを見つめる。

「レイラ…今日はすごく綺麗だよ。こんなレイラを一番にエスコートするのが私で申し訳ない」
「ふふっ。お兄様お上手ですわ」
「殿下も驚くよ」

アレフは完璧な紳士の振る舞いで手を伸ばす。レイラも戸惑うことなく手を乗せて外に出た。

馬車に乗って王宮まで向かう。事前に話が通っているのかすぐに控えの部屋に案内された。
控えの部屋と言っても王宮内なので置いてある調度品は高級品ばかりで、ソファーに座りながらひとつひとつ興味深く見てみたくなっていた。

アレフと二人座って待っている間、レイラは学園の話を聞いていた。

アレフ達が通っている学園は王宮近くにある格式高い貴族しか通えない学園であり、卒業後の道も確定されており人気も高いがレベルも相当高いため在学するのも大変な努力がいる。
男子は12歳、女子は13歳から入学を許可されるが強制ではない。
容赦なく落とされるのではじめから別の学園に入る貴族もいるらしい。

レイラも通う予定をしていたので中の様子など聞いておきたかった。

「レイラは家からの通いになると思うよ」
「寮ではダメですか?」
「家での勉強もあるでしょ?多分お父様が認めないかな」

家が嫌いな訳では無いが一度家以外もいいかなと思っていたので少し残念な気がした。

勉強面を聞こうとしていると扉がノックされ、王宮仕えの執事が呼びに来た。

「もうすぐ王子を乗せた馬車が到着します」

早馬が知らせてくれたようで王宮入口まで急いだ。他にも出迎える人はいて馬車が到着する位置に人垣が出来ていた。
アルフとレイラも連なるように並んで馬車を待った。


──久しぶりにセドリック様に会える

レイラは高鳴る胸を押さえ門の向こうに続く道を眺めていた。

「あっ…」

道の奥に小さく見えた馬車は王族専用の紋章を確認できるほどドンドン大きく見えあっという間に人垣の近くに止まった。

従者が馬車の扉を開けると先に側近が降りその後からセドリックが降りてきた。

15歳になっていたセドリックは少年と青年の間の不安定な時期とは思えないほど、貫禄あるしかし美しさも兼ね備えた姿に成長していた。
黒色の軍服のような服がさらに凄さを増していた。

馬車から降りる時にレイラと目が合った。
瞬間目を見開いて動きが止まった。

しばらくレイラから目を離さず中々動かずにいたが一歩動き出すとまっすぐレイラの元に進もうとするのをセドリックの側近が制し王宮内に進んで行った。

「殿下気がついてくれてたね」
「はい」

それが嬉しくて表情が緩む。

「とりあえず中で殿下を待とうか」
「はい」

この後ゆっくり話ができるかもと期待を膨らませながら、先程案内された部屋に一度戻ることにした。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。 ……約束の時間を過ぎてから。 侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。 貴族の結婚なんて、所詮は政略で。 家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。 なのに…… 何もかも義姉優先。 挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。 挙句の果て、侯爵家なのだから。 そっちは子爵家なのだからと見下される始末。 そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。 更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!? 流石にそこはお断りしますけど!? もう、付き合いきれない。 けれど、婚約白紙を今更出来ない…… なら、新たに契約を結びましょうか。 義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。 ----------------------- ※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!

as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。 しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

婚約破棄を喜んで受け入れてみた結果

宵闇 月
恋愛
ある日婚約者に婚約破棄を告げられたリリアナ。 喜んで受け入れてみたら… ※ 八話完結で書き終えてます。

愛しの貴方にサヨナラのキスを

百川凛
恋愛
王立学園に通う伯爵令嬢シャロンは、王太子の側近候補で騎士を目指すラルストン侯爵家の次男、テオドールと婚約している。 良い関係を築いてきた2人だが、ある1人の男爵令嬢によりその関係は崩れてしまう。王太子やその側近候補たちが、その男爵令嬢に心惹かれてしまったのだ。 愛する婚約者から婚約破棄を告げられる日。想いを断ち切るため最後に一度だけテオドールの唇にキスをする──と、彼はバタリと倒れてしまった。 後に、王太子をはじめ数人の男子生徒に魅了魔法がかけられている事が判明する。 テオドールは魅了にかかってしまった自分を悔い、必死にシャロンの愛と信用を取り戻そうとするが……。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

お別れを言うはずが

にのまえ
恋愛
婚約者に好きな人ができたのなら、婚約破棄いたしましよう。 エブリスタに掲載しています。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

処理中です...