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2 沈む気持ち
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一直線に歩きホールからバルコニーまで出たレイラは端の方で一人壁に寄りかかった。
「っ…う…」
次から次と溢れてくる涙を止めることができず、手で口を押さえ声を殺し泣いていた。
──セドリック様…なんて…
「レイラ!こんな所にいたの」
名前を呼ばれ驚いて顔をあげると、一瞬期待した人ではなく兄アルフがいた。
「お兄様…私セドリック様に…」
また涙が溢れてくるのを必死で拭こうとすると、手を取られて優しく抱きしめてくれた。
「擦ってはダメだよ」
「お兄様…」
少し落ち着くまでアルフはレイラを抱きしめていたが、そっと離れてハンカチで涙を拭いてくれ顔の位置を合わせるように少し屈んだ。
「今日はレイラが主役でしょ。こんな所にいてはダメだよ。もう戻れる?」
「…はい。申し訳ございませんお兄様」
ふっと笑いレイラの頭を撫で手を引いて中に戻る。中は主役が少しの間いなかったことなど問題なかったようにゆったりとした時間がすぎていた。
沢山いる人の中でもレイラはセドリックをすぐ見つけてしまう。
レイラがいなかったからかまた数人の令嬢達が周りにいた。
「レイラ…気持ちは分かるけど、今日ちゃんと殿下と仲直りしないと…」
「分かっています」
セドリックは近々隣国へ留学することが決まっていた。最低でも1年帰ってこない。このままだと気まづいままで離れる事になるのはレイラも分かっていた。
しかし先程からレイラと目が合っているのに、まだ自分にも近づいてこず周りの令嬢に笑顔を振りまいているセドリックに素直になれず、わざとらしくフンッと横を向いてしまった。
そう…意地を張ってしまったのだ。
パーティーが終わる頃には話しかけてくれると思っていたが、結局それから話すことなくお開きとなった。
セドリックも学友達とそのまま帰ってしまい、レイラは一人呆然とホールに立ち尽くした。
──セドリック様は…本当にこのままでもいいと思ってらっしゃるのかしら
自分の手を胸の前で握りしめ震える身体を必死で押さえた。
意地を張った後悔と、セドリックへの怒りと、悲しさ…
それでも自分の心を占めるセドリックへの想いを複雑に抱え、動けずにいたレイラは、入口で待っていた兄に促され部屋に戻った。
翌日にはアルフは寮へ帰る準備をして、後は迎えの馬車を待つだけになっていた。父親とは昨日の夜話をしていたので今見送りにいるのは母親とレイラだけだった。
「アルフ気をつけてね」
「はい。お母様も体調気をつけてください」
少し後ろに控えていたレイラを見て微笑み声をかける。
「レイラも勉強頑張ってね」
「はい。あの…お兄様」
アルフはレイラの側まで来て耳元でつぶやく。
「殿下とは留学前に会えると思うし、見送りにも来るでしょ?その時私が一緒に謝ってあげるよ」
「お兄様…ありがとうございます」
王太子の婚約者として学ばなければならない事は沢山あり、レイラは毎日忙しい日々を過ごしていたが、留学前に一度会えると思いながら頑張っていた。
そんな時セドリックから手紙が届いた。
「お嬢様殿下からです!!」
「もうアイナがそんなに嬉しそうな顔しないで」
メイドのアイナから手紙を受け取り、ドキドキしながら封を開けた。
『明日エルンテ国に出立する。見送りは無用』
事務的な、なんの感情ものっていない一文だけであった。
手紙を読んだレイラは全身から力が抜けていくのを感じた。
──これだけ…セドリック様にとって私の存在もこれだけと言うことなのね…
「お嬢様…?」
キラキラ輝いていた瞳から光が消え顔色も無くなった主人を心配してアイナは側に寄る。
そのままレイラは寝込んでしまった。
「っ…う…」
次から次と溢れてくる涙を止めることができず、手で口を押さえ声を殺し泣いていた。
──セドリック様…なんて…
「レイラ!こんな所にいたの」
名前を呼ばれ驚いて顔をあげると、一瞬期待した人ではなく兄アルフがいた。
「お兄様…私セドリック様に…」
また涙が溢れてくるのを必死で拭こうとすると、手を取られて優しく抱きしめてくれた。
「擦ってはダメだよ」
「お兄様…」
少し落ち着くまでアルフはレイラを抱きしめていたが、そっと離れてハンカチで涙を拭いてくれ顔の位置を合わせるように少し屈んだ。
「今日はレイラが主役でしょ。こんな所にいてはダメだよ。もう戻れる?」
「…はい。申し訳ございませんお兄様」
ふっと笑いレイラの頭を撫で手を引いて中に戻る。中は主役が少しの間いなかったことなど問題なかったようにゆったりとした時間がすぎていた。
沢山いる人の中でもレイラはセドリックをすぐ見つけてしまう。
レイラがいなかったからかまた数人の令嬢達が周りにいた。
「レイラ…気持ちは分かるけど、今日ちゃんと殿下と仲直りしないと…」
「分かっています」
セドリックは近々隣国へ留学することが決まっていた。最低でも1年帰ってこない。このままだと気まづいままで離れる事になるのはレイラも分かっていた。
しかし先程からレイラと目が合っているのに、まだ自分にも近づいてこず周りの令嬢に笑顔を振りまいているセドリックに素直になれず、わざとらしくフンッと横を向いてしまった。
そう…意地を張ってしまったのだ。
パーティーが終わる頃には話しかけてくれると思っていたが、結局それから話すことなくお開きとなった。
セドリックも学友達とそのまま帰ってしまい、レイラは一人呆然とホールに立ち尽くした。
──セドリック様は…本当にこのままでもいいと思ってらっしゃるのかしら
自分の手を胸の前で握りしめ震える身体を必死で押さえた。
意地を張った後悔と、セドリックへの怒りと、悲しさ…
それでも自分の心を占めるセドリックへの想いを複雑に抱え、動けずにいたレイラは、入口で待っていた兄に促され部屋に戻った。
翌日にはアルフは寮へ帰る準備をして、後は迎えの馬車を待つだけになっていた。父親とは昨日の夜話をしていたので今見送りにいるのは母親とレイラだけだった。
「アルフ気をつけてね」
「はい。お母様も体調気をつけてください」
少し後ろに控えていたレイラを見て微笑み声をかける。
「レイラも勉強頑張ってね」
「はい。あの…お兄様」
アルフはレイラの側まで来て耳元でつぶやく。
「殿下とは留学前に会えると思うし、見送りにも来るでしょ?その時私が一緒に謝ってあげるよ」
「お兄様…ありがとうございます」
王太子の婚約者として学ばなければならない事は沢山あり、レイラは毎日忙しい日々を過ごしていたが、留学前に一度会えると思いながら頑張っていた。
そんな時セドリックから手紙が届いた。
「お嬢様殿下からです!!」
「もうアイナがそんなに嬉しそうな顔しないで」
メイドのアイナから手紙を受け取り、ドキドキしながら封を開けた。
『明日エルンテ国に出立する。見送りは無用』
事務的な、なんの感情ものっていない一文だけであった。
手紙を読んだレイラは全身から力が抜けていくのを感じた。
──これだけ…セドリック様にとって私の存在もこれだけと言うことなのね…
「お嬢様…?」
キラキラ輝いていた瞳から光が消え顔色も無くなった主人を心配してアイナは側に寄る。
そのままレイラは寝込んでしまった。
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